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676 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2010/08/28(土) 23:23:05 ID:yPgcGzesO
「・・・」
「どうしました、バカ猫?」
「にゃー(いえね〜純粋にネタが無くて…)」
「はあ…」
「にゃー(ですから20桃香です)」
677 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/28(土) 23:27:22 ID:yPgcGzesO
都を占拠して悪行を行っていたと言われてた董卓、その董卓を倒す為に結成された反董卓連合。
実際は悪行を行っていた朝廷の者達を詠が処断してたのだが、処断される側はたまったものではなく袁紹・袁術と結託して戦を仕掛けさせたのだ。
そして董卓を倒したとされるまでの桃香達の活躍が民草に広まる、勿論暗躍したのは前回の記憶が有る雪蓮。
その話は朝廷にも、そして帝の耳にも入る。
朝廷や帝自身には被害は皆無だったが、大陸全土の民が噂する者に何も恩賞をあたえない訳にもいかずその功績を認め桃香に徐州の州牧にとの勅命が下される。
無論、曹操・雪蓮・白蓮達にも働きに見合った褒美を取らされ。
また袁紹・袁術、各諸公にもそれなりに褒美を貰うのだった。
◇ ◇ ◇
「しっかし、むかつくのじゃ!」
「どうしたんですか、お嬢さま?」
「考えてもみるのじゃ、より多くの蜂蜜を得る為に仕掛けた朝廷工作や今回の戦も思いの外に成果が上がらなかったじゃ!そして終わってみれば蜂蜜は獲られず戦力だけは減っているのじゃ!」
「そうですねー、兵隊さんだいぶ減っちゃいましたしねー」
679 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/28(土) 23:31:19 ID:yPgcGzesO
「ましてや此度の戦いで妾よりちょょょょょょっとだけ活躍した孫策がなにやら『江東の麒麟児!』とか『小覇王』などと呼ぶ者が居るそうではないか!」
「孫策さんも活躍して、注目されて結構株を上げましたからねー」
「そのくせ兵士が減った直接の原因の劉備は徐州の州牧に任命され、より多くの蜂蜜を得れる機会を得てるのじゃ!」
「(…蜂蜜は関係ないかと)それでしたら、お嬢さま」
「なんじゃ七乃?」
「孫策さんとお嬢さま、あと以前の戦いで敗れ在野に隠れている呂布将軍も見つけましたから彼女も利用して。劉備さんをみんなで叩いて追い出して領土を奪って。さくっと勢力を回復しちゃいましょう」
「おお!それはいい考えなのじゃ七乃!」
「でしょでしょ、更に!そこから巧く誘導して二人を戦わせれば飛将軍とまで呼ばれる呂布と江東の虎の孫策さん、どっちが生き残っても絶対に無傷なんてありえません!そこを数で圧倒するお嬢さまがサクッと倒せばですね…
 『お嬢さま最高ー!大陸一!皇帝になる日も近いぞ〜!』なんて事も実現可能かと、如何ですかお嬢さま?」
「おぉ!オォ!!おおぉぉぉ!七乃よ、そちは天才じゃ!張良の再来じゃぞ!」
「きゃー美羽様♪もっと誉めてー」
680 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/28(土) 23:36:13 ID:yPgcGzesO
「七乃!早速、孫策に出陣準備と呂布に協力を要請する手紙を書くのじゃ!」
「そうですね〜お嬢さま…この際、孫策さんには常々要望の有った独立の為の兵を貸し出すと約束して、呂布に出す手紙に『劉玄徳、撃退成功の暁には元劉備の領土の半分を差しだそう』って書いちゃいましょう」
「おぉ!二人にそこまで気前よく振る舞うのか!七乃?」
「イヤですよ、お嬢さま〜。今、言ったばかりじゃないですか。最後は二人を戦わせて残った方を私達が倒しちゃうですから、約束するだけですよ!誰も守るとは言いません!!」
「オォ〜!!流石は七乃なのじゃ、袁家に相応しい妾の優秀な軍師なのじゃ!うははははー♪これでより多くの蜂蜜が妾の物じゃー、前祝いじゃ蜂蜜水を持って来るのじゃー」
◇ ◇ ◇
徐州に移り変わった桃香達も朱里と雛里が主に活躍して土地の人口・状況・名産品の把握も比較的速やかに終え『さあ!内政頑張るぞ!!』としたそんな矢先。
「公孫賛様がいらっしゃいました」
部下から白蓮到着の報を受ける。
「おやおや白蓮殿自ら、桃香様州牧の就任祝いに駈けつかれましたかな?」
「いえそれが満身創痍な状況で、率いる部下達も怪我の無い者など居ない状況です」
681 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/28(土) 23:40:44 ID:yPgcGzesO
部下の報告に空気が一変する。
周りの者が慌てる桃香を落ち着かせ、疲労困憊ながらも命に別状はないとのことだからとりあえず大広間に来てもらった。
「や、やぁ、みんな。久しぶり…」
なにやらこっぱずかしそうに挨拶をする白蓮に。
「白蓮ちゃ〜ん」
無事な姿を確認すると安心するも泣きながら白蓮に飛び付いた桃香。
「お、おい桃香、みんなが見ている、恥ずかしいよ」
そんな台詞を無視して白蓮に抱きついたまま泣きじゃくる桃香、ようやく落ち着いて白蓮から離れさせると当人から事情を聞きだす。
「で、何が有ったんだ白蓮」
「そ、それは……」
ポツリ、ポツリと体験してきた事を語り出した。
「反董卓連合の解散後、本国に戻って内政に力を入れていた。だけどある日、麗羽が…いや袁紹が国境を越えて進軍してきたと報告を受けた、信じられなかった私は斥候を放つだけで迎撃はおろか軍事行動の準備すら怠った。
 袁紹軍の進軍が本当だと気付いたのは、本城に落とされた拠点やら砦から命からがらに部下や兵士達が逃げ込んでからだ。慌て戦準備するも時すでに遅く本城を袁紹軍にすっかり囲まれて籠城戦を余儀なくされてしまった…」
682 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/28(土) 23:44:05 ID:yPgcGzesO
そしてここから白蓮の回想がより一層深くなっていった
「あれは籠城戦に入って何日か経過したある日の早朝だった…‥・」
◆ ◆ ◆
「「「ワワアアアァァァ!!!」」」
「どうした!騒がしいぞ」
「公孫賛様、西城門を突破されました!」
「なんだと!?しかし今朝はまだ攻城の報告は受けてないぞ」
「それが袁紹軍は穴を掘って城内に侵入、そして不意を突かれた西門は陥落した模様……」
「穴を掘ってだって?れ…袁紹がそんな地味な作戦するはず無いだろ」
「城内の敵の旗印は顔、顔良将軍の独断かと…」
「顔良かあ…コツコツとやるの好きそうだからなぁ、そうか城門が突破されたか……ならば最早これまでか」
「公孫賛様!落ち延びましょう、ここ本城では初めから籠城戦に徹した為、幸いに白馬陣は今だ無傷、手薄の東門から撃って出れば袁紹などの烏合の衆、たちどころに蹴散らせましょうぞ」
「落ち延びると言ってもどこに?」
「公孫賛様のご親友、徐州の州牧になられたと云う劉備様を頼られてはどうでしょう」
「桃香の所か……」
目を瞑れば思い浮かぶ二人の人影、親友の桃香と傍らにいた男性、北郷一刀。
「桃香(と北郷)に、もう一度会いたいな……」
683 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/28(土) 23:48:10 ID:yPgcGzesO
「会いましょうぞ!!」
「・・・・・」
暫しの沈黙。
そして閉じてた両目が開かれると、今ここに決意を固めた女性が一人誕生した。
「よしっ!決めたぞ!!私はこれから東門から撃って出る、そして桃香の所に行く!騎馬隊は付いて来るも残って降伏するも各々の判断に任せる、こんな状況だ責めはしない。
 歩兵に関してはすまないが置いていく降伏すれば麗羽は無闇に殺したりしないだろう。そうと決めたら直ぐに動くぞ!」
「「「ハッ!」」」
文字通り城内が慌ただしく成った。
◇ ◇ ◇
「東門、開門!開門!我らが主、公孫賛様!白馬陣にてご出陣!開門!」
ギギギギギギギ…
東門が開くと袁紹軍からどよめきが湧いた。
「おお!公孫賛だ」
開いた東門から白蓮を先頭に前の約2000頭は全て白馬、後ろの9500頭の馬も白馬で無いにしろ優秀な馬で構成された白蓮に取って精鋭中の精鋭になる白馬陣。
とても敗軍とは、ましてや逃亡による撤退戦とは思えない優雅さで躍り出る公孫賛軍。
白馬陣が全て出終わると両脇を固める様に展開する公孫賛軍の歩兵隊。
予想外な味方の動きに驚いた白蓮が、
「お前達、歩兵は連れて行けないと言った筈だぞ」
684 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/28(土) 23:53:35 ID:yPgcGzesO
それに答えたのは一番近くに居た一人の歩兵隊千人長。
「付いて行こうとは思っていません、我らは横撃に対しての“ただの壁”にございます。だから気に召されるな、一応部下達の為に公孫賛様が無事に逃げおおせたと判断したのち降伏はいたします」
千人長は言う『部下達の為』と。
「・・・・お前達、すまん…」
そんな白蓮の心情など無視するかの様に袁紹軍からの怒鳴り声。
「お前らー!敵将公孫賛を討ち取って、この戦の一番手柄にしろー出世の好機だー」
それに応えるかのタイミングで声を張り上げた白蓮。
「袁紹軍のモノよ聞けー!貴様ら雑兵がこの公孫賛を討ち取れるものかー!そして我が兵(つわもの)達よ聞けー!!袁紹のところの烏合の衆が我らが白馬陣を止められるものかー!総員抜刀ー!!」
金属を擦る音を鳴らしながら天高く突き上げた剣が太陽の光に反射し白馬陣を!白蓮を照らす!
「白馬陣突撃ー」
ド!ド!ド!ド!ド!ドッ!!……
白蓮の号令と共に一心不乱に吶喊する白馬陣のその姿はある者には神々しく、またある者には今まで自分達が倒した者達の怨みが呪いとして具現化したように見えた。
一瞬怯んだ袁紹軍の師団長は自分の不安をかき消す為に怒鳴る。
685 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/28(土) 23:59:42 ID:yPgcGzesO
「なにを敗軍の将が偉そうなことをぬかすか!討ち取って現実を教えてやれー!総員突撃ー!」
『『『『ワワアアアアァァァァァ…‥・・』』』』』
・・・
・・

◆ ◆ ◆
「そこからは二人の顔を見たい一心で…気付くとここにたどり着いてた」
「白蓮ちゃん…」
白蓮の撤退戦の凄まじさを鎧の傷と返り血が物語っていた。
「しかし、今になって思うと本当にこれで良かったのか?と考えてるんだ」
「なにがなの白蓮ちゃん?」
「私に逃げる様に進言してくれた彼を始め多くの部下を失ってしまった…もしあの時、素直に降伏してれば私一人の首で済んだだろ…私に…彼らの命と引き換えに…してまで…助かる価値が有るの…だ…ろうかと…」
最後の方は涙声に変わっていた。
「白蓮ちゃん!亡くなったその人たちの事はとても悲しい事だしその人たちには悪いけど、私は白蓮ちゃんが生き残ってくれた事が嬉しいよ!白蓮ちゃんは私の大事なお友達の一人だもの!」
「……桃香」
「なあ白蓮、白蓮の言う通りに降伏してれば助かる可能性が大って時にあえて白蓮に付いて行ったのは、彼等に取っての最優先事項が“白蓮が助かる”って事だろ。だったら白蓮は今こうして無事なんだ、彼等だってきっと本望だろうさ」
687 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:03:30 ID:HCddblM2O
「…北郷、そうなのかな?…」
「ああ、きっとそうさ…」
「……北郷…北ゴ、…ウワアアアァァァアアンンン…」
一刀の上着を両手で鷲掴みして胸に顔を沈めて号泣する白蓮。
助かってしまった安心感と死んで逝った部下達への罪悪感が白蓮の胸の中を渦巻き続けててたった今、許容量を超えてしまい感情が爆発してしまった様だ。
暫くすると疲れが出たのか叫びに似た泣き声も止み、一刀の胸の中で眠ってしまった白蓮、そっと星が担いで寝室にまで運んで行った。
それを見届けた一刀が。
「さて、野心や信念が有る者達が動き出したみたいだ。元よりそのつもりも無いが、俺らもうかうかしていられない」
一刀のその台詞に頷く一同。
「近隣諸公の動きに注意しながら内政と軍備、細心の注意でやっていこう。陣頭指揮は朱里にお願いする」
「分かりました、頑張りましゅ……はう〜」
「「「ハハハハハハッ!!」」」
「やはり朱里はそっちの方が似合うのう」
「はう〜……クスッ、確かにそうかも知れませんね。フフッ」
朱里お約束の咬み咬みで笑いが溢れる、そして一通り笑った後には朱里をも含めたみんなの顔が改めて決意を固めた英傑の顔になっていた。
◇ ◇ ◇
688 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:05:41 ID:HCddblM2O
「遅れて来てすまない」
そう言って中庭の集会所に来たのは筆頭軍師の周瑜だった、別に時間的に遅れて来た訳では無いのだが重鎮としては一番最後だったからか思わず口走ってしまった様だ。
「別に時間に遅れてないわよ」
そう言って返したのはその筆頭軍師の主の雪蓮。
「そう言ってくれるなら助かる。で、呼び出した理由は何だ?」
「これよ」
周瑜に差し出されたのは竹簡だった、それを受け取って目を通す出した。
『孫策へ
 先日の反董卓の時の活躍は妾も鼻が高いぞよ、それとは別に普段の活躍でも妾は十二分に助かっておる。だからそろそろ以前からの約束、孫呉独立の為の兵士達の貸し出しを考えねばと思ったじゃ。
 ただ、お主程の英傑が抜けられると正直辛い、なので最後にちと妾の願い事を叶えてくれぬかのう?大広間で待って居るぞよ
 袁術』
「なんだこれは?」
周瑜が無意識に口走った台詞がそれだった。
「でしょ〜、それを袁術が書いたとしたら虫唾が走るわよね〜。どうせ書いたのは張勲でしょうけど」
「そんな事は別にいいとして、どうするつもりだ雪蓮?」
自分の意見を蔑ろされた事には“ぶーぶー”と抗議の声を上げながらも。
690 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:09:37 ID:HCddblM2O
「そんなの会ってから考えるわよ。罠なら適当に煙に巻いて、本当だったら最後の願いぐらい叶えてあげなきゃ♪土地や物だったら直ぐに私達の物に成るんだから」
サラッと恐ろしいことを口にした雪蓮が袁術達の大広間に向かって歩き出したのだった。
◇ ◇ ◇
大広間にたどり着くと躊躇無く中に入る雪蓮。
「おぉ!孫策よ、待って居ったぞ」
すると袁術も直ぐに声をかけてきた。
「ところで早速用件じゃが、妾の最後になるかもしれない願い聞いてくれるか?」
「(何?貴女死ぬの?駄目よ貴女は私が殺す予定なんだから)」
この大まかな歴史の流れも雪蓮には二度目(途中からだが)なのでそれなりに考え対策を立ててみたものの、袁術・張勲のこの二人は雪蓮の右斜め上を行く嫌がらせを思い付きそして実行する。
その行動が見事に実を結んでこの世界では前回以上の殺意を雪蓮に抱かせる事になる。
「此度、妾は劉備を攻めることにした。孫策、お主は先陣として出陣し劉備の奴らを叩くのじゃ」
「劉備を?」
「そうじゃ、徐州に就任間もない劉備は徴兵から糧食の確保までその全てがままならぬであろう。そこを妾達が奪うのじゃ!」
「ちょっとえげつないわね」
691 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:12:20 ID:HCddblM2O
「そもそも悪いのは劉備の奴らの方じゃ!先の戦いで劉備のせいで妾の兵が減ってしまったのじゃ、なのに妾にはちょびっとの褒美なのに対し当の劉備は徐州の州牧じゃぞ!!じゃから七乃と相談した上、
 減った分を劉備の兵で補充する事にしたのじゃ!で、ついでじゃから領土も頂くじゃ」
その理論に半場呆然としながら聞いている。
「それに劉備の暴走を止めれなんだ、責任の一端は孫策にも有る。責任を取る意味有るのじゃからきっちり先陣を勤めるのじゃ」
“どうじゃ、ぐうの音も出ないじゃろ”という様な自信満々の袁術。
実際、雪蓮は呆けて喋ることも出来なかったがそれが袁術を増長させることになり、更に袁術の台詞は続く。
「更に七乃が隠れてた飛将軍呂布も見つけた、此度の戦いには味方に組み入れて挟撃の手筈じゃ!最早、絶対に妾の勝利に間違いないのじゃ!うはははー」
「…へー呂布をもねー…」
「そう言えば竹簡にも書いたが。常々、約束しとった孫呉再建・独立の為の兵を貸す話、江東の虎・小覇王と評価されとる今が好機じゃと思わぬか?」
「それなんだけど…また、働かすだけ働かして反故にしないでしょうね」
「妾がそんな小さい女に見えるかぞえ?」
692 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:17:22 ID:HCddblM2O
「(十二分に小さいじゃない…その身も心も)そうね、判ったわ。じゃあ私達も出陣しましょ」
「オォ!やってくれるか、孫策」
「でっ!袁術ちゃん」
「なんじゃ?孫策」
「先ほどの先陣の件は辞退するわ」
「およ?それは何故じゃ」
「先陣をきって正面から数で圧倒しながら戦う袁術ちゃん、そして後方から現れる呂布の軍勢、浮き足立ってる所に突如現れた私達が横撃するのよ。そうすれば劉備の軍勢が大混乱するのは間違い無し。
それだと隠れるのは袁術ちゃんより兵数の少ない私達が適任でしょう」
「・・・・・?」
「美羽様…ヒソヒソヒソ…」
「……オォ!素晴らしい作戦なのじゃ孫策!」
張勲の説明も加わりようやく雪蓮の断りを理解する。
「これで呉は孫策の物になったも同然じゃの」
「ありがとう、なら徐州も袁術ちゃんの物になったも同然ね」
「そうであろー、そうであろー。うははー、妾は機嫌が良い、蜂蜜水を持って来るのじゃー」
・・・
・・

◇ ◇ ◇
袁術軍強襲。
宣戦布告というには総てに於いて余りに幼稚だった為、何かの冗談ではと油断する国境の警備隊。
これが見事、奇襲の形となり国境から快進撃を進める袁術軍。
693 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:20:13 ID:HCddblM2O
『うはははー!のう七乃、これなら妾達だけで十分だったのうー』
『はい、お嬢さま』
などと緊張感の欠片も無い会話がされる中、一方の劉備軍の伝令は命懸けで本城に向かう。
そして虫の息で本城にたどり着くと袁術軍進行の事。
「袁術軍…の数。およそ、な…七万強…ですが、混乱しな…がらの目算です…ので、正確さは…」
それと理由はなんで有れ油断して易々と袁術軍の進行を許してしまった事を詫びながら息絶えたのだった。
そして正に命懸けの報告を受け取ると迎撃の準備を始める桃香達がいた。
が、赴任したばかりの徐州では糧食は勿論、非常事態宣言下での徴兵ですら集める事が儘ならない。
平原から付いて来た兵と始めからいた徐州の兵、それと白蓮と行動を共にした騎兵達。
これらを全部ひとまとめにして、ようやく軍として形らしくしたのが現状だった。
だが、不当に進行する袁術軍をほっとく訳にもいかないので迎撃の為に出陣。
索敵を放ち袁術軍の動きに注意し、少しでも有利な地形で戦う為に軍を動かした。
そして、今。桃香達の目の前に、約三倍の袁術軍が対峙していた。
◇ ◇ ◇
「お嬢さまー。呂布さん、配置に着いたそうですよー」
694 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:22:55 ID:HCddblM2O
「なら七乃よ、皆に号令を出せい…劉備に戦いを仕掛けるのじゃ。だが、本気でやらずダラダラしながら時間を稼ぐのじゃぞ。その間に呂布と孫策が劉備の奴をやっつけてくれるからのう、うはははー」
「だ、そうですよ。皆さーん、死なない程度に手を抜いて戦ってくださーい」
当然、君主と将軍がこんなんでは士気など上がる筈も無く、戦う軍隊として機能しているのが、かなりギリギリの状態だ。
いつもなら、雪蓮達が率いる軍勢の緊張感が袁術軍に良い効果をもたらしていたが今は居ない。
ただ一つ、敵に対して味方の数が圧倒的多数と云う事実が袁術軍を秩序有る軍隊として動かしている。
「皆さ〜ん、前進してくださ〜い!」
大将軍張勲の号令がかかり、袁術軍がゆっくりと、本当にゆっくりと前進を開始しだした。
◇ ◇ ◇
一方の劉備軍では、見た目が可愛いくも神算鬼謀の雛里が恐ろしい速さで作戦を練りそして消去していた。
そして導き出した結論と作戦はというと。
「…それでは、愛紗さんが中央、鈴々ちゃんが左翼に。…星さんが右翼を…」
袁術軍の多勢の兵に対し圧倒的に少ない将の薄さを突いた作戦に出た。
「…白蓮さんは遊撃部隊として騎兵総てを中央後…」
695 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:25:50 ID:HCddblM2O
作戦指示はまだ続いていたが、割って入った斥候に中断を余儀無くされた。
「も・申し上げます!後方より砂塵が!!そして旗印なのですが……」
そこで一端黙ってしまう斥候、意図せず注目出来る間を作ってしまった。
「は…旗は深紅の呂旗!飛将軍・呂布の旗印です!!」
悲鳴に近い斥候の告が雛里の作戦を全部無駄にした。
『――!?』
劉備軍陣営内に衝撃が走る。
「何しに来たんだろ?」
解りきっていても解りたくからか口に出してつぶやく一刀。
「“天下の飛将軍・呂奉先”と呼ばれる方が、今から戦場と化す場所に現れたのですから…やはり戦いに参戦かと」
一刀に現実を突き付ける発言。
「やっぱそうだよな。で、視認出来る距離まで近づいたのに依然として相手からの何らかの接触や使者は無し……つまり、俺らが敵と…」
「…恐らくそうかと」
さすがに暗い表情になった劉備軍稀代の名軍師二人。
しかし二人の瞳は未だ死んでいなかった、物凄く厳しい状況においても勝つ為の思考を止めないでいた。
そして開いた口から出た新たな策が。
「…全軍反転をします」
「敵の面前で反転って、それって凄く危険じゃない?」
素直に不安を口にする桃香。
696 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:31:40 ID:HCddblM2O
「…ご安心を桃香様、唯でさえ遅い袁術軍の動きが呂布さんの部隊を確認後、更に動きが悪くなりました、…おそらく袁術さんは呂布さん達を働かせて自分は楽をしようとしています。
 ですが、それは呂布さんの軍も見抜いてます。その証拠に彼女等も先程とは打って変わって動きが鈍重に成りました、お互い牽制しあっている今だからこそ両軍の隙を突く絶好の機会なのです」
力いっぱいに説明する雛里、喋り方もいつの間にか凛々しい軍師の喋り方になっていた。
「精鋭の前衛を呂布さんにぶつけます、逆に臨機応変に動ける星さんの部隊と攻撃力に定評の有る白蓮さんの部隊を袁術軍に。星さんと白蓮さん、私が付き添って直接に指示を出しますから袁術軍相手に時間稼いでください。
 その間に愛紗さんと鈴々ちゃんが呂布さんを撃退して反転、すぐに全軍にて袁術軍を撃退しましょう。ご主人様と桃香様、朱里ちゃんが本陣にて後方支援として両軍を援護でお願いします」
「悪い雛里。一部補正させて、星を愛紗と鈴々共に行動させて…そして呂布と出会ったら、可能なら相手をしないように…」
「なっ!!ご主人様!?戦わずして敵に背を向けよ、と!いくらご主人様でもそんな命令聞けません」
697 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:37:41 ID:HCddblM2O
愛紗の苦情をやんわり聞き流しながら、過去三回の呂布の軍勢と戦った場面を思い出している一刀。
初めては華琳の時の反董卓連合、あの時は遠目からしか見てないのでかなり記憶は薄い。が、戦う前に秋蘭から凄い話を聞かされいる。
二度目が華琳自ら囮になって桃香達が攻めて来た時、一刀達が籠城戦に入り真桜の絡繰を使って少し良い展開だった時に彼女…呂布が現れて状況が一変したのを思い出していた。
駈けたと思ったら既に真桜の絡繰が壊されていた、城壁の兵士が彼女に矢の雨を降らせているにも関わらず。
もし春蘭達の救援が本当にあと一日遅れてたら?、と思うと心底ゾッとし直す一刀。
そして今回、桃香達との反董卓連合の時、呂布を先頭にしたあの突進力はやはりシャレにならないと思っている。
未だ、この世界の呂布の個人的武力を見る機会に恵まれてないが元の世界の呂布の話、“劉備・関羽・張飛、三人を同時に一人で相手をした”話が頭からはなれない一刀なのだ。
「いいかい?良く聞いてくれ。呂布に対する時は必ず三人で相手して。絶対にだよ」
あわらに快くない顔になる三人。
「しかも戦う時は三人掛かりとは…」
698 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:44:04 ID:HCddblM2O
「そうなのだ!いくらお兄ちゃんのめいれいでも、そんなずっこいこと出来ないのだ。あんな奴鈴々一人で十分なのだ」
「うぬ、さすがに主の命令でもそれは……第一に武人としてそれが許せませぬ」
三人から反論されても呂布を必ず止めるだろうと思う一手を取り下げない、それどころか反論に対して反論に出る。
「みんなの話も武人としての誇り分かるつもりだよ、でも俺の世界の呂布の強さは桁が違うんだ、それこそ化け物だ。虎牢関の突進力も見たろ?それに三人掛かりを卑怯と言うならそれを命令した俺が卑怯者だ。
決して愛紗達が卑怯なんかじゃない、そしてその卑怯者の評価を甘んじて受けよう、それで三人の誰も失わくて済むならば…」
「ご主人様…」
「お兄ちゃん…」
「主…」
本心をさらけ出した一刀に三人も自分がそれ程大事にされてるとやや渋りながらも納得する。
「ありがとう、みんな。なら急ごう」
「了解です、皆さん指示を出しますから迅速に動いて下さい。では、全軍反転して下さーい」
劉備軍の大胆不敵な挟撃される寸前の敵前反転が行われる、袁術軍・呂布軍共に明らかに慌てるも牽制しあってる事も有り両軍が進軍速度を上げるも決して再編成までに間に合う速度では無い。
699 名前:一刀十三号鳴く、[] 投稿日:2010/08/29(日) 00:54:23 ID:HCddblM2O
両軍の事情の隙を突いた行動の陣の再編成が八割方終了した時。
ジャーン・ジャーン・ジャーン☆
銅鑼の音に合わせて旗が上がった、劉備陣内に再び衝撃が走る。
「旗は!」
「旗印は!孫の一文字、恐らく孫策軍かと」
その報告に正直な所、将兵共に内心安堵が走る。
反董卓連合の時の記憶が有る為“敵では無い、場合よっては味方か?”と勝手に判断し冷静になっていく。
冷静に成ったからこそ、目の前の当面の敵を倒す為の行動に戻って行く。
ほぼ全て反転追撃の準備が整った頃、前衛と呂布軍の戦いが始まった様だ。
ぼちぼち白蓮も袁術軍と戦端を開く頃合いなのだろう、朱里の動きが忙しくなっていた。
そんな中、始めに異変に気付いたのが桃香だった。
「ねえ、ご主人様。……孫策さんの軍の様子おかしくない?」
桃香にそんな事を言われて“そんなバカな?”と思いながら雪蓮達の方を見た。
次の瞬間に、『ほら別にさっきと変わって無いよ』と言いたかった。が、言えない一刀がそこにいたのだった。
700 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2010/08/29(日) 01:00:12 ID:HCddblM2O
『さ!ん!だ!ん!』
「にゃ?(んっ?)」
『ちんきゅー!キッーク!!』
「にゃ゛ー(デジャヴー)」
ドンガラ☆ガッシャーン★
ガクッ☆†チーン†
☆しばらくお待ち下さい☆
・・・
・・

「にゃー(何故(なにゆえ)に!)」
「あっ!生き返った」
「にゃー(何故(なにゆえ)に!蹴りから入るのですか?お嬢ちゃん!)」
「逆に質問なのです!何故、今回にねねが呼ばれたのです!」
「にゃー(質問を質問で返すなー!って、一周前に出たからだよ…)」
「ですが、ねねは今回少しも出て無いのですぞ〜」
「にゃー(そりゃ〜活躍したの二つ前だからね〜)」
「なら何故!その時に呼ばないのです」
「・・・!、にゃー(お前頭良いな。じゃあ俺、火計)」
「風殿!このバカ猫を磔の上、燃やすのです!」
「ふう、やっと風出番ですか?ではでは」
「にゃー(リアル火計は嫌だ〜……)」
「あっ!最近、本当にヘタレで直ぐ逃げますね〜。それでは皆様のご静聴、誠にありがとうございました」
「なのです!」

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