「あ〜つ〜い〜」
「うるさい」
「う〜。かずとー。そこの暑っ苦しいお姉さん連れてどっかいって」
「無理だから」
「一刀。私がほしいのはその冷たさじゃないんだけど」
執務室。そこは限られた人間が国の未来を思い仕事をする神聖なる場所……だと思う。
しかし今、呉の執務室を支配しているのはだらけた空気。
ぐてーと机に身体を預けている雪蓮。
普段の冷静さのままだが、普段どおりに筆は進まない冥琳。
そして、俺。
「ねぇ一刀」
まっさら仕事をする気の無い雪蓮。それを咎めようとしない冥琳。この時点でもう駄目だ。
「なんだ」
「その服見ててムカつくんだけど」
……妹よ、兄は異国の地で怖いお姉さんに喧嘩を売られてしまったよ。
「仕方ないだろ。一張羅なんだから」
「だったら公の時に着ればいいじゃない。一刀だって暑いんでしょ?」
確かに、めがっさにょろーんだ。……違う。滅茶苦茶暑い。だ。しかし
「いいじゃん。この服は俺のアイデンティティみたいなもんなんだよ」
そう、これを脱いだら只の男。……悲しいな俺。
「あいでん?もーめんどくさい」
「雪蓮、いい加減黙れ。あと北郷。着替えろ」
えー。そんなに嫌か?
「けどさぁ、服は一枚着てるほうが風通しとか、吸汗性とかが高まっていいんだよ?」
もうこうなったら意地でも脱がないでやる。