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284 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 02:51:57 ID:xsphOlLm0
と言う訳で、流れも読まず、短編投下。
なお、元ネタは本スレ37、>>410氏のものを使用させていただきました。
285 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 02:54:42 ID:xsphOlLm0
 一刀や愛紗たちが再び聖フランチェスカに着てからはや2ヶ月以上が経った。
 彼女達は、未だに不便を感じつつもようやく現代の空気に溶け込みつつある。いや、この世界は彼女等が存在する事を前提にして作られたのだから、彼女達が慣れるのも当然の事だったのかもしれない。
 しかし、そんな世界でさえも、怪しいサングラスとコートを着込んで商店街をこそこそ歩き回るちびっ子2人組を怪しくないとは認識させる事はできない。
 明らかに、その2人はゆっくりと一軒の店へと入っていく。その店の名前は『books明宝』。この町にある書店であった。
 端から見れば、そのまま強盗でもするのか、という格好であるが、彼女達の目的は別の場所にあった。
 そして、彼女達は奥へと入っていく。
「ここですか?月ちゃん」
「……はい」
 その2人‐朱里と月はついにそのコーナーを見つけた。
『成年指定コーナー・18歳未満は購入できません』
 そこが彼女達の目的の場所であった。
286 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 02:57:16 ID:xsphOlLm0
 事の発端は、3時間ほど前に遡る。
「あの……また、房中術の勉強を……したいです」
 月が朱里の部屋で言った言葉。しかし、朱里は、
「でも、ここにはそのような本はそんなにありませんし……」
勉強するにしても、教本となるべき本が無い。
「ううっ……あるのはこの『好色艶本触手淫獣の巻』とかしかありませんし……」
 どうやら、少しは持っているらしい。というか、どこから持ってきたのだろう?
「はぅ……」
 月も少し落ち込んでいる。
「でも…………」
 大胆発言であるが、驚くことは何も無い。この外史に来た最初の頃は、彼女は学校でも一刀の事を『ご主人様』と言って慕っている。なお、そのせいで、一刀に『エロエロ魔神』のあだ名が付いたのはまた別の話である。
「でも……う〜、そんな目で見ないでください」
 しかし、そこで、月はある事を思い出していた。
「あっ……そういえば……」
「何ですか?月ちゃん」
「あの……ご主人様の友人の及川さんという方は、このような本を持っているのを見たんですが……」
 とりあえず、及川が何を買ったのかは、ご想像にお任せしよう。
「それです!」
「――――?」
「つまり、そこにいけば、きっと房中術の本が手に入るんです!」
287 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 03:09:05 ID:xsphOlLm0
 そして、今現在に至る。ちなみに、このような怪しい格好をしているのは、
「及川さんは、こういう格好をして買っていました」
という、月の情報からである。
 棚には色々な女性が裸であったり、色々な格好をしている女性が載っている雑誌が多々置かれてあった。
「えっと……これが良いんじゃないでしょうか?えっと『フラワー・スネーク先生の男を気持ちよくさせる100の方法』」
 その中から、朱里は目に付いた一冊の本を手に取る。
「あの……朱里ちゃん、高そうですけど、お金は大丈夫なんでしょうか?」
「えっと……定価は1200円……大丈夫、ちゃんと足りてます」
 朱里の懐具合も了解を出していた。
 そして、朱里は早速その本を脇に抱えるとカウンターへと向かった。
 カウンターには赤い店名が書かれている白いエプロンをした男性店員が必死に作業をしているだけだ。
 しかし、その店員も朱里を見つけると、
「いらっしゃいませ」
と、声をかけてくる。どうやら、バイトらしく機械的な動作にもみえるが、そんな事は気にしない。
 そして、朱里はゆっくりと目的のものをカウンターの上に置いた。
「これをください」
 これで、全てが終わるはずだった……のだが……。
「…………」
「どうしました?」
「……え〜っと…………」
 店員は困ったような顔をしながら、カウンターに置かれた本と朱里を交互に見ている。そして、次の言葉をゆっくり言い放った。
「これ……成人指定の雑誌ですので……その……お客様には売る事が出来ないんですが……」
 考えれば簡単な事である。朱里や月は、実年齢はどうであれ、見た目は完全にお子様なのだ。つまり、店員も成人指定の雑誌を売る事は出来ないため、固まっているのである。
「どうしてですか?」
「いや……その……これ、成人指定ですので……」
 上手く説明できない為か店員もしどろもどろになっている。しかし、それでも彼はゆっくり言った。
「つまり……お客様では購入が出来ないんです……」
288 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 03:13:06 ID:xsphOlLm0
 朱里にとっては、それは大きな誤算であった。結局、彼女達は再び店の奥へと戻り、作戦を練ることにしていた。
「まさか、私たちだと買えないなんて……」
「へぅ……どうしよう、朱里ちゃん……」
 まさか、知り合いに買ってくれと言う事が出来ない代物である為、彼女達は自力でこれを購入しなければならない。
「う〜ん」
 そして、朱里は考え込む。彼女の頭でそろばんがぱちぱち動いているかのようなイメージが浮かぶ姿。これこそ、北郷軍天才軍師の諸葛亮孔明そのものだ。
 ちなみに、それがエロ本を買うためだけに動いていると知ったら、皆は一体どう思うやら……。
「閃きました!」
 そして、彼女はゆっくりとその策を月に耳打ちしていた。
289 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 03:17:11 ID:xsphOlLm0
 そして、数十分後。
「交代の時間です」
 先ほどまで居た男性店員が居なくなり、新たな店員が入ってきた合図だ。
「今です!」
「しゅ……朱里ちゃん……重いよ」
 その瞬間を狙ってカウンターに向かっていくのは、よろよろとした足取りのコートを羽織った影。そして、その顔はサングラスによって隠されている。
「頑張ってください、月ちゃん!」
「う……うん」
 懸命な皆様ならお分かりだろう。
 朱里の案とは、肩車によって身長を高く見せる作戦であった。コートに隠されているが、その中では月が必死に朱里を背負っている。しかも、店員が交代すれば、先ほどの件がばれる心配も無い。
 ちなみに、どちらが上かというのは、じゃんけんで決めたらしい。
「あの……これください」
 そして、かなり危ない足取りでカウンターに辿り着くと、なるべく店員に顔を見せることなく、本を差し出した。
(これで、ばっちりです)
 朱里はそう確信していた。この後、意外な伏兵が居る事を知る事もなく。
290 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 03:31:30 ID:xsphOlLm0
「いらっしゃ……あれ?その声、諸葛亮じゃないか?」
「えっ?」
 唐突に呼ばれた名前。そして、朱里は反射的に店員の顔を見てしまう。
 そこにいたのは、店の白いエプロンをした公孫賛であった。
「えっと……公孫賛さん。どうしてここにいるんですか?」
「どうしてって、オレはここのバイトだ」
「何で……」
「いや、バイトしないとこの世界だと生きていけないからさ……」
「……」
「で、諸葛亮はどんな本を買うんだ……って……これって……」
「はわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ!」
「エロ本?」
 そして、その言葉を公孫賛が言った瞬間、朱里の顔は一瞬で茹蛸の如く待ったに染まっていた。
「わーーーー!わーーーーーー!」
「うわっ!朱里ちゃん、暴れたら……きゃ!」
 朱里が暴れだすと、下にいる月が絶えられるはずも無く、あっけなく、2人は縺れ合って倒れてしまう。
「あっ……董卓」
「え……えっと……へぅ……」
 月の名が呼ばれると、今度は彼女も顔を紅潮させていく。今に失神してもおかしくないような顔の赤らめ具合だ。
 そして、しばしの間、沈黙が流れる。そして、最初にそれを破ったのは……。
「あああ……あの……失礼しましゅ!」
 月の手を引きながら逃げ出す朱里であった。


 こうして、彼女の最初のエロ本ゲット作戦が失敗に終わったのであった。
 なお、この後に、一刀が詠に責められていたのは、このせいかは定かではない。
291 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2007/02/28(水) 03:33:27 ID:xsphOlLm0
これで、終わりです。
最後に……馬鹿でごめん

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