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723 名前:鬼畜王文台 ◆C6nfqQUYs. [sage] 投稿日:2009/09/20(日) 03:40:15 ID:M7s6lTmw0
皆の期待にこたえ、七章第一節が仕上がったので投下。
次からはもう、こんなハイペースでの投下はできんOTL
次回の投下予定はまだ決まっておりません。
724 名前:1[sage] 投稿日:2009/09/20(日) 03:41:48 ID:M7s6lTmw0
第七章


-1-


曹魏との戦いから、早一週間が過ぎた。
雪蓮は城に戻るなり、煌蓮さんの命令一喝で真っ先に医務室に担ぎ込まれ、
あらかじめ待機しておいた華佗という医者によって、すぐに止血と解毒の薬を飲まされた。
医者の話によれば、毒の正体は『曼陀羅華(マンダラケ)』。
天の世界では、朝鮮朝顔やキチガイナスビといわれている植物だ。
俺がいた向こうの世界では、某狂信宗教団体が引き起こした無差別薬物テロに対する
特効薬として活用されていた。
しかしこの薬は、一歩間違えればたちまち猛毒と化してしまうという、扱いどころの難しい薬だ。
今回それを曹魏に悪用されたのである。
この事実を知った煌蓮さんは、次の戦では同じ手で曹魏を苦しめようと将たちに提案。
結果、俺を含む満場一致でこの案は採用されることになった。
まさに「目には目を、歯には歯を」。やられたらやり返す、孫呉らしいハンムラビ法典そのものの教えだ。
それを煌蓮さんに説明すると、「言い得て妙だ」と快活に笑い、次の戦に向け、
朝鮮朝顔のほか、使えそうな毒草類の入手を急ぐよう配下の者たちに命じていった。
725 名前:2[sage] 投稿日:2009/09/20(日) 03:43:13 ID:M7s6lTmw0

穏「曼陀羅華、ですかぁ〜…」

一刀「うん、煌蓮さんに城の庭を見繕ってこいって言われてるしね。
   …で、来てみたはいいんだけれど…」

穏「うみゅぅ〜…私はお花に関しては専門外ですので〜…」

雪蓮「それってさ、探す以前に蓮華たちの報告を待ってからのほうが早いんじゃない?
   そうすれば、花の見分けもつくでしょ?」

穏「そうですねぇ〜、時間はかかりますけれどそれしか方法は無いかと〜…」

一刀「だよなぁ…雪蓮はそれがどういう花なのか知ってるのか?」

雪蓮「あたし? あたしは花なんかに興味ないから知〜らないっ♪
   ほら、花より酒って言うでしょ?」

一刀「そんなの言わないからっ! それを言うなら団子だろ?」

雪蓮「あら? 天の世界では酒の代わりに団子なのね、初めて知ったわ」

隣で穏が毎度の知識欲を発動させているがとりあえず無視。
ほかの連中は手勢を率いて朝顔探しに我先へと城を飛び出していった。
雪蓮を殺されそうになった恨みがよっぽど強いのだろう。
で、体がまだ本調子でない雪蓮と、ドン臭い俺と穏はどうしているかというと、、
留守番がてら、城内に生えている毒草探しに奔走していた。
蓮華・思春・亞莎・明命の四人が兵たちを率いて建業の街中を探索しているが、
まだそれらしい植物を持ってきてくれてはいない。
野草に詳しい兵も何人か探索舞台に組み込んであるはずなんだが…。
726 名前:3[sage] 投稿日:2009/09/20(日) 03:44:29 ID:M7s6lTmw0

雪蓮「あ〜ぁ、つまんないー。母様から一ヶ月外出禁止食らっちゃってるしぃ〜」

一刀「当たり前だろうがっ! 最近お前は少し、というかだいぶ無茶が過ぎるぞ、雪蓮」

雪蓮「あ〜ん、一刀のいけずっ」

一刀「拗ねても無駄ですっ」

雪蓮「ぶーぶーぶー」

まったく、この不良君主は…。
そんな木でできた車椅子の上でじたばた暴れないでくれ、脱輪するから。

雪蓮「ねぇ〜、かーずとぉ〜、お酒飲みたい〜、あ、あとつまみのメンマもね、益州産の♪」

一刀「……勘弁してくださいおながいします」

雪蓮「え〜、あそこのメンマ美味しいのにぃ〜。いったい誰が作ってるのかしら、あのメンマ?
   たしか、趙なんとかって書いてあった気がするけど」

一刀「そんなの知りませんっ!! いいからじっとしててくれ。華佗って医者に言われたろ?」

雪蓮「え〜やぁ〜だぁ〜、あーばーれーたーい〜〜〜、夜のお相手でもいいからぁ〜〜」

穏「……はぁ 孫策様ぁ〜、わがまま言って一刀さんを困らせてはだめですよぉ〜」

ベイベー!
ホント、わがまま女王様のお守りは地獄だぜぇ!
フゥ〜ハハハ〜ハァ〜!!
727 名前:4[sage] 投稿日:2009/09/20(日) 03:45:27 ID:M7s6lTmw0

???「くぅおぉるるあぁーー! こんんんの、ぶあっか、むすめ〜〜〜!!!」

ドゴスッッッ!!!

!?

雪蓮「いっっった〜〜い、んもぅ、一体何するのよ、こんの鬼畜ぅ」

煌蓮「何が痛いだい!甘ったれるのも大概にしな!!
   まったく、坊主に迷惑かけるんじゃないよってあれほど口酸っぱく言っておいたじゃないか。
   もう忘れたのかい!?」

一刀「ちょっ、煌蓮さん、俺は別に…(というか、実の娘の頭にゲンコツ食らわせやがったぞ、このお母さん)」

煌蓮「いいんだよ坊主。お前さんは呉に婿入りする大事な人間なんだろ?。
   それにちっとばかし拳(コブシ)入れてやらないと、このアンポンタンはすんぐ忘れちまうんだよ」

雪蓮「ひっどーい、ねぇ〜一刀ぉ〜、この鬼畜があたしをいぢめるのぉ〜、助けて〜」

一刀「……いい加減にしてください」

雪蓮「ぶーぶー」

煌蓮「坊主の言うとおりだよ、あんた、いい加減におしっっ!!!」

ドガッッ!!

今度は蹴りですかっ!?
728 名前:5[sage] 投稿日:2009/09/20(日) 03:46:14 ID:M7s6lTmw0

雪蓮「いった〜い んもう、母様なんてキライッ」

煌蓮「ったく、世話の焼ける子だねぇー。
   坊主、穏、この子は前からこんな感じだったのかい?」

穏「いえ、以前はもっとこう、全身に覇気があふれている感じでしたねぇ〜、
  一刀さんや冥琳様に甘えるときはあっても、ここまで顕著ではなかったかと〜」

一刀「そうだな…今までの雪蓮は煌蓮さんの後を継いで、孫呉の王として、
   王たるものの態度を、王としてどう在るべきかを、常に周囲に示し続ける必要があったろ。
   ところが、あの毒矢事件を機に、煌蓮さん、すなわち孫文台がどういう理由かはよく分からないけれど
   とにかく復活した。
   自分の母、つまり本当の意味での孫呉の王が再び世に現れた以上、
   もう王として気張る必要がなくなったから、今までの分の跳ね返りもあって
   思いっきり甘えてるんじゃないかな。多分そうだと思うよ」

煌蓮「ほう、見事な観察眼じゃないか。気に入ったよ、坊主。
   冥琳の言うとおり、軍師として必要な才覚を兼ね備えているようだね」

雪蓮「んもぅ〜、あたしを無視して話なんてずるい〜」

煌蓮「あんたはちっとおだまりっ!! 肝心な話が続けられないだろ?
   ……坊主、見な。これがあたし、孫文台の牙門旗だよ」
729 名前:6[sage] 投稿日:2009/09/20(日) 03:46:57 ID:M7s6lTmw0
そういって煌蓮さんが広げた孫旗は、今までに見たそれとはデザインがまるで異なっていた。
まず、旗の大きさは縦五尺、横七尺ほどだろうか。いつも使っているものより少しだけサイズが大きい。
その旗の地の色が、まるで固まった血を連想するような赤茶紫。
その深紅の地に、細くて大きい金色の輪。輪の太さは一寸ほどか。
金色の輪から大きくはみ出すように、白抜きの虎の影絵が描かれていた。
そして、その輪の中に納まるように、蓮華たちの目の色そっくりの群青色で、『孫』と書き込まれていた。
…これが江東の虎、孫文台の御旗か。
正直、見た瞬間、ぞくりとさせられた。まさにあの迅雷とかいう虎に睨まれている気分だ。
ふと、脇に目をやると、今まで散々甘えまくっていてだらしなかった雪蓮が、
まるでかつての覇気を取り戻したかのように、エモノを狩る猫科の猛獣の目をして口の端を吊り上げていた。
これこそ呉王、孫伯符だ。

雪蓮「この旗を見るのも久しぶりね〜、なんだか久々に血が滾ってきちゃったみたい」

穏「おおぉぉぉうううぅ〜、すごいですうぅ〜、獲物を狩る野獣の匂いがプンプンしますねぇ〜、
  まるでどこかの誰かさんみたいです」

雪蓮「ほーんと、まるで誰かさんそっくりね」
730 名前:7(終)[sage] 投稿日:2009/09/20(日) 03:48:05 ID:M7s6lTmw0

一刀「…なんでそこで俺を見るんですか、お二方」

穏「さて、どうしてでしょうねぇ〜」

雪蓮「どうしてだろうね〜」

お互い顔をくっつけて、忍び笑いするのはやめて欲しいぞ、二人とも。
なんとなく、居心地が悪いじゃないか。

と、そのとき、蓮華たち四人の帰還の銅鑼が鳴らされた。

煌蓮「お、帰ってきたようだね。迎えに行っておやり、坊主。この子たちの面倒はあたしが見といてやるから」

一刀「うん、行ってきます、煌蓮さん」

俺は四人を出迎えるべく、城門に向かって歩を進めていった。
何となく向こうのほうで、雪蓮の絶叫と穏の悲鳴と
お母さんの怒声と張り手の音が二・三発聞こえたような気もしたけれど、
本人たちのため、あえて聞かなかったことにしておこう。


七章第一節終わり


以上です。

…疲れたOTL
飯食って寝る。

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