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821 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2010/06/18(金) 07:03:19 ID:S2YDEVJUO
「にゃー(そう言えば風様)」
「なんですかバカ猫?」
「にゃー(ここの始まりと終わりの時の舞台設定みたいな物が決まりましたよ)」
「…ほほう、してどの様な?」
「にゃー(って、言いながらやってるじゃないですか。本人が舞台下から本人ソックリの人形を操ってる状態ですよ)」
「それはアレですね、ル○ン三世のOPの様にですね」
「・・・・・にゃー(そんな情報どこからもう、せめて繋がり有りでN○K三国志人形劇にしてくださいよ)」
「先の疑問はお兄さんが教えてくれるのです、N○Kなら紳々と竜々ですね」
「にゃー(あぁもう余計な知識ばっかり教えて!18桃香です)」
822 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:10:03 ID:S2YDEVJUO
「ここより前方五里のところに黄巾党らしき集団が!陣地を構築しその数、約一万!」
斥候がもたらす報告を入念に聞く朱里と雛里。
「ご主人様、作戦が決まりました。これより五里先と言えば衢地と呼ばれる様な重要拠点」
「くちー?何なのだ、それ?」
「…衢地とは各方面に伸びた道が収束場所を言うんです…その様な重要拠点に僅か一万しか兵数を配備しない敵は…既に愛紗さん達の敵では有りません」
「しかしながら陣地に籠もられると無駄に被害が増すでしょう」
「…そこで味方を二手に分け、一方が敵より少数で敵を誘き出し、一方は機を見て横撃を仕掛けます…それだけで雑兵な敵は大混乱し逃走・壊滅出来るでしょう」
「よし、ならそれで行こう」
作戦が決まると早速行動に移る、囮部隊は鋭気盛んな者達を中心に約八千で編成、陣頭指揮に愛紗・本陣に桃香と朱里、そして一刀等の面々。
愛紗が桃香や一刀が囮の本陣に居るのを反対したが二人共、頑として譲らなかった。
横撃部隊には鈴々と雛里が約一万二千を率いて、身を潜めて待機する事になった。
両軍目で確認出来る距離に来ると、黄巾党達は現れた敵が自分たちよりも数が少なく、身なりも整わない非正規軍だと知って舐めて掛かった。
823 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:11:57 ID:S2YDEVJUO
だがそれも無理もない、いまや国の正規軍だろうが大半は打ち破っている黄巾党なのだ。
今更、貧弱な私兵集団等恐れる理由など、どこを探しても見当たらなかったからだ。
陣地からほぼ全ての黄巾党が我先にと飛び出し、現れた劉備軍に襲い掛かる。
「完全に舐められてるね、ご主人様」
「ですがこちらに取っては好都合、あの調子ですとほぼ全ての賊が陣から出たかと。伝令さん、愛紗さんに通達、戦わずに予定の場所に移動して構わないと」
「了解です」
「後、念のため雛里ちゃんにも連絡、予定より早く到達するから準備よろしく、と」
「ハッ!」
「まあ、必要無いと思いますが」
「雛里のこと信用してるんだね」
「ち、違いますご主人様!雛里ちゃんは軍事方面は私より優れてるから、恐らくあらゆる出来事を想定をして全ての出来事に一番良い状態で対処出来る様に待機しているでしょうから…」
「そう信じてるのだから雛里を信用している証拠だろ」
「はわわ…」
顔を真っ赤にする朱里。
「ご主人様、朱里ちゃん。今は戦の最中中ですよ」
「はわ!すみません」
「あちゃー、桃香に怒られた」
「ご主人様酷ーい、プンッ」
怒った振りの桃香をなだめながら次の行動の準備に入る。
824 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:14:51 ID:S2YDEVJUO
「さてとお遊びもこの辺で、俺達も愛紗と一緒に引かなきゃいけないからな」
「そうですね、それでは皆さーん予定の場所まで退却してくださーい」
愛紗の部隊が殿で撤退を開始する、撤退ではどうしても前進のみの部隊には追い付かれてしまい途中から愛紗の部隊は戦いながらの撤退戦になる。
先に桃香達が、川が干上がって出来たと言う細い道に入り反転して迎撃体勢に入る、撤退して来た愛紗達を受け入れ合流し地形を利用しての防戦。
機を見た雛里が鈴々に横撃命令を出した時!
「本陣、右側より所属不明の部隊が出現!ただ旗は曹の文字!」
瞬間、一刀は全身の毛穴が開いた様な感覚に陥った、待っていた筈なのに恐れてもいたそんな感じ。
だが今はそんな時では無いはずだと自分に言い聞かせて冷静に振る舞う。
「如何いたしましょう!」
「う〜ん」
朱里が悩む、曹と聞けば恐らく曹孟徳の事だろうと。
朱里の聞いている曹操の噂は決して悪くない、むしろ良い話しか聞かない、だが普段と戦場で違いが無いだろうか?
身なりからして賊同士の殺し合いと見られてまとめて討伐されないだろうか?
この戦の最中・後に曹操軍から攻撃を受けた場合どう対策を取ろうか悩んでいると。
825 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:17:26 ID:S2YDEVJUO
「大丈夫」
朱里の思考を中断させる様に言葉をかける一刀。
「はい?」
「曹操なら大丈夫、賊と賊を倒す為に一生懸命戦っている集団の区別は出来る人だから。雛里達に伝令『目の前の黄巾党のみ集中して討伐する様に、曹操軍とは可能な限り協力して』と」
「ハッ!」
伝令を聞いた兵士が駆けて行く。
「じゃあ朱里、俺達も本格的に」
「……了解です、では皆さん反撃開始です!悪い人達をやっつけてくださーい」
『『『ウオオオオオォォォォ!!!!!』』』
・・・
・・

多勢な上に三方から攻められた黄巾党は忽ち壊滅する、命からがらに陣地に戻った連中も既に陣地を奪取した曹操軍の別働隊に全滅させられた。
とりあえず勝った、偶然とはいえ、この世界において初の華琳との共同による戦の勝利に一刀は少し興奮していた。
◇ ◇ ◇
勝利の余韻も束の間、先程の曹操軍が桃香たちの司令官に会いたがっていると兵士が伝えて来た。
会って損は無いと桃香の提案により承諾、愛紗が“手柄を横取りするのでは?”と懸念もしたが朱里が曹操の人柄を説明してそれを否定。
先程、一刀自身もああ言ったものの朱里の説明を聞き、自分の知っている華琳と人物像が当てはまるってひとまず安心した。
826 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:20:19 ID:S2YDEVJUO
曹操達に会うとの伝令を出した後もう少し曹操の評判について朱里が話し出す。
華琳に会えると思った一刀の胸中は複雑だった、華琳のやり方や考え方は知っているし実際に見てきた、しかし今は桃香たちと行動を共にし彼女たちのやり方を見て彼女たちの行く末を見守りたいのも事実で有った。
「…ご主人様、大丈夫ですか…顔色が優れない様ですが」
一刀の異変に気付いた雛里がそっと声をかける、心配する雛里に『大丈夫だよ』と耳打ちして答えるも雛里の表情は心配した顔のままだ。
そして朱里の説明は続く、
「そうですね。……もう一点だけ分かっているのは、自分にも他者にも、誇りを求めるということ……」
「誇り?誇りってどういう?」
「誇りとは、天へと示す己の存在意義…」
その声が聞こえた瞬間!今までの複雑な気持ちがまるで嘘のように全て消え去った、自然と曹操の台詞に浸透し侵略し掻き消す様に一刀が口ずさむ、夏侯惇が怒鳴ろうするのを曹操が制止させた。
「…誇り無き人物は例えそれが有能な者であれ、人としては下品の下品。そのような下郎はカ……君のような誇り高き覇道には必要無し…って所かな?」
「・・・・・・」
それから暫く沈黙だった曹操がようやく口を開くと。
827 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:22:31 ID:S2YDEVJUO
「何故、あなたはその考えに至ったの?」
「今のは受け売りでね、似た考えの人が居たからさ同じかな?って思ったのさ」
「そう、その人物は少しは出来そうね……ところであなたは誰なの?」
その言葉に一刀は一瞬胸を抉られるも質問に答えた。
「俺の名前は北郷一刀。宜しく」
「北郷一刀……聞いたことのある名前ね」
答えを分かっていてもどこか期待してしまう。
「そりゃそうですよー、ご主人様は最近噂の天の御遣い様なんだもん♪」
現実主義の曹操は噂を与太話と一蹴する、その話に一刀本人が賛同するが言い方が悪かったのか夏侯惇が怒り出しそれを曹操が落ち着かせた後。
「北郷……と言ったわね。あなたはこの乱世に乗り出したその目的は何?」
雰囲気や台詞からこの集団を率いてるのを一刀と判断した曹操が訊ねた。
その台詞に『華琳、君に会う為だよ』と言いたかったが言えなかった。
まだ言える段階でわないし、正直今の一刀の心の中に雪蓮や桃香達の存在が華琳に勝るとも劣らないまでに成長していたからだ。
「さて?俺は御輿だからね、主義主張ってやつはないよ。ただ桃香……劉備達の考えに賛同し、協力してるだけさ」
今の一刀にこの台詞には嘘偽りは無かった。
828 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:25:01 ID:S2YDEVJUO
こうして曹操、桃香・一刀が話し合った結果、今の黄巾の乱を一刻でも早く鎮める為に一時的に曹操と桃香達は共闘体制に入った。
「朱里、雛里」
「「はい、ご主人様?」」
「既に二人の頭の中に知識として知っているだろうけど、曹操達の軍の動かし方・運営の仕方を良く観察して欲しい。うちらと曹操のところじゃ軍の雰囲気がまるで違うから一概にそのまま使えるかどうか分からないけど、
軍の動かし方・運営方法は理想的な筈だから実際に見て更に知識として吸収してくれると後々助かると思う」
「分かりました、ご主人様」
「…了解です、ご主人様」
そうして曹操の軍隊と桃香達の私設部隊は半年間、共同作戦を実行する。
その半年間で一刀は曹操の行動を見て確信した、雪蓮の言葉を借りれば『俺の知ってる華琳だ、ただ俺を知らないだけ』である。
思う所は色々有ったが今はどう仕様もない、ただ再開を果たせたのを胸の中で感謝したのだった。
そして曹操が独自で行動した時、黄巾党の頭領達三人を撃ち取ったと公言し黄巾の乱は終了する。
一刀は曹操のトップ三人を撃ち取ったとの公言を嘘だと思ったが追求しなかった、今ここで曹操を敵に回しても何の得も無いし、それ以前に曹操を敵になんか回したくなかった。
829 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:27:36 ID:S2YDEVJUO
こうして黄巾の乱が収まると桃香は朝廷から褒美として、平原の相に任命された。
後に風の噂から曹操の助力が有ったとか無かったとか……
◆ ◆ ◆
「華琳様よろしいのですか?」
「何が?桂花」
「褒美の一つに『劉玄徳なる者を平原の相に任命されたし、きっと民の為になるでしょう』等と。あれで華琳様の得になる褒美が少しでも減りましたし…」
「ああ、あれはあれでいいの。あの劉備は、そして傍らに居た男、北郷一刀………あの者達は必ず私の好敵手になる」
「・!?ならば尚更に力を付けさせるなどと」
「桂花、あなたは私のなにを見て来たの?なんの力の無い、まるで虫けらようなの状態の好敵手を討ってなんの意味が有ろうか。最高の状態のあの者達を討って私の覇道は完成されるのよ」
・・・
・・

◆ ◆ ◆
一刀は前回の曹操と共に時を過ごしてた時、あまり役に立つ知識の無さ、叉は曖昧さに後悔していたのだろう。
無意識に勉学ではなく、世に言う雑学、特に複雑な技術力や設備があまり必要無い知識の収集を行っていたらしい。
雪蓮との多彩なやり取りの経験も存分に役にたった。
そして朱里と雛里が凄かった、一刀の提示する知識をその場その時に合う様にアレンジする。
830 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:30:29 ID:S2YDEVJUO
一刀の知識を食材と例えるなら朱里と雛里はその食材をそれぞれの人の好みに合わせて調理する、さしずめ知識の料理人と言ったところだろうか。
そんなわけで内政は実験も兼ねているのだが概ね順調、規模がまだ小さい為に効果も薄いが仮に失敗しても被害は最小なのでそこら辺は直ぐにフォロー出来るからか安心している。
そんな折り城を訪れる者がいた、星であった。
諸公を見て回った結果、自分が仕えるべき相手が桃香と一刀だと結論付て訪れたとのこと、こうして星も仲間に加わるのだった。
こうして四苦八苦しながらも順調に内政をこなしてる時、大きな事件が起きる。
漢の皇帝、霊帝の死である。
それから暫く経ったのち各諸公の思惑の絡んだ檄文が桃香達の所にも送られきた。
その事で話が有ると桃香が侍女に一刀を呼ばせる、呼ばれた一刀が大広間に入ると既に議論は白熱化していた。
苦しむ民を助けたいと主張する桃香や愛紗、檄文を少々疑っている朱里と雛里に星。
入って来た一刀に両方から特に桃香からどうするのか意見を求められた。
よく考えたのちに一刀は口にした言葉は、
「う〜ん……ぶっちゃけると、その檄文はほぼ間違い無く嘘なんだよ」
“やっぱり”な顔をする朱里達三人。
831 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:34:44 ID:S2YDEVJUO
「むしろ、これを読んだ諸公が連合を組んで洛陽に押し掛けて大混乱になると思う」
良かれと思った選択、行動の結果が逆に民を苦しめると、一刀のその台詞に落ち込む桃香。
「それは天の知識ですかな主」
「そう思ってもらって構わない」
本当は微妙に違うのだがどの道、彼女等には未知なる理解し難い事なのでそれで誤魔化した一刀。
「なら、私達は行かない方が良いの、ご主人様!」
悲しみの声で語る桃香に。
「そんな事は無い、放っておけば恐らく袁紹・袁術の軍が略奪や暴行をすると思う」
「まあ、あの軍は軍と言う割には統率が取れてませんからな、悪く言えば少々言うことを聞くごろつきの集団の様なもの」
これは実際に見て来ただろう星が口を挟んだ。
「だから多分間違ってる事を指摘する存在が居なきゃ駄目なんだと思う、そしてそれが桃香なんだと思う」
「ご主人様♪」
なんだか誉められた気分の桃香は薄っらとピンク色に染まる。
「そして愛紗や鈴々、星や朱里と雛里達もその桃香を支えてくれてる大事な存在だ」
「ご主人様は相変わらず女性をやる気にさせるのが上手い」
「そんなつもりは無いんだけどね」
「ならば尚更にタチが悪いですな」
先程までの暗い雰囲気が一掃された。
「さすれば主、主のご決断は!」
832 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:37:07 ID:S2YDEVJUO
この台詞に別の意図が有るのを否めない一刀だったが、
「ならば行こう!桃香の意志を尊重し少しでも犠牲者を減らす為に」
こちらも本心ある。
「「「ハイッ!!」」」
そうして連合に加わる決意をした桃香達だった。
◇ ◇ ◇
予定よりも大分遅れての到着に少々焦るもその心配を打ち消してくれたのは出迎えてくれた白蓮、だが事はそれ以上に深刻だった。
白蓮曰わく、出迎えたのも偶然で腹の探り合いで未だ総大将すらも決まらない、そんな状況に嫌気をさして抜け出してきたとの事。
お互いに無事な再開の感動もそこそこに白蓮と別れて軍議の場に向かった桃香と一刀。
なにやら、のらりくらりな軍議が行われていた、軍議の輪にそっと加わると桃香と一刀は始めは黙って見ていた。
その間に各諸公の代表の顔を見回し、ある人物を探している一刀。
“居た!”と孫策の姿を確認した瞬間、咄嗟に半歩前に出てしまう一刀、必死に自分を窘めて自制する。
つまらなさそうにしている孫策。その隣に居るのが一刀が孫策から聞いた通りならロングな黒髪、知的な眼鏡と顔立ち、恐らく周瑜だろう。
孫策の姿を確認し、ある意味一安心した直後別の不安が湧き上がる。
833 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:40:40 ID:S2YDEVJUO
孫策の性格を知っているが故にこの様なつまらない、ましてや腹の探り合いな軍議に顔を出すだろうか?と。
果たして彼女は自分の知っている・自分を知っている雪蓮なのだろうか?と。
孫策の方を一刀がジッと見ている、そして孫策の視線が動けば自然と目が合うのは当然の出来事、だが視線が合うもアッサリ無視をされる。
「………(まあ当然か)」
「ん?」
淡い期待は粉砕され落胆の色も全て隠せないが、自分が知っている威厳を持つ孫策の存在を確認し出会えたを曹操の時と同様、心の底から感謝する一刀だ。
「…ご主人様…」
桃香に脇腹を肘で突っつかれる一刀、確かに今は目の前の軍議に集中しなければと意識を目の前戻した。
「何時まで腹の探りあいをしているつもりですか………」
・・・
・・

◇ ◇ ◇
で、誰でも良かった桃香はやりたそうな素振りを見せる袁紹を総大将に推薦した、それがアッサリ採用されその総大将から最小勢力の桃香達に難攻不落の氾水関の先陣を押し付けられる。
結果的に恩を仇で返される羽目なった。
嘆いていてもなにも始まらないので、咄嗟に機転を働かして袁紹から兵士と食糧を確保したのだがまだまだ厳しいのが現状だった。
834 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:42:40 ID:S2YDEVJUO
自分達の陣に戻ると真っ先に先陣を押し付けられた事と経緯を朱里・雛里に出来るだけ詳しく話し、また袁紹から兵士と食糧を調達した事も伝えるトップ二人。
なかなかの難題に天才軍師二人掛かりでも頭を抱えながらどうにか答えを出しかけた時に伝令が来た。
「謁見をしたい?」
「ハッ!袁術殿の客将、孫策殿が劉備様にお会いしたいとのこと…」
「どうする桃香?」
「ん?いいんじゃないかな、出陣準備とかでバタバタしてるけど仲間だし仲良いことは良いことだよ♪」
「了解、じゃあこっちは出陣準備で忙しいから、来るぶんには構わないとその様に伝えて」
「ハッ!」
返事をして人ごみに消えて行く伝令。
それから程なくしてお供を一人連れた孫策が現れた、その人の得物が弓矢なことから過去の会話の記憶から黄蓋の名前が浮かび上がる一刀。
そして忙しいなりに桃香が丁重に出迎えた。
「孫策さんよくいらっしゃいました、それでどういったご用件でしょうか?生憎、先陣を任されてしまってご覧の通り陣内がバタバタしています、出来ましたら手短にお願いします」
お辞儀をしながら喋る桃香に無言で近づく孫策、その雰囲気がどうしても異様な為、咄嗟に桃香の前に立ちふさがり得物を構えた愛紗と鈴々。
835 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:46:07 ID:S2YDEVJUO
だが実際には桃香には目もくれずに本当の目的らしい一刀に一直線に向かう孫策。
“劉備に会いに来た”の言葉を鵜呑みにしてしまい、不意を食らうも急いで一刀との間に立ち塞がろうとする愛紗と鈴々、面には出さないが星ですら内心焦って間に割って入ろうとした瞬間。
「大丈夫。愛紗、鈴々。それに星も」
言葉と同時に両手の片方を愛紗と鈴々の方に、もう片方を星に向けて動きを制する。
そうしている間にも孫策が一刀の前に立ちはだかった。
自然と溢れ出る覇気が嫌になりそうなぐらい一刀に存在感をぶつける。
少し離れた愛紗や鈴々、星でさえ自然と身構えてジリジリと間合いを詰めてしまう程だ。
そうした一分が一時間にも感じてしまう重く長い一発即発の状態も孫策の放った一言で全てが払拭される。
「ねえ貴方、フランチェスカって言葉、聞き覚えない?」
「!?」
一瞬自分の耳を疑った一刀。
曹操はフランチェスカはおろか一刀の事すら知らなかった。
ならば普通だと孫策もこの単語を知っている筈がない、知っているとすれば北郷一刀から聞くしかないからだ。
だが一刀は今桃香達と共に行動し、そして今までこの世界では孫策に出会った事など無い。
そこから導き出された答は一つだった。
836 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:47:55 ID:S2YDEVJUO
「雪蓮!!」
思わず心の底から叫んでいた一刀、もしこれで推測が間違っていたとして頸を刎ねられたとしても、桃香達には悪いが正直構わないと思った。
「なっ!?貴様!!何故策殿の真名を叫ぶか!」
と、叫ぶは黄蓋。
「良いのよ、祭。一刀は良いの」
既に矢を弓につがえ、後は放つだけの状態の黄蓋を制するのは真名を呼ばれた本人、雪蓮。
「ぬう……」
主の言葉に渋々構えを解く黄蓋、一方桃香達の方も困惑の色を隠せない。
「ご主人様、これっていったい?」
「…まさか?主…」
と、言い掛けて止める星、一刀のその姿は久しい旧友か親しい間柄のそれを醸し出していた。
もし仮に一刀が孫策に通じていたとしても敵味方双方居る時、ましてや敵陣ど真ん中でばらす理由が星には見つからない。
第一に自分が認めた主はその様な事に関しては器用ではなかったことを思い出す、例え一瞬でも自分の主を疑った事を恥じて深く反省するのだった。
そして一刀はみんなの疑問も重々承知だがいかんせん今は時間があまり無いので。
「ごめんみんな話すと長くなるから詳しい事は後に、今は時間が余り無い。で、雪蓮用件は何?」
「そんなの一刀の状態の確認に決まっているじゃない♪」
837 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:50:33 ID:S2YDEVJUO
自分の知っている雪蓮に会えて浮かれている一刀だが、雪蓮も同様かそれ以上に浮かれていた。
「それだけじゃ無いだろ」
雪蓮の性格は把握していると自負している一刀は本当にただ状態の確認をするならコッソリと来るはずだと思った、それを騒動まで起こして来るには何かしらの理由が有ると踏んだのだ。
「……正解。どう一刀、共同作戦って案は」
「俺としては願ったり叶ったりだ、反対する理由が無い。だけど決定権は桃香に有るから」
「そう。明命、自陣に戻り出陣準備の旨、冥琳に伝えて」
「雪蓮!」
相変わらず人の話を聞かないと思っていると。
「ハッ!」
声だけの返事が聞こえた、すると確かに人一人の気配が消えたと愛紗・鈴々・星は感じ取った。
「で、こっちはなにをするの?」
「あら嫌だ、お見通しなの一刀」
「雪蓮程の天才を見透かすことは出来なくても、理解は出来てるつもりだよ」
「も〜、一刀ったら相変わらず口説くのが上手いんだから」
「えっ?これ口説き文句じゃないだろ」
一刀の冷静な正しい突っ込みも状況があまりにも理解出来ず、やきもきしている彼女等の耳には届かなかった。
「一刀ったら(怒)」
「相変わらず(怒)」
「口説くのが(怒)」
「上手いんだから〜(怒)」
「あわわあわわあわわ……」
838 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:53:50 ID:S2YDEVJUO
「お盛んですな主、いつの間にか城と領地を抜け出して他勢力の当主のお相手とは……皆にバレずに城を抜け出せるのも江東への往復を瞬時に済ませるのも天界の術の類いかな」
「な!」
「「「「ご主人様!!(怒)」」」」
その様子を腹を抱えて笑っている雪蓮。
流石は一刀“早速、自分の居場所を作ったのね”と、感心していた。
だが、その場所が自分の所じゃなかったのが少しばかり寂しかったりもしていた。
その傍ら、物凄く怒っている四人を落ち着かせるのに大変な一刀は、
「星〜、無意味に煽らないで、第一そんな術無いから!とにかく今は出陣が最優先でしょ。それと雪蓮、要求はなに?」
強引に話を引っ張って誤魔化す。
「孫呉の為に呉蜀同盟結成かな?可能なら今だけじゃなく恒久的な」
「策殿!それでは…」
「祭、私達の悲願は孫呉の民が笑顔を絶やさずに日常を過ごす事でしょ」
「うぬぬぅ…」
「一刀はそれを理解してくれるし、実行も出来る男なの」
自分の当主にそうまで言われては下がるしかない黄蓋であった。
“かなり買い被られるな〜、過度の期待は困るんだけど……”などと内心で困りながら当主に声を掛ける。
「だ、そうでよ。桃香?どうする」
「えっ!」
839 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/06/18(金) 07:55:49 ID:S2YDEVJUO
急に話を振られ一瞬は慌てるも、その後直ぐに深呼吸して落ち着きを取り戻し、桃香なりに冷静に考えた後に口を開いた。
「まずはどういう経緯か知りませんが孫策さんはご主人様を信頼している、ご主人様も孫策さんを信用している。ならば断る理由は無いと思いますよ、少なくとも私には」
「そう、信用してくれてありがとう劉備」
「急にこんな展開に成ったのに俺の事を信用し続けてくれてありがとう桃香」
一刀と雪蓮それぞれが桃香のそれぞれの手を握った、それを桃香が自分の手を重なる様にすると三人の手が重なる。
そして三人の瞳も重なると自然に笑いが込み上げてきた、特に桃香と雪蓮は初めて会うにも拘わらずまるで信頼出来る幼なじみに接するかの様に、又はそれこそなにかの永遠のライバルかの様に………
そして今ここに、一刀が理由の掛け橋とも引き金ともなりうる蜀呉同盟が成立したのだった。
840 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2010/06/18(金) 07:57:16 ID:S2YDEVJUO
「・・・・・」
「にゃー(どうしました、風様?いつもみたいに暴露じゃないんですか)」
「今のお前は恥ずかしいのでは無く、惨めですね」
「に″ゃ!(グッ!)」
「なので辱めを受ける為に立ち直りなさい」
「にゃー(それもどうかと思いますが、皆様お疲れ様でした)」

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