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21 名前:ハムさんの最期 1/6[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 19:14:57 ID:sRwcC/VD0
「袁紹が攻めてきた?」
「はっ、先ほど我が領内の城が落とされたとの報が……」
「袁紹のやつ、こないだ連合軍が勝ったからって調子に乗ってるな〜
 他人の軍を戦わせて自分は後ろで見てただけのクセに」

軍を率いて自ら出陣する公孫賛
ついに袁紹の軍と平原を挟んで対峙する。

「おーっほっほっほ、そーんな貧相な兵でわたくしの軍に対抗できると
 思っているなんて、貧相な伯珪さんらしいですわね」
「やい袁紹ー!俺の領地に攻めこんで来るなんていったいなんのつもりだー!」
「袁紹さま〜、あんなこと言ってますよ〜、これで良かったんですか〜?」
「そうですよ、伯珪さんとは仲良くやってたじゃないですか〜」
「なにをおっしゃってるのお二人とも!それでも袁紹軍の将ですの?
 わたくしが世界を制覇する為には伯珪さんだろうと誰だろうと
 立ち塞がる敵は攻め滅ぼすのは当然のこと、こんなのは序の口ですのよ?
 これからあのいけ好かないクルクル小娘も南の孫権さんも
 世界中の女の子はみーんなわたくしのモノにして差し上げるんですのよ
 おーっほっほっほ」

「はあ〜、こんな理由でいいのかなあ……
 どっちにしろ私たちは命令されれば戦うしかないけど〜」
「あたいは別に戦えればなんでもいいけどね〜」

向かい合って聞いていた公孫賛は緊張感の無い敵に呆れて天を仰ぐ
「あー、なんか頭痛くなってきた、あの袁紹のことだから
 どうせろくな理由なんてないだろうとは思ってたけど」
22 名前:ハムさんの最期 2/6[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 19:16:43 ID:sRwcC/VD0
両軍は戦いの火蓋が切って落とされるのを今かと待ちながらも
互いに一定の距離を置いて睨み合っている。
一度戦いが始まれば両軍が真正面からぶつかって大きな戦になるのは間違いない
決戦を前に互いの軍に緊張感が高まり……高まり?

「まーだ仕掛けて来ませんの?伯珪さんは」
「そうみたいですね〜、ちゃんと全軍に指揮が行き届いてる証拠ですよ
 結構やるじゃん公孫賛」
「あ〜らそうなの?でもわたくしの軍の指揮には及ばないでしょうけど」
「ま〜、ウチの軍はもともとあんまりやる気ないですからね〜
 それに麗羽さまが指揮したら勝てる戦も負けちゃいますし」
「なんですって?」
「あはは、麗羽さまは小細工なんかせずいつも通り後ろで笑ってればいんですよ
 それだけで皆頑張ろうって気になって何度でも戦えますから!」
「そうですわね、それが王者の戦い方ですわ、文醜さんよくわかってますわね」
「あれ、でも動き出しましたよ?」

公孫賛の軍が中央から割れるように動き奥に控えていた騎馬部隊が
押し出されるように最前列に姿を現す
「こんなこともあろうかと精鋭で揃えたこの白馬部隊を見よ!
 これで袁紹の出端を挫いて傲慢な鼻っ面をへし折ってやるぞー!」

白馬ばかりに白銀の鎧装に身を包んだ騎馬兵が数千騎並ぶ様は流石に壮麗
しかしそれは戦いに必要なハッタリというものでもある。
ハムさんの号令とともに平原を駆ける白馬部隊が袁紹軍に襲いかかる
その勢いに押されて前線は大きく袁紹軍の中へと食いこんでいく
23 名前:ハムさんの最期 3/6[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 19:18:09 ID:sRwcC/VD0
「ぜーっ、ぜーっ、まったくいきなり攻めてくるなんて
 なんて空気の読めない人ですの?」
最前線から自陣内深くに逃げてきた袁紹がぼやく
「でもすごいですね伯珪さん、あんなに白馬を集めるなんて」
「斗詩〜、それあたいが言おうと思ってたのに〜」
「それに乗ってる人達も強いです、北の部族の人たちですね」
「はは〜ん、それってあたいらには顔見知りみたいなもんじゃ〜ん」
「顔は知らないよう、でも文ちゃんの言うことも遠からずですね」
「それで?」
「ですから〜、私たちにはよく知ってる相手ってことです」
「まあ見ててくださいよ、麗羽さま。あたいが行ってちょちょいと
 やっつけて来ますから」

文醜が槍を持たせた歩兵ばかりを率いて前線に向かうと戦況は一変
足を失った白馬部隊は哀れなほどあっけなく全滅した

「ああああ……俺の、俺の精鋭白馬部隊が……」

「やりましたわ文醜さん!それでこそわたくしの将ですわ」
「でもちょっと可哀相でしたね、伯珪さんの白馬を全部殺しちゃうのは」
「顔良さん、まだそんなことおっしゃってるんですの?」
「やりましたよー!袁紹さま〜斗詩〜、ついでに公孫賛も逃げ出しました〜」

「よくやりましたわ、でも文醜さん、どうしてあなたがここに居るんですの?」
「どうしてって勝ったから、その報告ですけど?」
「そうではなくて、どうして追撃しないんですのって聞いてるんですのよ!」
「えーっ、でもあたいそろそろお腹が……」
24 名前:ハムさんの最期 4/6[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 19:20:33 ID:sRwcC/VD0
泣きながら敗走した公孫賛は堅固な城砦に篭り、あとを追った袁紹軍は
それを包囲するも攻めあぐねていた。

「なにか良い案はありませんの?斗詩」
「う〜ん、そうですね〜」
「袁紹さま〜あたいに良い考えがありますってば〜」
「はあ〜、こんな高い壁に何重にも覆われた城だなんてお馬鹿な……立派な城を
 造るなんてなかなかどうして侮れませんわね〜」
「ですねえ〜ああ見えて伯珪さんって面白い方だったんですね〜」
「麗羽さま麗羽さま〜、あたいの作戦聞いてくださいってば〜」
「このあいだの白馬隊といい、見直して上げてもよろしいかもしれませんわね」
「でもその白馬、麗羽さまが全滅させちゃったんですけど」
「斗〜詩〜、麗羽さまがあたいのこと無視する〜あたいなんか悪いことした?」
「さあ〜?どうして聞かないんですか?麗羽さま」
「そんなこと、聞くまでもありませんわ!文醜さんの考える作戦なんてどうせ
 地面に穴を掘って中まで進めばいい、とかなんとか言うに決まってますもの」
「!、袁紹さま〜、どうしてわかったんですか〜?」
「あってるんだ……」
「そんなみっともない作戦をするぐらいなら帰った方がマシですわよ」
「うーん、ダメかあ〜良い考えだと思ったのになあ〜
 となるともうあとは直接説得するとか〜それぐらいしか〜」
「それですわ!文醜さん、わたくしが伯珪さんに会って懐柔してみせますわ」
「え、袁紹さまが会いにいくんですか?」
「使者を出すんじゃなくて姫が?危ないですよ?」
「そんなのあなたたちが居れば問題になりませんわ、お二人とも準備なさい!」

こうして袁紹は二人だけを連れて交渉として自ら敵の城門を叩き、
公孫賛はそれを疑いつつも一つ目の城壁だけを開いて招き入れたのだった。
25 名前:ハムさんの最期 5/6[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 19:33:00 ID:sRwcC/VD0
「それで、どうするつもりなんだ?袁紹」
訝しげに城壁の上から公孫賛が問う。
「どうもこうもありませんわ、最早この城もわたくしの軍が完全に包囲しました
 あなたには投降するか、このまま抵抗し城ごと滅ぶしか道は残っていませんのよ」
袁紹たちは一番外側の城壁の上から内側の城壁の上に居る公孫賛に向かって答える。
「そんなことが出来るのか?あれから何日になるか……この城が落とせないと思って
 こうして会いに来たんじゃないのか?」
「(ありゃりゃ、完全に見抜かれてますよ〜袁紹さま)」
小声で耳打ちする文醜
「伯珪さん、わたくしあなたを勘違いしていましたわ、田舎者のお山の大将かと
 ばかり思っていましたけれど、なかなかどうして見所がありますわ」

「お世辞はいらないよ、袁紹に褒められても全然嬉しくないし、っていうか
 褒めてんのか貶してんのかわかんないぞそれ」
「……、ですからわたくしのモノになってくだされば、優し〜く可愛がって
 差し上げますわよ?どうですの?そうすればあなたの兵も死なずに済みますし」
「(あ〜、またこんなこと言いだしちゃった麗羽さま……)」
「は!?、袁紹……まさか……いやいや、でもわたくしのモノって……」
 途端に驚いたような声を上げ、呟きながらうろたえだす公孫賛
「どうしましたの?悩んでますの?大丈夫ですわ、あなたが初めてでも
 わたくしが優しく……」
「わああああああああやめやめダメダメーー!聞こえない聞こえない
 あっちいけお前ら気持ち悪いーーー!!」
袁紹の言葉にビクッと震えると叫びながら走って逃げ出す公孫賛
「あーあ、もうダメですね袁紹さま、交渉決裂です」
「まったく失礼ですわね、なんですの?いったい、こちらが下手に出ているのに」
「麗羽さま、本気で言って……ますよねぇ、はあ(溜息)」
「あ〜、ほらもうあんなトコまで逃げてますよ、まあ無理もないかなあ〜」
26 名前:ハムさんの最期 6/6[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 19:37:31 ID:sRwcC/VD0
伯珪は走っていた、走りながら混乱していた
「あいつら!あいつら!絶対おかしい!頭がおかしいんだ」
さっきまで戦っていた相手、自国領を侵し部下を殺した憎い敵
そんな奴に、そんな奴に……そんな奴のモノになるだなんて冗談じゃない
戦いは戦い、自分だってそんなこと理解しているはずだった
今でこそ小さな勢力だがいずれ力をつけて他国を攻めて、吸収して
ゆくゆくは天下に覇を……夢見ていないとは言えない。
戦いの中で相手に敗れ、その軍門に降ることもあるだろう
先だっての連合軍での戦でも北郷や曹操なんかは敵の将を捕らえて
部下に加えたと聞いたし、自分がそうなることも想像したことはある。
しかしその相手は…… 

「嫌だ、嫌だ、嫌だーーっ!袁紹なんかのモノになるのは嫌だ!」
あんなやつじゃない、あんなやつに負けるなんて想像もしなかった
だって……どう考えても自分より劣る相手に負けるなんて思わないだろう?
もし負けるとしたら……それは一番近くに居て一番強くなりそうで
自分より強くて優れている、あるいはそんな強者や優れた為政者が
配下に揃って居るような人物。

そんな相手にだったら、負けても納得がいく。自分の部下や領民を任せられる。
夢を託すことができる……。
自分の全てを、委ねられる……
「北郷……」

「あ゛!」「え?」「うそ!?」
袁紹たち三人は声を揃えて驚く、視線の先は逃げる公孫賛
高い高い城壁の上から足を滑らせて落下する公孫賛……

「こ、これでわたくしの勝ちですわね……お、おーっほっほっほ……」
27 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/04/19(木) 19:47:25 ID:sRwcC/VD0
思いつきで書いた、例の如くハムさんがメインなのに出番が少ないという……
まあきっとこんな感じだったんじゃないかなあ?というイメージでw
結局三馬鹿が暴走してしまいました、今は反省している……一応。

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