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30 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:20:55 ID:kv6CzclMO
「にゃー(あの頃はお互いまともでしたね〜)」
「何を言うのです、風は以前からもこれからも普通ですよ。むしろ図々しくなったのがバカ猫お前なのです」
「にゃー(まあ確かに仰る通りですね23桃香です)」
31 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:24:32 ID:kv6CzclMO
「さて、どうしようか?」
次の行動が議題として上がった。
「あ!私、忘れてたよ」
「何、桃香?」
「白蓮ちゃんが確かこの近く幽州啄郡に太守として就任していた筈だよ」
「桃香様、その様な重要な情報はもっと早くですね…」
「えへへ〜♪」
笑って誤魔化す桃香に、呆れつつも許してしまう愛紗。
「なら決まりだな、公孫賛の所に行ってまずは名を上げる為に活躍をする」
「凄〜いご主人様!白蓮ちゃんの名前、まだ言ってないのに分かってたやっぱなんでも知っているんでしょ」
就任先の有名武将と真名を微かな記憶から呼び覚まして公孫賛の存在を引き当てた一刀。
「たまたまだよ、たまたま。しかしこのまま手ぶらで行くのもな〜」
「このまま手ぶらだとなにか不都合が?」
「いくら桃香が知り合いでも手勢を一人も引き連れないで現れたら『ひょっとして厄介者?』と思われる可能性が有る」
「白蓮ちゃんはそんな人じゃないよご主人様、時々大ポカはやらかすけど」
“桃香、君がそれを言っちゃいけない”と心の中で突っ込む一刀。
「桃香が言うなら間違いだろうけど、悪い印象の可能性を少しでも減らせるならそれに越したことはないからね」
32 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:27:23 ID:kv6CzclMO
「なら仲間を沢山作るのだ!……でもどうやって作るのだ?」
「さてどうしょう、鈴々ならどうする?」
逆に質問されて『う〜ん、う〜ん』唸って考え込む鈴々、しばらくすると閃いたのか顔がニパッと輝いた笑顔になる。
「大人の人と腕相撲して負けた人を仲間にしちゃうのだ、鈴々たちの強さを知ったらきっと仲間に成るはずなのだ」
「おぉ!鈴々しては珍しく良い考えだ」
「珍しくは余計なのだ!愛紗」
「う〜ん」
「ご主人様?」
難しい顔をしている一刀に気付いた桃香が訪ねた。
「多分その方法だと駄目だと思う」
「え〜なんでなのだ!お兄ちゃん」
せっかく閃いたアイデアを否定され不機嫌な鈴々。
「自分が男だから分かるんだけど、男って馬鹿だから妙な処でプラ…自尊心が有ってさ、女性に仕えるのって相手を信頼か尊敬してないと難しいと思う。ましてや負かされた女性の下に就くなんて無理かな〜」
「そうなんだ〜」
「あぁ」
「うが〜!めんどくさいのだ〜」
「あの〜ご主人様?」
何故か恐る恐る訊ねる桃香。
「何、桃香?」
「ご主人様は私たちと一緒って本当は嫌だったりとかしてない?」
桃香の問いに一瞬動きが止まる愛紗と鈴々。
「言ったろ、相手を信頼か尊敬していれば問題無いと、俺はとっくに三人に信頼と尊敬してるよ」
33 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:30:20 ID:kv6CzclMO
一刀の言葉に安堵の表情を浮かべる三人、不思議な事だが合って間もない筈の一刀に天の御遣いの肩書きなんか関係なしに『この人がいれば大丈夫』との安心感を抱いていた。
一方、一刀の中では前回、華琳のやり方に最後まで物申す姿勢を崩さなかった桃香、その桃香に最後まで付き添った蜀のメンバーには既に賞賛していたし興味も有った。
「だから、今回はちょっと公孫賛を騙す形に成っちゃうけど、お金で人を雇って私兵団に見せかけて『そこそこに使えるよ私達』と思わせる。後はちゃんと愛紗や鈴々が活躍するから最終的には騙す訳じゃないから大丈夫」
「そんなもんでしょうか?」
「そんなもんだよ実際(さて、問題はその資金をどうやって稼ぐかの方が深刻かな)」
手持ちのお金は二枚有った万札の一枚を売ったお金だ、街の規模にしてはかなりのいい額で売れたのは、たまたまこの街に寄った行商人が透かしに大変興味を持ちそれなりの金額を付けてくれたからだ。
このお金はあくまで路銀だ、鈴々の食事代を計算に入れると少々心許ない。
すると突然、
「あぁ居ました、関羽殿」
「あぁ、商人殿」
「愛紗そちらは?」
「ご主人様、こちらがあのお札を買われた商人殿です」
「この方が」
「はい」
「で、いったい何用で」
内心ひょっとしたら上手く行くかもと考え出す一刀。
34 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:33:00 ID:kv6CzclMO
「はい、この紙見れば見るほど不思議な物で、特に中央の透ける人物。これは天の物だとお聞きしました、何か他に珍しい物はございますか?」
やっぱりそう来たかと思った一刀、しばらく考てから。
「これなんかどうでしょう?」
取り出したるは生徒手帳とボールペン、生徒手帳から綺麗に一枚紙を破り。
「この紙」
「え?これが紙?極上の絹のような滑らかさ、本当にこれが紙なのですか」
「はい、そしてこちらがボールペンと言いまして」
「“ぼおるぺん”?」
「はい、これは筆記道具です」
「これまた珍妙な…筆のように毛も無く、硯も無いそして酷く細い」
流石にこれは騙されているのでは?と思っている商人。
「では実際にご覧にいれましょう」
と、破いた紙に“北郷一刀”と書くと。
「おお!誠に書けている。これは凄い是非売ってください」
「それは構いませんが」
「これだけ有れば足りますか?」
「「え!?」」
出された金子を見て愛紗と一刀がびっくりしている。
「…そんなに凄いの?…」
愛紗に訪ねる桃香。
「…あれだけ有れば何もしなくても鈴々だけなら一月は食べていけます…」
「(曖昧な表現だが凄さは伝わるな〜)流石にそんなに頂けませんよ、その半分で結構です」
35 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:35:14 ID:kv6CzclMO
「よろしいのですか?私は一向に構いませんが…ではそれで」
こうして商談が成立する、そして後ろに控えている使用人の荷物の一つに高級そうな瓶。
「主、あの瓶の中身は?」
「あれですか?あれはお酒です、やや高級な」
「・・・それ、売ってくれませんか?」
「ご主人様?昼間から酒ですか…あまり感心出来ませんが」
「大丈夫、飲むの俺じゃないから」
「???」
一刀の返答に不思議な顔をする愛紗、交渉はまだ続いている。
「あのお酒ですか?・・・・分かりました、あのお酒は差し上げましょう」
「いや、それは悪いよ」
「いえいえこの“ぼおるぺん”の代金のおまけだと思ってください。どの道この周辺では高すぎて売れませんし、売れそうな都市部に就く頃には味が落ちてしまいやはり高く売れないでしょう。
 ならば今、美味い時に飲まれればこの酒も本望でしょう」
「本当にいいの?」
「はい、構いませんよ」
「ありがとう、じゃ言葉に甘えさせて貰うよ」
使用人から瓶を受け取り商人にボールペンを渡す、大満足の商人を見送ってから一刀が三人に話し掛けた。
「ところでさ、三人って契り交わした?」
37 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:39:01 ID:kv6CzclMO
「え?え?契りって愛紗ちゃんと?違うよね・・・!?ご主人様と!キャー!流石にまだ早いですよ…私は構わないけど…」
「桃香様、何を仰ってるんですか!ご主人様も何を破廉恥な事を!」
「はにゃ?ちぎりってなんなのだ?」
三人ともそれぞれの反応で返して来る、それをあくまでも冷静に返す。
「契りって桃香達三人が姉妹の契りを交わしたか?と聞いたんだけどな〜」
「え?私達三人の姉妹の契り?」
「そっ。桃香達三人は世を平和にするって誓い合った中だろ、血は繋がって無いけど絆は既に血より強いモノで繋がっている。だから、ここで姉妹の契りを結んでみないって提案」
「私達」
「三人の」
「姉妹の契り?」
そして悩んでる様だが三人の瞳の輝きが既に結論が出ている事を示していた。
案の定、
「いいね、いいね。やろうよ愛紗ちゃん、鈴々ちゃん」
「はい、私もそう思ってました桃香様」
「鈴々、桃香お姉ちゃんと愛紗と姉妹になるのだ」
「なら決定だね。向こうに素晴らしい桃園が有ったんだよ、行こう!どうせするなら殺風景な場所より綺麗な場所が良い!」
一刀が桃香の手を引っ張り、桃香が愛紗の手を引く。鈴々は少し一人でついて行ったが直ぐに一刀の空いてる手に飛びついた。
38 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:41:12 ID:kv6CzclMO
「桃香様!?そんなに引っ張られては…」
「引っ張ってるのはご主人様だよ〜」
「にははははゃ〜」
と、楽しいやり取りをしながら桃園には直ぐに辿り着いた、そこには辺り一面咲き乱れる桃の花。
質素ながらもいっさい人の手が加えられてない純粋に美しい桃園、思わず誘った一刀が見とれていた。
だが気持ちが高ぶっている一刀は直ぐに我に返る、少々シチュエーションが違うとはいえ、あの有名な『桃園の誓い』を自分が提案し、今まさに目の前で実現しようとしているからだ。
袋からコップらしき物を五つの内三つを取り出してそれぞれ三人に渡す、そして一刀が三人にお酒を注いでから近くの石に腰を掛けて桃園の誓いが開始されるのを待つ。
だがなかなか始まらない、桃香達三人は一刀を眺めている。
「どうしたのみんな?」
「あれ、ご主人様は?」
一刀に取っては意外な質問が飛んできた。
「へっ?桃園の誓いったら、劉備・関羽・張飛で決まってるだけど…」
「『桃園の誓い』その名は素晴らしいいただいて起きましょう、しかしその桃園の誓いとやらが私と桃香様、鈴々だけでしかやってはいけない等と誰が決めたのですか?」
「決めたというより、決まっていると言うか…」
39 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:42:58 ID:kv6CzclMO
なにやら自信が無くなってくる一刀。
「ほ〜らご主人様、私達が良いって言ってるんだよ。早く早く!」
「お兄ちゃんが交ざらないなら、鈴々乾杯しないのだ」
「あっ!それは困る、困んないけど心情的に大変困る」
「それはどっちなのですか?ご主人様」
「「「「アハハハハハッ」」」」
一刀の変な回答に四人が一斉に笑う、一頻り笑うと桃香が袋からコップもどきを一刀に手渡しそのまま酌をする。
「本当にいいの?」
歴史の傍観者でいるつもりが当事者に成ってしまった一刀、興奮か逆に畏怖を感じたのか酒を持つ手が震え出す。
その手をお酒を置いた桃香が優しく握ると、
「大丈夫だよご主人様、だって乾杯するだけだよ」
と言ってにっこり笑う。
「(その乾杯が凄く世に有名なんだけどな…)」
しかし桃香を見ていると本当に友達同士の気軽な乾杯に思えてくるから不思議な気分になる一刀。
いや本当に今は気軽な乾杯なのかもしれない、重要なのは今後の行い次第と言うことだろうか?と更に考えさせられる。
ならば関わる以上は可能な限り頑張ってみようと内心で誓った。
「じゃあ、乾杯しようか」
「うん、ご主人様」
桃香の素直な微笑みに少々照れが入る。
40 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:45:42 ID:kv6CzclMO
「我ら四人!」
「姓は違えども、兄妹(きょうだい)の契りを結びしからは!」
聞こえた台詞が若干予想と違う為に桃香の方を向いた一刀、当の桃香は舌を少し出して笑っていて愛紗と鈴々も納得しているのか同じく笑っていた。
「心を同じくして助け合い、みんなで力無き人々を救うのだ!」
「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも!」
「願わくば同年、同月、同日に死せんことを!」
「乾杯!」
チンッ☆
一刀の知っている『桃園の誓い』がこの世界風にアレンジされて、今ここで提案者の一刀を巻き込んで行われたのだった。
・・・
・・

◇ ◇ ◇
こうして得たお金ではったりの手勢を雇い入れ幽州啄郡の公孫賛の元に向かった。
しかし公孫賛にはあっさりと手勢は偽物と見破られる、そしてその場で人を見る目を養い赤心を見せる相手を間違えるなと忠告される。
もし、間違えるようなら官匪の圧政が働き、盗賊たちが急増し横行する中、忽ち利用され食い物にされ“志半ばで倒れる事になるぞ、死ぬぞ”と。
その台詞に一刀は今、群雄割拠のあの三国志世界に舞い戻って来た事を改めて実感した。
一刀は公孫賛に感心し感謝しそして謝った、変に知恵が入っているばかりに桃香と公孫賛の親友としての大事なモノを蔑ろにしてしまった事に対して。
41 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:47:44 ID:kv6CzclMO
すると顔を真っ赤して照れる公孫賛に一刀が、
「公孫賛って凄くいい人なんだな」
「やめてくれ、照れるだろ。それと桃香が真名を許してるなら桃香の親友として真名を許さない訳にはいかないな、改めて私の真名は白蓮だ、これからは白蓮と呼んでくれ」
「やっぱ、いい人だな。ありがとう白蓮」
「だから止めろって!」
こうして、一刀は白蓮に真名を許されたのだった。
けれど白蓮が愛紗と鈴々の実力に疑問を抱いてる時に趙雲の助け舟が入る、趙雲の実力を理解している白蓮はその趙雲が認める愛紗・鈴々の実力も認めてくれた。
途中、趙雲の字を聞く前に喋ってしまうアクシデントにまみえて桃香がご主人様が白蓮の名前を聞く前にも言い当てた事まで喋ってしまい程良く混乱が生じた一幕も有った。
幸いな事に盗賊退治の為、兵士の数は揃えたものの指揮が出来る将の数が不足してたので早速一軍の指揮を任される事になった桃香達。
一騎当千の将の頭数が増えた白蓮の部隊は連戦連勝し、領地内の盗賊たちが瞬く間に激減して行く。
そんな中、やはり目指す志は一緒らしく趙雲に気に入られた一刀は真名を授かり、桃香達は預け合った。
42 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:49:50 ID:kv6CzclMO
しかしだんだんと安定していく白蓮の領地とはうらはらに大陸全体としては黄色い布を身に着けた暴徒が大量に発生、いわゆる黄巾党であり騒ぎは黄巾の乱で有る。
比較的安全な白蓮の領地に命懸けで安心を求めてかなりの避難民が流れて来た、ここで予想外の弊害が生じる。
難民の受け入れに対しては一刀の提案を聞き入れていたので比較的問題無く行われた、むしろ総合的に労働力が確保出来たメリットの方が大きかった。
何が問題かと言うと、事情等を全く知らない流れて来た難民が目立つ武勲を立てる愛紗や鈴々に星が……
『私にはこうゆう事しか出来ないから』と積極的に、普通上に立つ人が嫌がるような仕事をし、民との接触する機会を喜ぶ桃香が……
何故?地味で目立たない白蓮の下で仕えてるかとの疑問の声が挙がってきた。
確かに目立ちはしないし地味だが難なくあらゆる政をこなす白蓮、それでも目立たないばかりに不遇の評価を受ける。
その雰囲気が元から居る民にも感染し本来必要無い不安が生じ出す。
そんな中、一向に数が減る様子を見せない所かむしろ拡大の一途を辿り災厄だけを撒き散らす黄巾党の討伐命令が正式に朝廷より下ったとの報が一刀の耳にも入る。
43 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:51:59 ID:kv6CzclMO
◇ ◇ ◇
「悪い遅くなって」
「いや、大丈夫だ………」
話の内容は案の定、黄巾党討伐の話。
それにこれを好機として独立に繋げる為に独り立ちしてどうかと勧められた、あらゆる要素が混じり合ってのこの結果だ一刀はその提案を受け入れた。
独立への足がかりとして、星の助け舟も有り白蓮の領内での徴兵が許される、一週間で集まった人数はおよそ一万五千、大半が身寄りが無い流民で愛紗と鈴々の活躍をその目に焼き付けていた者達だった。
白蓮が泣いていたが『集まった義勇兵はほとんどが流民ですぞ、元から居なかったと考えれば何でも有りますまい』と慰めていた。
しかし集まれば集まったで弊害が出る、白蓮の餞別も正直焼き石に水だ。
心配して鈴々が『ちょっと何か探して来るのだ〜』と勝手に出て行ってしまうぐらい何もかも足りない、馬・武器・軍資金・食料等々。
「鈴々ちょっと遅くない?」
流石に帰りが遅いと感じ始めたころ、
「お兄ちゃ〜ん、桃香お姉ちゃ〜ん。いっぱい連れて来たのだ〜」
と大量の馬を連なって帰って来た鈴々。
「鈴々、どうしたのだこの大量の馬は…まさかお前どっかからちょろまかしたのではなかろうな?」
44 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:54:30 ID:kv6CzclMO
ある意味一番考えられる可能性を愛紗が述べた。
「返して来い、私も一緒に謝ってやるから返しに行くぞ」
今度は結論付けてしまったのか行動に移そうすると。
「違うのだ!親切なおっちゃんがくれたのだ」
「嘘をつくな鈴々、これだけの馬を。ポンッとくれる輩がいるか!」
確かに愛紗の意見が妥当であったが今回はハズレだった。
「ほら〜鈴々の言った通りに成ったのだ商人のおっちゃん!」
馬群の中からひょこり現れたのは以前、現代日本の紙幣とボールペンを買って行った商人だ。
「ああ、久しぶりです。お元気でしたか?」
「ええ何とか、私は身体は丈夫な方で」
「で、商人殿これは一体どういう事ですかな」
すぐさまに間に割って入って質問をする愛紗。
「張飛殿が仰る通りですが」
「そんな事をされるいわれが無い」
「その愛紗の意見は自分も一緒だね」
「そうですね、独立して賊退治の為に徴兵を行っていると風の便りに聞きました」
「うぬ、それは間違ってない粗方徴兵も済み、次の段階に移ろうと使用としてた所だ」
「それでしたらこれは独立へのお祝いの品との事で、馬は約千弱はおります。簡易な騎馬隊は編成出来ましょう」
45 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:56:30 ID:kv6CzclMO
「なあ、商人殿。目的は何なのかな?」
「と、言いますと?」
「これだけの馬を差し上げますと言われて、素直に喜んで貰う程、お人好しでも脳天気でもないつもりなんで、やっぱ普通疑っちゃうって」
「これは大変失礼いたしました、配慮が足りませんで。確かにお疑いになるでしょう、そうですね目的と言うよりお願いでしょうか」
「願い?」
この時は桃香が口を開いた。
「はい、前回の行商で一当てして店を構えてる街に戻りました。すると最近勢力を伸ばしている黄巾党に街を襲われ店は疎か街を焼かれ、店に残った苦楽を共にした者達はほぼ全員殺されてました。
 その事実にやや途方に暮れてるそんな時、聞き覚えの有る北郷殿・劉備殿が盗賊退治、おそらく黄巾党退治の為の旗揚げの噂を聞き、これもきっと何かの縁と居ても立っても居られずやって来ました。
 敵討ちを頼んでしまう事になるのでしょうか、本来なら武器を持って戦うべきでしょうが私は商人です、差して戦力に成らないでしょう。ならば商人の武器は商品とお金、卑怯者でしょうが後方支援に徹しようと考えに至りました」
46 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 11:59:32 ID:kv6CzclMO
ここで一刀が少々考え込む、
「(確か演義の方で桃園の誓い直後で近い話が有ったような…でも桃園の時から大分時間が経ってるけど…秋蘭の定軍山の時と一緒か?)」
「北郷殿」
「あっ!ごめん何か喋った?」
「いえまだです、それでですね確かに商人たる私が商談をしないのは手落ちでした。そこで馬の代金ですが近い将来、北郷殿・劉備殿が領地を持った暁にはそこで商売が出来る権利を頂きたいのですが。
 勿論、独占などしませんからそこらへんはご安心を」
「それはちょっと待ってよ、俺達が領地を持てる保証なんか無いんだからそれは成立しないんじゃないかな?」
「いえいえ、これでも人相を見る目は多少自信が有ります。こうして商売を大きくして来たのですから…」
「……分かった」
「ご主人様?」
「多分大丈夫、それに今は装備に関しては少しでも充実させておきたい。商人殿以前のボールペンと真っ白い紙、有る?」
「ええ、有りますとも」
懐から大事そうにに取り出しすと一刀に手渡す、一刀も懐から生徒手帳を取り出すとボールペンの芯を出す。
「桃香、ここにボールペンで自分の名前の練習書き」
「ほえ?」
と間抜けな返事を返すも直ぐに理解して実行に入る。
47 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 12:02:03 ID:kv6CzclMO
“劉玄徳”と桃香の名前が一刀の生徒手帳に書かれる、初めてのボールペン使用しては上出来だろう。
そして受け取ったもう一つの一刀の名前が書かれている紙を見せながら、
「なら桃香、この紙の俺の名前が無い方に『劉玄徳・北郷一刀が収める領地にて真っ当な商いに限り無条件にて商いする権利をここに証明する、劉玄徳』って書いて」
「それでいいのご主人様?」
「彼が提示する条件だし馬の代金としちゃ破格だと思うよ。それに彼なら大丈夫かな?」
人相は分からないが人を見る目には多少自信が有る一刀がそう喋ると。
「ご主人様がそう判断するなら構わないですよ」
「ありがとう桃香」
「えへへ〜」
テレる桃香、すると。
「ずるいのだ桃香お姉ちゃん!おっちゃんを連れて来たのは鈴々なのだ!」
「そうだったな、ありがとう鈴々」
「えっへん、なのだ!」
「と、何時も状況を見守ってくれてる愛紗もありがとう」
「ご、ご主人様!そんな勿体無い」
不意を突かれ慌てる愛紗に。
「ありがとう愛紗」
「………はい」
聞こえそうな声でだがしっかりと答える愛紗だった。
桃香が書いた証明書の裏に現代日本語で再度同じ内容で書いた一刀。
48 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 12:04:30 ID:kv6CzclMO
「はい、これが証明書、桃香の署名が入ってる。で、裏が天の言葉での証明、これが俺の名前ね。あてにしないで待ってて」
「確かに受け取りました、では次に…」
「まだ何か有るの?」
「はい、馬だけはろくな戦など出来ません。こちらに金子も用意しました………そうですね、差し上げると仰っても先程と同じ、それではお貸しいたします。勿論無利子、無期限で…」
「ちょっと待った!それこそそこまでして貰う言われが無い!どうして?持ち逃げされたらどうするの?」
「それは私に人を見る目が無かったとの授業料だと思えば」
普通は思えないだろ、と心で呟く一刀。
「人相の事も有りますが不思議とあなた方自身にも惹かれるモノが有りまして、この直感を信じてみたく成りました…今後も必要な入り用がございましたら…そうですね、北郷殿から買った天から持ち込んだと言っている。
 あの、透ける不思議な紙に誓って可能な限りご用意しましょう」
「なんであの紙なの?」
「透けて見える不思議さも有りますが、こちらは商人として惹かれるものが有りますね」
「あれね、こっちじゃ無意味だけど実は天の国のお金なんだよね」
それを聞いた瞬間、
「ワッハハハハハハハ!!!」
49 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 12:06:45 ID:kv6CzclMO
何時でも控え目だった商人が盛大に笑い出した。
「どうしたの?急に」
咄嗟の出来事に固まってる一刀達に商人が。
「あれは、あの紙は天の国のお金だったのですか?ならばこれはもう運命だったのも同然…」
彼の言葉と彼の持ち合わせる信念を一刀達一同はまだ理解が出来ていない。
「商人に取って、時には命より大事なお金に誓いを立てる…それが天の御遣いとも言われてる方の、天の国のお金に誓いを立てた。少なくとも私には天命と受け取りました。
 北郷様、劉備様の今後の活動の為にこの身を捧げましょう」
一刀の事を真っ直ぐ見据える商人、同じく視線を合わせ微動だもせず商人を見据える一刀。
そんな時、誰かが言った言葉が過ぎ去った『相手の目を見ろ、嘘や疚しい気持ちが有れば必ず相手は視線をそらす』
誰だったか?田舎のじいちゃんだったような?まあ今はそんな事は関係無い“今、大事なのは言葉の意味だから”と自分に語る。
時間にしておおよそ約二分、その間一切視線を反らさなかった二人。
先に口を開いたのは一刀。
「分かった商人殿、あの条件通り無利子・無期限で借りさせて貰いましょう。こちらも証明書が必要?」
50 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 12:09:45 ID:kv6CzclMO
「いいえ、こちらは既に誓いを立てましたから必要有りません。それではあちらのお金、どうぞご自由に用立ててください、それと今後も必要ならばお知らせください可能な限り用意いたします」
そこに用意されてたお金は、以前ボールペンを売った時とはくらべもんにならないくらい額だ。しかし一旦受け取ると言った以上は言葉に責任を果たさないといけない。
「愛紗、お金の管理お願い」
「わ、私ですか!ですがいきなりあのような大金を」
「ごめん愛紗、でもこの中で一番信用出来るの愛紗しかいないんだ」
「ご主人様……仕方ありませんね」
“愛紗しかいない”の台詞に陶酔した表情で了承する愛紗。
「まずは武器を、全員に武器を配備して。最悪は竹槍も致し方ないと思っていたけど彼のおかげでなんとかなりそうだ」
「分かりました、早速手配しましょう」
「それでは交渉は私が致しましょう、その後は直ぐに次の商売に赴きます」
「そんな大したもてなしは出来ないけど、自分たちで稼いだお金で奢らせてよ」
「その気持ちだけで充分です、ですが時は金なり。丁度良い商談話が近くに有りまして…その内お互いにゆっくり時間が出来たその時に……おっとその時にはお二方とも雲の上の存在で、とても近付けませぬか」
51 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 12:12:42 ID:kv6CzclMO
「どうなろうが俺達二人は…いや、みんな全員が大地に足を踏みしめてるよ、身分なんて関係無い受けた恩に謝儀をしめすのはこの大陸の風習だろ」
「・・・やはり私の目に狂いは無かったですな、それではいずれ近い内にまた」
「ああ、近い内にまた」
一刀はしっかりと商人の姿が見えなく成るまで見送ったのだった。
まずは一段落したかな?と、えらく今日は疲れる、と感じながら竹筒の水で喉を潤していると、
「あの〜すみません少々宜しいでしょうか?」
訪ねられる声がした、疲れていた一刀は水を飲む為に上げていたを顔を下げずに視線だけを声の方向に向けた、しかし次の瞬間!
「ブッ!!☆・孔明、鳳統・!ゴホッ!ゲホッ!!」
「「・!!☆・!キャア〜!」」
「どうしました!ご主人様!」
むせて、盛大に吹いて、咳き込んだ一刀に驚いて悲鳴を上げた二人の少女、その悲鳴に反応して飛んで来る桃香達。
「いや、ゴホッ★悪いのは俺…ゴホッ!だから」
「そんな、いきなり声をかけた私達も悪かったんです」
「いや何が有ろうと女の子に口に含んだモノを吹きかけた俺が悪い」
「はわわ、大丈夫ですよ横を向いていましたし、ほとんどかかってませんから」
52 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 12:15:52 ID:kv6CzclMO
「それにしても相変わらず女の子にはお優しいのですね……こちらは目が回る程の忙しさだと言うのに…」
後半は本音が漏れてた愛紗。
「それで失礼ですが貴方が天の御遣い様でしょうか?」
一刀に向いて質問をするリュックの女の子、答えを聞く前に続けて質問をぶつけるカバンの女の子。
「…それと何故、アナタは初めて会った…私達の名前を知っているのですか?」
その問に『いや、つい口が滑った』なんて言えずにいると。
「何々、ご主人様。また誰かの名前なり真名なり当てたの?」
「はい、私達二人の名前を」
「そうなんだ〜。で、二人が思っている通りこの方が天の御遣い様で私達のご主人様、そして二人の名前を知っていたのは天の知識でなんでも知ってるからだよ」
はしゃぐ桃香がハイテンションの勢いだけで喋る。
「こら、桃香それは違うって以前から言ってるだろ」
「「・・・・・」」
何故か黙り込んだ二人の少女。
「どうしたの?」
心配で声をかける一刀にリュックの少女が。
「いえ、天の知識で全てをお見通しならば私達の様な些細な知識等、何の役にも立たないだろうと思い……帰ろうかと」
思い掛けない出会いを果たし、桃香の滅茶苦茶な返しに思い掛けない返答が返ってきて大いに慌てた一刀が居た。
53 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 12:17:27 ID:kv6CzclMO
「待って!いえ待って下さい、お願いします」
「何ででしょう?」
「うっ、何故?とな」
と、この問に答を見つけ出せない一刀、意外にも答えたのは引っ掻き回した当の本人桃香だった。
「えへへ〜、さっきのご主人様がなんでも知っているってのは嘘なの二人ともごめんね。でも、ご主人様に名前を知られている人は今のところ仲良しになる運命になっているの。
 今のところまだ例外は居ないからこれは本当だから観念して仲間になるのです♪」
と、二人に両腕を伸ばし両脇に二人を抱え込む桃香、その行動に“はわわ、あわわ”と慌ててる二人。それを見てた一刀は『桃香の奴、その理屈とあの勢いだけで華琳や雪蓮とかも友達にしかねんな』と笑う。
一通り落ち着くと再度訪ねられる。
「よろしいのですか?」
「さっきも言ったけどむしろお願い、間違いなく頼る事になるから」
こうして一刀の懸命なお願いが有り、元々そのつもりだった二人は仲間になった。
その際に孔明と名乗った少女から朱里、鳳統と名乗った少女からは雛里の真名を授かった四人、一刀を抜かして真名の交換が行われる。
「「それでは皆さんよろしくお願いしましゅ!!」」
54 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/05/23(日) 12:19:06 ID:kv6CzclMO
最後に盛大に噛んでしまいあまりの可愛らしさにみんなと溶け込めるのに差して時間はかからなかった。
二人から意見を聞きつつ効率的な準備を始める、お金の管理も愛紗から二人に移行し一週間後にはそこそこ戦える軍団になっていた。
作戦と行動は当初の予定通りで確実に勝てる相手と戦って勝つ!食糧もなるべく敵から調達し、便乗した賊ではなく食うに困って暴れてた者達を可能なら組み込む。
そんな戦いを繰り返してたある日、一刀に取って待っていたような、来て欲しくなかったような運命の出会いの日が訪れた。
55 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2010/05/23(日) 12:24:20 ID:kv6CzclMO
「にゃー(お疲れ様でした風様)」
「どうしたのです一刀十三号、大人しいですね?」
「にゃー(どうやら風邪気味で…)」
「ならサッサと寝るのですよ〜」
「にゃー(了解です、では皆様失礼します〜)」

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