[戻る] [次頁→] []

793 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/12/22(火) 21:42:39 ID:HJxn3DEQ0
特に問題なければ呉アフター短編桃香します
オリキャラ?として孫登を動かしますので、イラネな方にはご容赦願いたく
794 名前:父さまといっしょ・孫登編(1/5)[sage] 投稿日:2009/12/22(火) 21:51:18 ID:HJxn3DEQ0
「もーいーくつねーるーとー、くーりーすーまーすー…っと」
今年最後の月を迎え、年越しの準備に慌ただしく行き交う民たちで賑わう市の片隅で、
何とも気の抜けたクリスマスソングをぼそりと呟くのは天の御遣いこと北郷一刀。
魏との決戦後、戦災の復興と治安回復・維持、新たな交易と新田畑の開墾に明け暮れた10年。
友国蜀との関係も良好に、今では国境など気にせず民たちが行き来できるまでになった。

「父さま、『くりすます』とは何ですか?」
書簡に使う墨が切れたのをこれ幸いと、息抜きがてらに市へ出てきた一刀の裾を握って
見上げているのは、蓮華との間に産まれた愛娘の一人、孫登。
今年8歳になる娘に訊かれ、久しぶりに『天の世界』の話をする一刀。
「クリスマスって言うのはね、キリスト…って言ってもこっちには伝わってないのか、えー…」
「『きりすと』?」
「あー、そんな名前の『神様の子供』がいたんだよ」
「神さまの子ども?父さまみたいな方ですか?」
「いやいやいや、俺はそんな大それたもんじゃないから」

天の御遣いと呼ばれ10年余、最初の頃こそ民たちからは『天の国から来た男』として
神妙に扱われていたが、今やもっぱら『孫家の婿殿』などと呼ばれている始末である。
795 名前:父さまといっしょ・孫登編(2/5)[sage] 投稿日:2009/12/22(火) 21:56:53 ID:HJxn3DEQ0
「それで、だ…そのキリストさんの誕生日を祝う祭り…みたいなもんかな」
「お祭りなのですか!」
祭りと聞いて孫登は目を輝かせる。
蓮華に似たのか少々自制心が強すぎる感のある子だが、まだまだ遊びたい盛りのようだ。
「うん、元々は厳粛な催しだったらしいけど、俺が居た国に伝わった頃には大分様変わりしていてね」
話に食いつく娘に、少し嬉しくなった一刀は話を続ける。

「家族や友人、恋人同士でケーキや御馳走を食べたり、贈り物をし合ったり、まぁ色々だ」
「ケーキ!あまくてふわふわ…でも、おたんじょう日にしか食べてはだめだと母さまが…」
「あー、まぁ確かに贅沢品ではあるしなぁ」
ケーキは俺が天から持ち込んだ菓子として、今や様々な種類が大陸全土に広まっている。
派生してパイやらタルトやらまで作ってしまうのだから、敢えて言いたい、職人ってすげえ。
ともあれ王家といえど質素倹約が身上の孫家である。
「まぁ、誕生日と同じくらい特別な日ってことなんだよ…そうだ、大事なことを忘れてた」
「だいじなこと?」
蓮華によく似た「キョトン」とした顔が可愛らしい。
797 名前:父さまといっしょ・孫登編(3/5)[sage] 投稿日:2009/12/22(火) 22:01:17 ID:HJxn3DEQ0
「クリスマスの夜にはね、寝ている間に『サンタクロース』という人がやってきて、
良い子の枕元に贈り物を置いて行ってくれるんだ」
パァっと顔を綻ばせる孫登だったが、すぐに笑みを消して顔をうつむかせてしまった。
お腹でも痛くしたのかと心配になる一刀。
「どうした?お腹でも痛いのか?」
「…ちがいます」
「それじゃあ…」
どうしたと聞く前に、孫登の目から涙がこぼれた。
「登はいい子ではないから、おくり物はいただけません…」
「どうしてそんな、登は良い子だぞ?」
イヤイヤと首を振る孫登。
「登はわるい子です、今もいけないことをしています…」
「どうしてそんな…」
「父さまをひとりじめしています…」
「………」
800 名前:父さまといっしょ・孫登編(4/5)[sage] 投稿日:2009/12/22(火) 22:05:52 ID:HJxn3DEQ0
「父さまがお仕事でつかれているのに、登はわがままを言ってついてきました」
「………」
「妹たちも皆、父さまといっしょに来たかったにちがいないのに、登は自分だけ…」
「登…」
「…じぶん、だけっ…」
嗚咽をこらえぼろぼろと涙を流す孫登を、ぎゅっと抱きしめる一刀。
「…登は良い子だ」
胸の中で首を振る孫登。
「登は自分がいけないことをしても、すぐ反省することができる子だ」
ぐすぐすと鼻を鳴らす孫登。
「それはとても簡単だけれど、実際に出来る人はそう居ないんだよ」
見上げる孫登の目元に、そっと口づけ涙をぬぐう。
「そんな登だもの、たとえサンタクロースが贈り物を忘れたとしても、俺が受け取りに行ってくるよ」
「…っ、どうざまっ!」
もはや我慢をすることも無く、ただただ一刀の胸の中で泣いて、泣いて、泣いた。
802 名前:父さまといっしょ・孫登編(5/5)[sage] 投稿日:2009/12/22(火) 22:08:34 ID:HJxn3DEQ0
泣き疲れて眠ってしまった孫登を背に城へ戻った一刀。
背負われた孫登を見て、異母妹たちは「わたしも、わたしも」と騒ぎはじめるが
一刀が指を口元にあてて「今は登の番だから」とたしなめると、泣き腫らした姉の寝顔を見て
妹たちは静かにそれぞれの母の元へと戻って行った。

「そう…登がそんなことを」
登を背負ったままの一刀が部屋に来て驚く蓮華だったが、事の次第を聞いて溜息をつく。
「あまりわがままを言わないから、ずいぶんと大人びた子なのだと思っていたのだけれど…」
また溜息。
「私は、母親失格ね…」
娘のように顔をうつむかせる蓮華の顎をつまんで上を向かせる。
もはや見慣れた「キョトン」とした顔に、そっと顔を重ねる。
「君は良い母親で、良い妻で、良い王だよ」
何度唇を重ねても、何度想いを重ねても、変わらず顔を赤らめる蓮華。
「いつもそうなのだから…でも、ありがとう一刀」
「どういたしまして、と、そうだ一つお願いが」
口元を笑みの形にしている一刀に眉をひそめる蓮華。
「書簡の提出は明後日まで、延ばせないわよ?」
「えー…じゃなくて!ケーキ買ってくれないか?一切れでいいから」
「…ケーキ?」

クリスマス当日、文字通り山のようなケーキを目の前に、孫登と異母妹たちが大はしゃぎしたことは、また別のお話。
804 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/12/22(火) 22:13:15 ID:HJxn3DEQ0
桃香完了、支援物資に感謝します。
なんか尻すぼみになってしまって恥ずかしい。
なんか蓮華の娘ならこんな感じかなー、と脳が湧いて書いてしまいました。

もしかしたらまたそのうち、ょぅι゛ょ編桃香するかもしれません。

 [戻る] [次頁→] [上へ]