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899 名前:一壷酒 ◆1KOsYU0skY [sage] 投稿日:2011/03/26(土) 20:59:29 ID:qEJGZ7yA0
 こんばんは、一壷酒です。
 南蛮ルート、かなり駆け足な所もありますが、これにて終幕です。

 戦の予感が迫った後編ですが、陰惨なシーンはありませんので安心してお読みください。

 なお、玄朝秘史は、四月より再開予定です。

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 真・恋姫†無双 みなみのくにのちっちゃなおうさま 後編



 5.おとぎの国を守り切れ


 第一陣は予想以上に早く訪れた。
 なにしろ、華雄が本格的に将となった数日後には森の端から見える場所に蜀軍が布陣していたのだ。
「どう……かな」
 既に森の端に身を潜め相手の様子を窺っている美以たちとは別に幼い子供たちを避難させていた俺は、木々の向こうの蜀兵たちを眺めている華雄に近づき、声をひそめて訊ねた。
「どうとは?」
「勝てそう……かい?」
 声に不安が入り交じるのが押さえられない。なにしろ、戦争なんてはじめての経験だ。そもそもそんなことがないようにと祈っていたのだが、そうもいかないらしい。
「勝てるだろう。今回はな」
「今回は?」
「ああ。地の利はこちらにある。一当てして、あちらを撃退できればそれでよし。万が一こちらが崩れたとしても森に逃げ込めば、相手を始末できる」
 華雄は地形を指で示して説明してくれるが、全ては理解できない。やはり、軍人さんなのだなあ、とあり得る戦の成り行きを説明する彼女の横顔を眺めながら思う。
「次からは……。まあ、この戦で様子を見させてもらう」
 一通り話した後で彼女は肩をすくめてみせた。
「なにしろ主力も間に合っていないようだしな」
「主力って?」
「孟獲によると、こういうときのために象部隊を用意しているそうだ。いまは、象自体が南方に放たれているため、集め直しているところだそうだがな」
「それって、結構時間かからない?」
 しばらく考えておずおずと訊ねると、あっさりと頷かれた。
「かかるだろう。だから、間に合わないと言った」
 彼女は大きな戦斧を抱え上げながら、歩き出す。俺はその横について同じように進み出した。
「まずは、対陣してみるさ」
 そうして、俺たちは蜀の兵たちの前に姿を現したのだった。

 果たして、事は華雄の予想通りにはいかなかった。
 というのも、ずらりと居並んだ小さな女の子たちを前に、相手の軍が戸惑いを見せたためだ。
 その気持ちは正直よくわかる。
 準備万端でやってきた軍が、猫耳娘たちを前にしたら、それはそれは動揺することだろう。
「しかし、こう睨み合ってもらちがあかんな」
 いらいらと呟く華雄。暴れようとしていたところでこの有様で、少々不満のようだ。彼女にしてみれば、自分を追い立てた相手であり、一矢報いようという気持ちもわかる。しかし、俺としては出来る限り穏便に済んで欲しいところだ。
「このまま退いてくれないかな?」
「そううまくはいかんだろうな。やつらもわざわざ軍を出しているのだ」
 面子とかそういうものだろうか? 軍や政治の世界とは縁遠かった身としては、想像の域を出ない。
 そこへ、前に出て相手の軍に声をかけていた美以がとてとてと戻ってきた。むくれ顔ながら無事帰ってきた姿にほっとする。
「むー。あいつら帰れって言っても全然聞かないじょ」
 ほらな、とでもいうように華雄が肩をすくめる。しかし、困ったな。
「それで、なんて言ってたの?」
「よくわからないじょ。なんぽーをさわがすふらちものとかにゃんとか」
「身に覚えのない話だなあ」
「そういう名分なんだろうさ」
 不思議そうに言う俺たちに対して、華雄はつまらなさそうに吐き捨てる。彼女も、そして、彼女の仕えた董卓も濡れ衣を着せられて都を追われたらしい。
 実状とは別に、軍を動かすには動かすなりの理由や大義というものが必要と言うことだろうか。
「退きそうにないね……」
 この森に住んでいる俺たちはともかく、出張ってきた彼らは食べ物も水も運んできているのだろう。当然お金もかかっている。言いがかりではあるが、大義名分もある。いくらちっちゃな女の子ばかりとはいえ、なにもせずに帰るわけにもいかないだろう。
 しかし、いかに軍隊といえど、ミケ、トラ、シャムといった猫のようにかわいらしい女の子たちをいためつけたいと思うやつは少ないだろう。
 なにかきっかけがあれば諦めてくれるかもしれない。
 甘い考えかもしれないが、俺はそういったことを美以たちに話してみる。すると、華雄が獰猛な笑みを浮かべて見せたのだ。
「ならば、一騎打ちをしかけてみよう。将が敗れれば、一度退くかもしれん」
「おー。それがいいにゃ。みぃとかゆーでやっつければいいにゃ」
 嬉しそうに同意する美以。一騎打ちというのは悪くないと思うが、大丈夫なのだろうか。その不安が表れていたのだろう。二人が元気づけるように笑った。
「旗を見る限り、主立った将は出てきておらん。関羽も張飛もいないのに、負けるわけがないさ」
「うむにゃ。みぃも負けないにゃ! 兄は心配するにゃ!」
 そうまで言われてしまっては、納得するしかない俺だった。

 本当に、心配する必要などなかった。
 蜀からは張翼と王平という武将が出てきていたらしいが、華雄は十合も打ち合わずに王平を馬から落としていたし、美以の外見からその実力を侮っていたらしい張翼は、美以の武器――大きな猫の手型の鈍器――に腕を折られることとなった。
 率いていた将が倒れ――片方は意識を失っていたらしい――敵は敗走を始めた。
 問題はその後だった。
 逃げ始めた兵士たちに興奮したのだろう。美以と華雄の奮戦に刺激されたところもあったかもしれない。ミケ、トラ、シャムとそれに従うみんなが突撃を始めてしまったのだ。
「ちょ、ちょっと、みんな、止まって!」
 にゃーにゃーわめきながら駆け出す皆を止めようとするが、その勢いに呑み込まれてしまう。ぷにぷにとした肉球とやわらかな毛皮と、これまたやわらかな手足にもみくちゃにされて、俺は気を失うこととなった。
「まあ、そう気に病むな。追撃は必要だし、なにより被害はほとんどなかったのだ」
 念のために行われた不寝番から戻ってきた華雄が俺を励ますように言ってくれる。
 たしかに人的被害はほとんどなかった。少なくともこちらには死人は出ていないし、迷子になった数十人は、一晩中かけずり回って回収出来た。
「まあねえ。でも、こんなのが続いたらなあ」
 しばしばする眼をこすりながら、俺は答える。もし死者がでるようなことがあったらどうなることやら。俺の生きてきた世界とここでは常識も生き方も違うということはわかっているつもりだったが、身近な人間の生死が関わってくるとなると、やはり精神的にきついものがある。
「まあ、しばらくはあるまい。あれだけ無様に負けたとなれば、まずは中央……成都に伺いを立てずにはおられまいからな」
「そういうものか……」
 そのあたりは正直、彼女の言うことを信用するしかないだろう。俺は気を取り直して伸びをしてから、彼女に改めて話しかけた。
「それより、華雄には相談したいことがあったんだけど」
「なんだ?」
「捕虜をね、どうしようかと」
 潰走してしまったために、あまり抵抗もせずに捕まった者たちが多くいる。美以たちは気にとめてもいないようなので、どうすればいいのか悩んでいたのだ。
「森の外れにでも放っておけば、あやつらが回収してくれるのではないか? こちらが手を出す必要もないだろう」
「それでいいのかな?」
「いいだろう。それとも、殺すか?」
「いや、それは……」
 少し考えて、俺は小さく首を振る。
「そうだな。美以たちも殺したりとかは歓迎しないだろう。放り出すか」
「うむ」
「ただ、一応、華雄にもざっと見ておいて欲しいんだ。顔見知りとかいたら、こっちに協力してくれる人がいるかもしれないだろう?」
「そのあたりは……どうだろうな。まあ、しかし、様子は見ておくか」
「うん。頼むよ」
 そういうことになって、俺は彼女を連れて、捕虜たちがまとめられているところへと向かった。
「む、あれは」
「ん? 見知った顔がある?」
 彼女の視線を追うと、派手な着物の少女とそれに寄り添うようにしている丸顔の女性の姿があった。周囲の蜀兵のつけた鎧とは明らかに違う格好で、場違いだった。どこかで紛れ込んだのだろうか。
「あ、華なんとかさんじゃないですか、助けてくださいよ〜」
「助けるがよいぞ、え、えーと、ばかゆう?」
 二人は華雄の視線に気づき、明るい声をあげる。その様子に、華雄が顔をしかめるのがわかった。
「いや、勘違いだったようだ」
 その言葉を聞いた途端、二人が慌て出す。
「わ、う、嘘です。冗談です。華雄さん! ちょっと!」
「ま、ま、ま、待つのじゃーーーっ!」
 それが、俺たちと、袁術、張勳主従との出会いであった。


 6.おとぎの国の日常


 金糸に彩られた派手な着物と、それに負けないくらい美しい黄金の髪を揺らす女の子が、ひらひらと踊るようにはしゃぎまわる。その様子はまるで熱帯の蝶のようだ。その蝶をおいかけるように戯れるのは、しなやかに動く体の上で猫耳を揺らす少女たち。
 袁術と美以たちが遊んでいるそんな光景をご満悦の表情で眺めているのは、袁術と一緒に森にやってきた張勳。彼女たちは蜀に追われて虜囚の身になっていたらしい。それが俺たちにさらに捕虜にされていたわけだ。
「楽しそうだね」
 大木の幹にもたれている彼女の横に座り込みながら声をかける。彼女は視線を逸らすことなく、にこにこと機嫌よさげに頷いてみせた。
「ですねー。お嬢様ったら本当になじんじゃって」
 美以たちの笑い声が、ひときわ大きくなる。なにやらトラがおかしなことをしでかしたらしい。
 彼女の言うとおり、北からやってきた名家のお嬢様――なんだそうだ――はすっかり南蛮に受け入れられて、遊び仲間として歓迎されている。
 しかし、俺が言ったのはそれではない。
「いや。そっちもそうだけど、楽しそうだって言ったのは張勳のことだよ」
「ええ? 私ですかぁ?」
 目をまん丸にして俺の方を見る。
「うん。楽しそうだ」
「そうですか? まあ、お嬢様のあんな姿を見ているのは楽しいことですけど」
 彼女は興味深げに俺をねめつけた後で、再び主たちの笑いさんざめく様子に目を戻した。俺に向けた探るような視線はほんのわずかな間であったが、背筋をぞくりとふるわせるのには十分だった。
 どうもこの人は腹の底が読めない。俺の方は仲良くしたいと思うのだが、踏み込めない部分があるように思う。そうは言っても、そのあたりも時間が解決してくれるだろう。
 問題は、その時間があるのかどうかなのだけれど。
「なにか悩んでますねえ?」
 ふとかけられた言葉に心臓がはねあがる。すっかりお見通しというわけだ。
「ん。まあね。どうしていいかわからないんだよ。次の侵攻があるのかないのか。あったとして、それがいつなのか」
「蜀の人たちですか」
「うん」
 他ならぬ目の前の女性からの情報によれば、現状の蜀には劉備をはじめとして、諸葛亮、関羽、張飛、趙雲、馬超といった俺でも聞いたことのあるような名将、名軍師が揃って居るらしい。赤壁の後といえば、蜀は呉とぶつかって関羽を失ったりするはずだが、そういうこともないようだ。そもそも、劉備を筆頭に、皆若々しい女の子たちで、頑迷になったりすることもないのかもしれない。
 呉の方でも孫策が生きていて、その側には周瑜もいるというから、俺の知っている三国志とは自ずと違いが出て来るのはしかたのないところだ。
 袁術からしてあれで、孟獲がああだもんなあ、と俺は泥だらけになって遊んでいる少女たちを眺めやった。あの綺麗な服をあんなに汚して大丈夫なものなのだろうか? 隣で見ている張勳が叱りつけるわけでもないから、大丈夫なのだろうけれど。
「来るかどうかははっきりしてるじゃないですか。来ますよ。絶対」
「来ちゃうか」
「来ないわけがないですね」
 あっさりと断言されてしまった。
「曹操さんのところはともかく、劉備さんや孫策さんのところは余裕がないですからね。近いところに別の勢力があれば叩かずには安心できませんよ。何らかの対策はしてくるでしょうね」
「平和的にくるってのはないのかな?」
「うーん」
 小さく唸ると、彼女はあたりを見回した。それにつられて、俺は周囲を覆う緑の光景を改めて再確認する。いやあ、しかし、すごい密林に住んでるものだね、俺も。
「現実的に言って、南蛮のみんなって別に困ってないじゃないですか。食べ物はあるし、服も毛皮からつくってるみたいですし、家もありますよね?」
「あるね」
 お世辞にも立派とは言い難い洞穴や遺跡のようなものや、蔦でつくったような家ではあるが、雨風はしのげるし、暑さも避けられる。まして、食べ物や着るものには特に困った覚えがない。袁術、張勳主従だって、特になにもしていないのに、食事はちゃんとわけてあげられるくらいには余裕があるのだ。
 しかし、彼女がなにを言いたいのかいまいちわからず、首をひねる。
「ですから、蜀の側からはなにも提供できないんですよ。あっちとしては蜀以外の勢力に呼応して暴れたりしないでくれって言いたいところでしょうけど、そのための対価を差し出せない。だから、一度武力で屈服させちゃえってなると思いますよ、たぶん」
「乱暴だなあ……」
 俺が漏らした言葉に、彼女は答えない。ただ、笑顔をうかべているだけだ。
 俺はじっくりと考えてみた。彼女の理論は乱暴ではあるが、理解できないではない。美以たちは、いや、俺たちは正直、既に満足している。森に入ってこないのであれば別になにも求めるものはない。
 しかし、あちらはそれでは安心できないのだろう。
 俺たちが暴れないという保証がほしい。そのために、なにか用意できないとなれば、あちら側の実力を示して抵抗の意思を奪っておこうとなってしまうのかもしれない。
「乱暴だなあ」
 もう一度呟く。しかし、今度のそれは、わずかに怒りが込められていたかもしれない。
「しかたないですよ」
 あくまでも軽く、張勳は言う。俺はため息を吐くしかなかった。彼女は悪意ではなく、ただ事実を言っているだけなのだから。
 長く息を吸い、調子を整えてから確認する。
「守れるかな?」
「守る、ですか?」
「うん。こんな光景を、守れるだろうか?」
 どろんこ遊びをしている皆に顎をしゃくる。いつの間にか、俺の子供たちもそこに参戦していた。まだ言葉も定かではないちびっ子たちが、ミケたちによじのぼり、しがみついている。
「美以ちゃんたちが大好きなんですねえ」
「ああ。みんな大好きだ」
「お嬢様までですかー? よっ、この幼女好き!」
 からかうように言われて、頭をかく。この人は、ふざけるのが大好きなのかもしれないな。
「いや、その言い方は……。でも、まあ、そうだね。袁術も、それに張勳も」
「は?」
 彼女の視線が俺に向く。あまりに意外な言葉を告げられたからか、彼女の顔はまるで無防備な子供のように見えた。
「私もですか?」
「そりゃあそうだろう。この光景の何一つ欠かしたくないんだから」
 いつかは、時の流れの中でこの光景もなくなるだろう。それはしかたない。しかし、来年、再来年という短いスパンでそれを失う事は俺には考えられないことだった。そういう意味で、既に袁術も張勳も、そして華雄も欠かせない存在となっている。
「……一刀さんって莫迦なんですかねえ?」
 なんだか悪罵のはずなのに、妙に温かな声だった。俺はそのことに何とも言えぬ感情を抱いてしまい、口を開けない。張勳は、小さくため息をついて首を振った。まるで、なにかが終わったとでもいうような様子で。
「ま、いいでしょう。それじゃあ、私も少しは努力してみますかね」
「え?」
「お嬢様をお友達と引き離したら、きっとあんな笑顔を見せてくれなくなるでしょう。それを守るためなら、一刀さんと利害は一致するってわけです」
 つまり、彼女もまたこの光景を、この日常を守りたいと思ってくれているわけだ。その事に俺は胸が熱くなった。
「じゃあ、よろしく頼みますね。これからは七乃って呼んでください」
 そう言って張勳――七乃はいつも通りの、しかし、なぜか俺の心をとても嬉しくさせるような笑みを浮かべるのだった。


 7.おとぎの国とお隣の国


 次の侵攻は百日ほど後だった。
 その間、華雄――真名というやつを教えてくれたのだが、なぜか恥ずかしがって呼ばせてくれない――と七乃による訓練と、南方での象の再集結を経て、南蛮は軍らしいものを持つようになっていた。
 ただし、実戦に出すにははなはだ心許ないので、蜀の側がまず交渉の場を作ってくれたのは非常にありがたいことであった。
「なあ、七乃」
「はい?」
「この世界って、七乃とか華雄が特殊で、他はみんなちっちゃいとかってことはないよな?」
「死にたいんですか、一刀さん」
 にこにこといつも通りの笑顔で怖いことを言う七乃。非常に怖いのでやめてください。
 俺たちがなぜそんな莫迦な会話をしているかというと、目の前で美以に挨拶をし終えた蜀の代表――諸葛亮さんの姿を見たためだ。
 背は小さいし、顔つきも若々しい。明らかに少女と思える年齢だ。
 これが、あの孔明? と俺としては莫迦なことを考えるしかなかったというわけ。
 まあ、実際には華雄も七乃もかなりの童顔だと思うけれど。
「みぃが南蛮大王孟獲にゃ。こっちにいるのが兄の北郷一刀にゃ。しょれとしょれと、かゆーとちょーくん」
 孔明さんが、美以の紹介に首を傾げるようにする。よくわからない組み合わせだと思っているのだろう。俺もそう思う。
「はあ。なんとも……その、驚く顔ぶれで……。こちらも、紹介していいでしょうか?」
「うむにゃ!」
 会談は、森から少し離れた平地の一角を布で仕切って行われている。当初は天幕に招待されたのだが、そのまま暗殺されてはかなわないと七乃が主張して、こうした開けた場所での話し合いとなったわけだ。
 さらに安全をはかるため、蜀側は孔明さん以外は、いまだ天幕に引っ込んでいる。あちら側としては色々と対応に苦慮しているようだ。
「では、まずは我が国の王、劉備様です」
 そうして呼ばれて現れたのは赤毛の女性。彼女はそのまま美以の側に駆け寄ると、美以の頭をなではじめる。
「にゃっ!?」
「うわあ! ほんっとに、可愛いねえ! おっきなお耳ー!」
 最初は驚いたが、別に害意があってやっているわけではないらしい。だが、美以はくすぐったいようだ。
「にゃっ、にゃにするにゃ!」
 ぶんぶんと頭を振って彼女の手を逃れる美以。
「桃香様!」
 それでも劉備さんは名残惜しげに美以に構いたがっていたが、孔明さんに呼ばれて席に着く。
 ええと、これって、友好ムード……かな? どうなのだろう。
「つ、次に賈駆、黄忠、厳顔の三人です」
 次いで出てきた三人は、一人が小柄ながら意志の強そうな少女、二人が色気漂うお姉さんだった。大きな胸を揺らす二人はさっさと主である劉備さんの両脇に付き、少女の方がこちらを見やって呆れたような顔をする。がたんと音を立てて立ち上がったのは七乃の向こう側にいた華雄だ。
「生きていたのか文和!? 貴様、蜀にいたのか!」
 駆け寄らないまでもお互いに見つめ合い、二人は言葉を交わしている。
「蜀にいたのかー、じゃないわよ。……月もいるわよ」
「な、なんだとっ!?」
 なにやら色々とある再会のようだ。不思議そうに眺めている美以に、ここは放って置いてやろうと耳打ちする。
「ええと、はじめてよろしいでしょうか」
 孔明さんも同じ気持ちだったのか、彼女たちの会話が一段落するまで待って、そうして声をかけた。華雄は落ち着かない様子ながら席に着き、全員が改めて頷いて、話が始まった。
「まず、我が方の、なんと言いますか……最初の接触ですが、これについて、謝罪します。南方のいくつかの村が襲われたと情報があったのですが、改めて調査したところ、虚報でした。騙されて出兵し、ご迷惑をおかけしたことはお詫びします」
 難しい言葉遣いがわからない様子の美以に、俺が翻訳して伝えてやる。そのために彼女は自分の席から俺の膝に移っていた。
「こないだのは嘘の報せで出てきちゃったんだって。それで、ごめんなさいって」
「ふむにゃ。まー、謝るなら許してやってもいいにゃ」
「よかったー」
 へにゃっと安心したように微笑むのは劉備。彼女が笑顔を見せただけで、妙に居心地のいい雰囲気ができあがるのはさすがと言える。構えていた様子の両脇の女性も態度が穏やかになったし、このあたりが、王たる所以なのかもしれない。
「それで、ですね。今後のことなのですが……。出来ましたら我が方に従っていただけないものかと。形としては、属国ということになりますか」
 孔明さんが言うのを俺が再び美以に話す。彼女は嫌そうな顔でふーっと唸った。美以としてみれば、なんで従わなければいけないのか理解できないというところだろう。俺も内心はそう思うが、連れてきている兵の数を見ると、慎重にならざるをえない。
 まして、今回はあの諸葛亮が率いているのだ。
「いやー、さすがにいきなりそれはどうなんですかねー」
 美以の不機嫌そうな様子を七乃が代弁するように答える。本格的な交渉は彼女に任せると、俺たちの間では取り決めが交わされていた。
「もちろんなにもなしとは言いませんわ。我が国の文物をさしあげたり、この土地で採れるものと交換したり、色々と出来ると思いますわよ?」
「うむ。さらに言えば、余計なことをせぬ限り、我らが他の国からも守ってやろう。悪い取り決めではないと思うぞ」
 黄忠さんと厳顔さんが柔らかな物腰で言う。その柔らかさが、逆にその裏にある芯を感じさせるのは、やはり手練れというやつだからだろうか。ただ対しているだけで迫力がある。
 迫力があるのは、そのメロンのようなおっぱいも同じだが。いや、二人とも西瓜かな?
「それってずいぶん傲慢な物言いですよねえ」
「さんざんっぱらわがままやってきた袁家のあんたが言うこと?」
 眼鏡の賈駆さんが言うのに、七乃はにこにこと笑って答えない。挑発にはのらないということなのか、本気で気にしていないのかわからないが、いずれにせよ不発だったようだ。
 彼女はかつて俺と話したようなことを形を変えて淡々と話す。こちらは不足していることは特にない。暴れるつもりもない。だから、黙って帰れ、と。
「とはいっても」
 ぴりぴりとした空気をものともせずに、彼女は一つ指をたてて言い放つ。
「さすがになにもなしで相互の不可侵を約しても安心できないでしょうから、ここは一つ、勝負をしてみませんか?」
「ほう? 戦をお望みか?」
 髪につけたかんざしを弄んでいた厳顔さんが囁くように言った。その声に縫い止められたように、俺は身動きが出来なくなる。
「いえいえー。まさか」
 だが、七乃にはまるで効いていないようだ。彼女はきゃらきゃらと笑いながら、こう言うのだった。
「そうしないために、ちょっとした勝負をしてみようって話ですよぉ。なんであれ決着がつけば、それなりに納得できると思いますよぉ?」


 8.おとぎの国と七つの罠


 七乃の提案したのは、俺と美以を対象とした勝負だった。
 一日の間に、蜀の側は俺か美以、どちらかを拘束してみせれば一勝となり、俺たちはそれを防げば一勝となる。
 これを五日間で五番勝負。これで勝負がつかなければ、六日目に軍同士が戦うこととなっていた。俺たちとしては――そして、おそらくは蜀側も――それを回避するために、五日間の間に勝負を決めてしまいたいところだ。なお、南蛮側に前回、蜀を敗走させた分で一勝がすでに入っている。形の上では七番勝負なのだ。
「しかし、よかったのか。あちらは孔明に文和と稀代の頭脳がいるのだぞ」
「だからこそ、蜀はのってくれたんですよ」
 食事の席で華雄が訊ねるのに、七乃が当然というように答えていた。
「蜀だって、本音で言えば軍を消耗させたくないんですよ。まして、こーんなかわいらしい猫っ娘たちをやっつけたとなれば、他の国にも非難されかねない。そこに私たちのほうから別の形での解決法を示してやる。これだけでものってくる可能性はありました。でも、諸葛亮だけではなく、賈駆までいるという状況があったからこそ、蜀はこちらに有利な条件をのんでくれたんです。ま、賈駆さんは華雄さんがいるって報告が上がったことで来てるみたいですけど」
 木の実の絞り汁で喉を潤してから、彼女は続ける。
「それに、知恵比べで負けるはずがないと思ってくれているから、余計な事を心配せずに済むんですよ。たとえば、いきなり約束を破って攻めてくるとかは、まずないでしょう。これで私たちはただただ勝負に集中すればいいということになります。まして、たった三勝すれば詰み。勝てますよ」
 その様子に、華雄も納得したようだったが、俺はそれ以上に頼もしいものを感じていた。
「悪知恵ならこちらが上みたいだね?」
「うむ。七乃は三国一の大悪党なのじゃ!」
「褒めすぎですよ、お嬢様〜」
 いや、褒めてないよ、それ。笑い合う美羽と七乃、そして、それから伝染したらしい美以たちを眺めがら、俺は苦笑する。
 いずれにせよ、俺と美以さえ気をつけていれば済む。
 あとは、七乃のつくってくれた勝機を生かすまでだ。
 俺たちの日常を守るために。

 一日目。
 俺のもとに、賈駆からの手紙が届いた。開けてみればところどころ訂正したのか、黒く墨で塗りつぶされている。かなりの部分が塗られているので、新しい紙を使えばいいのにと思うところだが、どうもこの世界では――時代では、というべきか?――紙は貴重なものらしいのでしかたないのかもしれない。
「うーん」
「なに唸ってるんですか?」
 やってきた七乃に書簡を見せる。そもそも紙の手紙なんて久しぶりにもらったよなあ、などと思ったが、これは言わないでおいた。メールの話なんてしても、彼女にはわかるまい。
「いや、これなんだけどね」
「なんかいっぱい修正してありますねー。あやしーい」
「あ、怪しいんだ?」
 からかうように言うのに驚いて訊ねてみた。
「なんか自分で塗りつぶしたみたいに思われちゃいますからねえ」
 よくわかっていない俺に、七乃が説明してくれたところによると、そもそも親しくもない相手と手紙をやりとりすることがおかしい。まして、こんなにも塗りつぶされているとなれば、なにか裏で通じていると見られてもおかしくない、ということだ。
「うーん。でも、それはないな」
「そりゃあ、一刀さんに限ってないとは思いますけど、なんでそんなきっぱり?」
 俺の態度に不思議がる彼女に、俺は恥ずかしげにうつむいて言った。
「その……俺、この世界の文字読めないんだよね」
 後々、仲良くなった詠に効いたところ、これは離間の計というやつだったらしい。華雄に送ろうかと思っていたが、勝負のルール上、俺に送ったんだそうだ。そのために彼女に、あんたが字が読めないせいで! と罵られ、たっぷりとこの世界の字と文学をお勉強させられるはめになるのだが、それはいまはいい。
 とにもかくにも、離間の計、失敗。

 二日目。
 美味しそうな匂いにおびきよせられた美以が落とし穴に落ちた。
 なんてこった。俺たちの一つ負けだ。
 今後、皆には、厳重に注意してもらうことにする。

 三日目。
 森の端に、大きな籠がたてかけられていた。
 その下には大きな丸焼きの鶏。
「はっはっは。こんなのにひっかかると思ってるのか、さすがになあ」
 見回りに出た俺と華雄はそれを見て苦笑しか浮かばなかったので、撤去もせず美以の家に戻ろうとした。撤去したら、新しい罠を仕掛けられるかもしれないからだ。
 ところが、家に帰り着く前に、背後から響いてきた声があった。
「みゃー! 出してくれにゃーっ!」
 美以が、蜀の兵たちがびっしり囲む籠の中で騒いでいた。
 二つ目の負けであった。

 四日目。
 美以にも俺にも学習能力というものはある。
 この日は森のそこここに仕掛けられていた罠を全て破壊して回った。
 罠を壊されることを予期して仕掛けられていた二段構えの罠にひっかかり、美以がつり下げられる場面もあったが、これも華雄が力任せに引きちぎって、蜀の側に確保される前に助け出した。
 ともあれ、この日は何ごとも無く、一勝をおさめた。

 五日目。
「みんなー、おっぱい体操はっじめるよー!」
 森の端で、三人の女性が身を震わせる。その動きに応じて、その豊かな胸が揺れる。
「よせてよせて、一、二」
 劉備さんのまん丸くて張りのあるおっぱいが腕の動きでさらに強調される。
「横に揺らして、三、四」
 黄忠さんのたわわな兇器が、プリンのようにやわらかに揺れる。
「縦に揺らして、五、六」
 厳顔さんのたっぷりとした胸が、その重さを見せつけるように縦にぶるんぶるんする。
 既に三人の元にはミケ、トラ、シャムをはじめとして何人もの猫耳娘たちが集っている。おっぱいの魅力にみんなもうめろめろだ。
「ふにゃーっ。おっぱいにゃーっ」
「我慢しろ、我慢するんだ、美以!」
 夢中で飛び出そうとする美以を、俺はがっちりと抱きしめている。手をはなしたら、途端に誰かのもとへ走っていき、そのまま捕まること間違いない。
「ふふ。ほれ、顔を埋めてみたくはないか?」
「こっちの水は甘いわよー?」
 木々の合間に明らかに俺たちがいるのがわかっている。いや、彼女たちが見ているのは俺自身だ。
 その時、厳顔の口元から、ちろりと舌が見えた。その赤さよ、かわいらしさよ。
「うにゃーーーっ」
 途端、俺の腕から飛び出た美以は六つのおっぱいに埋もれるため走り去ってしまった。
「ねえ、一刀さん」
 蜀に確保される美以をひとしきり眺めやり、七乃は果てしなく冷たい視線を俺に向けてきた。
「美以ちゃんを抑える力、弱まってましたよねえ」
 いや、違う、違うぞ。けして、俺は色仕掛けになんて……。
 だが、俺の言い訳は聞かれることなく、しらーっとした顔の七乃、華雄、美羽は俺を置いて去ってしまうのだった。
 恐るべし、おっぱい!


 9.おとぎの国よ永遠なれ


「戦うしかないか」
 大きな象の背中に美以と一緒に乗り込みながら、俺は暗い顔をしていた。幸い、皆が乗れるだけの象がいるために、すぐさま兵たちと直に切り結ぶというような事態はあまり考えにくい。問題は象を操っている間に勝負を決められるかどうかだ。
「まさか最後までもつれこむとは思いませんでしたねえ……」
 隣の象にいる七乃もまた暗い顔つきだ。彼女としては、その悪知恵を生かすまでもなく、美以たちが罠にひっかかるのでどうしようもなかったというところだろう。
 ただ、なぜか美羽まで一緒に乗り込んでいるのがよくわからない。避難していてほしいところだが、七乃にしてみれば、身近な方が守りやすいのだろう。
「落ち込んでる場合じゃないにょ! 気合い入れるにゃ!」
「そうじゃ、七乃。暗い顔をするでないぞ! さくっと勝ってしまえばよいのじゃ!」
 美以と美羽の揃っての励ましで笑みを取り戻したところへ声をかけたのは、華雄だった。
「張勳」
 たった一頭手に入った馬に乗り、彼女は愛用の金剛爆斧を肩に担ぎながら、そう呼びかける。
「考えてみろ。あやつらとて、最後までもつれ込むとは思っていなかったはず。さらに言えば、勝負の続きと承知しているはず。ならば、殲滅などはあり得ない。我らはほんの少し有利になればいい。違うか?」
「……たしかに」
 その言い分は尤もなのだろう。七乃はいつも通りの軽い調子で小さく笑った。
「華雄さんに慰められるとは思ってもみませんでしたよ」
 ふん、と華雄は鼻を鳴らす。
「ま、私は勝利を目指させてもらうがな」
 黒豹の毛皮を被り直し、彼女は戦斧を振りかざす。その様子に、俺は少しだけ安心した。
「あにしゃまー」
「だいおー」
 ミケ、トラ、シャムをのせた象が、大地を揺るがしながら近づいてくる。
「シャムがなんかお話したいってー」
「呼んでるにゃー」
「うにゃ?」
 美以が華雄と七乃のほうを見ると、彼女たちは揃って頷く。
「しばらくは大丈夫だ。話してこい」
 その声に、美以が足元の象の頭をぽんぽんと叩くと、それに応じて俺たちの下にいる象が動き出す。その揺れに振り落とされないようにしながら、俺たちとミケたちは共に端に寄っていった。
「なんにゃ?」
「あのにゃ」
 口を開こうとしたミケを、トラが横から小突いて止める。シャムはなんだかいつものように眠い様子ではなく、照れたような顔でうつむいていた。
 そして、いつもと違う意味でほんのわずかに口ごもり、こう言った。
「……にい様の子供が出来たにゃ」
 お腹に手を置きながら、そう、彼女は言うのだった。
「……よしっ」
 思わず大きく腕を振りながら、そう呟いてしまった。だが、そんな俺の様子に、美以もミケもトラも、そして、シャムも嬉しそうに笑うばかり。
 南蛮の大王はとびきりの笑顔を俺たちに向けて、こう告げた。
「ミケ、トラ、こっちに移るにゃ。兄はそっちにゃ」
「え?」
「わかったにゃー!」
「わかったにょー!」
 あっという間にミケたちはぴょんとこちらに飛び乗り、そして、俺を二人で持ち上げて、ぽいと投げた。
「うわっ」
 俺は勢いよく象の固い背中に落ち、慌ててしがみつく。シャムが優しくそのぷにぷにの手を貸してくれて、俺は象の背に座ることが出来た。
「兄」
「ん」
 真剣な顔で美以が話しかけてくる。彼女は大きく手を広げて、自らの言葉をさらに明確にしながらはっきりと言った。
「兄が来てくれて、美以たちはほんとーっに嬉しかったにゃ!」
「ミケもにゃーっ!」
「トラも、トラもー!」
 三人が言うのに、俺の前に座った小さな女の子がぽつりと言う。
「……シャムもにゃ」
「俺も、ここに来て良かったよ」
 いくつもの笑みに向けて、俺も負けじと微笑む。
 俺がこの地で過ごした、全ての日々をそこに込めて。
「良かったにゃ」
 彼女は頷く。南蛮のちっちゃなおうさまは、その時無心に嬉しそうであった。
 もはや、俺たちに言葉は必要なかった。
「行くぞ! この突撃で、全てを決めよう!」
 場所に戻ると、俺が象を移っていることに誰も触れることもなく、黒豹将軍華雄がその獲物を掲げる。
「にゃーっ」
 大地をどよもす、柔らかで、明るい声が応じた。これから戦に出るとは思えないような。遠乗りでもするかのような、明るく、そして、ただひたすらに前を進む意思だけの込められた声が。
「全軍……」
 突撃、と華雄の金剛爆斧が振り下ろされんとした、その時であった。
「なんじゃ、あれは!」
 俺たちの右前方、つまりは東の方角に厖大な土煙が挙がったのは。
「軍にゃ!」
「どこの軍だ!」
「旗は周!」
「周瑜さんじゃない……。となると、あれは!」
 いくつもの声が行き交い、そして、その正体が明らかになる。
「その戦、待った! この周泰が預かるのです!」
 必死で駆ける馬をさらに駆り立てながら、黒髪の少女が一軍を引き連れて俺たちと蜀の軍の間に走り込んで来たのだった。


 結局、南方に伝承として伝えられてきたお猫様の国とやら――間違いなく美以たちのことだ――を探しに来た呉の将、明命のとりなしによって、蜀との間には和義がなった。
 友好国である呉の将に『お猫様の国を攻めるというなら、私が一命をとしても!』とまですごまれたら、蜀にしてもどうしようもなかったろう。
 さらに、明命の尽力もあり、蜀と呉、そして、美以たち南蛮の間で不可侵条約が結ばれ、お互いの領分を侵さないことと取り決められた。そして、蜀の南方、南蛮との境には華雄の昔なじみたち、月、詠、恋、ねね、すなわち、実は生きていたらしいあの董卓と、賈駆、呂布、陳宮が城を構え、南方の防護を受け持つこととなったのだ。
 その後も、美羽の親戚の麗羽とおつきの斗詩、猪々子が迷い込んできて、南蛮一帯に華麗にして優美な世界が展開されたり、旅芸人の三姉妹が各地でみんなの目と耳を楽しませたり、蜀や呉との交易が定期的に行われるようになったり、それらの交流の使者と称して明命がこの土地に入り浸っては恍惚としていたり、と色々あったけど、まあ、それはまた別の話だ。
 ともかく、俺たちは元気に仲良く暮らしている。
 だって、おとぎ話は、こう終わらなきゃしまらないだろ?
 
 こうして、みんなは、幸せに暮らしましたとさ。
 いつまでも。
 いつまでも。
 
 めでたしめでたし。


   (真・恋姫†無双 みなみのくにのちっちゃなおうさま  完)

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