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457 名前:風鈴 ◆VOACf8e.7. [sage] 投稿日:2009/05/27(水) 02:05:24 ID:Or2D2kCA0
──真√──

真・恋姫†無双 外史
北郷新勢力ルート:??拠点……?

天真爛漫 ─チイサナオトメ─


いつもの様に規制のため、専用UP板に挙げさせて頂いております。
なんかもうやっちまった感がぬぐえない。だが後悔はしない。
それでは、本作における変わり映えのしない共通の注意事項をいくつか。

・オリジナルルートの為、登場人物同士の呼び合い方が、原作とは異なるものがあります。
  例)風→一刀=原作:お兄さん・本作:ご主人様
    ※独自の呼び名は、そのキャラのイメージによりますので、人によっては違和感を感じるかもしれません。
・エロ成分は極薄……もとい皆無です。
・北郷一刀の立ち位置、作品内にて歩んだ道筋により、『天の御遣い』と言う名の持つ影響力は、原作より強くなっています。
・原作にてセットになっているものを崩す傾向にあります。
  例)張三姉妹→人和  北郷隊三羽烏→凪
・本作にはご都合主義成分が多分に含まれております。用法、用量を守ってお読み下さい。

URL:
http://koihime.x0.com/bbs/ecobbs.cgi?dl=0282

さて、相変わらず投下間隔にムラがありすぎて申し訳ありません。
では、気が向きましたら、お付き合い下さいませ。



──真√──

真・恋姫†無双 外史
北郷新勢力ルート:??拠点……?

天真爛漫 ─チイサナオトメ─

**

 一刀がその女の子を見かけたのは、政務の息抜きに街へ出かけ、大通りを散策している時だった。
 最近気に入っている天津の屋台の向かいにちょこんと腰掛け、ぼーっと大通りを行き交う人を見つめる、
小さな女の子。
 その時は、買い物しているお母さんでも待っているのかなーと通り過ぎたのだが、約半刻(一時間)後、
小腹が空いたので、先の屋台で肉まんでも買おうかと戻ったところ……その子はまだそこに居たのだった。

 これはさすがにおかしい。
 恐らく迷子であろうと思い、店主へ肉まんをもう一つ追加してもらうと、一刀はその子へ近づいていった。




「こんにちは」

 突然自分の前に立った人に声を掛けられ、少女は小さくビクリとしてから、伏せていた顔を上げる。
 目に入ったのは、しゃがみこんで自分に視線を合わせ、微笑んでいる男の人と……

「……肉まん?」

 差し出された肉まん。
 状況が飲み込めずにキョトンとしていると、なし崩しのうちにそれを手渡され、
「隣、いいかな?」
 と男性に言われて、慌てて石段に座っていた腰をずらし、場所を空ける。
 男性は少女が持っていた肉まんを指して「どうぞ」と言うと、自分も手に持っていた袋から同じそれを取り出し、
ばくりっと思い切りかぶりついていた。
 そのいかにも美味しそうに食べる様子に、少女は手渡されていた肉まんをじっとみつめ……
少し考えたあと、意を決した様に口へ運んだ。




 手に持った肉まんをどうしたものかと思案している女の子に、美味しいよと教える代わりに、
一刀は自分の分の肉まんにかぶりついてみせた。
 その瞬間、広がる肉汁と豊満な香り。

──うん、美味い。

 そんな一刀の様子に刺激されたか、少女もまた手渡されていたそれを口に運んでいた。

「……美味しいね」

 そう言って、一刀の顔を見上げてニパッと笑う女の子。
 歳相応のその笑顔がとても可愛く、一刀は「ああ、最近気に入ってるんだ」と言いつつ、
女の子の頭を優しく撫でる。
 そんな一刀へ、少女は「えへへ」とにこやかに笑い、ゆっくりと手の中の肉まんを平らげていった。


「ごちそうさまでした」

 一刀に向き直って、ぺこりとお辞儀をする女の子。
 年齢の割りには、かなり確りした子の様だ。
 一刀はそんな少女へ、さっきまで考えていた疑問を聞いてみることにする。

「ずっとここに座り込んでたみたいだけど、お母さんとはぐれたのかい?」

 一刀にそう聞かれた瞬間、少女は泣きそうになるのをこらえるかのように表情をゆがませ、
小さくコクリと頷く。
 案の定か。
 予想道理であった以上、一刀が取る行動は一つしかなかった。
 彼はわしゃわしゃと少女の頭を撫でた後、

「じゃあ、俺が一緒にお母さんを探してあげるよ。これでもこの街じゃ結構顔が利くんだ」

 その一刀の提案に、女の子の表情は一気に明るくなった。
 そして一刀はその表情を見て、ああ、やっぱり声を掛けて良かったなと、しみじみ思うのだった。

 その後、少女と名前を教え合うーー彼女の名前は璃々と言ったーーと、一刀はおもむろに少女を肩車し、
「璃々ちゃんのお母さん居ませんかー?」
 と声を挙げながら、ついでにと言いつつ、街中を案内してあげるのだった。



 それから約半刻あまり。警備隊から、璃々ぐらいの年頃の子を捜している女性がいると報告を受け、
そちらの方へ向かってみると……そこには、薄紅色のチャイナドレスの様な服装の、スタイルの良い美人が一人。
 女性は、一刀に肩車された璃々を見るや、
「璃々!」
 と、安堵の表情を浮かべて駆けてくる。

 一刀は璃々を肩から降ろすと、軽く背中をぽんっと叩いて促してやった。
「おかーさん!」
 途端に嬉しそうな顔で駆けて行く璃々。
 そしてすぐに二人は抱き合い、女性は、無事で良かったと、優しく璃々を撫でる。
 そして一刀はその様子を、うむうむと頷きながら見守るのだった。


「本当に有り難うございました」
 ややもして、璃々と離れた女性が深々と頭を下げる。

「梓潼に居る友人を訪ねる途中で、久しぶりに此処に寄ってみたのですが……
記憶にあるより随分と変わってしまって、恥ずかしながら迷ってしまいました。
その上璃々ともはぐれてしまうなんて……」
「お母さん、きをつけないとだめだよー」
「うん、ごめんね、璃々?」
 ぷぅっと頬を膨らませて言う璃々に、すまなそうに謝る女性。
 そんな微笑ましい様子に、一刀の頬も自然と緩む。
「まぁ、お互い無事だったんだし、いいじゃないですか。
 それに俺も、璃々ちゃんと街を歩くの楽しかったですしね」
 そう言ってははっと笑う一刀へ、
「そう言えば、まだ名を名乗っていませんでしたね。私は黄漢升といいます。
……改めまして、璃々と一緒に居てくださって、有難うございました」
 ふわりとした、花の様な笑顔を浮かべて礼を言う。
「ところで璃々、ちゃんとお礼はしたの?」
 そして続けて璃々へとそう言うと、りりは「ん〜」と唸ってから、
クイクイっと一刀の服の袖を引く。
「ん?」
 何かあるのかと、一刀が璃々へと顔を寄せた所で──

チュッ

 ……と言う擬音が聞こえそうな感じに、璃々が一刀へとかるく口付け、
「お兄ちゃん、ありがとうございました」
 にぱーと笑って、ぺこりと頭を下げた。
「ははっ、こっちこそ、ありがと」
 そんな璃々の様子に心を和ませながら、わしゃわしゃと頭を撫でてやる。
 そしてそんな二人の様子を、漢升は微笑みながら見守って居るのだった。




「……では、私達は失礼させて頂きます」
「はい。……道中、お気をつけて」

 ……何と言うか、色々な意味で将来が楽しみな子だ。
 なんて事を思いながら、去っていく親子の背中を見送った一刀は、不意にある事に気づく。

「そういえば……黄漢升って黄忠のことか!」

 気づいた時には、既に二人の姿は見えなくなっていたのだった。

「……ま、縁があればまた会えるか」




「ねーねーおかーさん」
「なあに、璃々?」

 梓潼へ向かう道すがら、不意に璃々が言った。

「璃々、しょうらいお兄ちゃんのおよめさんになりたい!」

「……あらあら」

 言われた黄忠は、突然の娘の婿候補の出現に、困ったような嬉しいような、
何ともいえない微笑を浮かべるのであった。

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