[戻る] [←前頁] [次頁→] []

185 名前:曹魏の金箍棒曰く、[sage] 投稿日:2009/12/29(火) 01:56:02 ID:NqUc0FCs0
本スレの空気が険悪なので、特に問題なければこちらで呉アフター短編桃香したく思います
オリキャラ?として甘述を動かしますので、イラネな方にはご容赦願いたく
187 名前:父上といっしょ・甘述編(1/5)[sage] 投稿日:2009/12/29(火) 02:00:58 ID:NqUc0FCs0
今日も愛する妻の作った夕食を美味しく頂いた後は、残った政務を処理するべく自室で筆を動かす。
城で働く者たちの食事はお抱えの料理人や女官によって賄われているのだが、
俺と俺の家族…妻と子供たちの分は、妻たちが当番制で用意することになっている。
言い出しっぺは孫家の大番頭である祭。

曰く、『我らはこやつを柱とする家族となるのだから、家族の食事は妻の仕事であろう』と。
以降、蓮華・祭・穏・思春・明命・亞莎・小蓮らは自分の担当する日には皆そわそわと仕事を片付け、
娘を連れては市へと買い出しに行き、腕によりをかけて料理をするようになった。
俺はというと、皆がそれに時間を割けるように、その分の仕事を引き受けているのだが、
皆の美味しい手料理を毎日食べられることを考えれば、全く苦にならないわけで。

ふと、筆の動きを止めると、自分のニヤついた顔をぐにぐにと両手でほぐす。
「いかんいかん…」
思い返すのは今晩の食事の席の事。
今回の当番は蓮華だったのだが、娘の孫登が「どうしても」と手伝いを願い出て、
「それならば」と蓮華が頼んだのは食後の桃の皮剥き。
登の慎重で丁寧な性格からか剥き方は綺麗であったが、時間をかけ過ぎた為に真白な果肉は
茶色く変色し、よく冷えていたであろうそれは、すっかりぬるくなっていた。
食べようとして桃をつまむと、登の不安そうな視線を感じる。
口に含み、咀嚼し、嚥下すると甘味と酸味の他に、幸せな何かで腹に膨れた感じがした。
「美味しいよ」と声をかけると、パァッと顔を輝かせ母に抱きつく娘を見て、自然と笑顔になる。
188 名前:父上といっしょ・甘述編(2/5)[sage] 投稿日:2009/12/29(火) 02:03:11 ID:NqUc0FCs0
共に食事をしていた他の母娘たちからは嫉妬と羨望の眼差しを一身に受けたが、
それもまた俺の務めと思いはするものの、どう機嫌を直したものかと贅沢な悩みが頭を占めた。

そこまで思い返してから、軽く頭を振って気持ちを切り替える。
「さて、仕事仕事、と」
再び筆を取ろうとしたその時、外から何かが聞こえた。

手を止め、耳を澄ませてみる。
(これは…素振り?)
窓の外から聞こえてくるかすかな風切り音は、耳にも懐かしい剣道場での稽古。
(誰かな?)
と格子から覗いてみると、動く影は耳の後ろにお団子ふたつ。
(…甘述か)
眉を八の字にすると、筆を置き厨房へと足を運ぶ父。

「やっ!…はぁっ!…たぁっ!」
敬愛する母の鍛錬する姿を見て、覚えたことを模倣する動き。
手数を少なく、鋭く、早く。
対峙する相手の影を想像し剣を振ることにのみ意識を集中する甘述。
と、背後で砂利を踏む音が聞こえ、反射的に木剣を振り払った。
189 名前:父上といっしょ・甘述編(3/5)[sage] 投稿日:2009/12/29(火) 02:05:28 ID:NqUc0FCs0
かぁんっ!

乾いた音が夜陰に響いた。
甘述の目が、まず自分の木剣を受け止めた木剣をとらえる。
次にその木剣を持つ者の手を見て、腕を見て、肩を見て、顔を見た時…血の気が引いた。
「ちっ!ちっ、ちちちちっ!」
「落ち着け、述」
からん、と木剣を落とし痺れた手を振りながら、慌てふためく娘をなだめる。
「父上っ!も、もうしわけもなくっ!」
地面に膝をつき頭を下げる甘述。
木製とはいえ父に対して剣を向けてしまったことは、甘述自身が想像もしないほどに大きく胸を穿った。
(父上に嫌われる)
その思いが小さな胸に広がると、鼻の奥がツンと痛み、目から涙がこぼれそうになる。
足元ががくがくとして倒れそうになり、早鐘のように打ち鳴らされる自分の心音に耳が遠くなる。

『述…甘述…』
父が遠くで呼ぶ声が聞こえる。
『述、大丈夫か?』
父の声が近付いて、自分を心配してくれている。
『述、泣くな。俺は平気だから』
父の声がもっと近づいて、温かい手が自分の頭を撫でてくれている。

顔を上げると、父の心配そうな顔が目の前にあり、その顔が笑顔に変わった。
「すごいな述の打ち込みは、父の手が痺れたぞ」
甘述の大好きな顔が、そこにあった。
190 名前:父上といっしょ・甘述編(4/5)[sage] 投稿日:2009/12/29(火) 02:08:35 ID:NqUc0FCs0
「ほら、肉まん。蒸かし直してきたから温かいぞ」
と、冷たくなった甘述の手に、厨房から失敬してきた肉まんを手渡す。
「あ、ありがとうございます…」
赤くなった目元をぐしぐしとこすりながら受け取る娘の頭を優しく撫でる。
じんわりと手を温めてくれる肉まんを口に、父の愛情を文字通り噛み締める。
南方に位置する建業といえど、夜は身体の熱を奪うのだ、との父の言葉に身体の冷えを自覚する甘述。

ぶるっと身体を震わせると、不意に両脇に手を差し入れられ、
抱きあげられたと思ったら、ぽすんと父の膝の上に乗せられた。
急転した状況に対応できずにいると、お腹に手をまわされて、しっかりと父の懐に収められてしまった。
状況が把握できたと同時に、甘述の顔が真っ赤になる。
「ちっ、父上!述はもう温まりましたからっ!」
だが腹と背中に感じる父の温もりは魔性のもので、自分から離れることは不可能だと甘述は悟る。
抗議の声は徐々に小さくなり、やがて甘述の手は父のそれに重ねられた。

「…述は早く母上のようになりたいです」
ぽつりと呟いた娘の言葉は、懸命に考えた末の想いであろう。
「母上たち、姉上、妹たちを守れるように…」
それは尊く、得難く、純粋な想い。
「父上を…守れるよう、強くなりたいです」
191 名前:父上といっしょ・甘述編(5/5)[sage] 投稿日:2009/12/29(火) 02:11:45 ID:NqUc0FCs0
甘述を抱きしめる手が自然と強くなり、顔を赤くした娘が見上げてくる。
「述は偉いな…けど」
言葉尻に不安な顔をする娘に、父は続ける。
「できれば稽古は昼間に、な?」
と、言われて娘は困り顔。
「は、恥ずかしいです、未熟な姿を見られては…」
はははと笑う父の手を、ぺちぺちと叩く娘の姿。


(全く、女の扱いばかり長ける奴だ…が)
物陰からずっと娘の稽古を見守っていた母親がひとりごちる。
(父親としての務めは果たしてくれている…か)
ならば、と。
(私も母親としての務めを果たそう…)
夫と娘のじゃれ合いに目を細めながら、思春は腹を決めた。


翌朝、甘述の嬉しそうな声で一刀は起こされた。

「母上が述に稽古をつけてくれるのですっ!」
満面の笑みを浮かべた娘の顔に、気持ちの良い朝を迎えたと感じる一刀であった。
192 名前:曹魏の金箍棒曰く、[sage] 投稿日:2009/12/29(火) 02:19:01 ID:NqUc0FCs0
桃香完了、よもやのちんこ棒支援で叩きかけをぶん投げようとしたのを
思い留まったのは正しかったのかそうではないのか…

ょぅι゛ょ編はまだほんのちょっとだけ続く…かもしれないんじゃ

 [戻る] [←前頁] [次頁→] [上へ]