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380 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2010/07/05(月) 22:45:33 ID:9nYi2s+MO
「にゃ!(ハッ!確か私は余りの疲れの為に風呂で溺れて死んだ筈?)」
「おや?バカ猫、生き返りましたね。どうやら効果が有った様ですね」
「にゃー(あれ?風様、何かしました?)」
「はい、なにやら落ちてたお香を額にお灸のように焚いて、葉っぱをおへそに乗っけて、羽をお尻に刺してみました〜♪」
「にゃー(みました〜♪って!間違ってるからそれ全部、使い方間違ってから!シクシクシク…)」
「おや?バカ猫が使い物に成りませんね、ではでは23桃香です」
381 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 22:49:32 ID:9nYi2s+MO
桃香達の方がもう少しで出陣可能と成った少々長話をしてしまった様だ、同時出撃の為にも一旦自軍に戻る雪蓮を見送る一刀。
「……ありがとうな雪蓮」
「あら一刀、なにか勘違いしてない?今回の呉蜀同盟も同時出撃も総ては私の為、そして孫呉の民の為よ」
「それでもありがとうな雪蓮」
素っ気ない態度をサラッと流され素直な感謝にどうしても照れてしまう雪蓮、照れている顔を隠す為にそっぽを向いて歩いている。
「所で雪蓮、何時から記憶が?」
「そうね、南陽で管輅の占いの噂を聞いた瞬間よ。まるで頭から雷を受けたかの様な衝撃だったわよ」
「で、思い出したって訳?」
「そうなのよ、そうなんだけど……」
「なんだけど…どうしたの?」
雪蓮らしかぬ奥歯になにか挟まったかの口調に言葉を挟んだ一刀。
「私生活とか一刀との思い出はハッキリと分かるんだけど……こう、あっちの知識?とかになると…霧がかかるって言うのか…朧気るのよね〜」
人差し指でこめかみを押さえる仕草が可愛いとか思いながら一刀も自分の思った事を口にした。
「なんでそうなるかって?決まってるじゃんか」
「ん、なんで?」
雪蓮には何故決まってるのか分からないので訊ねた。
382 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 22:52:04 ID:9nYi2s+MO
「凡才の俺じゃなくて英傑の雪蓮にあっちの知識が備わってたら、今頃天下は雪蓮が平定しているよ」
一刀は率直な推測を述べた。
「そしたら一刀は私の奴隷?」
雪蓮は率直な願望を述べた。
「ブッ!?」
予想外の台詞に驚くも、
「・・・・・でも正直奴隷かな〜?まあ雪蓮が俺を生かしてくれればだけど」
などと冷静に答える。
その台詞に反応する様に背中から抱き付いて喋り出した雪蓮。
「私は、殺しちゃったり、奴隷にするような相手に真名を許したりしませ〜ん」
「そうか、そうだね。とりあえず殺されたり奴隷にされるのは回避したんだね」
「なんだったら悩殺されるか愛の奴隷にでもなる?」
「聞いてるこっちが恥ずかしいから止めて」
「しかし……そうね、さっきのあれも良いわね」
「あれって?」
「世の中を平和にして孫呉の王の座を蓮華に譲ったら、私は一刀の所に来てこう言うの」
「なに?」
「ご主人様♪」
その時の満面の笑みと呼び方に不意打ちを食らった為、今度は一刀が照れる番になった。
照れた隙に乗じて一刀から、一刀達の陣から離れてた雪蓮。
「じゃ〜一刀、すぐ後でね〜」
走り出した雪蓮に黄蓋も走りながら着いて行くのだった。
383 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 22:54:46 ID:9nYi2s+MO
◇ ◇ ◇
雪蓮が自陣に戻り、
“出撃準備どのくらい進んでるかな〜?言うのちょっと遅かったから出撃遅れたらヤダかな〜”等と思いながら陣を覗いて見れば既に出撃準備は整っていた。
「あら意外、まさか準備万端で私待ちだったとは、流石の私でも見抜けなかったわ」
「何年、貴女の軍師をやってると思うの」
雪蓮の声に返答したのは先程、軍議の場に雪蓮と一緒にいた周瑜だ。
「貴女が陣を出る時“さて、どうやって戦える様にしようかしら”って顔だったから、安易に予想が出来たわよ」
「そうなの?」
「やはり今まで無自覚だったのね」
言うと同時にこめかみにを指で押さえた周瑜。
「で、なにを話してきたの?」
「まずは同盟かな」
「信用出来るの?」
「信用は出来るわよ、この上なく」
「その根拠は?確かに聞けば将来有望な一集団だ。だが将来有望と生き残れるのは決して同意義では無い、特に今はこの戦いは孫呉独立に多大な影響が有る大事な時なのだぞ?」
「だからこそよ、大事な時だからこそ内は勿論、外にも絶対に信用出来る者が必要なんじゃない」
「雪蓮の言ってる事は最もだ。だが先程も聞いたが信用出来る根拠はなんだ」
「……勘よ」
「……勘ねえ」
384 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 22:57:43 ID:9nYi2s+MO
ひとまずは誤魔化した雪蓮、周瑜の雰囲気で自分の言ってる事が嘘だとバレてると解っていながらも追求されないので敢えてそれ以上は触れない。
現実主義者の周瑜に“実はほぼ同じ世界を既に一回体験しているとか、天の国にも行ってた”何て言っても直ぐに信じて貰えないだろうし、第一自分の柄じゃ無いと考えた雪蓮。
「で、先陣の抜け駆けに関して袁術に何て言い訳するんだ」
「袁術?ああ、居たわねそんなの」
「ああ居るぞ、残念だがしっかりと居るぞ。その調子じゃあ存在そのモノを忘れてて考えてないだろ」
「アハハハハ…」
雪蓮の笑いに本日二度目のこめかみに指を押さえる動作。
「誰かある!」
呼ばれて一人の兵が近づくと。
「袁術に使いを『この度の動きは先陣を任された劉備の軍に袁紹の兵が混ざっているためこのままでは先陣の功を袁紹に独り占めされてしまうでしょう。なので袁術の客将たる我らも加わり功を分捕ってくる所存』と」
「ハッ!」
伝令が駆けて行くのを確認してから。
「じゃあ雪蓮、好きなようにどうぞ」
「ありがとう冥琳、大好きよ♪」
分かってるから早くなさいと態度で示す周瑜。
そして陣が離れていたにも拘わらず偶然にも出撃の号令は同時だった。
385 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:00:15 ID:9nYi2s+MO
「それじゃご主人様、行きましょう」
『いつでもいいわよ、雪蓮』
「『出陣!!」』
こうして反董卓連合による初めての戦い、氾水関の戦いが始まった。
◇ ◇ ◇
先に着いた劉備達が氾水関の守将、華雄を誘き出す為に挑発するが張遼が引き止めてるのか成功しない。
そこに配置した陣の位置の関係で遅れて来た孫呉が到着、雪蓮が桃香の元に駆け寄った。
「はぁ〜い劉備ちゃん。なかなか手こずってるみたいね」
軽い挨拶の後、挑発を引き受けた雪蓮。
華雄に自分の母親、文台をも絡めた挑発をするも張遼が正に必死になって止めている為、今だ釣れないでいた。
「むー、なかなか出てこないわねぇ。……悔しくないのかしら」
「本人は悔しいって思っても周囲の人が止めてるのかも」
「……なら周りが止めれないぐらい怒らせればいいのよね、ちょっと劉備いい?」
「はい?」
「…ゴニョゴニョゴニョ…」
桃香に耳打ちをするとその後二人は離れた。
「じゃあいい劉備、さっき言った通りに動いて喋ってね♪」
「はい、孫策さん」
と、二人いきなり胸を強調するようなポーズを取り出す。
「何をしている雪蓮!」
「何をしてるんですか桃香様!」
386 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:04:11 ID:9nYi2s+MO
周瑜と愛紗がそれぞれ自分の当主の謎の行動を咎める、だがそんなことはお構いなしに二人が大きく息を吸って溜めた後!
「「華雄の〜!ひ〜〜んにゅ〜!!!」」
「・・・・・」
戦場が暫し静寂に包まれた、敵にも反応も無い。
「桃香様・・・」
「雪蓮、そんなんで…」
だがその時!
ギギギギギ…
氾水関の門が開いていく。
“相手が出てくるとでも思っていたのか?”言いかけた周瑜は開いた口が塞がらなかった。
「孫策ーー何処だーー!!!」
門が開ききる前に氾水関の中から華雄の怨みの怒鳴り声が響く。
「おぉ〜怖っ!劉備、危ないから早く自分の陣に戻りなさい。華雄は私が釣る、張遼は任せたわよ」
「分かりました、孫策さん。どうかご武運を」
「劉備もね」
氾水関の将を釣り上げた二人はそれぞれの陣に戻る、華雄を見殺しに出来ないと同じく撃って出た張遼隊を桃香達が見事引き離した。
程なくして勝てると見込んだその他諸公が戦に加わると多勢に無勢、董卓軍側に勝てる見込みが無くなる。
すると“吶喊して玉砕をする!孫策か袁紹の首だけでも取る!”と、言い出した華雄を張遼がなんとか説得し血路を開いて撤退、氾水関の戦いは桃香達と雪蓮達の活躍にて勝利・陥落したのだった。
387 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:06:47 ID:9nYi2s+MO
氾水関を制圧し全軍小休止した後、次の向かうは更なる要塞・虎牢関であった。
氾水関での桃香達の活躍に“兵を貸したのだから自分達の活躍である”と、主張するも周りのやや冷たい視線に何やら焦りを感じた袁紹が先鋒を申し出る。
これに犬猿の仲の曹操がらしくもなく、売り言葉に買い言葉で同じく先鋒になった。
行われた配置換えは先鋒が曹操に袁紹・中央に桃香と雪蓮・後曲に袁術やその他諸候と変更した。
虎牢関を目認出来る距離までくると、連合軍が・各々独自が放った斥候が次々と帰ってくる。
連合や独自の斥候の報告では大まかな全体数しか分からなかった、しかもそれですら半予想である。しかし、たった一人だけは例外で有った、周泰その人だ。
周泰が調べた結果、守るは飛将軍呂布を筆頭に先の戦いで逃げ延びた張遼・華雄、参謀として董卓の懐刀と名高い軍師・賈駆、これだけの英傑が揃えば苦戦は必至だろう。
本来なら戦いたくない相手だ、だが圧政解放を謳い文句にしている連合軍は進み戦わなくてはいけなかった。
やがて攻城戦が始まった、氾水関とは違い挑発も効かず正攻法で攻めるしか無かった。
考え無しのひたすら前進だけの袁紹に虎牢関打破の切っ掛けが掴めない曹操、無駄に時間だけが過ぎ被害が拡がっていく。
388 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:10:35 ID:9nYi2s+MO
「(この膠着状態、そろそろ頃合いかな)…ちょっと、朱里」
「はい、なんですかご主人様」
「我が軍を囮にして呂布なり張遼なり、または華雄を釣り上げて袁術に押し付けることは可能かな?」
「はわ!…何故そのような危険を冒してまでそんな行いを?」
「ここだけの話、初戦の借りを返したいのとね、雪蓮の独立を早める為。ここで袁術の力を削いでおけば雪蓮の独立が早まると思うんだ、雪蓮達の力が強まれば同盟を組んでる俺らの力も間接的に強まると思わない?」
「なるほど事情は分かりました、どうかな雛里ちゃん?」
「………それではまずこのまま普通に前線まで出ましょう」
一を聞いて十を知る朱里が雛里の作戦を理解する。
「押し掛けた私達の為に戦前が手狭になり袁紹さんの所も曹操さんの所も混乱する。いい加減、防戦のみの戦いにうんざりしている頃だからこれを好機と見て虎牢関から討って出る可能性大だね雛里ちゃん」
「そうだよ朱里ちゃん、…そこで私達は戦線が崩れた振りをして後退、…そのまま付いてきた敵を袁術さんになすりつけちゃうんだよ」
「ちょっと危険だけど可能だと思いますよ、ご主人様」
「判ったそれでいこう」
「それじゃ皆さん直ぐに準備して下さい、出来次第前進しますー」
389 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:12:36 ID:9nYi2s+MO
◇ ◇ ◇
「孫策様、劉備軍が前進してます!」
「なんだと!?」
声を上げたのは呼ばれた本人ではなく部下の誰か、同盟を組んだと説明された劉備軍の謎の行動に呉陣営に少々動揺が走る。
ただ一人、事態を冷静に見つめる雪蓮。「(一刀が何かしようとしている)…冥琳・祭、いつでも直ぐに動けるように」
◇ ◇ ◇
粛々と前進する中、
「朱里、呉陣営に何か反応有る?」
「はい、こちらに一番近い兵士さんがこちらに向かって旗を降ってます。全くの無反応、無関心という事は無さそうです」
「了解、それならなにか有っても臨機応変に対処してくれるだろう」
◇ ◇ ◇
「申し上げます!後方より詰める軍勢有り!旗印は劉一文字、劉備軍かと!勢いから見るに、城攻めに乱入するつもりでかと」
「何?今、乱入などされたら手狭で戦線が混乱するぞ」
「乱入…ねえ、麗羽や袁術ならともかく、あの劉備達がわざわざ後から割って入るぐらいだから、なにか策が有ると考えた方が自然ね。そして策の内容は……虎を穴蔵から出す為の策か穴蔵から出た虎を用いる策か?
どのみち虎を穴蔵から出すのは必然、ならこちらが穴蔵の前で混乱状態と云う手負いの兎を晒して見せれば…穴蔵に籠もるにも限界に近い虎は喜んで兎に飛びつく筈」
390 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:14:45 ID:9nYi2s+MO
攻城の決め手が無く、なにかきっかけが欲しかった曹操がニヤリと笑う。
「ならば我らもこの一石に乗じるとしよう。春蘭・秋蘭。劉備達はおそらく敗走の振りをして穴蔵の虎を誘き出す、その動きに合わせ我々も敗走するフリをしながら後退する、準備をしておきなさい」
◇ ◇ ◇
「ご主人様。曹操さんの部隊に動きが有ります…あっ!道が開きました、あれなら混乱せず振りでいけるかと」
「ありゃ〜読まれてるかな?」
内心ではある程度作戦を読まれてるだろうと思っていた一刀。
「…おそらくその通りかと…申し訳ございませんいくら即席とはいえ…こうも簡単に読まれる作戦を立案する様では…軍師失格です」
だが雛里が謝りだしたので慌てフォローする。
「雛里が悪い訳じゃないぞ。天に“天才は天才を知る”って言葉が有るんだ、曹操がちょっと機転が良すぎるだけ」
「ですが…」
「今はこれでいいよ、こっちの考えが分かってるなら色々と上手く合わせてくれるだろう。だから曹操と戦う時に簡単にはバレない作戦を作ってくれれば」
“華琳と戦う”と改めて口に出して言ってみた所で軽いめまいと吐き気がしたが時が時であると自分に言い聞かせて堪える一刀。
「じゃみんな行こうか」
「「「ハッ!」」」
391 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:17:19 ID:9nYi2s+MO
◇ ◇ ◇
劉備軍の行動を見抜いた曹操軍はさりげなく場所を空け手狭になった部隊の攻撃を意図的に緩める。
一方、劉備軍を挟んで曹操軍の反対側の袁紹軍は手狭にされた部隊と部隊が入り乱れ指揮系統が乱れ本当に混乱していた。
そしてそれを見た兵士が叫ぶ。
「後方より部隊介入により敵前線混乱!叩くなら今が好機かと!」
「……ねね」
「ここにおりますぞ!」
「……出る」
「御意なのです!……呂布将軍ご出陣!深紅の呂旗をあげますぞー!」
「おぉ、呂布よ撃って出るのか。なら私も付き合おういい加減籠城戦も飽きた頃だし、なにより孫策!先の戦いの恨みを晴らす!」
「……華雄」
「なんだ呂布?」
「……今は我慢、狙うのは敵大将の首」
呂布が指を指した先は後方の袁の旗印。
「……そ、そうだなまずは敵の総大将の首を上げて勝利を確実にし、敗残兵として孫策を倒す!うぬそっちの方が良いな、では撃って出るか呂布よ」
この時二人は大きな勘違いをしていた、呂布の狙う総大将・袁紹は自分達の足下にいて遥か後方にいる袁の旗印の軍勢は袁術であった。
だがこれも致し方ないのかもしれない、普通は総大将は後方でどっしり構えてるモノだと考えるからだ。
392 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:19:38 ID:9nYi2s+MO
まさか戦もまだ中盤で総大将の軍勢自らが最前線に出て必死に攻城するなどと考えにくかったのだ。
◇ ◇ ◇
「出撃する準備をしている部隊がいます!」
ごった返していた大広間に報告がもたらされる。
「何ですって!直ぐに止めて!」
驚きの声を上げたのは董卓軍の参謀・賈駆、余りの驚き振りに部下が聞き返してしまうぐらいだ。
「え、出撃命令を出されたのでわ?」
「出すわけ無いでしょ!…籠城して敵の補給切れと内部崩壊を狙ってるんだから!城壁の守備に付いてたのは誰!」
「それが呂布将軍と華雄将軍です」
「・・・・・」
沈黙の賈駆に続けて報告がもたらされた。
「申し上げます!呂布将軍と華雄将軍が討って出られました」
「アカン…こりゃ氾水関の二の舞になる。…なんでウチらの陣営には猪しかおらんのや」
「ああもう!霞!」
「ほいさ」
「仮にここが陥落して洛陽で籠城することになったとしてもあの二人は欠かせない…助けるしかないわ」
「せやなぁ、…あぁ――――もう!これやから猪は嫌いやねん!」
「手綱が甘かったのはボクの責任。…だけど霞、ボクを…月を助けて」
「分かっとる。…やったるわい!守備隊々長!」
「なんでしょう」
393 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:23:17 ID:9nYi2s+MO
呼ばれて一歩前に出た。
「今からウチらも討って出るから、ウチらが帰って来るまで虎牢関守ってや」
「勿論で有ります!」
「せやけど状況をよ〜く見て、ウチらが此処に帰って来れへんと判断したら虎牢関捨てて洛陽に撤退しぃ」
「なっ!」
「戦に絶対は無いんや、ましてやウチらの方が圧倒的に不利なんや。状況を見極めてアカン時は一人でも多くの兵士を逃がすのも士官の勤めやろ」
「・・・了解しました」
「まあ逃げる算段と時は陳宮と相談したってや」
「分かりました」
冷たい声で返事をしながらきびすを返す、城壁に向かうため一歩歩くと同時にうって変わって熱い檄が飛ぶ。
「守備隊総員に伝令!撤退抗戦に入るぞ!一刻でも長く虎牢関を死守!張遼将軍達の帰還を待つ!陳宮殿の居場所を常に明確にしとけ!」
そうして大広間を出て行った守備隊々長。
「ホンマ、すまんなぁ……ほんならウチらも戦闘準備や!ウチの部隊と賈駆隊は城門から討って出るで、敵を押し返して恋達を回収!そしたら此処に戻って来るんや」
「「「ハッ!」」」
◇ ◇ ◇
ギギギ…
「虎牢関、城門開きます!」
「良し、そのまま虎牢関に雪崩れ込!」
握り拳ぐらい開いた城門から何かが走ったと思ったら指揮官の頭部が吹っ飛んだ。
394 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:25:52 ID:9nYi2s+MO
ギギギ…
虎牢関の城門は以前開いていく。
「では私が代わりに、総い!」
代わりを買って出た指揮官の頭が消えた。
人が両手を広げたぐらい開いた城門に弓矢を構えた女性が居るのを袁紹軍の兵士が確認した。
「何が起きた!ええい仕方がない!な」
更に代わって突撃命令を出そうした指揮官の頭が城門で弓矢を構えてた女性の放った矢に後ろの一般兵一人を巻き込んで飛んでいった。
ここまでくれば一人目の時のあの狭い隙間から狙って頭を吹っ飛ばした事は袁紹軍の兵に明確になった。
そして誰も指揮を取りたがらない隙を突かれると。
「弓隊、放つのですー!」
陳宮の掛け声で城門前を城壁上と開ききった城門内側から一斉に矢が放たれる、一斉射撃の後一瞬だが城門前に空白地帯が出きる。
持っていた弓を投げ捨てると呂布が方天画戟を構えて馬を駆け出す。
呂布を筆頭に討って出る呂布の軍勢、指揮すらも与えられない状態の城門前の袁紹軍兵士が吹っ飛ぶ。
文字通り吹っ飛ぶのである、ただし上半身のみで。
鮮血を撒き散らしながら上半身を失った下半身の大半はその場で尻餅を着いた。
「流石は呂布殿。皆の者、呂布殿に続け!このまま蹴散らすぞー」
進む呂布はまるで無人の野を駆けるが如く。
395 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:27:44 ID:9nYi2s+MO
だが呂布の部隊が過ぎ去った後、いやらしくも虎牢関に雪崩れ込もうとした袁紹軍兵士は激しく後悔する。
少し遅れて華雄将軍が率いる一部隊が怒涛の如く討って出て来たのだ!以前指揮は回復しておらず秩序無く雪崩れ込もうとした袁紹軍に猛将華雄の軍勢にただ蹂躙されるだけであった。
◇ ◇ ◇
「……悪い雛里、作戦を変えよう。あれを釣ろうとしたら、間違い無く本当に敗走する」
「そうですね、敵は旗勢をみるからに気焔万丈。勢いも凄いですが必要以上に凄すぎます」
「…ですがあれでは曲がる事すら容易ではないかと…ですから孫策さんの陣に突っ込む心配も無いと思われます」
「多分あのまま勢い余って袁術さんの陣に突っ込むかと」
朱里と雛里が交互に憶測を述べる。
「なら作戦は成功かな?」
「まあ結果的には…あはは」
苦笑いする朱里。
「…ですがご主人様、袁術さんを助けに行った方が宜しいかと」
「やっぱ?」
「はい。…いくら袁術さんの所が大軍とはいえ…あの勢いなら袁術さんの首が取られちゃうと思います」
「そしたら袁術さんの軍は敗走、袁紹軍に次ぐ二番目の大勢力で事実上の副大将。そんな方が討ち取られたと有っては連合軍の風評も良くないですし、味方全体の士気も下がっちゃいますよ」
396 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:29:45 ID:9nYi2s+MO
「そうか、袁術ちゃんも味方だもんね。味方が殺されちゃうは嫌だから袁術ちゃんを助けに行こーよ、ご主人様」
「そうだな、桃香」
「よし!そーと決まれば反転前進ー」
「ははは、桃香は優しい上に楽天家だな〜」
「ひど〜い、ご主人様。私のは考えての行動なんですよ〜だ」
「はいはい、そうでしたね〜」
若干茶化し気味の一刀の態度に将はおろか兵士にまで笑いが感染し、かなりリラックスした状態で次の戦いに挑めた劉備軍。
◇ ◇ ◇
「華琳様、劉備の部隊ですが敗走に見せ掛ける動きが有りません」
「呂布の部隊をご覧なさい、あれは概ね勢いが凄すぎて悪く言えば怖じ気づいたというところかしら。まあ無謀にもあれに挑んで、振りのつもりが本当に敗走するような間抜けじゃない分、
 袁紹や袁術よりましでしょうけど。ならば我らはこのまま虎牢関の攻略に専念する」
◇ ◇ ◇
ドドドドド…
呂布隊の後ろに続く華雄の部隊、目指すは袁紹軍と勘違いしている袁術の軍。
「あら?華雄じゃない」
「何!」
声をかけられた方を向けば華雄にとって親子二代で因縁が出来た孫呉の頭領、孫策が居た。
「どうしたのそんなに急いで?……そう言えば氾水関の戦いの決着が未だだったわね。どうする、寄ってく?」
397 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:31:51 ID:9nYi2s+MO
「・・・ふんっ!今は貴様に構っている暇は無いのだ、袁紹を討ち取った後にゆっくり敗残兵として始末してやるから頸を洗って待っていろ。ハッ!」
言うやいなや、再び馬を走らせて去ってしまった。
「ア〜ア…“ツレナイ”のね華雄の奴。…でも袁紹って言ってたけど、向かってる先は袁術だよね?」
「おそらく間違えてるんでしょう、同じ袁の旗印でもあるし」
「あちゃ〜……って、なら呂布をあのままでほっときゃ袁術の首を刎ねてもらって楽できないかしら?」
「却下だ。仮にも我らが組みしている側に黒星を付ける訳にはいかないからな。見ろ雪蓮、お気に入りの北郷も動いているぞ」
「ちぇ、楽できると思ったのに」
「元々するつもりもないくせに」
その台詞に二人が“フッ”と笑う。
「なら袁術が死なない程度にゆっくり向かうのは良いの?」
「ああ、その考えには私も大賛成だ。せいぜい袁術が死なない程度に向かうとしよう」
「仕方がないわねぇ、たまには私が釣られてやりますか…総員反転!『袁術が死なない頃合い』で呂布・華雄の軍に突撃をする!」
「「「オオオオッ!!」」」
◇ ◇ ◇
「呂布っちと華雄はどない具合や」
虎牢関から出る際、軽く袁紹軍を蹴散らした張遼が叫ぶ。
398 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:34:58 ID:9nYi2s+MO
「両将軍とも後方の袁術軍に喰らいついてます。相手が大軍の為に駆ける様な前進は止まったものの勢いは死んでおらず、以前微速ながら前進は続けています」
「アカンな〜流石に遠すぎる、一応退却の銅鑼鳴らしてみい!」
ジャーン・ジャーン・ジャーン!
聞こえてないのか無視しているのか、一向に反応する気配がない。
「あちゃ〜、劉備に孫策、それに勝ち馬に乗りたがる各諸公まで群がって叩きに向かってるやん。嫌やわ、まんま氾水関のやり直しや…」
◇ ◇ ◇
「陳宮殿!既に一部では取り付かれていますぞ、さすがにもう保ちませぬ!」
「ぬぬぬ…仕方がないのです、取って置きなのです!皆の者、『いっせーの・せっ!』と掛け声と共に城壁の縁を蹴るのです。いっせーの・せっ!」
ガスッ★
グラッ★
言われて蹴った一般兵が疑問に思った『なぜ縁が動くのだろう?』と。
「力が足りないのです!もう一度行きますぞ!」
言われた董卓軍兵士は渾身力で蹴った。
『いっせーの・せっ!』
ドカッ☆
グラッ★ズズッ☆
ヒュー………ドッカ〜ン!
虎牢関、城壁上の縁を蹴り落とすと城壁に掛けて有った梯子と引っかかっていた縄が例外なく全て折れて引きちぎれた。
399 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:36:54 ID:9nYi2s+MO
また、攻城の為に登っていた者も文字通り降ってきた岩の固まりに、全員が転落しほぼ全員が圧死した。
「恋殿に頼んで仕込んだこの仕掛け、よもや本当に使う羽目になるとは。しかしこれで少しは時間が稼げるのです。皆の者逃げますぞー!」
陳宮が撤退の指示をだした。
「総員退避ー!総員退避ー!遺憾ながら虎牢関を破棄する、これより我らは洛陽に撤退する」
「ねねの部隊は恋殿の所に行きますぞ!」
◇ ◇ ◇
「さっきのあれ、なんだったんや」
「知らないわよ、大方ねねが何か仕掛けてたんでしょ。それにしたって一部とはいえ虎牢関を壊さなくたっていいでしょうに、修復するのにどれだけかかると思ってるのよ」
「まあその心配も取り戻した後やな」
「…それもそうね。で、どうするの霞」
戦場のド真ん中でノホホンとした会話をする二人。
「詠は月の所に帰るんやろ」
「当たり前でしょう、私の有るべき場所は月の傍らだけよ」
「なら、詠は虎牢関を抜けて洛陽まで行くしかないな〜」
「霞、あなたはどうするのよ」
「ウチ?ウチは詠が安全な場所まで逃げるまで此処で殿や」
「・・・・・出る前にも言ったけど董卓軍は人材不足で誰一人欠かせないのよ。それは霞、あなたも頭数に入ってるだからちゃんと帰ってくるのよ」
400 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:39:09 ID:9nYi2s+MO
「分かっとるって、詠が無事逃げおおせた後は呂布っちと華雄の頸に縄付けても連れて帰るさかいに一足先に洛陽に帰ってて〜な」
と、その様な会話を交わしていると近づく来る一集団。
「詠殿ー!霞殿ー!」
陳宮であった。
「ちょっとねね!どうするのよ虎牢関壊しちゃって!」
「あれは緊急事態で致し方なかったのです。けれど逃げる時間を作ることが出来たのですから結果的には良かったのですぞ!」
慌て取り繕う陳宮。
「私が怒ってるのは黙って勝手にやったことよ。“次はからは”ちゃんと相談して許可を取ってから実行しなさい!」
「?・・・は、はい!なのです」
『次からは』の台詞が妙に嬉しかったりする陳宮。
「ならお二人さん雑談はそんぐらいにして。ねねはどうせ恋の所に行くやろ?」
「当たり前なのです!恋殿の側に居てねねは始めてねねなのです!」
「よう言うた!ねね。誰か適当に五百ぐらい呂布っちの所までねねの先頭に立って露払いして連れてったってや」
「ならば私が、部隊の生き残りも丁度そのぐらいですし」
「ほんならねね。ちぃっと恋の所まで気張っていき!」
「行ってきますなのです!」
返事と同時に陳宮の部隊と張遼隊の一部が敵に向かって駆けだして行った。
401 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:42:51 ID:9nYi2s+MO
「そしたらもう一部隊。まずは虎牢関城門までの露払い、その後は洛陽まで賈駆っちの護衛を買って出る奴は居るか?」
「それは私が」
一刻を争う時だからだろう腕に自信が有る部隊が直ぐに名乗り出た。
「なら詠、あんさんもさっさと行きなはれ、ねねが作った虎牢関城門までの道が塞がれるで」
「……霞、もう一度言うけど。本当に洛陽に帰ってくるのよ、借りを借りたままなのはボクの性分じゃないんだからね」
「分かっとるって、ほれ本当に道が塞がってしまうで」
張遼に急かされてその場を後にする賈駆、この場に残った張遼の部隊ただ一隊のみとなった。
「さてと…残ったのわウチらだけでやることは殿や、みんな覚悟はええな」
言葉による返事は無かったが眼差しによる返事が返ってくる『どこまでもお供しますよ、例え地獄だろうと!』と。
「よしゃ!ほんならいっちょ派手にブチかましたろうかい!まずは袁紹とこや!」
「「「応!!」」」
・・・
・・

◆約一時間後◆
張遼の部隊は袁紹軍と曹操軍に挟まれながらも良く奮戦していた、そして頃合いをみたのか張遼が口を開いた。
「状況はどない成っとる!」
比較的近くに居た士官兵が直ぐに答えた。
402 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:45:05 ID:9nYi2s+MO
「陳宮殿は無事に呂布将軍の所まで辿り着いた模様、……ですが華雄将軍の部隊が敵劉備軍と衝突して暫くの後に瓦解、兵の大半は呂布将軍の麾下に入って壊滅は免れましたが……残念ながら華雄将軍は戦死かと」
「あの阿呆が、焦りおって…」
沈黙の張遼を隙と勘違いした袁紹の兵士が襲い掛かる、それを怒り任せに振った飛龍偃月刀の為にまず七人が身体を上下にして永遠の別れに出くわした。
あまりの凄惨さに腰を抜かし運悪く得物の射程圏に居た者は縦に左右、これまた永遠の別れに出くわす。
その激しい怒りは張遼の部下でさえ背筋が凍らせる。
そして報告をしていた部下が我に返って報告を続ける。
「賈駆殿の部隊はあれから引き返してくる様子も有りません、虎牢関守備隊と無事に安全圏まで脱出したと見てよろしいかと。呂布将軍の部隊ですが、袁術軍の兵士をかなり倒したもの人の壁の為に袁術までは届かず。
 その後、各諸公に囲まれだいぶ不利に。今一点集中で突撃を繰り返しているのは突破・撤退の為かと。そして我ら張遼隊は約四分の一が倒されました」
「残るは呂布っちとウチらだけかい……その呂布っちも撤退準備しとると……ウチら撤退すんで!一番層が薄いとこは何処や!」
403 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2010/07/05(月) 23:47:02 ID:9nYi2s+MO
「曹操軍のあの一角が一番薄いかと…」
「ならお前ら先に行き、ウチが殿勤めるさかいに!」
「「「応!!」」」
・・・
・・

だがこれは曹操軍の罠だった。
罠にハマり部下を人質にとられて憤怒する張遼、だが話し合いの機会を得た曹操は見事に張遼を説得し自分の麾下に組み入れたのだった。
呂布は無事に戦場からは逃げおおせたものの洛陽には戻れず在野に下る、虎牢関の戦いは董卓軍の戦力を回復不可能にまで追い込み、連合軍の一部は決して無視できない被害をだして幕を閉じたのであった。
そして小休止・物資の補充の後、連合軍は当初の目的地・洛陽に向かうのだった。
404 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2010/07/05(月) 23:50:42 ID:9nYi2s+MO
「では恒例の暴露大会をば」
「にゃー(何か有りましたっけ?)」
「余裕綽々ですね、では買った同人ソフトで」
「にゃ!(ハッ!それはちょっと!)」
「霞殿、そのバカ猫押さえてください」
「了解や」
「モゴモゴモゴモゴ…」
「それでは改めて、買った同人ソフトが起動に必要なデータが無くて動かず、泣く泣くパソコン抱えて悪友宅に接続・ダウンロードしに行く恥ずかしさ、
 そして一昨日新たに買った同人ソフトもまた新たにダウンロードが必要な為悶々とした日々を過ごしてるとか」
「にゃー(あれ?何でだろうよく聞いてもあんま恥ずかしくないな?)」
「等々、羞恥心すら無くしましたか」
「にゃー(なら良いや(笑)じゃあ皆さんまた次まで!)」

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