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短いのを書くのにこんなに時間が掛かっている自分自身にげんなりしている臆病風です。前回からもう3ヶ月、このままフェードアウトしようかと思いましたが、読んでくれる方がおられるので頑張ろうと思います。どうか、暖かく見守ってください。
次はなんとか1月で投稿できるように頑張ります。

あと、知ってる方もいると思いますが、異世界の聖機師物語というアニメに真桜によく似たキャラがいました。設定とかも似ているところがあって驚きました。



元の世界に戻って2日目の朝。
ようやく東の空が明るくなり始めた頃、
「お兄ちゃん起きるのだー!」
「ぐはっ!!!」
まだ夢の中にいた一刀は、鈴々のボディプレスを無防備な腹に受け目覚めることになった。
「お兄ちゃん!早く起きるのだ!」
鈴々は馬乗りになると一刀を揺すった。
一方の一刀は、鈴々の目覚ましとは思えない一撃に悶絶していてされるがままになったいた。
「……り…んりん…起き…た…から……とり…あえず…どい…て。」
息をするだけでもつらい状態だが、一刀はなんとかそれだけ口にした。
鈴々は一刀が起きたとわかると腹の上から降りてくれたが、まだまともに話ができるほど回復していない一刀は起き上がれる状態ではなかった。
その様子を見た鈴々は、また眠ろうとしていると思われてずっと揺すられ続けた。

「今日のお兄ちゃんはお寝坊さんなのだ。」
ようやく回復して起きあがった一刀に、鈴々はまずそう言った。
鈴々のことだから特に悪意がないと思うけど、鶏も鳴かないようなこんな薄暗い時間に叩き(?)起こされてお寝坊さんはない。
それと、もうあんなバイオレンスな起こし方は勘弁してほしい。
危うくまた夢の世界に行ってしまうところだった。
「ははっ、そうだね。それにしても、いつも愛紗に起こされてる鈴々が、今日はずいぶんと早起きだね。」
普段は寝坊する側の鈴々が、なんでこんな早く起きているのか気になり訊いてみると
「お兄ちゃん忘れたのだ?今日は、お兄ちゃんが天の世界のことたっくさん話てくれるって言ったのだ。」
鈴々はたのしそうにそう答えた。
一刀は、まさか昨日の自分の一言が原因でこんな朝早くに起こされることになろうとは思ってもみなかった。
「そうは言ったけど、今はダメだよ。」
鈴だけに話したらあとで他の子たちになんて言われるかわからない。
それに鈴々は頭を使うのは得意ではないから、実際に見たり、使わせたほうが理解しやすいだろう。
「どうしてなのだ!お兄ちゃんはウソついたのだ!?」
「そうじゃなくて。桃香や愛紗、他のみんなも一緒の時じゃないと…」
「鈴々は今すぐ聞きたいのだ!」
鈴々は、一刀が話をしてくれないとわかるとすぐに涙目になってしまった。
こうしていると年相応の女の子で、とても戦場では誰もが一目置く猛将には見えない。
駄々をこねる子どものようになった鈴々に、一刀は落ち着いた声で語りかけた。
「鈴々。鈴々だって誰かに仲間はずれにされるのは嫌だろ?」
「…嫌なのだ。」
「自分がされて嫌なことは、他の誰がされても嫌なんだ。だから、鈴々が仲間はずれにされて嫌なら、他のみんなを仲間はずれにするようなことしちゃダメだよ。わかってくれるかな?」
「……わかったのだ。」
「ん。ありがとう。」
一刀はその答えに満足すると、微笑んで鈴々の頭をなでてあげる。
「じゃあ、みんなを仲間はずれにしないようにするのだ。」
頭をなでていたら、突然鈴々がそう言ってきた。
なにかすごく嫌な気がしたので一刀は止めようとしたが、走り出した鈴々に声は届かず部屋を出ていってしまった。


今朝は鈴々が全員を起こしてきたので、早朝からこちらのことを話すことになった。
いきなり世界がどうとか教えてもわからないだろうし、興味のない子もいるだろう。
それに、向こうの世界とは技術が全く違うから、向こうと同じ感覚では理解し辛いと思うから、機械類から説明することにした。
テレビ、エアコン、パソコン等、まず寮の中にある物を教えていった。
どれもみんなの関心していたが、1番興味を示したのは通信関係だった。
携帯電話を使って電話の機能を体験してもらったらり、インターネットで情報を収集して見せると、軍師達はそれら有用性に感嘆の声をあげていた。
みんながいた世界では、これらの通信機器まさに脅威と言える。
しかし、一刀の世界では誰もが使える物だと聞くとみんな(特に軍師達)は驚いていた。
こんなことで為政者はちゃんと国を治めることができているのか、みんな不思議がっているなか
「この世界の連中は、そこの馬鹿みたいに能天気な奴しかいないんじゃないの。」
という桂花の一言で、みんなは納得した。
なんだか、納得いかなかい一刀だったが反論したところで時間を無駄にするので話をを続けることにした。

日も暮れたので今日の話はここで切り上げにすると、流琉に夕飯の準備を頼んだ。
夕食ができるまでの間、愛紗と話しをしようと思っていた一刀だったが、華琳に話かけられてしまった。
「一刀、訊きたいことがあるのだけど。いいかしら?」
「いいけど、なにかな?」
「あの子どものことよ。」
華琳が指差す先には璃々がいた。
「璃々がどうかした?」
「どうかした?じゃないわよ!あの子、あなたと黄忠の子どもらしいじゃない。」
「「一刀の子ども!!」」
華琳の声が聞こえていたのか蓮華と小蓮が座っていた椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がると詰め寄ってきた。
「なに?一刀に子どもがいるの?」
2人のように熱くなっていないもののやはり気になるのか雪蓮もこちらにくる。
「どういうことなの一刀。説明してちょうだい!」
「そーよ、一刀!子どもがいるなんて聞いてない!」
それは蜀にいた時の俺のことだし、呉にいた時の俺がそれを知る術なんてないのだから、知らなくて当然なんだけどな。
あと蓮華さん、そんなに近づかなくてもいいんじゃないですか。
胸が当たっているんですけど…。
「子どもって言っても璃々とは本当の親子じゃないよ。」
「あら、でも黄忠はあなたが認知してくれたと言っていたわよ。」
「それは紫苑の言い方が悪いよ。俺が璃々を娘みたいに思ってるのは確かだよ。でも、もし本当の親子だとしたら歳が近すぎだろ。璃々が生まれた時、俺いくつだよ。」
話を聞いている魏の子達からは“種馬なんやから別に不思議やないやろ”とか“年端も行かないうちからそのような事に耽っていたとは感心できませんね”と冷ややかな声を掛けられたが、華琳は真剣に受け止めてくれた。
「では、なぜあの子はあなたのことをお父さんなんて呼んでいたのかしら?」
どうして華琳がそんなこと知っているのかと驚いたが、華琳がそれを聞いた時、一刀は気絶していたのでわかるはずもなかった。
「それは父親のいなかった璃々が俺に懐いてさ、お父さんみたいだって言ってくれてね。俺は言われて嬉しかったし、誰かに迷惑かけるわけじゃないから、それからはお父さんって呼んでもらってる。」
「じゃあ、一刀の実の子じゃないのね!」
「うん。…でも継子ではあるかな。」
華琳や蓮華達もこれで納得してくれるだろうと、一刀がホッとしていたら話題になっていた本人が現れた。
「お父さん。」
「どうした璃々?」
「このお姉ちゃんたちもみんな手籠めにしたの?」
この一言でその場が凍りついた。
「ねー、どうなのお父さん?」
「いや…。それは…。」
なかなか答えてくれないので璃々がせっついてくるが、質問に答えるわけにはいかない一刀は狼狽えていると
「まぁ、間違ってはいないんじゃない。」
なんだか呆れた様子で華琳が璃々の言葉を肯定した。
そうは言うけれど、魏のみんなとも合意の上だったんだからそんなことはない………はず。
「シャオ、水浴びしてる最中に欲情した一刀に襲われて、初めて奪われちゃったの。雪蓮姉様は?」
「私?一刀とした時は、賊の討伐の後だったから血に酔ってたから、手籠めにされたって言うよりむしろ私が一刀を手籠めにしちゃった?」
「お姉様、大胆。」
雪蓮もシャオも子どもの前でそんな暴露話はやめてくれ。
それにシャオは明らかに脚色してるだろ。
あの時はシャオから誘ってきていたのに、それじゃまるで俺が一方的に襲ったみたいじゃないか。
「蓮華はどうだったの?」
「えっ!!」
「あっ、それシャオも気になる。」
璃々の発言や2人の暴露話を聞いて赤面している蓮華に話を振るが、
「雪蓮姉様!小蓮!そういうことは誰かに話すものではないないでしょう!」
元々、真面目な性格の蓮華がその話題に乗るはずがなかった。
「それに一刀!あなたは子どもになんて言葉を教えてるの!」
姉妹達に向いていた怒りが一刀に向けられた。
しかし、璃々に手籠めなんて教えた覚えはないので一刀は焦った。
「俺は璃々にあんな言葉は教えてないよ。紫苑!璃々にあんな言葉教えたのか?」
いくら紫苑といっても、大切にしている娘にいきなり教えたりはしないとは思うが、一応訊いてみた。
「いえ、私は教えていませんわ。私でしたら、ご主人様と2人で時間を掛けてしっかり教えますもの。」
紫苑は艶のある笑みを浮かべながらこう答えた。
言葉一つ教えるのに時間なんてそんなに必要ないと思うのだが、俺と2人でどうしっかり教えるつもりなのか…。
今はそれより璃々に手籠めなんて言葉を誰が教えたのかの方が大事だ。
「じゃあ、誰が……。」
一刀は部屋を見渡す。
まだ国同士には微妙な距離感がある中で他の国の子が教えるとは思えない。
となると蜀の誰かということに……………いた。
「星、おまえか!」
「おや、ばれてしまいましたか。」
星はこんなに早くばれるとは思っていなかったのか意外そうに言うが、顔がニヤついているのでまるわかりだった。
「なんで璃々にあんな言葉教えたんだ!」
「そんなの面白そうだからに決まってるではありませんか!」
真面目な顔をした星にそう即答された。
その清々しささえ感じるような態度に、一刀はドッと疲れた気がした。
「どの道知ることになるのですから良いではありませんか。それに、あと数年もすれば璃々も主のお手つきになるでしょうし。」
「子どもにそんなことしないから!」
「おや?朱里や雛里、ねねにまで手を出しておいてなにをおっしゃいます?」
さらっと、女性関係をばらされた。
みんなに女性関係のことは気づかれていると一刀は思っていたが、こうして言われるとやはり恥ずかしかった。
「璃々は俺の子どもなの!血が繋がってなくても親子でなんて倫理的にマズいって言ってるんだよ!」
「その背徳感がまたソソるのでは?」
「そんなことあるわけないだろ!お前は俺をなんだと思ってるんだよ!」
「…ち○この使いですかな。」
「………。」
外野、”あー”とか”そっちでもか”とか言わない。
「ともかく俺は璃々に手なんて出さないから!」
一刀は、自身の意志をはっきりと言うことで話を終わらせようとした。
正直、こんな話は続けたくなかった。
「ふむ。では、そういうことにしておきましょう。」
ちょっと引っかかるが、これ以上変なこと言われないのだから良しとしよう。
「しかしですな主。璃々も主と同じように思っているとは限りませんぞ。」
星に言われて一刀は璃々の方を向くと
「璃々だけ仲間はずれなんてやだ!」
璃々は一刀が、自分だけ他の女の子たちと扱いが違っていることが気に入らなかったのかご機嫌斜めだった。
また、璃々を途中から無視していたのと、明らかに子ども扱いしたのは良くなかった。
「璃々もお姉ちゃんたちみたいに手籠めにして!」
こんなことを言い出したことで、部屋の雰囲気は最悪なものになった。
「いくら隊長でもあんな子どもにそんなこと…」
「でもな、凪。季衣や流琉もたいちょの毒牙にかかとるわけやしなー。わからんで。」
「あんな子どもに手出すようだったら、隊長のその腐った性根を叩き直してやるのー。」
「華琳様、あんな性欲が人の皮を被ったような変態、さっさと切ってしまいましょうよ。」
「?秋蘭、みなは何を騒いでいるのだ?それに手籠めとはなんだ?」
「姉者……。いいか姉者、手篭めというのはだな力尽くで女をものにする、という意味だ。」
「なっ!」
「それから、あの娘がだな手籠めにして欲しい言っていたが、要は北郷に女にして欲しいと、そう言ったからみなが騒いでいるのだ。わかったか姉者?」
「……こんな幼子にまではれんちな真似をするとわ!見下げ果てたぞ北郷!今ここで貴様に引導をくれてやる!」
「相手があそこまで望んでおるんじゃから応えてやらんとならんが、ちと若すぎるの。」
「ちょっとどころではありません!あれはまだ子どもではありませんか!」
「ですけどぉ冥琳様。一刀さんのことですから万が一なんてこともありえるんじゃないですかぁ?」
何気にみんなひどいこと言っていますけど、本人が目の前にいるんだからもうちょっと遠慮とかしてくれませんかね。
また、璃々とのことを知っている蜀では
「月、ここを離れましょ。あんな鬼畜が近くにいたら、何されるかわかったもんじゃないわ。」
「詠ちゃん、それはご主人様に失礼だよ。」
「恋殿、やっぱりあいつは信用できないのです。ねねと一緒にここを出ましょう。」
「………ご主人様は優しい。それに、ここのごはんおいしい。」
「桃香様、あんな子どもにまで手を出そうとする奴なんて見捨てましょう。」
「あはは…。いくらご主人様でも璃々ちゃんに手は出さないよ。さっきそう言ってたでしょ。」
ここぞとばかりに一刀から愛しい相手を引き離そうとしていた。
この時、何も言わないでいた子達の大半は一刀に疑いの視線を向けていた。
こんな雰囲気から早く解放されたい一刀は、今の状況のきっかけとなった璃々の説得から始めた。
気が引けるがウソの手篭めの意味を教えて璃々には納得してもらい、すぐにみんなの誤解を解きにかかろうとしたが、タイミング悪く流琉がみんなを呼びに来た。
「みなさん夕飯の準備ができましたよ。」
突然現れたので、全員の目は流琉に向けられた。
こんなに注目されることに慣れていないのかすごく居づらそうにしている。
「あ…あの、なにかあったんですか?」
「流流っちは気にせんでエエことや。それより、メシはできたんやろ?」
「は、はい。」
「しゃ、ならメシや、メシ。」
そう言うと霞はさっさと食堂に行ってしまった。
みんなもそれに続いていき、その場に残ったのは一刀と流琉の2人だけだった。
流琉は、来た時の雰囲気とみんなの行動から事前になにかがあったとわかったが、それが何だったのかは誰も教えてくれなかった。
ただ1つわかったのは、一刀ががっくりと肩を落としているということ。
「ごめんなさい、兄様。私が来たせいで何か迷惑を掛けてしまって。」
「流琉は何も悪くないから、気にしないで。それより、早く行かないと俺達の分の夕飯まで食べられちゃうよ。」
誤解を解くのは夕飯の後でもできる、一刀はそう自分に言い聞かせて食堂に向かった。
しかし、食後、ほとんどの子達はそのまま解散してしまい誤解を解くことはできなかった。

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