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865 名前:まほつか[sage] 投稿日:2009/05/21(木) 11:20:50 ID:WjYjhC/n0
失礼します。
― 魔法遣い一刀 5 ― を投稿させて頂きました。
よければ読んでみて下さいまし。


・蜀ルートED後です。
・これはファンタジー要素を多少含む為、苦手な方はご注意下さい。
・ファンタジーによりキャラが壊れております。苦手な方はご注意下さい。
・見苦しい文章だとは思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
・これで最後となります。
 勢いだけのSSにお付き合い頂き、ありがとうございました。

URL:http://koihime.x0.com/bbs/ecobbs.cgi?dl=0270



― 魔法遣い一刀 5 ―


一刀の魔法により、理想としている自分へ近づく事に成功した朱里。
今にも舞い上がってしまいそうな気持ちを抑え、落ち着いた足取りで自室へと戻っていた。
「ふふ。ご主人様には感謝してもし尽くせないわ。お礼は“夜”にたっぷりと返させて頂かなくては…うふふ」
余裕たっぷりの笑みを浮かべ、先に待っているであろう情事に思いを馳せる。
朱里の中でシミュレーションは完璧だ。
「雛里ちゃんには悪いけど、ご主人様を虜にしてやるんだから」
グッと少し強めに拳を握る。
まるで親友への罪悪感を抑え付けるかの様に…
「さて、先の事は置いておいて、今はこの書を読み解かなきゃ…」
1冊の本を手に取りページを捲る。
「……………え?」
そこで朱里の動きが止まる。
書いてある文字を指でなぞり、段々と顔色が変わっていく。
「…嘘……」
持っている本を卓の上へ置き、本棚から別の本を引っ張り出してはパラパラとページを捲る。
そして何かに気付いた朱里は近くの本を掴み、部屋を飛び出した。

〜 〜 〜 〜 〜

「えええええ! 文字が読めない!?」
「はぃ〜」

“ももちゃん調教事件”の重要参考人として尋問を受けていた一刀の元へ朱里は駆け込んだ。
呼吸を整える間も無く持っていた本を開き、
『これ、なんて読むんですか〜!?』
と涙を流しながら叫んだのである。
別れる前の落ち着いた雰囲気が今は見る影も無い。

「お、落ち着け朱里。本当に読めない…のか?」
「うぅ…」
ブンブンと何度も頭を縦に振る朱里。
溢れ出る滝の様な涙が彼女の気持ちを物語っていた。
「なるほど…字が読めないからチョイスがこの本なのか…」
「ごしゅじんさま〜。“ちょいす”って えらぶってことだったよね?」
「お、ももはすごいな〜。 ちゃんと覚えてたんだな〜」
「えへへ! えらい? ももえらい?」
「おう。ももはえらいぞ〜」
頬を緩みに緩ませ、桃香の頭を撫でる。
呼び方まで『もも』に変え、なんやかんやでミニ桃香にデレデレの一刀であった。
尚、その様子を見ていたA紗審問官の視線が、親衛隊でも裸足で逃げ出す程鋭くなっていた事を追記しておく。
閑話休題。
桃香とほのぼの空間を作り出していた一刀の裾を朱里が引っ張る。
「それでご主人様。私の持ってきた本と言うのは…」
「あ、ああ。え〜っと…『異国式で学ぶ房中術 ― 応、癒す。応、癒す ―』…だって」
「………は?」
「え?だから『異国式で学ぶ房中術 ― 応、癒す。応、癒す ―』って、異国式ってどこのだよ…」
「はわわ!!(ぼふん) そ、それはダメです!!」
一刀の手にある『異国式で学ぶ「わー!わー!」』を、飛び跳ねてなんとか取り返す朱里。
パラパラとページを捲り中身を確かめた所、確かにその様な内容が記載されている。
「う〜…なんでこんなの持ってきちゃったんだろ………あれ? 読めてる…?」
どうした事か、頭の中に次々と文字が浮かび上がり、まるで先程の出来事が嘘の様である。
ぱぁっと顔を輝かせ、一刀を見上げる。
「ご主人様!読めます! 何故か読めるようになりました!」
朱里を見下ろす一刀は、目と口を大きく開いたまま動きを止めている。
「ご主人様…?」
その一刀を見て、不思議そうに首を傾げる朱里。
そして一つの疑問が生まれる。
「………あれ? 私、“見下ろされてる”…?」
魔法を掛けられて以来、目線は一刀と大体同じ位置にあったはず。
だが今は同じ目線にミニ桃香がいる。(ちなみに桃香も固まったまま動かないでいる)
恐る恐る視線を下へとズラすと……そこはペッタンコだった。
さらに言えば服装もチャイナドレスからふんわりスカートになっている。
これはつまり……
「元に戻ってるー!?」

それからの朱里の落ち込み具合は凄まじいものだった。
全員で…ミニ桃香でさえも必死になって朱里を励まし続け、なんとか普段の状態まで回復させた。
そして元に戻ってしまった原因を探る事となったのである。

「魔法は2度掛けしていないから、きっと何かの作用があって元に戻ったはずなんだ」
腕を組み、首を傾げながら唸る一刀。
「しかし朱里が何かしら特別な動作をしていた訳でも無いですしな…」
「そうね…私達も傍で見ていたけれども、何も違和感は感じなかったものね」
様々な意見が飛び交うが、中々結論はでない。
「一刀。ここは状況を再現するしかないんじゃないの?」
「だな。俺も鈴々の言う通り、また同じ状況を作りだすしかないと思う」
そう言って朱里の持つ本へ視線を向ける。
「はわわ!(ぼふん) ま、またコレを使うんですか!?」
「しゅ、しゅりちゃん! へんかしちゃったよ!」
「へ? あ!ほ、本当だ!」
突然現れた煙に包まれ、中から姿を現した朱里(大)は自分の姿を確かめた。
「ほ…。大きい…」
……ドコを基準にしているのやら。
だが、またもやあの問題が浮上してくる。
「はう……また字が読めなくなりました…」
頭の中から文字と言う文字が抜け落ちていく様な感覚がする。
「むぅ…これはいよいよを持ってその本が怪しいですな…」
アゴに手を添え、朱里の持つ本を凝視する星。
だが、その意見を一刀は否定した。
「いや、原因はその本じゃないよ、星」
「主…?」
本を後ろ手に隠して苦笑いを浮かべる朱里(大)を見つめ、妙に落ち着いた雰囲気を醸し出す一刀。
「ご主人様。もしや何か分かったのですか?」
愛紗の問いに不適な笑みを浮かべ、朱里に言葉を掛ける。
「朱里。もう一度『はわわ!』と言ってみてくれ」
「え?な、何故ですか?」
「いいから。ほら、早く」
「わ、分かりました」
胸に手を置き、一度大きく深呼吸をする。
「は、はわわ!」

ぼふん

またもや煙に包まれ、朱里の体は元に戻っていた。
「こ、これは!?」
呆気に取られる全員を余所に、一刀は右拳の親指をグッと立て、朱里に向けて突き出した。
「おめでとう朱里! 君も今日から“魔法使い”だ!」
「え……えええええええ!!」
いきなりの一刀の宣告に驚愕の声を上げる朱里。
「ちょ、ちょっと待って下さいご主人様! わ、私、ご主人様の様な魔法は使えませんよ!?」
そう言って右手を差し出す。
力を込めているようだが、光が集まる気配は無い。
「わ、私達にも分かるように説明して頂けませんか?」
他の女性陣も困惑している様だ。
「まかせろ!」と一刀は胸を叩いた。
「まず、魔法とは俺が使えるものだけじゃないんだ。
 本人の力、もしくは意思により様々な現象を起こせる能力を指し、その中の一つに“変身能力”があるんだ」
「ん?ちょっと待ってくれご主人様。変身って事はあたしも“まほう使い”なのか?」
翠が自分の手を見つめながら質問する。
「いや、翠はちょっと違うかな。
 “変身の能力”で重要なのは“自分の意思で変身できること”と“変身の呪文”だ。
 朱里の場合、変身の呪文は『はわわ!』が該当している訳」
「なるほどな…確かにあたしは自分の意思で元に戻れないや」
ちょっとだけ期待していたのだろうか、頭の耳が垂れている。
「さらに、朱里の変身は普段との対極…体型と知識が逆転してしまうと言う、
 なんとも使いどころがイマイチ分からないんだけど、逆にソコがイイ!」
「はう!」
「ちょっとちょっとごしゅじんさま。しゅりちゃんが おちこんじゃうよ!」
「大丈夫だ朱里。俺はどちらも可愛いと思うぞ!」
「はぁう!」
「…ぶぅ〜」
一度落とし、そして上げる。
女性を射止める為の一つのテクニックではあるが、勢いに乗ったままナチュラルにこなすあたり、
流石はちんこ太守と言ったところである。
「まぁそんな訳で、『はわわ!』の呪文で自在に変身できる朱里は“魔法使い”なんだ!」
周りから「おぉ〜」と感嘆の声と共にパラパラと拍手が起こる。
朱里本人は困惑したままオロオロとしているのだが。
「今まで『はわわ軍師』と揶揄されていたけど、これで名実共に『はわわ軍師』…
 いや、『はわわ!軍師』になれるぞ朱里!」
「え゛!?」
「普段はちょっとオマヌケな朱里(大)。 しかし、有事の際には「はわわ!」の呪文で『はわわ!軍師』に変身!
 その豊富な知識と戦略で華麗に切り抜けるのであった……どうだ!格好良くないか!?」
「さ、流石にそれ「かっこいい…!」 え゛え゛!?」
「かっこいいよ! ねっ! 『はわわ!軍師』!」
「よもや朱里にその様な技が与えられるとは…これからは『はわわ!軍師』に敬意を込めさせてもらおう」
「………(華蝶仮面にも使える…!)」
「いいなぁ『はわわ!軍師』…あたしなんかまんま犬だしなぁ」
「ん〜。鈴々も『はわわ!軍師』みたいな変化が良かったかも…」
「が、頑張って朱里ちゃん」
紫苑一人が朱里の気持ちを察している様だが、他の面々は大分気に入っているようだ。
こうして『はわわ軍師』と呼ばせない為の目論見は、『はわわ!軍師』へパワーアップさせる結果となったのであった。
「はわわ!(ぼふん) な、なんでこうなるの〜〜〜」

――――――――――EPILOGUE――――――――――

「さて。これで紫苑以外の全員が“まほう”に掛かった訳ですが…これからどうされるのですか?」
様々な変貌を遂げた仲間達を見回し、愛紗は一刀に問いかける。
「ん。 皆…って、朱里はいなかったけど、桃香に魔法を掛ける際に言った言葉を覚えているかな?」
「“後1度魔法を使うと何かが起こる”と言うものでしたが…そう言えば何も起こっていませんね」
「そう、それ。 そして、何も起こっていない理由はと言うと…」
左手を突き出し拳を握ると、なんとピンク色の光が集まりだしたのだ。
「俺が新しい魔法を覚えたんだ」
「……なんだろう。すごくいやらしく感じる色なんだけど」
「ごしゅじんさまの とくしょくが でてるんだとおもう!」
「はわわ!(ぼふん) ならば確実にアレ系の魔法ですね!」
女性陣がすき放題な言葉で一刀をなじる。
朱里に至っては、喋る度に『はわわ!』を付け大きくなったり小さくなったりしている。
ヤケクソになっているらしい。
「違う違う! 聞いて驚け! これはなんと『変化を戻せる魔法』なんだ!」
そして左手からピンク色の光が放たれる…

〜 〜 〜 〜 〜

「まったく!信じられない事をするご主人様だぜ!」
翠が厳しい表情で腕を組み、一刀を見下ろしていた。
現在正座している一刀を、紫苑を除く女性陣が取り囲み、お説教中なのである。


『違う違う! 聞いて驚け! これはなんと『変化を戻せる魔法』なんだ!』
一刀の左手から次々と放たれるピンク色の光が、魔法を掛けられた6人の体を貫いていく。
貫通したピンク色の光には、一刀が掛けた魔法の光が引っ付いていた。
そしてそれらは混ざり合い、やがて消えていった。
光が消えると同時に翠、桃香、朱里が元の姿に戻って行く。
愛紗と星、鈴々は光の通った場所を手で押さえ、静かに目を閉じていた。
『ふぅ…』
一仕事終えたかのように良い笑顔で汗を拭う一刀。
突然の事に言葉も出ない紫苑。
そしてゆっくりと目を開いていく6人。
その中で星が一刀を見据えながら一歩を踏み出し、他の5人も無言のままそれに続く。
星からガッシリと肩を掴まれ、下に向けて力を込められる。
『お?お?』
成す術も無いまま正座させられる一刀。
顔を上げると6人の顔がズラッと並んでいた。
妙な迫力があり、一瞬体を震わせる。
遅れて寄ってきた紫苑と目が合うが、『これは助けきれません』と言わんばかりに首を横に振っている。
無言で取り囲んでいる6人が口を開く。
『主…新しく覚えた“まほう”が『変化を戻せる魔法』とはどう言う事ですかな…?』
『え…?』
『つまり、元に戻せる算段もないまま私達に魔法を掛けた訳ですよね…?』
『…………あっ』
『あっ じゃねーよ!まったく!信じられない事をするご主人様だぜ!』


とまあそんな訳で、あまりにも横暴過ぎる一刀に非難轟々なのである。
「強引過ぎるのもダメだよご主人様! 分かった?」
「はい…申し訳ない…」
一刀の反省の言葉が出たところで包囲網が解かれる。
「なんだか今日のお兄ちゃん変なのだ」
首を傾げながら鈴々が漠然とした疑問を投げかける。
「確かに…普段はここまで強引な方では無いと思うのだが…」
愛紗も鈴々と同じ様に違和感を感じていた。
すると一刀が事も無げに言い放つ。
「あ、多分コレのせいだと思う」
そう言ったかと思えば、左手にピンク色の光を集め自分の胸へと放った。
体を通り抜けたピンク色の光には、先程の6人と同じ様な魔法の光が付いており、混ざり合って消えていった。
「「「「「「「え……えええええええええ!?」」」」」」」

一刀の話に依れば、朝起きて魔法が使える様になっていたのは本当らしい。
ただ、どんな効果があるか分からない為にまず自分に掛けてみたところ、
段々と“魔法を掛けたい”欲求に駆られていったのだそうだ。
ちなみに、自分に『変化を戻せる魔法』を使ったせいなのか、魔力は無くなったみたいである。

「魔法に掛かっている間は、お酒を飲んで気分が舞い上がっている時に近いかな」
一刀の告白に驚きを隠せないでいる様だが、今までのおかしなテンションはこれで納得がいく。
「魔法の仕業とはいえ、皆に迷惑を掛けてごめん」
そう言って深々と頭を下げる一刀。
「もういいよご主人様。こうやって皆戻ったんだしさ」
桃香が優しく声を掛ける。
全員が同じ気持ちだったらしく、桃香の言葉に頷く。
「ありがとう皆…」
「だけど!迷惑料はちゃんと貰うんだからね!」
「め、迷惑料…?」
「うん! ここにいる皆、1人ずつと日交代で“1日でぇと→朝までこぉす”だよ!」
「おお、流石は桃香様! 良い考えに御座います」
「にゃははは! でぇと♪ お兄ちゃんとでぇと♪」
「はわわ! ひ、雛里ちゃんも一緒にいいですか!?」
「うむ。ねっとりたっぷりと楽しみたいところですな」
「う〜…ふ、服どうしようかな…あの可愛いのは、よ、夜に着るとして……」
「うふふ。そろそろ2人目が欲しいと思っておりましたの」
一刀に拒否権などあるはずも無く ―あったとしても断らないのだろうが― 先のデートに思いを馳せる女性陣。
尋常ではない騒動に巻き込んでしまっても、変わる事無く自分を慕ってくれる女性達に心が満たされていく一刀。
だが、1日中一刀と一緒に居られる事など殆ど無い為、他の武将達が黙ってはいないだろう。
また騒ぎが起きるかも知れないと言う予感が一刀の胸をよぎるが、
なんとかこの“1日でぇと”は成功させようと誓う一刀なのであった。



おわり

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