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573 名前:17〜[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 23:02:55 ID:jDvQlwJS0
俯きながらとぼとぼと歩く春蘭と慰める秋蘭。
近くにきた二人に一刀が恐る恐る伺う。
「どうしたんだ?華琳の奴なにを?」
「北郷殿、主命ゆえ赦されよ。」
「え?」
 秋蘭の言葉の意味に気づいたのは、言われた本人ではなく愛紗達だった。
「いけないっ!ご主人様離れて!」
獣のような速さで飛びつく愛紗だが、夏侯姉妹が僅かに早かった。
「……へ?」
 一瞬なにが起きたかわからないくらいのスピードで、気づくと一刀は華琳の目の前で夏侯姉妹に押し倒されていた。
「曹操、キサマッ!なんのつもりだ!」
 愛紗たちが取り囲む。春蘭たちが獲物を向けて牽制する中、華琳の声が響いた。
「落ち着きなさい関羽!別に謀叛じゃないわ。ただ一刀が誰のモノか私を舐めた奴らに、はっきりと、具体的に、これ以上とないやり方で、教えるだけだから。くっくっくっ♪」
龍眼にサディスティックな焔を浮かべ、華琳の美脚が再び一刀の腰に伸びる。
「か、華琳、やめろ!みんな見てるぞ!」
「そうよ♪みなに教えてやるわ、これ以上とないやり方でね!
欲しいモノは力ずくで手に入れる!…これが私、曹操孟徳よ!」
「うゎ…暴走モードかよ。春蘭、秋蘭とめろよ!華琳が恥かくだけだって!」
片手とはいえ凄まじい力で押さえつける姉妹に助けを求めるが二人とも眼を合わせない。
「私だって恥ずかしいんだ、、、華琳さまが人前でこんな……」
「たまにキレるとこうなんだ。後で後悔するんだがな……ま、犬に噛まれたと思って一緒に恥をかいてくれ。」
「無茶言うな!こんな往来で出来るか!」
「あら、その割には元気ね〜身体は正直だわ、くっくっくっ」
「うっ……(このバカ息子!)」
「恥ずかしいわね、一刀。皆が観てる前で勃起するなんて…ほら、みんな観てるわ♪」
勝ち誇る華琳から視線を変えると愛紗たちが真っ赤な顔で凝視していた。
574 名前:18〜[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 23:04:34 ID:jDvQlwJS0
「ご、ご主人様、あぁ…あんなに……」
「エロだ、やっぱエロエロ魔神だ!」
「お母さん〜なんにもみえないよ?」
「璃々、あっちで遊びましょうね。」
「ふむ、器用なものだな。足の指であのように、、、」
「ふぇ〜あんなやり方あるんだぁ〜シャオに出来るかな?」
「あぁ、一刀が汚されていく…」
「蓮華さま小蓮さま、観てはいけません。お眼が汚れます!」
「まあ〜曹操さんたら、なんていやらしい、、、」
「姫、よだれよだれ。」
 みなの呼吸も忘れた凝視に一刀の羞恥心が沸騰する。
「イヤーみないで!ってか、みてないで早く助けろ!」
「くっくっくっ、いいわその顔、さあ、皆の眼前でイッちゃいなさい。一刀の1番恥ずかしい顔を晒すのよ。ほらほらほらほら!」
「よ、よせ、華琳…」
「まわりを気にする必要なんかないわ!貴方は私だけ見て!私のことだけ考えていればいいのよっ!あはははははははっ!」
完全に眼がイッちゃってる華琳の情け容赦ない足コキ攻撃に必死に耐える一刀。取り囲む愛紗たち。
そんな公開凌辱を見て茫然となる三つの影があった。
「は、はわ、はわわわわわわわわ……」
「はふぅ〜……」
「月!しっかり!」
目を回した月を慌てて抱き留める詠の横で、真っ赤になった朱里が震えていた。
「はわわ〜っ!な、なんてことを!や、やめさせなきゃ……」
手にした薬をこぼしながら混乱する朱里に横から声がかかる。
「無理よ、華琳さまの頭が冷えるまで止められないわ。」
「はわわ、荀或さんに許緒さん…な、なんで止めないんですか、お二人の主君でしょう?」
「止められるものなら止めてるわ。華琳さまはああなるとダメなのよ、昔お父様のときも荒れちゃって大変だったんだから……」
「惇将軍らでも止められないんだもん、無理無理〜」
諦めモードで傍観してる二人に詠が鼻を鳴らす。
575 名前:19[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 23:07:36 ID:jDvQlwJS0
「は、それでよく王佐の才なんて言えるわね。簡単じゃない。」
「なんですって!貴女はキレたときの華琳さまを知らないから…」
「ふん、、、」
 桂花の文句を無視して、詠がどこから持ってきたのか酒瓶を華琳の頭上めがけて投げる。
「危ない、華琳さま!…あ?」
反射的に春蘭の獲物がそれを捕えた。


ガシャーン!バシャーッ!

「うお!冷たっ!」
「キャッ!なに?酒?え?」
突然、頭から冷水ならぬ冷酒を浴びて華琳と一刀が奇声をあげる。
二人のまわりに粉々に砕け散った酒瓶が降る。詠が桂花たちに振り返りニヤリと笑った。
「ね、簡単でしょ。昔からサカリのついた猫には水をぶっかけるのが1番なのよ♪」
・・・
・・

「なるほど大体経緯はわかりました。まったく…」
ケホンッと咳ばらいをして朱里が眼前の三人を睨む。
冷静になった華琳、蓮華、袁紹がふて腐れた表情で突っ立っていた。
「お三方は仮にも一時は君主として覇を競った英傑ではないですか。それがこのような騒ぎを…
やっと乱世が終わり、民が安心して暮らせる世をこれからみんなで頑張って造ろうという時に、、、
貴女方が争えば、ただの痴話喧嘩では済まないんですよ。臣下も争い、どんどん拡大していく。
私が怖いのはそこを白装束に付け込まれたら、どうなるかってことです。」
「…わかってるわよ、そんなこと。」
「わかってたら、なんであんな恥ずかしいこと出来るんですか〜曹操さんっ!」
「だから悪かったって!ちょっと熱くなり過ぎたわ、、、」
ばつが悪そうに頬を染める華琳に止せばいいのに麗羽が絡んだ。
576 名前:20[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 23:11:22 ID:jDvQlwJS0
「おーほほほ〜仕方ありませんわ〜諸葛亮さん、あれが曹操さんの地ですもの。昔はもっとエロくてえぐいことを…ぐぇ!」
華琳のひじ鉄が麗羽の鳩尾に決まる。
「ぐ…ふぅ、な、なにをなさいますのかしら、、このクルクル小娘はっ!(怒)」
「うるさいわね。そもそも全ての悪の源である己のこと棚に置いて、なに、有ること無いこと言ってるのかしら。フン!」
「なにを言いますの!あれもそれもぜ〜んぶホントじゃありませんの!一刀さ〜ん、私なんて花嫁泥棒くらいですけど、このチビは人妻にまで…ぎゃ!」
「なに、一刀に余計なことをさえずってるのかしら!死んじゃう?死んじゃえば!死ね!」
 あっという間につかみ合いの喧嘩になる二人をお互いの臣が引きはがす。
「(ははぁ〜華琳が袁紹を嫌ってるのって相性もあるけど、昔のやんちゃ知られてるからだな。)」
 睨み合う二人を眺めながら一刀がそんなことを考えていると、麗羽のとばっちりが飛んできた。
「一刀さ〜ん、こんな凶暴なチビ、さっさと追い出してくださらない。この袁本初を悪の源だなんてまーったく心外ですわ。ホホホ〜」
「いや、その意見には賛成だ。袁紹、少し己を省みたほうがいい。貴女の贅沢で一刀が迷惑していることは事実だ。」
「まあ、孫権さんたら、、、さきほどもその件でご立腹のようでしたけど、よくありませんわ〜嫉妬深い女は嫌われますわよ♪」
「っ! わ、私は嫉妬などしていない。お前のツケ払いで一刀は市で頭を下げ…」
「それこそ余計なお世話ですわ。大体なんでそんなこと孫権さんがたが知ってますの。」
「そ、それは…その…」
しどろもどろになる蓮華に華琳まで絡みだした。
「そうね?さきほどの怒りっぷりもなんだか独占欲剥き出しでらしくなかったし、、、どうしてかしらねえ?小覇王。」
「(あ、華琳の奴、疑ってる。相変わらず勘が鋭いな。)」
577 名前:21[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 23:12:11 ID:jDvQlwJS0
華琳の問いが蓮華だけでなく、暗に自分にも投げられていることに気づいた一刀を余所に、朱里が華琳たちを制した。
「なんで唇も乾かぬうちにまた喧嘩するか!お三方、本当に反省してるんですか!?」
「うっ…」
「私は悪くありませんわ、たぶん…」
「私はただ一刀が……」
朱里の一喝に決まり悪そうにもじもじする英傑王たち。まるでちびっこ先生に叱られる女子高生のようだ。
「孔明、それは難しいんじゃない?こいつらはいずれも大陸に覇を唱えた傑物、基本 天上天下唯我独尊な連中よ。このまま中途半端なままじゃ、また争うに決まってるわ。ここは一つ、ご主人様に白黒はっきりしてもらうべきじゃない。」
飄々とした口調で詠がとんでもない提案をあげる。一刀の血の気がどん引きした。
「(詠の奴なんてことをっ!やっと収まるとこだったのに…)」
「それいいわね。白黒つけましょう。」
「ホホホッよろしくてよ、私が勝つのは決まってますけど。孫権さんはどうなさいますの?逃げてもよろしいんですのよ。この袁本初が相手ですもの、逃げても恥じゃありませんわ。」
「笑えん冗談だな。孫家に逃の文字はない。」
再びボルテージが上がった三人の眼光が一刀に集中する。
 その眼力は雄弁に語っていた。

…かずと!私が1番よね!…

「いや、その〜」
たちまち優柔不断モードに入る一刀を詠が鼻で笑う。
「フン、なにビビってんのよ。アンタがだらし無いからこんな騒ぎになるんでしょ。月に汚いモノ見せた罰よ!しっかり一晩考えて明日発表なさいっ!」
 一刀をやりこむると反す刀で曹操たちに睨みつける。
「アンタたちもよ!例えどんな結果になっても恨みっこ無し!それで文句ないわね!」
「明日か……いいわ。」
「異存はない……」
「おーほほほっ、構いませんわ。今日でも明日でも変わりませんもの♪」
 複雑な表情であったがようやく解散となり、静かになった内庭で一刀が詠に噛み付く。
「お、おい、詠、あんなこと言ってどーすんだよ!一晩で決めるなんて無理だぞ。」
578 名前:23[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 23:37:10 ID:jDvQlwJS0
「フン、安心なさい。優柔不断王のアンタにそんなこと期待してないから。ちゃんと策はあるわよ。大体いつまでもこんな状態じゃ孔明の心配通り、いつか奴らに付け込まれるわよ。ねぇ孔明、良い機会じゃない。」
「賈駆さん、なんでそんなに協力してくれるんですか?」
「気まぐれ…かな。大体こういうドロドロしたの孔明苦手でしょ。」
「……はい、実は。」
「ホントに大丈夫か〜?」
「任せときなって。じゃ、ちょっとアンタの机借りるわよ。」
・・・
・・

翌日、皆の前で詠が声をあげる。
「さ〜て気になるご主人様の回答だけど、昨夜うちにご主人様のお三方への気持ちを記しここに封じたわ。」
 そういうと高々と「袁」「曹」「孫」と記した封書を掲げる。
「まあ、恋文なんてなかなか素敵な発表するじゃありませんの。早くお読みになって♪」
麗羽のお気楽な提案にざわざわとざわめく。そんなざわめきを詠が片手で制す。
「袁紹、アンタね〜そうすると選ばれなかった人が傷つくでしょ。優柔不…もとい優しいだけが取り柄のご主人様としては、それは本意ではないのよ。」
「あら、そうですの。ではどうしろと言うのかしら。」
「そこでご主人様は本人にだけ、熱い熱〜い想いを伝え他を傷つけないために、わざわざこんな回りくどいことにしたわけ。だから三人とも、そこに何が書かれていたとしても他言無用。もしそれを守れないような器量なら…」
そこまで言って三人の顔を見る。

「北郷一刀の右に座す資格はないわ!」

 みな複雑な表情で黙っているのを見て話を続け…
「承知の人から取りなさい。ほら!」
そう言うと三本の封書を突き付ける。
 三人ともお互いを意識牽制していたが…
「お〜ほほほ、一刀たらこんな手の込んだ真似を…」
さっと麗羽が「袁」と記された封書を取ったのをきっかけに華琳、蓮華も手にする。
579 名前:24[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 23:40:03 ID:jDvQlwJS0
「手にするからには約を守ってもらうわよ。互いはもちろん家臣にも教えてはダメよ、遺恨が残るから。じゃ、解散!」
ぱんぱんと手を叩くと詠は内庭を後にする。
「おい、あれでいいのか?大体 俺あんな手紙書いた覚えないぞ。」
「と〜ぜんね、私が書いたもの。」
「あ、だからご主人様の机を…筆跡を真似るためですね。三将桃奪の計の奇手ですね…」
「ふふん、さすが諸葛亮孔明、気づいたか。」
「三桃?なにそれ?」
?顔の一刀に朱里がかみ砕いて説明する。
「昔ある國で三人の将軍が王様を蔑ろにして暴れてたんです。武力じゃ王様もかなわない
んで困ってたら、その國の宰相が1番優秀な将軍に王から桃をくれるというと、三人は一つ
の桃を俺が俺がって奪い合った末に自滅しちゃう話で、知で武を制す計略の代表的なものな
んです。今回 詠さんはその奇手を打ったんです。」
581 名前:完[sage] 投稿日:2008/11/22(土) 23:41:55 ID:jDvQlwJS0
「え〜と、つまり?どうしたんだ?」
「おそらく、三人にそれぞれ『貴女が1番』って意味の文を出したのではないかと……」
「なに?そ、それじゃ意味が…」
「あるわよ〜これでしばらく平和を維持できるじゃない。その時間でしっかり三人をコマセば解決するでしょ。」
ニヤリと詠に邪悪な笑いを浮ぶのを見て、一刀の背中に悪寒が走る。
「コマセって、詠おまっ、何言ってるんだ。」
「あら、だってそうでしょ。いずれバレるにしても、それまでの間にアンタのバカチンコでコマシて、バレた頃にはバカチンコ無しじゃいられないメス奴隷にしちゃえば問題無いでしょ♪頑張ってね〜くくっ」
一瞬、一刀には詠のお尻から矢印の黒尻尾が見えた気がした。
 ぞくりっと視線を感じて首を回すと、庭奥で離れて封書を読んでいた三人が顔半分隠した状態で一刀を見つめていた。みな一様に艶めかしく瞳を濡らしている。

「…詠、お前一体ナニ書いた?」

「ふふ、ちょっと自尊心と性癖を愛撫する単語を並べただけよ、刺激的過ぎたかしら。効果絶大みたいね♪」
「お前、、、最初から俺を嵌める気だったな!」
「ふはははっ、今頃気づいたか、バカチンコ!月を寝込ませた罰よ!頑張って種馬するのね!あはははははははははははは〜!」
高笑いする詠にがっくり膝をつく一刀。

 蒼天鮮やかな中原の空に、詠の笑い声がいつまでもこだましていた・・・

   …………………〈終 劇〉…………………

 祝!恋姫夢想 無事発売!やっぱ時間を忘れるほど面白い!

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