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できあげるまで2ヶ月以上もかかってしまいました。内容は1本目の投稿時には大体決まっていたのに、自分でもびっくりする大ブレーキ。恐らくはこれからも時間がかかると思います。
今度はショートか、街に買い物にでも出てもらおうと思っています。

各国は終戦直後くらいという設定しています。呼び方がごちゃごちゃなのはそのためです。それを入れても変なところがあります。また前回同様、誤字脱字、展開が速い、口調が違うところがあります。注意してください。

最後に、感想をくれたガーさん、HALLさんありがとうございます。なるべく速く投稿できるようがんばっていきます。



貂蝉と卑弥呼のおかげでなんとか皆の住む場所は確保できた一刀は、寮や学校側から提示された条件についての説明を卑弥呼から受けていた。
「つまり、みんなは一月後に学校に編入してくるわけだな?」
「そうだ。」
「何人か年齢的に学校に入れないけど、それはどうなるんだ?」
どう考えても紫苑、桔梗、祭はアウトだ。
「その者達には寮の管理等をしてもらう。」
「部活動に励みそれに貢献すること、て言ってたけど具体的に何をすればいいんだ?」
「ふむ、簡単な事だ、片っ端から大会に出て優勝すればよい。」
つまり、スポーツ特待生みたいな扱いになるのか、と一刀は思った。
今のスポーツは多くの制約の下で行われるが、武を志した子達にとっては十分に可能性がある。
みんなが出れる競技って何があるだろう?剣道、弓道それに馬術あたりかな?
今からそれを考えても仕方ないのだが、つい考えてしまう一刀であった。
「みんなの編入手続きに、住む所までなんとかしてもらって。ありがとう。本当に感謝してるよ、卑弥呼。」
「ふむ、感謝の言葉を素直に言うとは、なかなか良い心がけだな。このまま精進を積めば、だぁりんのようなイイオノコになれるやもしれんな。」
ゾクッ
卑弥呼の視線を感じた瞬間、一刀の全身に今まで感じなかったような悪寒が走った。
「そ、そうか。ありがとう。」
「儂がいくら美人でもそんなに恥ずかしがる事はない。がはは。」
卑弥呼の顔を見るのが怖くてそっぽを向いたまま答えたが、卑弥呼は一刀が照れているのだと勘違いしたようだった。
その後ろで貂蝉が二人が会話しているのを恨めしそうに見つめていた。
さらに後ろでは貂蝉、卑弥呼の外見に慣れていない女の子達は貂蝉から距離を置いてさらに後ろを着いてきていた。

「あぁぁぁ――!!」
みんなが寮に向かっている最中に白蓮が突然を大声を上げた。
「いきなり大声出すなよ。驚いたじゃないか。」
「麗羽達と南蛮の連中がいない!」
翠が文句を聞き流して白蓮そう言うと、それを聞いた蜀の子達は呆気に取られると、そういわれれば、忘れれてたのだ、どうしよう、だの口々に言いだした。
「桃香、あなた麗羽も取り込んでいたの?」
「うん。私達の領内をウロウロしてたから放っておけなくて。」
桃香の答えに魏、呉の子達は呆れた。
麗羽のわがままな言動に悩まされたいたはずなのに、それをわざわざ保護するとはずいぶんな御人好しだ。
「えーと、たぶん麗羽達と一緒に美羽と七乃さんそれに華雄もいると思う。」
「「えっ?」」
「それはどういことかしら?」
一刀の言葉に驚く華琳と桃香であるが、雪蓮は美羽の名前が出たことですごく嫌そうな顔をしている。
「みんなのところ以外に麗羽のところに拾われたときがあるんだ。その時は、早々と華琳に敗れて各地を旅してたんだけど、その道中で美羽や七乃さん、華雄と一緒になったんだ。」
「それで麗羽や袁術達にも手を出したと?」
華琳のこのつっこみに一刀は目を逸らして黙り込んだ。
ここにいる子達はみんな一刀のことはよくわかっているから、この沈黙が何を意味するのかもわかる。
「…ともかく、早く麗羽さんを見つけよ。」
桃香がこう言ってくれたおかげで話はここまでとなり、捜索が開始された。

女の子達総出で捜索にあたっているのにもかかわらず中々見つけることができなかった。
諜報に優れた明命でさえその足跡を見つけられずにいた。
全く手掛りの無いまま日が暮れてきたので今日の捜索を打ち切り、明日出直すことになった。
一刀が一足先に集合場所になっている元いた道に戻ってみるとそこに麗羽達がいた。
なぜか美以、ミケ、トラ、シャムまでいる。
「やっと見つけましたわ!一刀さんいったいどこをほっつき歩いてたんですの?」
それを言いたいのはこっちの方だ、と一刀は言いたかったがそれを飲み込む。
「みんなと麗羽達を探してたんだよ。麗羽達こそどうしてたんだよ。」
「私達は森の中を歩いてただけですわ。」
あれだけみんなで探し回っても見つからなかったのに、麗羽達はただ歩いているだけのようだった。
今までの苦労がまったくの徒労だったとわかると、一刀はがっくりと肩を落とした。
「一刀さん、みんなって言ってましたけど、どなたかと一緒なんですか?」
一刀の様子に苦笑いを浮かべていた斗詩がそう訊いてきた。
「ああ。もう少しすればみんな集まるから少し待ってくれるかな。」
それぞれ捜索を切り上げて戻ってくる女の子達は、その場に麗羽達がいるのを認めるとみんな一様に不快そうな顔をした。


捜索に時間がかかりみんなと寮に着いた時にはすっかり日が暮れていた。
皆がいた世界に比べると星はずっと少なく、その上、森の一画を拓いて建てられた寮には明りは灯っておらずとても暗い。
だから
「おい!へぼ主人!暗くてなにも見えないのです!早くなんとかしろなのです!」
「ちょっといつになったら休めるのよ!月が倒れたらどうするつもり!」
「ホントにここであってるの?まさか、私達に変な事するつもりじゃないでしょうね!」
と、ツンツンな軍師に言われ、さらにその横から
「兄ちゃーん、お腹すいたー。」
「鈴々もお腹すいたのだ…。」
「………ご飯。」ぐぅぅぅー
と、欠食児童が空腹を訴えてくる。
そんな声を背に受けつつ一刀が寮へ入っていく。
みんなもそれに続いて寮へ入っていくが、当然、中も真っ暗。
月や星といった光源がなくなった分むしろ外よりも暗かった。
「一刀さん、私にこんな薄暗い所に住めというんですの!」
「貴様、桃香様をこのような所に閉じ込めて何をする気だ!」
思春の視線には殺気が混じりだす。
皆から言われる不満等が増える中、明りをつけるため一刀は壁を探り始める。
このままでは、本当に危害を加えられかねないので一刀は急いだ。
「こういうのは大抵入り口の近くにあるはずだから………、あった!」
カチッ
一刀がスイッチを押すと、部屋全体が照らしだされる。
電気の明りに懐かしさをおぼえる一刀であったが、はじめての電気の明りにみんなは驚いた。
「なっ…、なんだこれは!」
「えっ!なに?どうなってるの?」
「なんだ!敵か!」
「華琳様お下がりください!」
「蓮華様こちらに!明命!」
「はい!」
まともに前も見えない状態から、一瞬で昼のように明るくなったのだから騒然となるのも仕方がないのだが、国によって差があった。
魏・蜀の子達は近くに刺客が潜んでいるのではないのかと周囲を警戒しているのに、呉の女の子達は他の二国に比べて落ち着いていた。
特に雪蓮、冥琳、祭は驚いた様子のなく、明るくなった部屋の中を物珍しそうに見渡していた。
麗羽も驚いてはいなかったが、ただ単に状況についていけてないだけのようだ。
「北郷!貴様なにをした!」
春蘭が七星餓狼を構え、戦場で見せるような気迫をまとわせて一刀を問いただしてきた。
その切っ先を向けられている一刀は生きた心地がしない。
魏ではよく追いかけられたりもしたし、それが春蘭からすればじゃれついている程度だとわかっていたはずなのだが、実際に向けられるとやはり違う。
じゃれつくと言っても相手は魏武の象徴、猛将夏侯惇であるから一刀には常に死と隣り合わせだったのだが…。
「春蘭、落ち着こう。説明するから、とりあえず剣を下ろそう。なっ!」
「ふんっ、話など剣を向けられていてもできるだろう。」
そんなに威圧されていつも通り話ができるほど一刀は豪胆ではないのだが、春蘭にとってそんなことは関係ない。
たとえわかっていたとしても、下ろすかどうかは怪しいところだ。
それに、春蘭が相手では説明したらしたで誤解して斬りかかってきそうなので、まずはどうやって春蘭に七星餓狼を下ろさせるか一刀が考えていたら、華琳が止めてくれた。
「下がりなさい、春蘭。」
「ですが華琳様、北郷が何かしたのは確かなのですよ。」
「…姉者。」
「放せ、秋蘭!私は北郷に話があるんだ!放せー!」
華琳に言われてもぐずる春蘭を、秋蘭が引っ張って後ろに下がらせて行った。
「あの子の忠誠心は得がたいものだけれど、融通が利かないのが問題なのよね。」
と、華琳はため息混じりにそう言うと一刀に尋ねる。
「一刀、これがなんなのか教えてくれるんでしょうね?」


それから、一刀はみんなにわかるように電灯の事を説明した。
これは、光を生むカラクリで壁に埋め込まれた装置を押すことで明りがつくのもので、この国では一般的なものであると。
「へー、これを押すだけで明りがつくんだ。」
「私達の時代は明りをつけるのも一手間だったのに、天ではずいぶんと簡単にできてしまうのね。」
みんな好奇心が強いので、感心したようにスイッチを覗き込んだり電灯を見上げている。
鈴々と季衣は競うように何度もスイッチを押すので、愛紗と流々に厳しく注意されている。
みんなが電灯に興味を引かれていた時、一刀は冥琳にさっき感じたことを尋ねていた。
「なぁ冥琳、どうして呉の皆はあんなに落ち着いていたんだ?」
一刀が明りをつけた時、呉の女の子達だけが他の子達とは違う反応をしていた。
雪蓮、冥琳、祭にいたっては驚くような素振りさえしていなかった。
呉の支柱である3人があの様子だったから他の女の子達もそれほど慌てなかったのだと思うけど、気になっていた。
「なんだ北郷、忘れたのか?私と初めて会った時に色々と話してくれたではないか。」
呉で雪蓮に拾われたあと身の潔白を証明する為に携帯で写真を撮ったり、自分の世界の話をしたのを思い出した。
「あぁ、そういえばそうだったね。」
あれ?でも、あの時は機械類を中心に話をしてけど、明りの事は話したっけ?
その時の事を思い返すと、話ていないのではと思っていたら
「おまえに話してもらったものに比べればこの程度では驚かんよ。」
と、言われてしまった。
どうやら、考えている事が顔に出ていたようだ。
「そうだ!ここには話にあった車やテレビはあるのか?」
「ああ。あの時に話した物なら全部あるよ。でも、車は免許がないと運転できないから、乗るだけになるな。」
「そうか。それは楽しみだ。」
その時の冥琳は、本当に嬉しそうに微笑んでいた。

「ところで、北郷。」
「ん、なに?」
「そっちは放っておいてよいのか?」
冥琳に促された方を向くと、そこにはこちらをじっと見ている魏と蜀の女の子達がいた。
しかも、みんな目が少し怖い。
「なぁ一刀。一刀はうちらに隠し事しとったんか?」
「隠し事はあかんなぁ。呉の連中には話せて、うちらには話せんちゅーんはどーゆうことなん?」
霞と真桜が尋ねてくるが、魏では華琳から天の知識を話さないようにと言われていたので隠していたわけではなかった。
呉ではそういった制限をされることはなかったし、むしろ、積極的に取り入れようとする姿勢だったので色々話していたのだ。
「いや、話さなかったのは華琳から口止めされてたからで、別に隠すつもりはなかったんだけど。」
「ホンマなん?華琳?」
「ええ。あまり先のことがわかってしまえば目先のことが疎かになる、だから一刀に天の知識を話すのを禁じたわ。」
一刀は、華琳がこう言ってくれればこれ以上は追求されないだろう安心したのだが、
「…でも、確かにいい気分はしないわね。」
と、霞達の肩を持つようなことを言う。
自分で禁止しておいてそれは理不尽だと思うが、一刀に言いたい事があるのは魏の子達だけではない。
「…ご主人様。周喩さん達には天の話をなさったんですか?」
雛里がいつものあわわらしさが一切感じられないしっかりとした口調で訊いてくた。
「そうだけど。」
そう答えた一刀だが、普段と異なる雛里の態度にとまどい語尾が弱くなっていた。
その答えを聞いた朱里が一刀を非難する。
「ひどいですご主人様!私達には天の事なんて話してくれなかったのに、周喩さん達には話してたなんて!」
蜀では特に訊かれることもなかったのであまり話していなかった。
あったとしてもほとんどが実務的なものであった。
「でも朱里や雛里には街の作りとか…」
「それとこれは話が違います!」
弁明しようにも朱里は全く聞き入れてくれない。
朱里達からすればそういった話ではなく、一刀個人の話が聞きたかったのだがそんなこと一刀にはわからない。
「ご主人様、私もそういう差別良くないと思うな。」
朱里と雛里に責められてたじろいでいた一刀が誰かに助けを求めようと思っていたら、桃香がそう言ってきた。
蜀の中で一番味方に回ってくれそうな桃香でさえこう言うのだから、蜀の中で助けてくれる子はいないだろう。
魏も蜀と同様に助けは望めないから、呉に助けてもらおうと思ったが
「ほれ、北郷しっかりせい。」
「がんばれー、一刀。」
「一刀、がんばりなさい。」
この状況で声援を送られても全く嬉しくない。
一刀の状況を面白がっている祭、小蓮、雪蓮は、完全に観戦モードになっていいる。
蓮華、明命、亞莎はどうしたものか迷っているようでオロオロ、冥琳、隠は呆れており、思春いつもと変わらず無関心。
こんな様子ではとても助けてくれそうになかったので一刀は、天の事はこれからたくさん話してあげるから、今はすぐ必要になる物だけということでみんなに納得してもらった。


とりあえず一刀は、水道、鍵、トイレそれと料理のできる子達には調理場にある物の使い方を皆に教えた。
調理場にはすでに食材や調味料等があったので流々に頼んで料理を作ってもらうことにして、他の子達には食堂に移動してもらった。
初めて使う器具もあるので、一刀は流琉の手伝いとして調理場に残った。
腹を満たした後、今日はみんな疲れただろうから早く休んでもらう為に部屋を決めることにした。
この寮には60部屋あり一人一部屋割り当てられるのだが、部屋割りで問題が起こった。
「これからみんなの部屋を決めようと思うんだけど、上の階から魏、呉、蜀、麗羽達の順…」
で良いかな、と一刀が言おうとしたが、机を叩く音に遮られた。
「ご主人様、どうして我々がそんな低い位置なのですか!?」
突然の愛紗の行動に一刀は驚いた。
「そうね、私も今の順番の理由が聞きたいわ。」
「私が一番下というのは納得いきませんわ!」
愛紗の言葉に雪蓮と麗羽が続く。
麗羽は高いところが好きだからこう言っていると思うのだが、どうして他の子達がそんな事を言うのか理解できなかった。
周りでは、なぜか勝ち誇ったような魏の女の子達と、なんだか落ち込んでいる感じの他の女の子達。
原因は自分の言葉にあるようなのだがピンとくるものがない。
一刀はどうしたものかと悩んでいたが、華琳の言葉でようやく理解できた。
「わかりきったことよ、一刀にとって私が一番だって事でしょ。」
迂闊だった、そう思ってももう遅い。
みんなは今の順番を一刀の中での序列と受け取ってしまっている。
一刀自身にはそういった考えはなくとも、みんなは何か意味があるのではと勘繰ってしまう。
「みんな。今の順番に特に深い意味は…」
「それは聞き捨てならんな、曹操。貴様が1番とはどういうことだ。」
「あら、言葉通りの意味よ。」
一刀が誤解を解こうと口を開くが、愛紗の言葉とかぶってしまい誰の耳にも入ることはなかった。
蜀でもよく焼きもちを焼く愛紗であるが、今回は雰囲気が違う。
いつもであればそれほど攻撃的ではないのだが、今の愛紗はすぐにでも飛び掛かっていきそうだった。
なんとかして2人を止めないと、と考えていたら急に腕を引っぱられた。
「ねえ、か〜ずと。」
そこには腕に抱きつく小蓮がいた。
みんなの視線は華琳と愛紗の方に向けられていて、気づいている子はいない。
「シャオね、一刀に訊きたい事があるの。」
小蓮は、周囲の状況など全く気にも留めないで尋ねてくる。
このマイペースなところは小蓮の良いところだが、今それに構っていられない。
「できれば後にしてくれるかな?今は2人を止めなくちゃならないんだ。」
「ぶー、そんなの好きにやらせとけばいいじゃない。それより、一刀の部屋ってどこなの?」
「…なんでそんなこと訊くの?」
「そんなの決まってるじゃない。シャオは一刀の妻なんだから同じ部屋で暮らすの。」
そう言ってシャオが笑いかけてくるが、一刀の顔は引きつった。
なぜなら、それまで争っていたはずの愛紗と華琳も含めたみんなの視線を感じたから。
「小蓮様ずる〜い、一刀さんに最初に唾つけたのは私なのにぃ。」
隠はあれで結構ヤキモチ妬きなのはわかっていたが、このタイミングでその話は出されたくなかった。
「あの時はぁ一刀さんも、私に唾つけてくださいましたよねぇ。」
「隠っ!」
「一刀ぉー!」
頬を膨らませて怒る小蓮であるが一刀からすればそれどころではない。
ただでさえ悪い雰囲気だったところに、隠があんなことを言ったものだから魏、蜀の子達を刺激してしまった。
集まっていた視線が、1度隠に向き鋭さが3割増しになって戻ってきた。
加えて胸にコンプレックスがある子達からは妙なプレッシャーを掛けられる羽目になった。
特に華琳の機嫌は急降下したようでその表情には険が増している。
「重要な事を忘れてたわね。で一刀、貴方は誰のところに行くのかしら?」
「私のところに来てくれたら嬉しいな。ご主人様。」
「ご主人様、私のところに来てくれますよね?」
「そんなのわからないわよ。ね、一刀。」
「…一刀。」
「あー、お姉ちゃん達まで!一刀はシャオと一緒なの!」
みんなが一刀を誘ってくるので、小蓮はさらに体を密着させて一刀は渡さないと示す。
2人の口論が止まったのは良かったが、みんなから刺すような視線を向けられ、さらに誰かと相部屋になるということで話が進んでいた。
みんなが期待のこもった目で一刀を見るが、その答えは皆の期待を裏切るものだった。
「俺が誰かと相部屋になるとかないから。というか、ここに住まないよ。」
「「「はっ?」」」
「だって俺、男子寮に部屋があるから。」

――――――――

ツンツン
「ちょっと卑弥呼、あなたご主人様に説明したんじゃなかったの?」 ヒソヒソ
「んむむ。すまん、すっかり忘れておった。」 ヒソヒソ
「じゃあ、荷物のことも?」 ヒソヒソ
「ああ。」

――――――――

「じゃあ、シャオがそっちに行けば問題無いよね。」
「それも駄目。女の子を部屋に連れ込んだなんて知られたら、俺が学校に居れなくなるから。」
及川なんかに知れたらすぐに学校中に知られてしまう。
「それに女の子の中に一人だけ男がいるのは変だろ。」
「一刀殿、多くの女性の中に男性が一人というのは我々の所にいた時と、それほど変わりありませんが。」
みんなを説得するために言ったが、稟がすぐにその言葉の欠点を指摘されてしまった。
向こうでは問題ないことでもこっちでは世間体とか色々まずいのだが、そんなことみんなには関係ない。
それにみんな周りの醜聞など気にも留めないだろう。
「そうですねー。それにお兄さんのことですから、むしろ女の子が増えて嬉しいのではありませんか?」
稟の指摘に便乗して風が追い討ちを掛けてきた。
確かに女の子が多いのは嬉しいけど、これだけの人数となるとさすがに困る。
一刀はなんとかみんなを説得できる良い案はないかと考えるが、なかなか思い浮かばなかった。
ここにいるのは戦乱の時代を生き抜いた英傑ばかり、下手なことを言えば墓穴を掘ってしまうので慎重にいかなければならない。
「いいかしら、ご主人様。」
「貂蝉、おまえから言ってくれよ。俺はここに住めないって。」
一刀は貂蝉が味方になってくれるのかと思ったがそうではなかった。
「そのことなんだけど。ご主人様もここに住むのよ。」
「えっ!」
「この子達の面倒を見るのに離れた場所に住むより一緒の場所に住んだ方が都合がいいでしょ?」
貂蝉が言うことはもっともだが
「学校がそれを許すわけ…」
「それも込みで卑弥呼は承諾をとってくれたのよ。」
どうやらここに住むことは、はじめから決まっていたようだ。
みんなは最初からそのつもりでいたとしても、一刀はそこまで一緒になるとは思っていなかった。
そんなことになったら、みんなに付っきりになって自分の時間などとれるはずがない。
それだけはなんとか回避したい一刀であったが、
「それと、おぬしの荷物だがすべて管理人室に置いておいたぞ。あとで取りに行くといい。」
と、卑弥呼にさらりとそんなことを言われた。
「ちょっと待て!じゃあ俺の部屋に何もなかったのは。」
「うむ、儂等が運んだのだ。お主もここに住むのだからな、手間を省いてやったぞ。」
一刀が今朝目覚めたときには、すでにこの寮で住む準備は整えられていたようだ。
色々と手を回してくれてたのは嬉しいがそれは余計だ、と一刀は思った。
この寮に一緒に住むのにまだ了解できない一刀は、なおも抗うがそれがいけなかった。
「ここでなにか間違いがあったらまずいだろ。」
「ここにいるみんなご主人様のこと好きなんだから大丈夫よん。むしろ、ご主人様となら望むところ?」
「でも…」
「一刀。」
一刀に掛けられた華琳の声は1トーン低くなっている。
さっきのこともあってかご立腹のようだ。
「私とあなたの関係に、あなたの言うま・ち・が・いというのはあったのかしら?」
華琳に睨まれながらそんなことを訊かれて、あったなんてとても言えるはずもなく、
「…ありませんでした。」
「なら問題ないでしょう。」
華琳に止めを刺されてようやく諦めがついた一刀は、どうすれば女の子達の間にしこりを残さずに部屋を決められるか考えた。
国ごとに分けると、さっきのような変な誤解を招くことになるからバラバラにしないといけない。
「えーと、皆の部屋決めで提案があるんだけど、いいかな?」
「言ってみなさい。」
「なにかしら、一刀。」
「なに?ご主人様。」
「折角皆で住むんだからもっと仲良くした方がいいと思うんだ。だから、国ごとに固まるんじゃなくて、各階にそれぞれの国の子がはいるようにした方がいいんじゃないかな?」
この提案が通らないと、最悪ここで三つ巴の決戦が始まりかねないので一刀は必死だった。
「ご主人様、私もそれ良いと思う!ここは戦乱の時代じゃないんだから、みんな仲良くしようよ。」
桃香は一刀の提案に賛成してくれた。
蜀では桃香、一刀の発言力は絶大なものがあるので、二人がかりなら全員を説得できる。
「一刀が同じ部屋になってくれるならいいよ。」
「小蓮、勝手なこと言うんじゃない。…一刀がどうしてもって言うなら構わないわ。」
桃香に続いて蓮華も提案を受け入れてくれた。
呉は王が大きな力をもっているので、蓮華が受け入れてくれれば全員それに従ってくれるだろう。
これで、魏に反対されても多数決に持ち込めば押し通すことができる。
二人の同意が得られたことで少し安心した一刀は、魏の回答を待った。
「どうせ、私が嫌と言っても勝手に進めるんでしょう?だったら好きにすればいいわ。」
ちょっとムスッとしながらも華琳はそう答えた。
こうして階ごとに各国数人ずつが入るかたちで部屋を決めることになった。


なるべく均等になるように分けると、各階に一国当たり2〜5人ずつが入ることになる。
一刀は5階中央の部屋に入ることになった。
魏では、華琳が一刀と同じ階というのは最初から決まっていた。
残りの3人は早々に春蘭、秋蘭と桂花に決まった。
魏の建国以前から華琳に仕えてきた春蘭、秋蘭に桂花の最古参の3人であったので、他の女の子達から異議が出ることはなかった。
その中で桂花だけは、
「私は、あの万年発情男から華琳様を守らなくちゃいけないのよ!」
と変な使命感に駆られてられていたが、いつものことなので誰も気にしなかった。
あとは残りの子達で3人,4人、4人の組を作らなくてはならない。
「では、我々も早く決めてしまいましょう。」
「はよ決めよ、言うてもな稟。もうほとんど決まっとるやないか。」
霞が言う通り残っている子達は、ほとんど仲の良い者とかたまっていてあとは組み合わせをどうするかという状態であった。
凪、沙和、真桜と張三姉妹の3人組、稟、風と季衣、流琉の2人組そして霞。
均等になるようにすると霞が凪達につくか、三姉妹につくかしかなかった。
「霞さん、私が代わりましょうか?」
「流琉っちがそない気ぃきかせんでもええよ。」
流琉が気をきかせた提案を霞はやんわりえと断ると、張三姉妹と凪達、双方を見てから凪に抱きつた。
「ちょ、霞様。いきなりなにをなさるんですか。」
霞の突然の行動に戸惑う。
「うち、凪達と組むわ。」
そう言うと、霞は凪にスキンシップを始める。
「やっ、やめてください。ここには呉や蜀の者も居るのですよ。」
「ん〜、うちはかまへんよ。」
凪が顔を真っ赤にしてやれるように言うが霞は聞いてくれない。
「は〜、凪はかわええなぁ。癒されるわ〜。」
「やめてください、霞様。沙和、真桜見てないで止めてくれ。」
凪はたまらずに二人に助けを求めた。
「姐さんが楽しんどるんを邪魔すんはちょっと。」
「凪ちゃん、がんばるのー。」
相手がいつも良くしてくれている霞ということもあり、凪の求めを受けれない二人だった。
「そんな、見捨て…。ひゃっ!ちょっと霞様どこ触ってるんですか。」

そんな騒いでいる4人を見て稟は頭を押さえていた。
「みなさん、まだどの階にするのか決めていないのですから静かにしてください。風、あなたからも何か言ってください。」
そう言って横を見ると、先ほどまでいたはずの風がいなくなっていた。
どこに行ったのか辺りを見渡すと、一刀と話をしていた。
ちょうど話が終わったようだが、なぜか鍵を手渡されている。
「風!あなた何をしているのですか?」
稟の声に相手を咎めるような感じが含まれていたので、みんなが風を見る。
「いえ、風は疲れましたから部屋を決めて先に休もうかと。お兄さんも良いと言ってくれましたし。」
「一刀殿、本当ですか?」
「いや、俺はそうは…」
一刀が何か言おうとするのを風が遮る。
「別にいいじゃないですか、お兄さんと同じ階でなければどの階もそんなに変わらないんですから。それに、早く決めないと他の方達に良い場所取られてしまいますよ?」
と、風は一刀から渡された鍵をかざしさがら皆にそう言った。


呉は人数が少ないので1階当たり2、3人となる。
「はーい!シャオ、一刀と同じ階が良い。」
「シャオ、また勝手なことを言うんじゃない。」
「別にいいじゃない蓮華。それに、私も一刀と同じ階がいいし。」
今は国ごとに別れて各階に人を振り分ける為に話合っているのだが、雪蓮、小蓮は自分の要望ばかり口にする。
「姉様も小蓮のようなこと言わないでください。」
「だって私も一刀のこと好きだし、蓮華達に差つけられたままっていうのは嫌だもん。それに蓮華だって一刀と一緒がいいでしょ?」
「そ、それは…そうですけど…。」
「なら、一刀と同じ階には私と蓮華と小蓮で決まりね!」
「姉様そんな風に決めるのは…」
「冥琳、一刀と同じ階なんだけど。」
雪蓮は、蓮華の言葉も聞かずに冥琳に確認をとる。
「ああ、わかった。あとは、こっちでやっておくから部屋を決めてこい。」
それを聞いた雪蓮は2人を連れて一刀の方へ歩いていった。
3人が一刀の方へ行くのと同時に祭が話掛けてきた。
「よいのか冥琳。北郷に策殿を取られてしまうぞ。」
「そうですね。…では、これからは北郷に雪蓮の手綱を握ってもらいましょうか。」
祭の言葉に少しからかうようなものを感じた冥琳はそう答えた。
「なんじゃ、色気の無い返事じゃの。」
「ふふ。…雪蓮をとられたからといって私が気をもむようなことはありませんよ。」
「むぅ…。」
そう言う冥琳ではあったが、内心ではそうもいかなかった。
出会ってから数ヶ月の北郷が、遥かに長い付き合いである自分に取って代われるほどに雪蓮が心を許している。
北郷は呉を蓮華達を任せられる程に成長しているが、やはり雪蓮が自分から遠ざかっていくのは寂しいものがあった。
「なにより相手は北郷ですし、雪蓮のことですから両手に花の状況を逃がしはしないでしょう。」
「それもそうじゃな。」
「まあ、雪蓮のことは北郷に任せて我々は天の国を楽しもうではありませんか。」
「そのようなことを言うとは、流石の周公謹も策殿の相手は大変だったようじゃの。」
「雪蓮の行動に困らされなかったことなどありませんでしたからね。休みたくもなります。」
苦笑混じりに冥琳がそう答えると、二人とも笑い出した。
「では、話はここまでにして我々も組に分かれましょうか。」
「そうだの。…じゃが、その必要なさそうじゃな。」
祭にそう言われて他の4人を見ると、すでに2組に分かれていたので冥琳と祭はそのまま組むことになった。
「珍しい事もあるものだな、隠。お前が思春と組むとは。」
普段はこの二人が話をしているところすら見たことが無かったので冥琳は隠にそう言った。
「いえ。亞莎ちゃんに振られてしまいまして。」
と、浮かない顔で答える隠の横では、思春がかなり不機嫌な顔をしていた。


三国の内もっとも人数が多い蜀が一番時間が掛かった。
特に一刀がいる5階に誰が入るかでもめた。
「ご主人様と同じ階だが桃香様、私、鈴々とあと一人だな。」
話合いが始まると愛紗が、いきなりこんな横暴なことを言いだしたが、この発言など通るはずもなく、
「愛紗さんずるいです!ここにいるみんなご主人様と一緒に居たいんです。そんな決め方は許しません!」
「愛紗ちゃん、それはちょっと強引すぎるよ。みんなご主人様のこと好きなんだからそういうのは良くないよ。」
すぐに朱里、桃香に否定されてしまう。
「では、どうやって主と同じ階を決めましょうか?話合いではまず無理ですからな。」
星が全員に聞かせるように訊いてきた。
「くじで決めましょう!」
「くじで?」
この朱里の提案は誰からも反対がでなかったのでくじで決めることになった。
なにより、くじであれば全員に平等に機会があるというのが良かった。
「それでは、ご主人様にくじを作ってもらってきますね。」
「ちょっと待って。」
朱里が一刀の方へ行こうとするのを詠が止めた。
「朱里、あんたまさかイカサマするつもりじゃないでしょうね?」
詠は、すべてを一人で進めようとする朱里の行動におかしなものを感じていた。
「どうしてそんな事言うんですか?」
「そりゃ軍師だもの。朱里だって逆の立場だったらイカサマを疑うでしょ?」
「くじはご主人様に作ってもらって、私はただ持ってくるだけですから問題は…」
「当たりを握り込んだり、ここに持ってくる間に細工すればいいだけでしょ。」
実際、朱里は一刀と同じ階になるためにイカサマをするつもりだった。
しかも、その手口を詠に見抜かれていたことで朱里は二の句が出なかった。
その様子を認めると詠はその場を仕切りはじめた。
「それじゃあ、誰かご主人様にくじを作ってもらいに行ってくれるかしら?」
「じゃあ私が行こうかしら。」
詠の問いかけに紫苑が名乗り出てきたが、詠は渋い顔をする。
「あら、私ではいけませんか?」
「駄目じゃないわ。でも、紫苑を一人で行かせるのも不安があるのよ。」
そう言う詠の目に紫苑の手を握っている璃々の姿が入った。
詠は璃々を手招きすると、頭をなでてこう言った。
「いい、璃々。お母さんが変なことしようとしたら、私に言うのよ。わかった?」
「うん!」
元気よく返事をする璃々を見ると詠は二人を一刀のもとへ行かせた。

「璃々、お母さんが何か変なことしてなかった?」
詠は戻ってきた璃々にまずそう尋ねた。
「ううん。お母さん何もしなかったよ。」
「そう、おりがとう。」
詠はそう答えると自分の目でも一度くじを確認する。
一刀が用意したくじはに袋の中に当たり、はずれが書かれた紙を四つ折りにしたものだった
細工が施された様子がない事がわかると、詠は皆に言った。
「恨みっこなしの一回勝負よ。はずれても文句は言わないように。それじゃあ、みんな1枚ずつ引いてって。」
様々な心境でくじを引いていく一同。
その中におかしな動きをしている者がいるのを詠は見逃さなかった。
「紫苑。なんでくじを2つも取ってるの?」
「これですか?1つは私のでもう1つは璃々のです。」
紫苑はしれっと答えるとくじの1つを璃々に渡す。
「なんでそんなことするのよ!数が合わなく…」
「大丈夫ですよ。ちゃんと璃々を合わせた数をご主人様に作ってもらいましたから。」
これでは、監視役につけた璃々では防ぐことできない。
「あー、もう!なんであんた達はそうやって自分勝手な事するのよ!第一紫苑、あんた蜀に居たときは璃々と同じ部屋だったでしょ!」
「そろそろ璃々も1人部屋に移る年頃かと、それに璃々もご主人様と一緒に居たいと思う気持ちは同じなんですからいいじゃないですか。」
「よくないわよ!どうせ璃々が当たったらそっちに転がり込むつもりなんでしょ!」
一刀のためなら卑怯な手も躊躇わない朱里や紫苑のせいで、詠は頭が痛くなった。
「ともかく、紫苑と璃々は同じ部屋。いいわね!」
詠は紫苑からくじを奪うと机の上に置いた。
「まったく油断も隙もないんだから…。みんなくじは取ったわね。」
詠が確認するまでもなく全員くじを手にして詠を待っていた。
「もう一度言っておくけど誰が当たっても恨みっこなし!いいわね!」
それを聞いたみんなが頷く。
「じゃあいくわよ。せーの!」
一斉にくじを開くと同時に愛紗の肩が落ちた。
「わっ!やった!当たった!当たったよ!」
落胆している愛紗の横で桃香が声を上げて当たりを喜ぶ。
「桃香様、私も当たりました。」
2人目は焔耶。
どうやら一刀よりも桃香と一緒になれたことの方が嬉しいようで、桃香の手をとって喜んでいる。
「桃香様はいいとしてもなんであんたまで一緒なのよ。」
3人目はタンポポだった。
一刀と同じ階になったのは嬉しいが、相性の悪い焔耶が一緒だとわかると棘のあることを言う。
「なんだ。私と一緒になるのがいやならお前は辞退すればいいだろう。」
「折角ご主人様と一緒なのに、どうして自分から辞退しなきゃいけないのよ。あんたの方こそ辞退しなさいよ。この脳筋!」
「なんだと!」
「なによ。」
「焔耶ちゃん、タンポポちゃん、喧嘩は駄目!仲良くしようよ。」
ただ一緒の階になっただけで喧嘩をはじまりそうになる2人を見て桃香が仲裁にはいっていく。
そんな中、翠があることに気づいた。
「なぁ、当たりって4つあるんだよな?もう1人は誰なんだ?」
確かにこのくじには当たりが4つ入っているはずなのに、1人が名乗り出てこない。
「まさか!」
紫苑からとったくじが当たりだったのかもしれないと、詠は机に置いたくじを確かめるが、それも違った。
じゃあ誰が?詠が疑問に思っていると月に袖を引かれた。
「どうしたの、月?」
「詠ちゃん、これ。」
そう言って差し出された月の手には当たりくじがあった。
「えっ!最後の1人は月だったの!」
「どうしよう、詠ちゃん。」
月は一刀と一緒になれるのは嬉しいが、仲の良い詠と離れるのが不安だった。
詠は、まさか月が当たるとは思っていなかったので驚いたが、自分で誰が当たっても恨みっこなしと言った手前ここで辞退するように勧めるわけにはいかない。
「良かったじゃない。別に私のことを気にすることはないんだから素直に喜びなよ、月。」
詠は、月が自分に気を使ってこれを辞退するかもしれないと思った。
だから詠は、自分のことは気にしないで月が思うように振舞えば良いと伝えた。
「詠ちゃん…。うん、ありがとう。」
月も詠が自分のことを思って言ってくれているのだと理解しているから、これ以上詠に気を使わせないようににっこりと微笑んだ。
この後も蜀は、各階も同様にくじで決めていった。


その他の扱いになった子達には人数的に問題があったため美以、ミケ、トラ、シャムが加えられた。
ここではわがままな麗羽と美羽の2人の主導で決まっていった。
麗羽と美羽が一番上が良いと言うので七乃と共に5階となったのだが、5階に雪蓮がいるとわかると美羽は七乃と共に4階へ移ってしまい、空いた部屋には斗詩と猪々子が入ることになった。
数合わせで加えられた美以達は、階を分けて部屋を決める危ないと判断され、特別に4人組となった。
また、夕食後すぐに床で寝てしまい話し合いには全く参加しなかったので2階になっていた。
これでほぼ決まったのだが麗羽達が3人組となったことで華雄は1人だけとなってしまった。
3人のうちの1人に移ってもらおうにしても、麗羽は無理だし斗詩か猪々子のどちらかとなると猪々子が騒ぐのでできなかった。
華雄は1人でも構わないようだったが、その様子を見ていた貂蝉が組むと申し出た。
貂蝉がみんなに混じって部屋に入るのに一刀は良い顔をしなかったが、今日は貂蝉達に助けられたし気をつければ危なくないだろうから、一刀は特に反対はしなかった。


最終的な割振りは以下のようになった
5階:一刀、華琳、春蘭、秋蘭、桂花、雪蓮、蓮華、小蓮、桃香、月、タンポポ、焔耶、麗羽、猪々子、斗詩
4階:稟、風、季衣、流琉、鈴々、翠、詠、雛里、隠、思春、美羽、七乃
3階:霞、凪、沙和、真桜、愛紗、朱里、恋、音々音、亞莎、明命、華雄、貂蝉
2階:天和、地和、人和、星、白蓮、紫苑、璃々、桔梗、冥琳、祭、美以、ミケ、トラ、シャム
1階:卑弥呼、華佗(管理人室)


ようやく皆を部屋に送るた後、一刀は部屋の前で貂蝉から注意を受けた。
「いいご主人様、みんな初めて来る場所だから不安なの、だからもっとみんなと接して不安を取り除いてあげないとダメよ。」
一刀も経験したことがあるので、それなりに理解しているつもりであったががそれでも駄目だったようだ。
「それとご主人様の時と違って、みんながここで頼れるのはご主人様1人だけってこと忘れないでね。」
「俺1人でみんなの相手は無理だよ。」
向こうのどの国にいた時もみんなの行動には目をむいた。
その全員をいっぺんに相手にするのは、とてもできそうにない。
「別にみんなを均等に相手をしろとはないわ。問題は誰に、どれだけかまってあげるかなのよん。と・く・に、今は愛紗ちゃん。」
「愛紗?」
急に愛紗の名前が出てきたので一刀は首をかしげた。
「そう。こっちに来たらいきなり競争相手が2倍になったんだもの、不安にもなるわ。それに、他の子にばっかり構ってるからご主人様を奪われたみたいに感じてるのよ。」
愛紗の様子がおかしいと感じていた一刀だが、そんな理由だったとは思わなかった。
「そうだったのか。これから、気をつけるよ。」
「うふ、わかってくれた?でも、愛紗ちゃんばかりかまってると他の子達に睨まれちゃうわよ。」
一刀の言葉を聞くと、貂蝉はそう言って微笑んだ。
「じゃあ私も寝るわ。この美貌を維持するのも大変なのよね。お休みなさい、ご主人様。」
「あぁ、お休み。」
美貌がどうとかいうところは引っかかるがそこは流して一刀は貂蝉に答えた。
それを聞いて貂蝉は階段の方へ歩いて行くが、階段の手前で止まり
「ご主人様。私達もう今日みたいに助けてあげられないから。明日から頑張ってね。」
と言い残して階下へ行ってしまった。
「………マジですか。」
貂蝉の去り際の言葉に、残された一刀はこう言うことしかできなかった。

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