「死ぬでない!」
だが孫策の瞳には生気が見受けられない、相変わらず死を受け入れた顔である。
「妾の真名は美羽じゃ!この名、孫策に預ける」
「えっ!?」
予想だにしていない出来事に驚いた孫策の瞳に若干ながら生気が戻る。
「孫策!妾の真名、確かにお主に預けたぞよ!お主は預けられた真名を呼ばずに死ぬのか!」
ひっく・・・
袁術は既に涙声である、瞳には溢れる一歩手前の涙が・・・
「お主は真名を預けられた相手に真名を預けずに……死ぬのか!」
最早崩壊すると思われた袁術の顔は更に涙声と涙で崩れるも崩壊は免れた。
「お主は真名を交換しようとする妾を置いて、先に逝くと言うのかあぁぁぁ!」
うわわわああああぁぁぁんんんん!!
ひたすらに、ただひたすらに孫策を救いたい気持ちだけで叫んだものの、やはりまだ子供の為に訳が分からなくなり感情が爆発してとうとう泣き出してしまった袁術。
そんな袁術を優しく抱きしめて頭を撫で続ける長勲。
「お嬢様、本当に強くなられましたね…立派でしたよ、ますます好きになっちゃいました」
袁術が立派になることが嬉しい反面いつか自分の手から巣立っていく日が近づいたと思うと寂しくもなる長勲だった。
いまだ泣いている袁術の頭を撫で続けている長勲はそのまま周瑜の方を向くと。
「さてさて美羽さまの忠臣としてはここは名君に習いたいと思います。周瑜さん同じ軍師として私の真名、七乃を周瑜さんに預けますね」
これで孫策に通った理屈で行けば周瑜は死ねない、だから孫策は周瑜を理由に死ねなくなった。
「ふっ・・・雪蓮完敗だ。最早死ぬことも儘ならぬ」