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332 名前:トラ曰く、[sage] 投稿日:2010/07/04(日) 02:01:55 ID:MyZGw4GU0
嫌々ながらも相合い傘になってしまう桂花を見てみたい
542 名前:天和曰く、[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 01:50:55 ID:rnmHHJoM0
>>332
調理してみた。遅くてごめんね。しかも桂花っぽくないんだ。
>>285氏のネタと被ってしまい、申し訳ない。
が、桂花の傘は私の中では一択でした。
543 名前:Rainy blue(1/5)[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 01:51:24 ID:rnmHHJoM0
「もう少し離れて歩きなさいよ」
この罵声にもいい加減慣れてきた。
俺は今桂花と二人で町を歩いている。華琳からお使いを頼まれたからだ。


自室で暇を持て余していたら侍女が入ってきた。玉座の間に来るように。と華琳からの言伝と一緒に。
ささっと身だしなみを整え、玉座の間へと向かう。
「あぁ……、華琳さまぁ」
玉座の間に近づくと聞こえてくる何か。って一人しか……結構心当たりあるな。
「華琳、用があるって聞いたんだが」
何時ものことだ。特に気にせず玉座の間に入る。そこには華琳と桂花の姿が。
「あら、一刀」
「……ごめん。なんでそんな普通なんだ?」
「なにがよ」
あ、そう。疑問に思ってないのね。四つんばいの桂花の上に座っているのは華琳にとって普通なんだな。
因みに、「げ、何であんたがここにいるのよ」とか「せっかく華琳様にご褒……お仕置きされていたのに」とかブツブツ聞こえているが、無視。
「それで、華琳は俺に一体何の用なんだ?」
「ええ。桂花の仕事に手落ちがあってね。今から一緒に街へ行って買い物をしてきてほしいのよ」
「華琳様!私の失態です。私一人で取り戻しますので、こんなヤツは必要ありません!」
四つんばいのまま答える桂花。中々の根性だと思う。
「桂花。そんなに一刀と一緒に街に行くのがイヤなの?」
華琳がサディスティックな笑みを浮かべながら桂花に問う。しかしその笑顔は桂花には見えない。
「もちろんですっ。こんなヤツと一緒に歩くことはおろか、同じ空気も吸いたくありません」
あぁ。桂花って意外と馬鹿なのかもしれない。何回こんな会話を聞いたことか。そして華琳は毎回こう言うんだ。
「そう。じゃあ命令よ。一刀と一緒に街へ行きなさい」
544 名前:Rainy blue(2/5)[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 01:51:50 ID:rnmHHJoM0
「ふぅ。やっぱりかさばるな」
俺の両手には沢山の本。桂花の落ち度とは華琳が求めていた本を揃えられなかったことらしい。
実に桂花らしからぬミス。そして実に桂花らしい計画。
桂花の脳を占めるのは只一つ。華琳様のお仕置きを受けたい♪これで十分。
「ふん。あそこでアンタが来なかったらもっとお仕置きをしてもらえたのに」
持っていた傘で俺を指しながら罵声。出来るだけ俺から距離を取りたいようだ。
因みに桂花の手には傘のみ。全く持って俺の手助けをしようという発想が無い。
「なあ……」
「イヤよ」
持てとは言わない。だからお願い、せめて言わせて。
「別に……」
「近付かないで」
……
「華琳……」
「華琳様っ!?」
やっぱり桂花は馬鹿かも知れない。
「どこにもいないじゃない。騙したのね。これだから脳みそ精液人間は困るのよ」
そうか、俺が悪いのか。呆けていたらどんどん先に進む桂花。
「ちょっ、ちょっと待ってくれよ」
「なんで私がアンタを待たないといけないのよ。さっさと帰って華琳様に褒めていただきたいのに、ってあら?」
自分の不手際を処理しただけで華琳は褒めんだろうと思って聞いていたら桂花の鼻の頭に雨が落ちた。
「雨ね」
当然のようにサッと傘を開き、一人安全圏へ。さすが軍師。
桂花の傘は普通の傘に比べカーブがきつく、本当に一人用。といった意匠だ。また、色も服とあわせたのかモスグリーンで結構可愛らしい。
「あのさ……」
「全く。全身精子男と一緒でさらには雨まで。今日の私は運が無いわね」
またしても無視。しかしここは黙ってられない。
「傘に入れてくれないか」
「なんで、私が、あなたと、一緒の、傘に、入らないと、いけないの?」
単語を一つ一つ区切られ、いつも以上に嫌なのが伝わってきた。が
545 名前:Rainy blue(3/5)[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 01:52:16 ID:rnmHHJoM0
「……華琳の本が濡れるんだが」
「自分の身体で守りなさい」
「物理的に無理」
「一人雨が止むまで雨宿りしなさい」
「時間的に無理」
「精子に抱かれて溺死しなさい」
「個人的に無理」
「……」
「私の傘に入りなさい。おっ、桂花優しいじゃないか」
「馬鹿なことはやめて、気色悪い。……ったく、仕方ないわね、ちょっとこっちにきなさい」
やたら嫌そうに俺を呼ぶ桂花。とてとてと近づく。
「はい、これでいいでしょ」
傘の中に入っているのは桂花と本……のみ。やっぱりこいつは生粋の軍師だと思う。褒めてないが。まぁ傘の有効範囲が小さいのもあるが。
「……俺は?」
「さぁ、早く帰るわよ。長い間、アンタと近くにいたら孕まされるかもしれないわ」
真っ直ぐ歩く桂花。そして俺は……かに歩き。
傘の中は、進行方向の左側に桂花。そして右側に本用のスペース。ってことは俺は本を守るために桂花の方向を向いてないといけないわけだ。
不恰好という範囲を超えている。しかも歩きにくい。
「なんでアンタは私の方を向きながら、息を切らしてるのよ!はっ、もしかして私を犯そうとしているのねっ!」
違ぇよ。しかし俺が入ってしまうと俺どころか、桂花や本も濡れてしまう。仕方ない、肉を切らせて骨を絶つ作戦だ。
「桂花、ちょっと我慢してくれ」
「は?――ってアンタいきなりなにするのよっ」
桂花を呼んだ一瞬の隙で本を桂花に持たせて、俺は桂花をお姫様抱っこ。
桂花は身体全体で本を支えられるし、桂花が自分に雨が当たらないように傘を使えば本も濡れない。
俺は濡れてしまうが、格段に歩きやすくなった。が
546 名前:Rainy blue(4/5)[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 01:52:40 ID:rnmHHJoM0
「きゃああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあっ!助けてっ!犯されるっ孕まされるっ!」
……これは予想外。ある程度なら我慢してくれるだろうと読んだのだが。
「お、おいっ。何もしないから少し落ち着いてくれ」
「すでにしてるじゃないのっ!早く、早く降ろしなさい!」
ヤバイ。軽い錯乱状態になってる。周囲もざわつき始めた。
「オイ!そこのヤツ。女性を降ろし、両手を……隊長?」
さすが凪が手塩に掛けて育てた警邏隊。早くも現場に駆けつけ混乱を鎮圧に向かう……って俺が原因か。
しかしこの警邏の人間も俺をちゃんと知っているようだ。警戒はしているものの、近づいてくる。
「何をやっているんですか?」
「あぁ、ちょっと」
「あなた!何をボケッとしているのっ。見て分かるでしょ、私が犯されそうになっているのよ!助けなさい」
男嫌いのはずの桂花が男に助けを求めている。これは珍しい。
いや、おそらく男としても、見てないんだろうな。って冷静に分析してるんじゃなくて。
「あーゴメン、気にしないで」
「こらっ、聞け、聞けぇぇえ!」
「あのーそれ以上騒がれると――」
桂花の様子に驚きながら、納めようとする警邏さん。君は警邏隊の鏡だよ。と思っていたのだが
「何をしている。まずは威嚇に一発打てと教えただろう。そうすれば騒ぎはむやみに大きくならない。このよう、に」
聞きなれた声が背後から聞こえる。と、共に見慣れたくない何かが飛んでくる。
「ふぉーーーーーーーーーーーーーっ」
ここで叫ばずにいつ叫ぶ。俺の足元に気弾が着弾した。流石の桂花もおとなしくなる。
「分かったか……って、た、隊長!?」
部下を鍛える上司の顔から一転、攻撃の先が俺と分かると慌てふためく凪。
「やぁ、凪。今日も調子がよさそうだね」
一応冷静な、フリ。顔中から冷や汗が噴いているし、心臓もバクバクしている。
「も、申し訳ありません。なにやら騒がしかったので、普段どおりに対応したら、まさか隊長だったとは」
「いいよ、気にしないで。俺たちが騒ぎの中心だったのも確かだし、凪は自分の仕事をしただけだよ」
出来る上司の、フリ。もう一度言おう。顔中から噴いている冷や汗は止まらないし、心臓も落ち着かない。
547 名前:Rainy blue(5/5)[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 01:53:10 ID:rnmHHJoM0
「凪、助けなさい!この男、私を犯そうとしているのよっ」
調子を取り戻した桂花が凪に言う。
「桂花さま。隊長がそんなことをするわけがありません。それに――」
凪には珍しく、威嚇するような視線。確か凪と桂花って相性悪いんだよな。
「な、なによっ」
思わずひるむ桂花。
「本当に嫌なんでしょうか。だったらまずその手を離すべきでは」
凪の視線の先を追うと、本と傘を抱えていない手で必死に俺の二の腕を握り締めている桂花。
凪が放った気弾の時の恐怖で思わず握り締めてしまったらしい。俺も桂花自身も気がついていなかった。
ぱっと慌てて手を外す桂花。それを見た凪は、
「いつものことだと、今回は見逃します。ですがこれ以上騒がれるといくら隊長でも……」
「あ、あぁ。気をつける」
凪の気迫に圧倒される。戦闘時の殺気ではなく、自分の内から出てしまいそうな何かを押さえているような顔。
「では。皆、ここはこれでいい。警邏に戻る」
くるっと身体を反転し、命令を出す凪。言葉にも、態度にも棘がある。
俺は凪に声を掛けることも出来ずただ、目で追うだけだった。
「凪はなんであんなに怒ってたんだ?」
桂花がずれ掛けていた傘を直す。もう諦めたが、桂花の上にしか傘は無い。
「ふんっ」
――ぐさっ
桂花が身じろいだ拍子に傘の骨の先が目に刺さる。
「ぎゃあああぁぁぁぁ!目がぁ、目がぁぁぁああぁぁぁぁぁ」
「本当、最低な日……」
だから俺は桂花がどんな表情で、何を呟いたのか、まったく分からなかった。
548 名前:天和曰く、[sage] 投稿日:2010/07/12(月) 01:54:44 ID:rnmHHJoM0
以上。
桂花の傘は昔の貴族っぽい感じ。実は傘の内側には華琳様の絵が……ないな。
桂花難しい。可愛いけど。
またね。

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