[戻る] [←前頁] []

56 名前:華琳毒殺計画5[sage] 投稿日:2007/02/24(土) 17:37:36 ID:vKKvEcde0
 華琳の城にて、公卿百官を招待した宴会が開かれた。
客人達は、酒や料理を堪能している。
「いやあ愉快じゃ。所できょうは何の宴会でござるかな?」
「曹丞相の退屈しのぎでござろう」
「我々としては、ご機嫌の良いのに越した事はない」
「まあ、陽気にやりましょう」
客人達がワイワイと騒いでいる中、主催者である華琳がパンパンと手を叩いた。
「さて…皆さん。ここらで一つ、私から余興を入れたいと思います」
「ほほう、何か始まるのかな?」
「待ってました!」
華琳の言葉に反応し、パチパチと拍手を鳴らす客人達。
しばらくすると、全身傷だらけの吉平が兵士に連れられ、曹操の前に引っ立てられた。
その無残な吉平の姿に、全員が驚愕した。
57 名前:華琳毒殺計画5[sage] 投稿日:2007/02/24(土) 17:38:34 ID:vKKvEcde0
「この吉平は、医者の身でありながらこの私を毒殺しようと企みました。
その為、今はこの様な無様な姿で生き恥を晒しています。今日はここで、
その仲間の名前を白状させようと思います」
冷酷な笑みを浮かべながら、華琳は宴の席から吉平を見下ろす。
「どうかしら、吉平?大人しく喋れば、これ以上恥を晒さずに済むわ。
今のお前は薄汚い動物と同じよ」
「ぐ……!」
吉平は、傷の痛みに耐えながらも華琳をキッと睨み付けた。
そして、言葉を吐く。
「曹操!貴様には情と言うものがないのか!?なぜ人思いに殺さぬ!?
貴様がこの様な無情な仕打ちを人々に見せれば、人々の心は貴様から
ますます離れていくぞ!」
だが、そんな吉平の言葉を華琳は軽くあしらう。
「ふふ…この様でまだそんな口が聞けるとはね。そんなに潔く死にたい
なら、大人しく仲間の名前を言うのね」
「……ぺっ!」
吉平は曹操に向かって唾を吐きかけた。
そして、その行動が再び華琳を怒らせる。
「やりなさい!」
華琳の指示で、兵士たちが客達の前で吉平を棒で打ち据える。
再び吉平は意識を失いかけるが…
「気絶させては駄目よ。水を掛けてでも起こしなさい!」
あまりに無情な華琳の命令。
兵士は吉平に水をかけ、無理矢理彼を起こす。
「ぅ…ぐうぅ…!」
そして再び棒で殴りつける。
その余りに惨い仕打ちに、来客たちは恐怖心を覚えた。
「何と言う事を…」
「見るに耐えん…」
58 名前:華琳毒殺計画7[sage] 投稿日:2007/02/24(土) 17:39:14 ID:vKKvEcde0
桂花が去ってしばらくすると、桂花が一人の男を連れてきた。
「こ…この男は董承殿の下男」
桂花が連れてきた男の名は慶童。
董承の元で、下男として働いている男である。
華琳が慶童に問いただす。
「慶童、改めて聞くわ。お前が私に訴えた事…確かに間違いないのよね?」
「はい」
慶童がコクリと頷く。
「我が主・董承様をはじめとし、そこの王子服様たち、更に馬騰様と
一刀様も加わり、曹操様を殺す相談をいたしておりました」
「け…慶童何を言う!」
せっかくの計画を洗いざらい打ち明けてしまった下男に、王子服が声を上げる。
だが、慶童は悪びれる素振りをみせずに言い返した。
「本当の事を言ってるまでです。あなた達のために私までまきぞえになるのは真っ平です」
「な…何だと…!?」
「もし謀反が失敗したら、親や子供まで一緒に処刑です。私は
そんな企みの巻き添えになりたくないんです」
自分の身を守るために、自分達を売った慶童に怒りを覚える4人。
「お…おのれ!」
王子服が飛びかかろうとするが、兵士に押さえつけられてしまう。
4人はそのまま牢屋に放り込まれてしまうのだった。
華琳は踵を返して言う。
「…董承の屋敷へは、私がじきじきに乗り込むわ」
82 名前:華琳毒殺計画6[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 02:40:09 ID:fOhjb/LT0
※5から7に飛んじゃったんで6を書き込みます。

見るに見かねた来客たちは、そそくさと宴会場を去ってしまう。
そしてその中には、王子服、仲輯、呉磧、呉子蘭の姿もあった。
だが、その4人が去ろうとするのを、華琳は見逃さなかった。
「待ちなさい、そこの4人!」
華琳に呼び止められる王子服たち。
4人の周りを兵士が取り囲む。
「仲間の拷問は見るに耐えないかしら?」
「な…何と言われます」
とぼける王子服だが、それが華琳に通用するはずもなかった。
「とぼけても無駄よ!お前たちが董承の家に集まって、私を殺そうと
相談しているのを知らないとでも思うの!?」
「なっ!?」
その言葉に、仲輯が驚愕の声を上げる。
何故気付かれているのだろう…!?
「そ、曹丞相。突然何を言い出されます」
「そう…まだとぼけるの」
華琳が側にいた桂花に振り向く。
「桂花。慶童をここに連れてきて」
「はっ」
83 名前:華琳毒殺計画8[sage] 投稿日:2007/02/25(日) 02:41:03 ID:fOhjb/LT0
大勢の兵士を引き連れた華琳は董承の屋敷へ現われた。
それを窓から見ていた董承は華琳を出迎える。
「これこれは、曹丞相。突然のお越し、いかがなされました?」
「私が送った酒宴の招待状、届かなかったの?」
華琳が尋ねる。
「いえ。受け取りましたが、何しろ病の身でございますので…」
とぼける董承だが、華琳は冷たい目で言う。
「病ねぇ…。私をどうやって暗殺しようと悩みぬいた果ての病かしら?」
「な、何をおっしゃられます!?」
声を上げる董承だが、華琳は無言で兵士たちに顎で合図した。
兵士が屋敷を家捜しする。
華琳を暗殺した何かの証拠がある筈である。
「そ…曹丞相。これは一体どういうわけでございます」
尋ねる董承に華琳は答えた。
「お前の下男に、慶童って言う男がいるでしょう?彼が私に教えてくれたのよ」
「け…慶童が!?」
なんという事をしてくれたのだ、あの下男は。
歯軋りする董承を尻目に、華琳が捜索されている屋敷を見る。
しばらくして、兵士が中から出てきた。
「ありました!血判状と帝の密詔です!」
「見せなさい」
兵士が華琳に、見つけた二つの証拠を手渡す。
それを確認すると、華琳は董承を睨んだ。
「董承、覚悟は出来てるでしょうね?」
「く…!」
そして、華琳は兵士に命じた。
「私を暗殺しようと企んだ者たちの一族郎党も捕らえなさい!二度とそんな真似をする輩が現われない様に見せしめにしてやるわ!」

こうして曹操暗殺計画はあっけなく発覚し、計画に加担した者の一族郎党ことごとく捕らえられた。
そして彼らは、見せしめのために市中引き回しの上に斬殺された。
その数は七百名にのぼったと言う…。

 [戻る] [←前頁] [上へ]