[戻る] [次頁→] []

289 名前: ◆2KXnXGdwGE [sage] 投稿日:2010/03/25(木) 14:07:18 ID:oOgnWRnW
ただいま! なんか頭痛いから帰ってきちゃったよ!

投下するね!
290 名前: ◆2KXnXGdwGE [sage] 投稿日:2010/03/25(木) 14:10:13 ID:oOgnWRnW

 今日は゛春の使い魔召喚の儀式゛の日。それは、わたしたち二年生が三年生にあ
がるために、必ず、通らなければならない道。
 ここで自分の゛使い魔゛を召喚できないと、留年になってしまう。
 わたしは、゛ラ・ヴァリエール侯爵゛家という゛トリステイン王国゛随一の名門貴族の三
女だけれど、使い魔を召喚できなければ、もちろん例外なく留年だ。そのため今日は
気合いが入っている。空回りしなければいいんだけどね……。
 召喚の儀式は、゛トリステイン魔法学院゛の外に広がる草原で行(おこな)われてい
る。言葉が示すとおり、今まさに、召喚の儀式の真っ最中なのだ。
 わたしの左横には、グラモン元帥の四男坊。゛ギーシュ・ド・グラモン゛という男子生
徒が、真っ赤なバラを口に銜えながら立っている。こいつはキザでバカでファッション
センス零に加えてナルシストのどうしようもないやつなんだけど、なんと、゛ジャイアン
トモール゛(大きなモグラ)を引き当てたのだ。
 まあ、所詮は普通のモグラよりちょっと大きいだけのモグラだから、大したことない
んだけどね。
 そして、サークルを挟んだその向こうには、燃えあがる炎のような真っ赤な髪をか
きあげながら、わたしに見下しの視線を送っている生け簀かない゛ゲルマニア゛女が
立っている。
 ゛キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー゛ だ。
 この女は、わたしと顔をあわすたびに、わたしをバカにするムカツク女なの。早く死
んでくれないかしら、と常日頃思っているわ。足もとには使い魔の゛火トカゲ゛がピッタ
リと寄りそっている。主同様ムカツク顔ね!
 見てるとムカツクから視線を空に向けることにした。雲ひとつない清々しい澄んだ青
空が広がっている。
 まぶたを閉じると、すうっと心が落ちついた。深呼吸をひとつして、まぶたを開ける
と、なんて鳥かはしらないけど、一羽の白い鳥が空に浮かぶ青い海を泳いでいる。
 鳥はすごいと思う。魔法もマジックアイテムも使わないで、空を飛ぶことができるの
だから。
「ミス・ヴァリエール」と名前が呼ばれた。「はい」と返事をして、声の主に視線を向け
る。
 わたしの名前を呼んだのは、トリステイン魔法学院の教師。゛ジャン・コルベール゛
だ。
 年は四十代前半と訊いている。頭がはげていて、メガネをかけた冴えないおじさん
なのだが、生徒想いの優しい先生なのだ。
「ミス。そんなに緊張することはありませんよ」リラックスです、とコルベール。
 サークルの中央に立ち、こくり、とうなずくと、腰から杖を抜き、空にかざして、まぶ
たを閉じた。
 ゛ハルケギニア゛には、四つの゛系統魔法゛というものが存在する。火。水。風。土
だ。この四つを系統魔法と呼ぶ。それ以外の魔法は、゛コモン゛魔法と呼ばれている。
 使い魔は、そのコモン魔法を唱えて召喚するんだけど、わたしは、使い魔を召喚で
きるかわからない。
 なぜなら、わたしは、名門ヴァリエール侯爵家の血を引いておきながら、魔法を上
手く扱うことができないからだ。
 恥ずかしいことに、わたしは、自分の得意な系統魔法すらもわからない。火なのか
水なのか風なのか、それとも土なのか……。
 わたしの耳に、クラスメイトたちの話し声が聞こえてきた。
「あいつ召喚できるのか?」とか、「何回目で召喚できるか賭けようぜ!」とか、挙句
の果てには、「平民召喚するんじゃねーの?」とか言っている。
 平民なんて召喚するわけないでしょーが! と心の中でアッパーを食らわせた。
 散っている気を落ち着かせ、集中力を極限まで高めると、呼吸を整えて、カッとまぶ
たを見開いた。
291 名前: ◆2KXnXGdwGE [sage] 投稿日:2010/03/25(木) 14:11:15 ID:oOgnWRnW

 一羽の白――いいえ、これは純白といってもいいほどの白さを持った蝶が、杖の先
端に止まって、羽根を休めている。とても綺麗な蝶だ。
 わたしは蝶に詳しくないからわからないけど、こんな綺麗な蝶がハルケギニアにい
たとはしらなかった。
 休んでるとこごめんね、と心の中で謝って、杖を軽く振る。ひらひらと蝶は舞いあが
っていった。
 本当に綺麗な蝶……。あんな綺麗な使い魔を、召喚したいな……。
 杖を握る手に力を籠め、「よし!」と気合を発して杖を振る。
「宇宙の果てのどこかにいるわたしの僕(しもべ)よ――! 神聖で美しく、そして強
力な使い魔よ! わたしは心より求め訴えるわ! 我が導きに答えなさい――!」

 ここはとある国のとある場所。そこに美しくも可れんな一羽の蝶がいた。
 顔に蝶をモチーフにした仮面を身に着けていて、肩ほどで揃えられた青い髪を夜風
が揺らしている。
 手に持つ槍は龍牙といい、身に纏った純白の衣(ころも)は、さながら着物のようで
ある。
「悪党ども!」美しき蝶の声が闇夜に響いた。
 悪党ども、というのは山賊のことである。数はゆうに百を超えているか? 屈強な大
男もいれば、ヒョロヒョロの男もいて、様々な輩の集まりのように見えなくもない。しか
し皆(みな)、槍や剣、弓矢を持っていて、血に飢えた眼差しをしている。
 けれど、美しき蝶はその程度では臆さない。どころか――「どうやら年貢の納めどき
のようだな!」と山賊たちに向け発したではないか。
 月夜が美しき蝶を照らしあげると、龍牙の穂先が青白く光った。山賊たちは一斉に
背後を見やる。
 左腕を腰に当て、堂々とした立ち振る舞いで、山賊たちを淡い紫の瞳が見おろして
いた。
「だーれだ貴様!」山族の頭らしき者が言った。
 うむ。思ったとおりの受け答えし。悪人の頭の中は、皆(みな)同じ構造をしている
のやもしれぬな。
 では、名乗ってやるとしよう、と。
「あるときはメンマ好きの旅の武芸者。またあるときは、美と、正義の゛華蝶仮面゛。し
かしてその実体は……」蝶の仮面に手をかけた。
 よし! あとは名――。
 そのとき野次が入った。「゛星゛(せい)! きてくれたのか!」と。美しき蝶が声の主
に視線を向けると、仲間であり親友の゛関羽゛こと、゛愛紗゛(あいしゃ)だった。
 腰より長い黒く美しい髪を頭の左で結っていて、手には愛槍(そう)、青龍偃月刀を
握っている。美しき蝶が駆け付けてくれたのがよほど嬉しかったのか、顔はこれでも
か、と満面だ。その後ろでは、゛鈴々゛(りんりん)が目を丸くして、人差し指を口にあて
がえながら、「え!? 星?」という顔をしている。
 な! 愛紗。邪魔をするな! 「んっんん――!」と手を口もとへと持っていき咳をす
ると、振袖の端からさげられた赤い組ひもを夜風が流した。
 夜空に浮かぶ星々をバックに、美しき蝶は途中から仕切り直す。今度は邪魔してく
れるなよ、と思いなが。
「またあるときは、美と正義の華蝶仮面。しかしてその」まぶたを閉じた。「実体は」仮
面に指をかけると、三日月に向けて放り投げた。クルクルと宙を舞う蝶の仮面。
 その下に隠れた容貌は、楊貴妃も腰をぬかしてビックリするほどの美貌を誇ってい
た。簡単に言うとだな、とんでもない美女なのだ! 自分で、美、と言うだけのことは
ある。
292 名前: ◆2KXnXGdwGE [sage] 投稿日:2010/03/25(木) 14:12:07 ID:oOgnWRnW

「゛常山の趙子龍゛――ここにあり――!」
 気高く名乗りをあげると、゛趙雲゛こと星は、「とうっ――!」と雄叫びをあげ、砦の上
から山賊の群れの中へと飛びおりた。黄金の羽根が描かれた振袖が宙を舞う。今の
は決まったな。愛紗が邪魔さえしなければ、より完璧だったが、と思いながら地上ま
であと数メートルと迫ったときだった。星の目に光り輝く鏡のようなものが映ったの
だ。
 それは着地地点にある。なんだあれは? と一瞬思った星だったが、今はそれどこ
ろではない、と鏡のようなものの上に着地して、「うぉあああああああああ――!」と
気合の雄叫びとともに駆け出した。

 ルイズ・フランソワーズは、目が点になった。たった今、自分が呼び出したであろう
使い魔が、クラスメイトとその使い魔たちを、ゴミクズのように宙に舞いあげながら、
バッタバッタと薙ぎ払っているからだ。
 二メイルを超える槍を自由自在に動かし、一筋の疾風とばかりに速く身が軽い。頭
の後ろで結った長く青い髪が宙を泳いでいる。それは、まるで戦乙女のような鬼神
ぶり。
 ある生徒が使い魔に向けて火の魔法を放てば、「とう!」とジャンプ一閃軽々避け
て、腹部に石突を叩き込み。とある生徒が風の魔法を放てば、「あまい!」と穂先で
はじき返して、柄で面を食らわす。
 ある生徒の゛ゴーレム゛などは、瞬きしているあいだに粉砕されてしまった。草原に
飛び交っていた悲鳴は、使い魔が召喚されてから、一分足らずで止んだ。変わりに、
うめき声が草原に響いていた。
 深々と穂先を肩に突き刺され、のたうち回っている生徒や、石突や柄で叩かれ、気
を失っている生徒など、この場にいる人間で無傷なのは、暴れに暴れまくった使い魔
と、ルイズだけ。
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、その光景を見て震えた。
身体の底から震えた。恐怖からではない。嬉しくてだ。
 自分のような魔法の才能がない゛メイジ゛が、こんな強力な使い魔を召喚できるな
んて! しかも、同じ女として見ても憎たらしいほど綺麗。わたしにピッタリな使い魔だ
わ!
 鳶色の瞳を輝かせて、ルイズは使い魔に走り寄った。
 使い魔は、キョロキョロしている。「ここはいったい? それになぜ、朝なのだ?」と
つぶやき、手をかざした。陽の光がまぶしいようだ。
「あ! あんた名前は!」ルイズは興奮状態だ。無理もない。いくら行き成りだったと
はいえ、メイジ三十人以上を、一瞬で倒してしまうほどの使い魔なのだから。
 使い魔がルイズに視線を向けた。
「私は趙雲。で、ひとつ訊きたい。ここは」地面を指差す。「どこなのだ?」
293 名前: ◆2KXnXGdwGE [sage] 投稿日:2010/03/25(木) 14:16:09 ID:oOgnWRnW
? ? ? 

ハテナになっちゃった?
とりあえず今日終わり。

 [戻る] [次頁→] [上へ]