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918 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 00:05:07 ID:tDUKATBY0
>>917サンキューふぉーゆー、その一言で勇気が出るよ

終わった、終わったよ。苦労したよ、どうみても力量を超えた長さでした

書いてるうちに膨らんできて、どんどん長くなってダラダラ書いて
おそらくは長いだけの自己満足になってると思うが、今はこれが精一杯。
読んでくれた人ありがとう。

意見とか、なんか問題やおかしいとこあれば指摘してくれると嬉しい


] ――12話、朗報!?30*5

鏡やそれに関する情報を探して各地を巡り旅を続けてきたが
まるで手掛かりがないまま、すでに一ヶ月近くが過ぎようとしていた。

袁紹たちは相変わらずだが、彼女たちのおかげで耐えられている
それほどに今の自分は弱くなっていると思う。
愛紗たち仲間の存在が、どれだけ自分を強くしてくれていたのか
十分に分かっているつもりだった。けれど今になって思うのは
それがどんなに甘い認識だったかと言うこと。

自分の中の自分、その半分かそれ以上が無くなってしまったような
まるでぽっかりと穴の開いたような喪失感。
話には良く聞く表現だが、自分がそうなることなど今まで無かった。
戦争をしている、命の取り合いをしていたのに、だ。
兵たちの命が失われていくことに目を背けていたつもりは無い
軽んじていたつもりもない。でもどこかで、どこかで割り切っていたんだろう

本当に必要なもの、大切なものと、それ以外
自分の知っているものと知らないもの、手の届くものと届かないもの
失うものがあるのはしょうがない、何かを守るためには何かを捨てなければ
ならないから。
だからこそ、大切なものだけは守りたかった、失いたくなかった
それだけの為に戦ってきた、その為にだからやってこれた。

いつからだろうか、貂蝉に外史世界の話を聞いてから?
三国をありえないほど短い期間で統一したときから?
白装束に命を狙われていることを知ってからか、
いや、本当はもっとずっと前からだろうな……
もとの世界に戻れるかどうかよりも
そのことで皆と別れ、二度と会えなくなってしまうのではないか?
という不安の方が大きくなっていた。

だから、だけれども!こんなことになるなんて
覚悟できるはずがないじゃないか。別れたくなどなかった。
別れなくても済むはずだ、そう、その為になら元の世界に戻れなくてもいい
そんな風に考えていたんだ。甘かったのか、俺はどこまでも……
「ちょっとあなた、まだそんなところで膝を抱えてらしたの?
 はあ、あ〜んなクルクル小娘や自分の部下に会えないのが
 そんなに辛いんですの?理解できませんわねぇ〜」

「……あんただって顔良や文醜がいなくなったら生きていけないだろう?」
「……わ、わたくしはそんなことありませんわよ?そりゃ斗詩に
 会えなくなるのはほ〜んの少し寂しい気もしますけど。」
「あんたも素直じゃないな、本当はあの二人に感謝してるんじゃ」

「袁紹さま酷い〜あたいはどーでもいいんですか〜?
 ううっあんなに三人で愛し合った仲なのに、あの時の言葉は嘘だったのね…ヨヨヨ」
「ぶ、文ちゃぁんそういうこと言わないでよ〜男の人のまえで〜」
「そ、そうですわよ?勘違いされ……」
「あれ〜?麗羽さま何か勘違いされるようなことありましたっけ?」
「いえ、だからその、そういうことはあまり人前ではおっしゃらない方がよくてよ?」

「あ〜、やっぱそういう関係なんだ。」

「……」
「お、うらやましい?うらやましいか〜。そ〜んな目で見ても斗詩はあたいのだから
 あげないからね〜」
「あたしは別に猪々子のものじゃないよう〜」
「な、と、斗詩やっぱり一刀のことが?うう、でも斗詩が本当に愛しているなら
 あたいは、あたいはぁ〜、涙をのんで応援す、しても、、やっぱりダメー!!」
「違うよお〜、もういい加減そこから離れてよお〜」

知らぬ間に口元が緩み、詰めていた気が抜け、肩からすーっと力が抜けていく。
「三人とも、ありがとう……」つい口がすべる。

騒いでいた二人がぽかーんと口をあけて止まり
袁紹は照れたのか、ちょっと赤くなりつつも口を尖らして
「な、なにを急に意味のわからないことをおっしゃってますの?
 あんまりに寂しくて頭の中までおかしくなってしまったのかしら」
「袁紹様が稽古とか言って毎日あんなに頭ぶつからじゃないんですか〜?」
「それはあくまでも本郷さんのためを思ってですわね、それに猪々子だって
 いつもやってるじゃありませんの」
「それはしょうがないよ!あんな風にスキだらけで動いてる的を目の前にして
 打つなというほうが無茶だよ!うんうん」

今泣いたカラスがなんとやら、お前ら俺の剣の稽古をそんな風に見てたのか
しかし実力が近い袁紹とああ見えて上手く手加減してくれる文醜が相手を
してくれるのは以外に良い訓練になってくれているから言い返せない。
「大丈夫きっと皆さん無事に決まってます、あんなに強い方たちなんですから」
「ああ、そう願っているよ」
気休めでも、顔良に微笑みながらそう励まされると
信じたいという気持ちになってくるから不思議だ。

「あ〜っと、そういえばさっきなんか言ってなかったっけ?斗詩〜」
「え?あ!、そうでした。さっき伝令の人がこれをって……」
そういって顔良が差し出した書簡を受け取り
いつもの定時連絡かなにかだろうと気の抜けたまま中身を確認
「!」
全身に緊張が戻り暖まった頭がすーっと冷静になっていく
期せずして訪れたそれは待ちわびた鏡についての報告だった。
しかも妙に具体的で詳しい、場所まで書いてある、これは……
脳裏に浮かぶ白装束の二人。この世界が以前のままなのか
新しくつくられた外史であるのかはいくら考えても結論は出せなかった。
しかしもし前者ならば、あの二人が姿を見せないというだけで
居ないという保証は無い。どこかで今の自分を見て嘲笑っているのかもしれない。
そして、このあからさまな情報は……罠か、あるいは挑戦状のつもりか?

「どうしたんですの?なんの知らせですの?」
「え〜っと、鏡ですか?これがその不思議な鏡のある場所、早速手掛かりですよぉ!」
「あれ、、この蓬莱の島ってど〜っかで聞いたことなかったですっけ?」


袁紹たちが以前行こうとした島であると聞いて、急遽南方に向かった俺達は
呉の兵たちや海に詳しい船乗りを集めて話を聞いた結果、
海洋用の大型船を数隻借りて、船団を組み海に出ることになった。

数日後、大陸を見えないほど離れた海の上、大型船の甲板の上で

「やっぱりわたくしが乗る船といえばこのくらいの大きさがなくては
 いけませんわね、おーっほっほっほ」
「いや〜さすがは三国の覇者ともなると全然違うな〜
 どこかの誰かの筏とは大違いですよね〜袁紹さま〜?」
「なにか言いました?文醜さん、それにあの筏を用意したのは
 何処のどなたでしたかしら」
「え〜っと、誰でしたっけ〜?そこまでは覚えてないな〜あははは」

なにやら漫才しつつ妙な牽制を繰り広げている二人は放っておいて
でき得る限りの対策を考える。何があってもいいように、とは行かないが
救援の手筈や連絡手段、戻れなかった場合のことも含めて準備は入念にしたつもりだ
それでも十分とは言えないが、何が待っているにしても飛びこむしかない

「それじゃ、その島のことで他になにか知ってることがあったら聞かせてくれる?
 どんな些細なことでもいいからさ」
「それがですね〜、私達は島に着く前に遭難してしまったので
 島の中のことまでは知らないんですよ〜、すいませんお役に立てなくて」
「そっか、まあどちらにしても何が待っているかは
 行って見なきゃわからないんだ、気にしないでいいよ」

安全の為にと人に任せ報告を待っていてはチャンスを逃してしまう
僅かでも可能性があるなら、自分の手で掴み取ってみせる。
風の強くなってきた甲板の上で、進路に向かう水平線を見つめて自分自身にそう誓う。



――13話、蓬莱山の決闘30*6

船を降り、野営の準備を始めた部下の兵たちを置いて
逸る気を抑えきれずに一人蓬莱山に向かった俺はそこで
たしかに存在した神殿と、そこにたたずむ見覚えのある二人の姿を確認し
歓喜のあまり感情を抑えきれず飛び出していた。

「お前らあああ!やっぱりお前らの仕業だったんだなあああ!」
剣を抜きながら走り込みそのまま不意を狙って一閃
しかしその切っ先が白い装束にすら届くことはなく、視界が一転する。
「甘い…殺すときは声も発さず殺せ!」
不意をつくどころか振り向きもせずに身をかわしざま
こちらの足元を払われた。
「なんですか?騒々しいですね」
「いきなり斬りかかってくるとは何者だ?む、北郷、貴様か
 ふっ、思ったより早かったようだな」

こちらが来ることを知っていたかのような物言い、間違い無い。
全てはこいつらの……何をしたのか、何が目的なのかは俺にはわからない
しかしこの二人を倒さない限り皆を取り戻すことは出来ないのは確かなはず。
そして俺に勝機があるとすればそれは相手が油断している今しかない
「はああああっ!!」
姿勢を立て直し、問答無用で突撃して気合を込めて連続で打ちこむ。

その勢いに押されたのか二人は飛ぶようにして後ろへと下がる
「おっと、待ってください北郷一刀。ここに来るようにと我々が出した招待状
 まずは無事に届いたようですね」
「だがどうやら考え違いをしているようだな、まあもともと俺達は
 敵同士なっのだからっ、むっ、無理もっ、ないがっ」
まるでこちらを相手にする気もないかのようにかわし続けるばかりの左慈
俺が必死になっているのを見て嘲笑っているのか、俺から全てを奪い
もはや殺す価値もないとでも言うつもりか!
「ええい!うっとおしい!このままでは埒も無い、まずは北郷、
 貴様にはおとなしくなって貰う、はあっ!」
「左慈、せっかちな子……、わかっているでしょうが殺してはいけませんよ」

さすがに避けるだけには飽きたのか、こちらの怒涛の攻めを一蹴で散らしてくる。
「くっ、やはり強い、だが!」
それでも負けるわけにはいかない、こんな奴に、皆を奪われて
それでも男か北郷一刀!力を、技を、気合を、想いを込めて
負けるとしても全てをぶつけてからだ!

「少しはやるようになったか?しかし所詮はただの学生の剣だ!」
全身全霊をこめた一撃に併せるように剣を横から蹴り上げられて
体勢を崩したところにさらに一撃、剣を戻して防ごうとするが
間に、、、合わないかっ
ガキィィッ!!

目の前に巨大な剣が振り下ろされ視界が遮られる。
とっさに蹴りを引いた左慈は地面を蹴って転がるように一旦後ろに下がる
「むうっ、加勢だと?」
「ジャーンジャーン!文醜一番乗りぃ〜!
 絶体絶命のピンチには、呼ばれてないのに即参上!
 へへっ、一刀〜大丈夫だったか〜い?」

「一刀さん、一人で先に行っちゃうなんて無茶すぎますよ〜」
「ふう、まったく気まぐれな上長を持つと部下は苦労しますわね、
 文醜さん、よくわかりませんが北郷さんの敵はわたくしの敵
 やあ〜っておしまい!」
「よーーっし!燃、え、て、きたあーーー!!」
振り上げて気合を入れた大剣を左慈に向けて牽制する文醜

「文醜に顔良、袁紹も来てくれたのか、助かったよ」
「船が着いたと思ったら、すぐ居なくなっちゃうんだもんな〜一刀は
 まあ大切な人のことを思えば待ってらんないって気持ちはわかるけどさ」

「フン、有象無象が一人二人増えたところでなにを安堵している!
 北郷!だぁから貴様は甘いというのだーーッ!」

文醜に向かって蹴りかかる左慈、大振りな長剣では素早い格闘術には
対応しきれない、反対から攻めて二人がかりでならなんとか……なるか?
こちらの渾身の一打を器用に避け、逸らし、文醜の大剣による薙ぎ払いを掻い潜って
決して長くはないはずのリーチにも係わらず、その差を易々と埋めて
俺かと思えば振り向いて文醜を、あるいはその逆に俺をというように
クルクル廻ってはフェイントを絡めつつも両方に確実に打撃を届けてくる。
それをなんとか防ぐのが精一杯で、その度に動きが止まってしまう俺のせいか、
二人で挟みこんでいるにも係わらずこちらが押されているっ。

息をつかせぬ攻防が続く。
「斗詩?どうやら分が悪いんではありませんの?」
「うん、あの人すごく強い……わわっ文ちゃん危ない!」
「……そうですわね、顔良さん、助けに行っておあげなさい、、ってあら?」
袁紹がそう言うよりも早く、すでに走り出している顔良
「はああーーっ!!」
飛びこみざま大金鎚で、文醜を狙う左慈の蹴り脚を叩き潰す
「猪々子っ、もう〜危なっかしくて、見てらんないよう」
スレスレで脚を戻しながら、もう片方の脚で振り下ろされる金鎚を蹴って
下がることで身をかわす左慈
「くそっ、いいところで新手かよ!」
「ひゃーっ、今のはちょっとやばかった〜助かったよ斗詩〜」

「うん、いくよ、文ちゃん、一刀さん」
疲労の無い顔良が率先して前に出て、庇うように構え立つ。
「よーっし、あたいと斗詩が揃えば誰にも負けたことは無い!」
文醜もそれに合わせるように前に出て、剣を並べながらそう言い切る。
「……何度もあるよう」

二人の一見単純で大雑把だが息の合った連携に攻守ともに援護されて
左慈を徐々に追い詰めていく。
「むっ、馬鹿な、三人相手とはいえこの俺が押されている?
 以前戦った豪傑どもには劣るがこの二人もかなりの手錬れかっ」

いけるか?二人の大剣と金鎚による連続攻撃をを防ぎきり動きの止まった左慈に
死角となる二人の影から身を低くしたままに裂帛の気合を込めて
一点集中狙い澄ました突きを放つ
「届いたっ!」
「良い突きだ、だがその後が甘い!」
薄皮一枚、白装束を切り裂いただけで伸びきった俺の身体を
横から回転しつつ肘で殴打されて吹き飛ばされる
「一刀!」
「大丈夫ですか!」
二人が駆け寄って来る、俺は痛みを堪えてなんとか立ち上がってみせる
蹴りではなく、鎧衣の上からとはいえもろに脇腹を叩かれて逆流した胃の中身を
無理に飲み込んで返事をする。
「ああ゛っ、大丈夫、だよ、まだ、やれる、はあ、はあ」
動く度に痛みが響く、肋骨も数本砕けているかもしれない。

「はいはいそこまでそこまで〜、この人がどうなってもいいんですか〜」
「ちょっとあなた、なんですのっ、お放しなさいっ!」
もう一人の道士が袁紹を羽交い締めにして、やる気のなさそうな声で制止する

「干吉貴様っ、余計なことをするなっ!!」
「はあ〜?袁紹さま〜?こんな時になにやってるんですか〜」
「文ちゃん、麗羽さまも好きでやってるわけじゃ……」
「あ、そっかそっか、これもお約束ってやつだった。
 袁紹さま!ええい人質とは卑怯な〜、どりゃああ!、よし斗詩そこだっ」
「ええっ!?文ちゃん、姫はいいのぉ〜?、はああっ」
そういいつつも文醜と左慈は動きを止めようとはせず
顔良もそこに引きずられるように丁丁発止の打ち合いを展開している。
というか三人ともさっきより激しくなってないか?
俺はといえば立ったまでは良いが、先ほどの一撃の痛みに耐えるのが精一杯で
その場を動けないでいた。

「おやおや、とまりませんねえ……」
「そうですわ!こんな変質道士なんぞにどうにかされるわたくしでは
 ありません、さっさとちょこまか動くおチビさんをやっつけてしまいなさい!」
「それは聞き捨てなりませんねえ、私はともかく左慈を馬鹿にされては
 こうなったら本当にあなたをどうにかして差し上げましょうか!」

「……おい、なんだかヤバそうだぞ?」

「良いって良いって、あの人悪運だけは強いから、そりゃああ!」
「あうう、どうしよう〜」
「そこだ!はあっ!甘いぞ北郷、どこを見ているっ!」
文醜の一撃を掻い潜り、顔良の一瞬の隙を縫って左慈がこちらに迫ってくる
だが一度止まった身体は疲労と激痛とで動かない、動けない

「ふふふ、それではあなたには地獄を見せて差し上げるとしましょうか」
袁紹を羽交い締めにしたまま、道士干吉はなにやら怪しげな動きを見せ始める
背中で嫌な気配を感じ取ったのか袁紹も必死になって逃れようと暴れ出す
「ちょ、ちょっと、なにをするつもりですの?悪いことは言いませんから、やめっ、
 猪々子!なにやってますのっ斗詩!助けてっいやあああ一刀ぉ!!」

身体が重い、頭は動けと命令するが手も足もまるで言うことを聞いてくれない
これでは逃げることも、避けることもままならない
袁紹を助けるどころか、ここまで来て自分自身さえ守れないのか!
その場でなんとか凌ごうと剣を構えるが……

「ご、主、人、さまぁ〜ん♪」
突然現れた筋肉ダルマが物凄い勢いで皆の前を横切って猛然と向かってくる
俺はあまりの事態に冷静さを失いその突進を避け損なってしまった。

ざんねん、あなたのじんせいはここでおわってしまった。


――14話、時計の針を戻して30*3

時間にして半月ほど前、新生した外史にて

街の外れにある廃工場の跡地のような場所、不釣合いな大男と少女の二人が
場違いなほどなごやかに談笑している。
そこにさらに二人、一回り小柄な少女たち……華琳を引きずるようにして朱里が
懸命に歩いてきた。
「はあ、あいつのためにこんな変態妖怪に話を聞かなきゃならないなんて
 あとで絶対償ってもらうわよ北郷……」
「はわわ、、星さ〜ん、呼んできましたよ〜」

「うむ、よく華琳を連れてこれたな、さすがは朱里。
 それでは貂蝉、聞かせてもらおう。主が目を覚まさない原因とやらの話を」

「う〜ん、それがどうもアタシ達の住んでいた世界にご主人様が残っちゃった
 みたいなのよねえ〜」
「残った?しかし主はこちらに居られるではないか、今も愛紗が貼りついておる」
「ん〜……、つまり世界を移動する際に何らかのアクシデントがあって
 一刀の身体は二つに別れて別々の世界に同時に存在するように
 なった……ってこと?」

「そうね、だいたいそんな感じじゃないかしらね」
「はわわわわ、華琳さん、すごいです」
「ほう、それはまた不可思議な話で、うむ、私にはちとわかりかねるな
 やはり二人を連れてきて正解だった」 
「あてずっぽうだし別にすごくないわ、こっちじゃ子供でもわかるような話だもの
 宇宙☆大作戦とかいう映像劇で見たのよ、今度貸してあげるわ」
「うむ、それは是非……と、それはともかく貂蝉、どうすればいいのだ?
 もう我等の世界には戻ることは出来ないのだろう?」

「そうね、私達でも無闇に世界を移動することは出来ないわ、でも
 今回は非常事態だしこのままにしておくことは出来ない
 愛紗ちゃんやみんなの為にも、ね、うふ」
「いちいち意味もなく気色の悪い声を出すな貂蝉!
 それに人を呼んでおいてどれだけ待たせる気だ」

現れたのは見覚えのある白装束の男、宿敵の登場に身構える星たち三人

「き、貴様は!生きていたのか左慈!」
「そのようだ、お前等のお優しいご主人様のせいでな」
「だから言ったでしょう、あなたが出ていけばこうなるのは当然のことです」
その後ろからもう一人、やはり白装束の男が緊張した空気の中に姿を見せるが
しかしそれもまた当然というべきか、更なる火種にしかならなかった。
「ッ!あなた!よくも私の目の前に姿を現せたわね、今すぐその首叩き落して
 あげるわ!」
「はわわわ、どうしようどうしよう」
「ちょ〜っと、待って待って星ちゃん、華琳ちゃん、彼等はもう敵じゃないのよ
 ご主人様のことを助けて貰うためにアタシが呼んだのよぉ〜」

一触即発。だが貂蝉の言葉、一刀を助けるためと聞いて
華琳も振り上げた鎌を貂蝉に向け直すと、なんとか止まる。
「……あんた、どさくさに紛れてなに人の真名呼んでんのよ。
 はあ、はあ、、、あーっ、もうわかったわよどういうことか言いなさい
 出来るだけ手短に素早く簡潔に!私の手がその首を落とさないうちに!」

「しかし、どういう風の吹き回しですかな?華琳でなくとも説明してもらわねば
 到底納得はできますまい」

「そうね、前にも言ったと思うけど、アタシ達は星ちゃんたちとは少しだけ
 違う存在なの。あの世界では特別な役割をもって生きていたのよ」
「我々はあの外史における物語を終端に導く役割を与えられた存在
 言わばあの外史に縛られた存在でした」
「あの外史の中にいる限りはね」
「だが今はここにいる。」
「そうです、この新しい外史において新しい役割を与えられたことで
 この外史では自由に生きていくことが出来る」
「そして望むならもとの外史に戻ることも不可能ではないわ」
「だが安易に他の外史に行けば、また予期せぬことに巻き込まれかねんだろう
 そもそもの突端がそうして始まったようにな。
 それに今は、この自由を試してみたいと思っている」
「フフ、所詮は制限付きの自由ですが、同じ役割を永遠に繰り返す必要はない
 ですからね」
「それもこれも、ぜ〜んぶご主人様のお、か、げ、なのよね〜、うふ」
「フン、そんなことは言わずともわかっている、でなければ手を貸したりするか」
「相変わらず素直になれないようですね、私からもあなたのぶんも含めて
 お礼をさせて貰うとしましょうか……フフフ」
「あ〜ら!抜け駆け?ずるいわよ、それならアタシも負けないんだから」

「お前ら……もう勝手にしてくれ」

「わかったか?朱里、華琳」
「えと、えと、ご主人様のおかげで自由になることができて……でもでも
 そのせいでご主人様の身体が狙……はわ!?はわわわわ」
「わかるわけないでしょう?あんな抽象的な説明で。でもあいつのことを
 助けられるのは、悔しいけどこの変態どもだけなのは理解したわよ」

「頼むから俺はその変態どもの中に入れないでくれ……」

そして舞台は再び先ほどの時間、世界に戻る

――15話、帰還30*4


気がつくと俺は神殿の床の上で皆に囲まれていた。
袁紹、文醜、顔良に貂蝉、先ほどのありえない突進とその後の
暑苦しい抱擁を思い出してむせ返りそうになる、それに左慈に干吉まで
並んで俺を案じているかのように……ん?俺はさっきこの二人と
戦っていたはずじゃ……。
いや待てよ?そもそもここに来たのは皆を取り戻すためであって
「よかったぁ〜、気がついたんですね」
「いやあ〜、もう二度と目を覚まさないかと思ったよ」
「そ、そうですわ、わたくしの許可も無く勝手に」

「あ、ああ、それよりどうなってるんだ?これは。貂蝉説明してくれよ」
「そうね、何から説明したらいいかしらね?」
「まずは俺達のことだろう、なにせ先ほどまで戦っていたのだからな」
「フフ、それではまず私から、北郷一刀、私達はあなたの命を狙い
 幾度となく争ってきました。しかし、今はもうその意志は無いのですよ。
 と言っても信じて貰えないでしょうがね」
「俺達はお前を倒し敵対する為につくられた存在であると以前言っただろう。
 しかしお前があの時、鏡に触れてその役割は終わった」
「だから、俺を殺す必要は無くなった?いや、そんなことはどうでもいい
 それよりも皆は、愛紗は、星は、華琳たちは、どうなった、どこにいるんだ!?」

「まあ待ってください、彼女達は無事です。そしてあなたとともに
 あなたの世界へと帰還しました、とでも言いましょうか……」
「俺とともに?俺の居た現代に?俺はここに居るじゃないか
 いったいどういうことだ?何を言ってるんだ」
「ここに居るご主人様とは別に、もう一人のご主人様が愛紗ちゃんたちと
 一緒に居るのよ、でもご主人様がここに居るから、」
「なんだよ、なんだよそれは!そいつが居るから俺は、俺は要らないのか?
 俺はここで、一人で、それなのに皆はもう一人の俺と、、、」

そこで心配そうにこっちを見ている袁紹たち三人と目が合う、ああ、そうだ
俺は決して一人では無かった、多くの人に支えられ助けられてきた。
「待って、ご主人様違うのよ、もう一人のご主人様は存在だけの抜け殻
 意識も無ければ動くこともできない、ただ生きているだけの状態なのよ
 だから愛紗ちゃんたちも心配しているわ、それでアタシ達が」
「お前を連れ戻しに来たというわけだ」
「それが出来るのは私達だけですからね、フフフフ感謝して貰いましょうか」
「お前には借りがある。それを返すだけだ、感謝など必要無い」

「話はわかった、それでこの神殿で泰山の時のように儀式をして
 情報を流して俺を呼んだのか、俺はてっきりお前らが、お前らのせいで
 皆が居なくなってしまったと思って……」
そうだ話を聞くべきだったのに、自分から襲い掛かってしまった、
怒りと寂しさに逆上していたんだ、 冷静なつもりで、全然冷静じゃなかった。
「無理もないわ、あの状況で一人置き去りにされるなんて
 可哀相なご主人様、アタシの愛で癒してア、ゲ、ル、うふ」
「やめい、近寄るな、また気絶させるつもりか」

「気にすることはありませんよ、本郷一刀。私達はむしろ
 あなたに感謝したいところなのですから」
「それに、お前とはもう一度本気でやりあいたいと思っていたしな」
こっちは感謝される覚えはないが別に困るわけでもないので聞き流しておくが
今度は黙って聞いていた三人が痺れを切らして詰め寄ってきた。
「あのさ〜、ちょっといいかな?」
「一刀さんはその〜、天の国に帰ってしまうんですか?」
「……(怒ってる顔)」

「そうか、俺からも聞いておきたいことがあったんだ貂蝉」
「うふ、なにかしら?なんでも聞いていいわよ、答えられることならね」
「あのときお前は左慈たちを止めないと世界が終わると言ったよな?
 でもこの世界はこの通り、あれからずっと変わらずにある」

「それは、たぶんご主人様がここに残ったからじゃないかしら?
 そのせいで本来の筋書きとは違う可能性がうまれたのね」

「じゃあ、俺がこの世界から戻ったら?結局この世界は終わってしまうのか?」
「おそらくはな、だからといってこの世界に残るというのか?
 この世界に残ったとしてもお前が死ねばこの世界は終わるんだぞ?」
「あら〜それはダメよ〜、ダメダメなのよ〜、
 だって愛紗ちゃんたちは向こうでず〜っとご主人様をまっているのよ?
 それをこのままにしておくなんて酷すぎるわよぉ〜」
「それにこの外史が終わるというのも絶対ではありません
 こうして今ここに存在するのと同じように、終わらないとも言えます」

俺はこの世界に来て、この世界で生きてきた、その時間は短いけれど
それまでよりも、ずっと濃厚な時間を生きた気がする。
多くの人間と会って、多くの人間と戦って、仲間を、愛する人を得た
それだけじゃない、もっといろんな沢山の、とても言葉では
言い表せないほどのものを貰ったと思う。


「少し、時間をくれないか、別れを言う時間ぐらい」

「別れってなんですの?わたくしもその天の国とやらに連れていっては
 くれませんの?」
「ひ、姫!?」
「ほ、本気ですか?麗羽さまぁ〜」
「あら、あなた達は天の国に行って見たいとは思いませんの?
 せっかくのチャンスですのに無駄にすることはありませんでしょう」
「いや〜でもなあ〜、二度と戻って来れないかもしれませんよ?」
「そうですよお、そんな大事なこと簡単に決めちゃっていいんですか〜」
「あなた達お話を聞いてませんでしたの?この世界は終わってしまうんでしょう?
 だったらここに残っていてもしょうがないじゃありませんの」
「あ〜、そっか〜そうだよなあ〜、斗詩!あたい達も行こう!」
「ぶ、文ちゃん……」

「どうなんだ?貂蝉、あんなこと言ってるけど、出来るのか?」
「そうね〜、ご主人様とお嬢さんたちが強く願えばそれも可能かもしれないわね」
「ふん、一人だのなんだの言っておいてまた女が増えているじゃないか」
「おやおやヤキモチですか、まったくうらやましいですね」
「違うと言っているだろうが!それ以上言ったら、殺す!」
「嬉しいことを言ってくれますね、ああ……ゾクゾクします、もっと言って下さい」
「やっぱり殺す!」

どうもしんみりする暇も悩む暇もないようで、俺達は二人をなんとか止めて
儀式の最終段階である鏡を使って、皆の待つ世界へと帰ることになった。


――16話、エピローグ30*3


この世界には終わりが訪れる、それはもともとこの世界が辿るべき運命
俺が鏡に触れて生まれた世界が俺が去ることでその役割を終えて消える。
どんな選択をしようとも、それは避けられないことだったのかもしれない。
思い返せば本当に多くの人と出会い、そして彼らに支えられ助けられてきた
彼らがそのために存在するつくられたものであったとしても、そのことに
違いはない、それこそ感謝してもしきれないほどに思っている。

それでも、それでも俺は皆に会いに行く。俺にとってそれが一番大切な
一番必要なことだから。そのために他の何を犠牲にしようとも構わない
それが俺という人間、俺自身の意思、選択なんだ。

袁紹たちやチョウセンたちの勢いに流されたからではない。
誰に言われるまでもなく、もとより悩むことなどなにも無かった。
俺はそういう迷いを持ちたかった、そういう格好をしたかっただけだ。
この世界が終わるとしたらそれは運命だからではない。
俺がそう選択したからなんだ。
そして、だからこそもしも誰かが望むならきっと……


愛する者たち、俺を想ってくれる必要としてくれる皆を思い描く
皆の待っている世界を思い描く――







眩しい、無意識にそう思い目蓋を上げた。

そこは見慣れた、それでいて途方もなく懐かしく感じる景観の中
ここは間違いなく学生寮の自分の部屋で、窓の外には学園が広がっていて
朝の日差しが部屋に明るく差しこんでいた。

段々と記憶が甦る、そう昨日は悪友と二人で美術館に行き
そのあと、そのあと……溢れ出した記憶はすべてが夢の中、鮮明で激しく
そして長い長い夢を見ていた。思い出は一瞬で脳内を駆け巡り
目頭が熱くなって水のようなものが零れ出す。

すべては、朝の日差しともに霧散する
「夢……か」

頭から全身にどっと疲労が伝播し
起こしかけていた身体を布団の上に再び横たえる。
その瞬間、視界の端、窓の外に捉えたそれは幻か。
起き上がる気力も失せて、そのまま天井を見つめて思いを巡らす。
はたと思い当たり身を起こして窓の外を確認するがそこにはもう幻は無い。

こんな夢をみたあとはいつも忘れたくないと思う。
それでも覚醒する意識とともに夢の記憶は薄れ、どうやっても
思い出せなくなってしまう。それが悔しくて悲しくて
忘れまいと、記憶を焼き付けるように噛み締めるように思い出していく

どれくらいだろうか?
数分のようで何時間のようにも感じたその夢想も外からの雑音に中断させられる。

コンコンと扉を叩くノックが聞こえる。
いつだって現実は遠慮なく夢の中まで入ってきて、無慈悲にも人を連れ戻す
そうだ、いつまでも夢の中に居るわけにはいかない、今日もまた一日がはじまるのだ。
頭を振ってやるべきことを思い出す。扉を叩くのは誰か知らんがまずは起きなければ

気合を入れて起きあがるとしつこく繰り返していたノックの代わりに
待ちきれないというように扉が開く
「ん〜?、なんだよ今朝は、ずいぶんしつこいな」
寝ぼけ眼をこすりながら異様な気配、違和感を感じて振り返る。

そこには……朝の日差しを浴びて輝く幻があった。


「しつこくもなりましょう?、ずっと、ずーっと待っていたのですから」
「……あ、い、しゃ?」
「はい、ご主人様」



(エンドロール)


そのあと堰を切ったように扉の向こうから人が雪崩れこんで
あとはもう揉みくちゃでよく覚えてないんだが
みんなで泣いて笑って大騒ぎしたせいで困ったことになったりもしたけれど
それはまた別のお話

朝の日差しを浴びて、永遠の夢は今日も続いていく

誰かがそれを望む限り……



―――――
921 名前:918[sage] 投稿日:2007/04/10(火) 03:29:04 ID:tDUKATBY0
反応嬉しいなテンキュー&後書きのようなもの

最初は一刀が残されたら?という思いつきから書き始めてもっと短い予定でした。
頭の二話だけ書いてそこでどうするか悩んで、
真エンドをやり直して袁紹エンドにしようかと思ったんだけど
ただ蓬莱で鏡使って帰還じゃ絡みが足りない気がして
あと個人的に書きたかったのでw袁紹たち三人とのやりとりが
メインみたいになっちゃいました。
でも間に入れるエピソードのネタに詰まって結局弟切草パロに走る

一刀の理解が早いのは説明セリフになってしまってるからっぽいです
やっぱり細かいとこ適当だな

しかし今更だけど「困った>>ドカーン>>なんとかなった」
みたいなワンパターンばっかになってしまってる気がした。
それと思いつきで次々やりたいことを詰めこむのは危険だな〜
途中までは一話づつレスで投下する予定が書き直しや
追加が多く辻褄合わせたりとても無理でした、連載作家って偉大だ。

最期にやたら長いのに読んでくれてありがとうありがとう!おやすみなさいw
スペシャルサンクス>>本スレで夢オチのアイデアくれた人

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