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546 名前:午前三本 11/24[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 11:41:16 ID:HVUcHqgvO
 並の者なら一睨みで震え上がる魏武の王の眼光を、孫呉の小覇王微動だにせず受け止める。
「…取り込み中だ、遠慮してもらおうか。」
「貴女に命をうけるいわれはないわ。まったくちょっと目を放した隙に、、、油断も隙もない。」
「ふん、そういうお前も狙いは同じだろう。なら早い者勝ちが世の習い。そこで指でも舐めてるといい。」
「むっ、、、一刀は傷つき疲れているのよ。貴女はそんなこともわからないの?無神経ね。」
「フン、そうやっていい子ぶって『私は気の利く女です〜』と印象付けていれば、一刀が振り向いてくれると?姉から國を譲られたお嬢様らしいな。なんでも待っていれば与えられると甘えて…」
「なんだと……」
「私は違うわ!欲しいものはこの手で勝ち取る!それが曹孟徳よ!」
「その貴女に一刀がどれだけ迷惑してると思うの、全く貴女といい袁紹といい…」
「あぁ゛…なんだとキサマ」
 NGワード”袁紹”が華琳の逆鱗スイッチをONにする。
「あんなアホと並べんじゃねーよ、、、死んじゃえば?」
 誇り高い王者の血が沸騰し、蓮華の碧眼と華琳の龍眼にカッと怒りの焔が同時に上がった。
「・・・表に出ましょうか。」
「・・・望むところだ。」
「お、おい、、やめろ、二人とも。」
 二人の血相に一刀が声をかけるが、2王の視線は絡み合ったまま揺るがない。
「心配しないで、一刀。すぐに終わらせるから。」
「ふ、そうよ、呉のメス犬の調教なんてすぐだわ。か・ず・と。」
「・・・本当に下品だな貴様は。だから成り上がり者と陰口を叩かれるのだ。」
「・・・江東の水賊あがりが言ってくれるわね。」
547 名前:12/24[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 11:42:44 ID:HVUcHqgvO
「己を出を棚に上げて、面白いことを言う。は・は・は・は…」
「ほ・ほ・ほ・ほ…」
 頬をひきつらせ笑う二人に一刀の頬もひきつる。
「ま、まあその辺で矛を収めてだな…」

 ギロッ!

「ひっ!」
 眼光に縮み上がる一刀を残し出ていく二人。がらんとなった空間でホッと胸を撫で下ろす。
「い、いや安心してる場合じゃない!止めなきゃ!痛ぅ!」
 ギシギシ軋む身体を鞭打ちとぼとぼと後を追う。
「(表ってことは庭か。ヤバい!あそこにはまだ星達が鍛練中のはず、朱里は、、買い物に行ってるんだっけ。となると、、、頼む紫苑!ブレーキ役になれるのは五虎大将軍唯一の知性お前だけだ…)」
 そんな微かな希望は背中越しの声で砕け散った。
「あらご主人様、どうなさったんですか?そんな恰好で。」
 当然振り向くそこには璃々の手を引く紫苑の姿があった。
「あぁ、、、火は油に放り込まれたか…」
 がっくり壁に寄り掛かるとずるずる落ちる一刀を慌てて紫苑が支える。
「まあ、どうされたのですか。顔色が青いですわ、星ちゃんにしごかれたと聞きましたが、まさか打ち所が…」
「ごしゆじんさまぁー大丈夫ぅ?」
「し、紫苑!急いで庭に連れてってくれ!」
「は、はい!?」
 紫苑に肩車され(璃々も本人は懸命に一刀の腿を支え)庭に急ぎながらいきさつを説明すると紫苑も表情を曇らせた。
「それは確かにまずいですわ。火の点いた二人が、鍛練で血の気の沸騰した愛紗ちゃん達の中に飛び込んだら、、、想像するまでもないわね。特に星ちゃんは面白がってたきつけるでしょうね。」
548 名前:13/24[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 11:43:48 ID:HVUcHqgvO
「だろ〜せめて朱里や紫苑がいたらって。」
「ふふっどうでしょう。愛紗ちゃん達ならともかく覇王二人を諌める自信はありませんわ。それにさらに心配な可能性があります。」
「さらに心配な可能性?」
「ええ、もしかしたら…」
 言いかけた紫苑の声が庭からの怒声に掻き消される。

 『許さんぞ!甘寧っ!』

「…どうやら遅かったようですわ。あれって春蘭ちゃんの声ですわ。」
「う、、、」
 暗澹とした気分で庭に出るとそこには最悪の構図が待っていた。
 仁王立ちの華琳の左右に立つ夏候姉妹、対峙する蓮華の左右には小蓮と思春が穴も空けよとばかりに睨み合っている。
「(うっわ〜シャオもいるよ!火に油にニトロかよ。)」
 うんざりする一刀に鈴々と翠が駆け寄ってきた。
「お兄ちゃん!いーとこに来たね〜ちょうど面白くなるとこだよ♪」
「いやマジヤバいから。なんで春蘭達がいんだ?」
「ご主人様があがった後、鍛練してたら曹操達が来たんだ。」
「そんで眺めてるうちに夏侯惇のお姉ちゃんが〜」
「腕が疼いて鍛練に参加したのか、、、シャオ達は?」
「夏侯惇が参加してしばらくしたら来たんだ。最初は大人しく見学してたんだけど…」
「我慢出来なくなって飛び込んできたのだ。すぐに孫権お姉ちゃん達が止めにきたんだけど大騒ぎになったのだ。」
「そうするうちに気がつくと曹操と孫権がいないな〜って思ってたら、、、」
「突然二人が戻って来て険悪になって〜」
「愛紗が仲裁しようとしたんだけど、星が面白がって焚きつけてさ〜」
556 名前:午後三本 14/24[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 23:51:14 ID:HVUcHqgvO
「そうするうちに思春お姉ちゃんと夏侯惇お姉ちゃんが激昂しちゃった。」
「も、いい、、、大体わかったから。」
 最悪のパターンの再認識する一刀を無視して、魏と呉の対決は続いた。
「甘寧っ!我が華琳さまへの侮辱、許せん!頸を出せ!たたき落としてくれるっ!」
「ふん、先に我が蓮華さまを侮辱したのはそちらだろう!こっそり抜け駆けなど、泥棒猫呼ばわりされても致し方なかろう。」
「キサマッ!まだ言うかっ!」
「落ち着け姉者。江東の泥亀が、我らの猫の如きしなやかで優雅な速さにはついて来れんと泣き言を行ってるだけだ。」
 妹の冷静な切り返しに春蘭の眉が緩む。
「ふふ、秋蘭の言う通りだ。ご主人様も鈍い亀女より魏の女と過ごすほうがずっと楽しいしな。お前達など必要ない!」
 春蘭の挑発に小蓮ががっぷり喰らいついた。
「むーっ!あにいってんの片目のおばちゃん!かずとはシャオが1番に決まってんだから!」
「お、おばちゃん?!ふ、ふざけるなガキが!私はこう見えてもまだ…」
「ふーんだ!幾つでもシャオからみたらおばちゃんだよーかずとは若い女が好きなんだよ〜あんたみたいな、でかいだけの怪力女なんか好きじゃないんだから!」
「か、怪力、、、ふ、ふん、ガキはこれだからな。ご主人様が我らと何夜過ごしたかも知るまいに。回数から言っても1、2番は我らに決まっておる。」
「(おいおいおい!春蘭さん!何カミングアウトしてますかーっ!ヤバいだろーここには愛紗達が…)」
 寒気が走った時はすでに遅かった。春蘭の一言にがっぷり愛紗が喰いつく。
「ちょっと待てぃ!聞き捨てならんな。い、1番は黄巾の乱より忠節を尽くしてきた、わ、我らしかあるまい。」
557 名前:15/24[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 23:52:14 ID:HVUcHqgvO
「愛紗、お前は関係なかろう口をはさむな!」
「そうはいかん、主との枕事においてひけをとっては、趙子龍の名折れと言うもの。」
「(あぁ〜また面白がってるな、星の奴。)」
喜々として猫目を輝かす星を見ていると、くいくいと袖を引かれた。
「おい、、、呆れてる場合じゃないぞ。どーすんだ。」
「そうねーこのままじゃあ、ちょっとまずいわねーどうしましょう、ご主人様。」
「どうしようって、、、止めるしかないだろ。」
一歩前に出ると一刀は声を奮った。
「みんな落ち着いて……」

ギロッ

「……すみません。」
すごすご引き下がる一刀に翠がツッコむ。
「はや!情けね〜ぞ、ご主人様。」
「無理ゆうな!若手芸人でもライオンの檻ぐらいだぞ!恐ろしさの値が違いすぎだろ(涙)」
「あらあら〜でも早く止めたほうがよいかと思いますけど、ほら〜」
ヘタレる一刀が紫苑の促す方向を見て凍りついた。
「………え、袁紹」
そう、そこには猪々子を引き連れた麗羽が近づいていた。
「や、やめろ!来るな!お願いだからあっちいって!」
思わず叫んだ一刀の悲鳴が逆にみなの注意を集めてしまった。

「「袁紹、、、」」

 ザワッと場の空気が変わる。もちろん良い方にではないが、KYな麗羽が気づく訳がなかった。
「あら、皆さんご機嫌よう。お揃いで何を騒いでますの?」
「うおっぷ!姫ぇ急に止まらないでくださいよ〜大荷物で前見えないんだから。」
猪々子が抱える商品の山を見て蓮華の柳眉がぴくぴくと震える。
558 名前:16/24 次回パソコンから投下挑戦[sage] 投稿日:2008/11/17(月) 23:54:30 ID:HVUcHqgvO
「またそんなに散財を…袁紹!貴女のせいで一刀がどれだけつらい思いをしたかわからないの!」
「あら孫権さん、何を言うかと思えば、、、私の買い物にケチをつけるおつもりかしら?私を美しく飾る品々ですのよ。一刀が喜びこそすれ迷惑なんて…ホホホホッちゃんちゃら可笑しくってよ♪」
いつもの蓮華なら冷静に流すか無視する麗羽の軽口だが、タイミングが悪かった。
さきほどからの華琳とのやり取りで頭に血が上りっぱなしだったのか、気づいた時には自分でも驚くほどの怒声を放っていた。

「私の一刀に恥をかかせるなっと言っている!!」

…………シーン…………

常日頃から大声を出している愛紗たちならともかく、大人しい蓮華の咆哮に風すら静止する。
「姉さますご〜い!告白?ねぇ今の告白でしょ!今更だけどやっと姉さまもその気になったんだね〜よーしシャオ応援したげる!しょ〜がないな〜姉さま1番、シャオ2番ね!」
沈黙を破ったのは江東のマイペースプリンセスだった。小蓮の声に我に返った蓮華がみるみる真っ赤に染まる。
「シ、シャオ、ち、違うのよこれはその…」
「何がどう違うのかしら。この曹孟徳の前でやってくれたわね。カナブンといい貴女といい、舐めた真似を、、、いいわ、受けて起とうじゃない。春蘭、秋蘭!」
青筋を浮かべた華琳が夏侯姉妹に何事か指示すると、あきらかに二人に動揺が走った。
「お、お止め下さい、華琳さま!」
「お考え直し下さい。」
「なに?あなたたち私の命が聞けないの!」
「し、しかし…」
 半分涙目で訴える春蘭。しかし怒りに震える覇王は顧みない。
「やむえん、姉者、主命だ。」
「うぅ……」

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