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755 名前:まほつか[sage] 投稿日:2009/05/16(土) 16:35:11 ID:IznLB9IR0
失礼します。
― 魔法遣い一刀 4 ― を投稿させて頂きました。
よければ読んでみて下さいまし。


皆様色々と議論をされており、少しでも読みやすい様にと
あらすじをつけようかと思いましたが、次で終わりますのでどうかご容赦下さい。
URLについては結論が出ていない様なので、始めの“h”は抜きたいと思います。


・蜀ルートED後です。
・これはファンタジー要素を多少含む為、苦手な方はご注意下さい。
・ファンタジーによりキャラが壊れております。苦手な方はご注意下さい。
・見苦しい文章だとは思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
・次回で最後になります。

URL:http://koihime.x0.com/bbs/ecobbs.cgi?dl=0268



― 魔法遣い一刀 4 ―


一刀が魔法使い宣言を行ってから数刻。
一刀の不意打ちから始まった変化騒動も既に4人が餌食(?)となり、
その度に騒いでいた一行であるが、紫苑の提案により全員で休憩を取る事となった。
ようやく静かなティータイムが始まる……訳は無かった。
とりあえず各々の様子を見てみたいと思う。


一刀が席に着くと同時に左隣へ陣取り、ピタリとくっ付く愛紗。
即座に用意されているお菓子を摘み、笑顔で「あ〜ん」の体勢に入る。
ちなみに、当たっている。

その行動を見逃すはずも無い桃香。
一刀の右隣へ座り、体をすり寄せる。
愛紗と同じくお菓子を摘み、「ご主人様〜。こっちも食べて〜」とせがみ始める。
こちらは当てている。

そんな二人を余所に突然服を脱ぎ始める星。
“何故か”手からすっぽ抜けたお菓子が背中へと入り、混乱スイッチがON。
早く取り出そうとして身をよじらせたり、服を引っ張ったりしている間にはだけてしまった様だ。
好きで脱いでいる訳では無いらしい。
純白の下着が眩しい。

星の隣ではお菓子と格闘している翠。
先程カップは上手に持てた(両手の肉球で挟んでいた)ものの、脆いお菓子では中々思い通りにいかない。
砕かない様に細心の注意を払い、微妙な力加減に腕をプルプルさせながら口元へと運ぶ。
が、後少しと言うところで破砕。
頭と一緒に耳も垂れている。

意外にも我関せずといった態度の鈴々。
足を組み、左手を右肘に添え、お茶の香りを楽しんでいた。
「ふふ。皆も落ち着いてお茶を楽しめば良いのに」
と言う言葉とは裏腹に、つま先で床をトントン叩き、横目で一刀達を気にしている辺り、内心穏やかでは無い様だ。

そんな鈴々達の様子を見て優しく微笑む紫苑。
頬杖をついて楽しげに眺めている。
しかし、豊満な胸を卓の上に乗せ、しっかりアピールはしている。
抜け目無し。

そして朱里。
卓上の胸を見て驚愕の表情を見せたかと思えば、直ぐに顔を伏せてしまった。
(もうすぐ…もうすぐだもん! だから、だから泣いちゃだめよ朱里!)
……掛ける言葉も御座いません。

そんな騒ぎの中心に居ながら、いつもとは少し違う日常に心を満たされる一刀であった。
…かずとJr.も別の意味で満たされつつあるようだが。

〜 〜 〜 〜 〜

さて、それから少し経った頃…詳しく言えば、桃香と愛紗の「あ〜ん合戦」が「お茶口移し合戦」となった頃…
もしくは、我慢出来なくなった鈴々が対面となる様な形で一刀の膝の上に移動した頃…
もしくは、まだ混乱している星がパンツにまで手を掛けたのを見て紫苑が慌てて止めに入った頃…
もしくは、お菓子を砕きまくっている涙目な翠の前に小山が出来た頃…
我慢の限界を迎えた朱里が卓を叩き、声を上げる。
「ご主人様!魔法を掛けて下さい!」
荒い息を吐き、軽く目を血走らせる朱里の迫力は相当なものだ。
「しゅ、朱里…?」
一刀が恐る恐る声を掛けてみる…
「はい!?」
が、その興奮は収まる気配を見せない。
とりあえず抱きついている桃香達3人を離し、朱里を落ち着かせる事にする。
「とりあえず朱里、落ち着こう。 こんな時は深呼吸だよ深こきぶふっ!」
深呼吸を促そうとしていた一刀が何故か吹き出してしまう。
その視線の先にはパンツを下ろそうとして固まったままの星…
二人の視線がぶつかる。
星の混乱ゲージが徐々に上がり、かずとJr.がアップを始めた時、一刀の前に肌色の物体が現れた。
「ご主人様…見すぎです」
愛紗である。
多少怒気を含んだ声を発しながら、手のひらで視界を遮っている。
「星も、さっさと服を正さぬか」
「う、うむ。すまんな愛紗」
愛紗の妙な迫力に押され、混乱ゲージは下がり、スイッチもOFFとなる。
「ほ、ほら、アレだ。星もお色気担当が板についてきたんじゃないかな?」
「そ、その様な役割などいりませぬ!」
「ご主人様も余計な事を仰らないで下さい」
「いてっ!」
視界を遮っていた手がスライドしてきて一刀の顔を叩く。
「もう、宜しゅう御座いますぞ」
愛紗の手が退けられ、視界には真っ赤な顔の星が襟元を正していた。
「あ〜っと…なんだったっけ…そうそう。朱里……はどこだ?」
すっかり話が脇道に逸れてしまい、元に戻そうと朱里へと向き直るが、そこに肝心の朱里の姿は無かった。
「ご主人様」
紫苑がチョイチョイと卓の下を指差している。
片手を挙げ、紫苑へお礼の意思を伝えてから卓の下へ潜り込む一刀。
そこには予想通りと言うかなんと言うか、背中を丸め、体育座りでブツブツと呟く朱里の姿があった。
「朱里、ごめんな。無視した訳じゃないんだ。ちょっと刺激が強かったものだからつい…本当にごめん!」
顔の前で手を合わせて頭を下げる。
「……魔法、掛けてくれますか?」
少し頬を膨らませ、朱里は確認してくる。
頬をつつきたい衝動を抑え、頷く一刀。
「むしろこちらが掛けさせて貰ってる立場だしね」
そう言うと、改めて「魔法を掛けさせて下さい」と頭を下げる一刀。
毎度の事ながら、何故この人はこんなにも優しいのだろうと、朱里の胸に熱いものが込み上げて来る。
自然と笑顔になりながら「お願いします」と返事をする。
「さて、いつまでも卓の下じゃなんだし、出ようか」
「はい!」
二人して卓から這い出すと、星が朱里に向かって手を合わせた。
唇の動きで「すまない」と言っている事が分かる。
朱里も笑顔で顔を振る。 「大丈夫ですよ」と。
「よし。準備は出来た。朱里、行くよ?」
いつの間にか右手に光を集めている一刀。
朱里は一度頷き、ぐっと目を閉じる。
それを確認し、光を朱里へ向けて放つ。
体の中へ光が吸収されていったかと思えば、朱里から光が溢れ、包み込んでいった。
「な、なんだ…?」
あまりの光量に腕で目を庇う。
ようやく光が収まり始め、腕を退けた一刀達は驚愕した。
そこに居たのは妙齢の美女。
背は桃香と同じくらい有り、端正な顔立ちにショートカットの髪。
チャイナドレスには体の線がくっきりと浮かんでおり、均整の取れたプロポーションである事が分かる。
朱里…なのであろうが、ここまでの変化は未だかつて無い。
よもや服装まで変わるとは誰も予想し得なかっただろう。
言葉も出ず、ただ立ち尽くす一刀達。
当の本人は自分の姿を確認し、満足そうに頷いていた。
「ご主人様…」
「は、ハイ!?」
流石の一刀でもまだ整理出来ていないのか、声が裏返っている。
「本当に有難う御座いました。ここまで澄み切った心持ちは初めてです」
「そ、そうデスカ」
「そう緊張なさらないで下さい。姿は変わっても私は朱里ですよ」
そうは言っても簡単に切換が出来る様な小さな変化では無いことを朱里自身が良く分かっていた。
「今ならあの難解な書を読み解く事が出来そうです。ご主人様。申し訳ありませんが自室へ戻っても宜しいでしょうか?」
「あ、ああ」
「うふふ。有難う御座います」
恭しく礼をすると、背中を向け“モデル歩き”で去っていく朱里。
「あ、そう言えば」
くるりと一刀へ向き直る朱里。
その顔には妖艶な笑みが張り付いていた。
「ご主人様…“夜”は私をお呼び下さい。 いよいよ“勉強の真の成果”をお見せ致す時が参りました」
それだけ言うと、また背を向け歩きだす。
その姿が見えなくなるまで、誰一人動く事は出来なかった。

「す、すごかったな…」
朱里が去り、少しの静寂の後、一刀が口を開く。
「た、確かに…それよりさ、ご主人様の“まほー”…少しずつ力を増していってないか?」
なんとか立ち直った翠が答える。
「ええ。私もそう思うわ。あそこまでの変化になるとは想像もしていなかったわ…」
「ねえご主人様。ご主人様自身はどうなのかな? 何か感じる?」
「いや、特に何が変わったって感じも無いんだけど…」
自分の右手を見つめる一刀。
「あ、でも一つだけ予感があるんだ」
「予感?」
「うん。後1回魔法を使うと“何かが起こる”」
「な、“何か”って何?」
「さあ…それは俺にも分からない…」
朱里の様な大変化が起こっている以上、不安は拭えない。
「ま、気にしても仕様が無いわ。後1回、“まほー”を使えば分かることよ」
腕を組み、そう促す鈴々。
中々良い所を見せられ無かったお姉さんキャラの面目躍如か?
「…鈴々。結構そのキャラ、気に入ってる?」
「“きゃら”とは何を言っているのかは分からないけど、今の鈴々は好きよ。
 だって普段との“ぎゃっぷ”があるから、一刀が鈴々をもっと好きになってくれるのでしょう?」
「くはぁ!む、胸キュン!!」
すました様に見せて胸の内には熱い気持ち。
ここまで想われては男冥利に尽きると言うものである。
「しかし後1回と言う事は、桃香様か紫苑。どちらかが“まほう”を受ける事になりますが…」
悶える一刀を尻目に愛紗は続ける。
「戦乱は終わりを告げているとは言え、桃香様は蜀の王。やはりここは大事を取って…」
「私が“まほう”を掛けてもらうよ」
「と、桃香様!?」
自分の想いとは逆の答えに戸惑う愛紗。
「だって、紫苑さんには“まほう”に掛かれない訳があるんだもん」
「え…?」
その言葉に紫苑は驚きの表情を見せる。
「私がもし変化に失敗してダメ人間になっても……今もあんまり変わらないかな…?」
そう言ってペロッと舌を出す。
「ダメ人間になったとしても私には支え、補ってくれる皆がいる。だけど…」
そこまで言った時、紫苑は苦笑し、星がはたと呟いた。
「なるほど…璃々ですな」
そこで全員(まだ悶えている一刀を除く)がハッとなる。
「うん。璃々ちゃんのお母さんは紫苑さん一人しか居ないからね。
 多分、“まほう”に掛かるのを承諾したのは私達に合わせてくれたからだと思うんだ。
 それと後は私達の補佐にまわる為…かな?」
「……流石は桃香様。そこまで見抜かれているとは思っていませんでした」
「えへへ」
素直に関心する紫苑に照れくさそうに頭をかく桃香。
「皆、ごめんなさいね。騙そうとは思っていなかったのだけれども、どうしても言い出せなくて…」
そう言って紫苑は全員(転げまわる一刀を除いて)に頭を下げた。
「だから愛紗ちゃん。私が“まほう”を受けても…いいでしょ?」
「はあ…そこまで言われては仕方がありません」
ポリポリと頬をかく愛紗。
「紫苑もすまなかった。そこまで頭が回らなかった私を許して欲しい」
「何を言っているの愛紗ちゃん。私の方こそ我侭でごめんなさい」
紫苑が愛紗をそっと抱き寄せる。
「うむ。良い感じに纏まったな」
「そうだな。しかし、桃香様も頼りになるようになったぁ」
「ぶぅ。どうせ一番大変な時に頼りになりませんでしたよ〜だ」
「それがお姉ちゃんのお姉ちゃんたる所以、でしょ?」
「え〜!鈴々ちゃんひどーい!」
女性陣の笑い声は、青く広がる空の様にとても爽やかなものであった。


「あ、あれ?皆さん? お〜いやっほ〜……」
ようやく“還って来た”一刀であるが、今ここに彼の居場所は無かった…

〜 〜 〜 〜 〜

「えーっと、なら次は桃香になるんだな?」
やっと認識してもらえた一刀は、先程の内容を教えてもらっていた。
「うん!」
「さっきも言ったけど、次は何が起きるか分からないんだけど、良いか?」
「大丈夫。私には皆がいるから!」
そう言って愛紗達に手を振る。
「うぅ。その話に俺も加わりたかったよ…」
「後ろでゴロゴロ転がってるから悪いんだよ?」
「………ごもっとも」
うなだれる一刀に勝ち誇って胸をはる桃香。
「えーいコンチキショー!」
右手へ光を急速に集め、桃香へ放つ。
「えぇ!? やけくそ!?」
光が吸い込まれ、なんと桃香も体から光を放ち出す。
「うあ!と、桃香もか!?」
またもや放たれる強烈な光に、視界を奪われる一刀。
すると、その光の中からなにやら黒い影が動いている。
その影は真っ直ぐに一刀へ向かい……タックルをキメた。
「うごふっ!」
無防備な腹へ痛烈な一撃。
そのまま後ろへ倒れこむ一刀。
既に光は収まっており、段々と視界が開けてくる。
そして腹の上に居た影とは…
「えへへー!ごしゅじんさま!もも、ちっちゃくなっちゃったー!」
「なぁにー!?」
そう。子どもの姿になっている桃香であった。

「これはまた、大胆な変化っぷりだな…」
「だよね!だよね!もももびっくりだよ!」
お腹の上で馬乗りのままキャッキャとはしゃぐ桃香。
どうやら記憶はそのまま、姿と喋り方が子どもの頃に戻っている様である。
後は…いつもより輪を掛けてテンションが高いようだ。
ちなみに自分の呼び名はもも…桃であるらしい。
「なるほど…朱里の抜けた“ロリ分”の補給か…」
「?? ねーねー!ろりってなに??」
「よーしよし。良い子はまだ知らなくていいんだぞ〜」
「えー!もも、おっきなももといっしょだから、だいじょうぶだよー!」
『やだやだ』と跳ねる桃香。
もちろんお腹の上で。
「とう うぶっ! ちょ げぼっ! おちつ おふっ! まて おうふっ!」
その内普通に楽しくなってきたのであろうか、跳ねながらキャッキャとはしゃぐ桃香。
「うひゃ! うほぃ! おぼぅ! ふぉ! ひゃ! ひゅ! ひょ!」
桃香が跳ねるのに合わせて声を出していく一刀。
意外と楽しんでいる様だ。
一刀と桃香の元へやってきた愛紗達も、この様子に少し呆れながらも優しく見守っていた。
「あはははははは!なんだか“きじょうい”みたいだね!」

ピシッ

空間の凍りつく音と共に、一刀の動きが止まる。
そんな事など意に介さずにはしゃぎ続ける桃香。
「み、皆… こ、この桃香は、ちゃーんと記憶あるからね…?」
「ええ。ええ。分かっておりますとも。
 よもやこの短時間で璃々と同年代になってしまわれた桃香様にまで手を出すとは…!」
「いやいやいやいやいや!分かってない!絶対分かってないでしょ!?」
嫌な汗が背中を流れる中、紫苑に視線で助けを求める。
「ご主人様…璃々は断って置いて、酷いですわ…」
「し、紫苑さん!? と、桃香!何か言ってくれ!」
一刀が窮地に陥っている時でも桃香は空気を読むのを忘れない。
「ごめんねごしゅじんさま。もも、ちっちゃくなったから おしり はむりかも…」
「いぃぃぃやあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


この後、ここでは書けない様な罵詈雑言が浴びせかけられたのは言うまでもない。

そして、一刀の必死の弁明が実を結びそうになった時、朱里が一冊の本を持って戻ってこようとしていた。
その表情は暗く、青ざめている様だ。
一体、彼女の身に何が起こったと言うのか。。。


つづく…

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