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374 名前:魏の種馬曰く、[sage] 投稿日:2009/12/15(火) 07:53:59 ID:XB0+H2B2O
本スレ書き込めないので、出勤前にこちらに投下。9レスお借りします。
375 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(中編)1/9[sage] 投稿日:2009/12/15(火) 07:55:17 ID:XB0+H2B2O
 次の日の北郷一刀の朝の目覚めは、爽快とは言い難かった。

 熟睡出来たはいいのだが、生活サイクルの狂いからか体は目覚めても頭
の反応が鈍く、ぼんやりとしたまま午前中を過ごしたような気がする。一
応仕事はこなせてはいたのだが、ふと気がつくと、自分が一体何をしてい
るのか、自覚のないまま流れで作業をしていたのでは、と思い返して不安
にかられ、昼食を摘みながら竹簡を読み返しているような有り様だった。

 普段、事務仕事をこなしている執務室にて。切りのいいところで手をと
めて、自分の作り上げた竹簡の山を見返しつつ、一刀は腕を回して肩をほ
ぐす。ふと窓から外を見ると、既に太陽は色を変え、夜の到来が間近に迫
っている。一刀は夕飯にするかな、と腰を浮かせた。あまり食欲の湧かな
かった朝は適当に粥を啜っただけであり、そして昼も点心を適当に摘んだ
だけである。仕事を終え、今更ながら調子を取り戻してきた今の体は、素
直に空腹を訴えていた。人は仕事を終えると何故か元気になるよなぁ、と
胡乱に考えながら、部屋を出ようと扉に向かったところで、その扉がコン
、コンと軽い音をたてた。
376 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(中編)2/9[sage] 投稿日:2009/12/15(火) 07:56:02 ID:XB0+H2B2O
「お、お疲れ様です、ご主人様」

「愛紗」

 音の主は、何やら豪勢な料理の乗ったお盆を携えた愛紗だった。部屋に
入ってきた愛紗は何故かうっすらと頬を染め、落ち着かない素振りでちら
ちらとこちらの顔を伺っている。その態度に思い当たる節のない一刀は、
はて、首を傾げた。

「ご、ご夕食をお持ちいたしました」

「ああ、うん、ありがとう。ちょうどご飯にしようかと思ってたんだよ」

「さ、左様でしたか。それはよかったです。ご主人様は、最近は特に忙し
く政務に励まれているご様子で、前も夜を徹したと聞いております。お疲
れでしょうから、そ、その、た、たっぷりとその……せ、せ、精を付けて
頂こうと、厨房の者に言いつけて、鰻や肉を中心に用意させました」

 時折声を裏返しつつ、豪快にどもりながら、愛紗は震える手で一刀に料
理を示した。カタカタ音を鳴らしている皿の上には、豚足を煮たものや鰻
の白焼き、そして韮と牛肉の炒めものなどの肉類が。そして2つある汁物
の片方には甲魚の足が、もう片方には家鴨の肉が浮いているなど、たんぱ
く質が中心の料理が山となっている。
377 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(中編)3/9[sage] 投稿日:2009/12/15(火) 07:58:10 ID:XB0+H2B2O
 その壮観ともいえる料理群の脇に、どこか場違いの雰囲気を漂わせてい
るクルミとナツメ、卵が混じった粥が、申し訳程度に美味そうな湯気をた
てている。一刀の腹が引きつりにも似た感覚と共に、歓迎の声をあげた。

「わざわざありがとう、愛紗。けど、珍しいね?」

「な、何がでしょうか?」

「いや、普段食事は月が用意してくれてるからさ。愛紗が持ってきてくれ
るのは珍しいなって」

「そ、それはその、あの……そう、先程申し上げましたように、特別な料
理を食べて頂きたく思いまして。用意の関係など、それで交代となった訳
です」

 先程から、愛紗の挙動不審は止まらない。あたふたとしながら釈明を済
ませ、目を逸らす。一刀はやはり首を傾げつつ、愛紗から料理の乗った盆
を受け取った。机の上の竹簡を乱暴に隅に押しやり盆を置く空間を作る。
愛紗も部屋の隅に置かれていた、予備の椅子を引っ張ってきた。

「ご、ご相伴に預からせて頂きます」

「うん、この量は一人じゃ多いからね」

 向かい側ではなく、何故か隣に椅子を寄せてくる愛紗に首を傾げつつ、
一刀は食事を始める。
378 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(中編)4/9[sage] 投稿日:2009/12/15(火) 07:59:12 ID:XB0+H2B2O
 無言のまま粥を掬う愛紗の手は相変わらずぷるぷると震えており、散蓮
華からぽたぽたと粥が落ちていく。平静を装っているのか、目を閉じたま
まの愛紗はそれに気付かずに散蓮華を口に含む。がちり、と音がして、愛
紗は驚きに目を開けた。

「……大丈夫?」

「は、はい、お見苦しいところを――ッ!?」

 覗き込むように下から顔を近付けた一刀から、愛紗は逃げるように大き
く仰け反る。ガタンと音を鳴らして椅子ごと倒れ込む愛紗の腕を一刀は慌
てて掴んだ。

「も、申し訳ありません……」

「いや、大丈夫だよ」

 掴んだ腕は硬直している。一体何なんだろ、と一刀は再び首を傾げ、愛
紗の観察を始めた。愛紗は相変わらず頬を染め、ちらちらとこちらの様子
を伺っている。

「………………」

「ご、ご主人様……」

 見つめる一刀から何を感じたか、染まった頬をそのままに、愛紗はどこ
か呆けた顔でこちらをじっと見つめてくる。完全に何かしらのスイッチが
入った愛紗を、一刀は戸惑いながらも、観察を続けた。
379 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(中編)5/9[sage] 投稿日:2009/12/15(火) 08:03:19 ID:XB0+H2B2O
 潤んだ瞳。紅潮した顔。掴み返してくる腕。寄せられる体。段々と近付
いてくる、薄く開いた口から覗く赤い舌。そして、愛紗の用意した料理の
山。

(……なるほど)

 さすがに一刀もピンときた。つまりはそういう事か、と理解する。あの
愛紗が……と思うと同時、どこか納得する自分もいた。体を重ねるように
なってから、時折見せる熱い眼差し等を思い出す。

「愛紗」

「ご、ご主人様……」

 呼びかける一刀に、察するものがあったのか。ピクンと震えて、愛紗は
恥じらいつつ、うっすらと瞳を閉じていく。そんな愛紗の姿に、一刀は妙
な気分になってくる。

(……ちょっと、からかってみるか)

 柄にもない考えが、一刀の頭をよぎる。ニヤリと口を歪ませながら、目
を閉じた愛紗を抱き寄せた。跨ぐように左の膝に座った愛紗は、もどかし
げな声をあげ、首の後ろに手を回して唇をこちらに寄せてきた。

 一刀はくすりと軽く笑い、

「口の中、怪我しなかったかな?」

「むぶっ!?」

 それ以上の接近を阻むように、顔と顔の間に手を挟んだ。驚きに目を見
開いた愛紗には構わず、指を愛紗の口の中に突っ込む。
380 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(中編)6/9[sage] 投稿日:2009/12/15(火) 08:06:21 ID:XB0+H2B2O
 プルプルと弾力のある桜色の唇の感触を親指で味わいつつ、それを捲り
上げて歯茎をさらす。わざとぴちゃぴちゃと唾液の音をたてながら、歯茎
を人差し指でなぞっていった。

「ご、ご主人様……」
「うん?」

 戸惑う愛紗の声に、一刀は惚けるように首を傾げる。焦燥にも似た表情
からは、存分に不満の色が窺えた。一刀は今度こそ意地の悪い笑みを浮か
べ、

「口を開いて、舌、出してみて」
「あ、あの……」
「愛紗」

 空いている方の腕で、愛紗の背中をそっと撫でる。

「は、はい……」

 ピクリと震えて、若干荒くなってきた吐息と共に、恐る恐ると舌が出て
来る。妙な興奮を味わいながら、一刀はその舌の腹に人差し指を置いた。

「ん、ぷあ……んん、んふ……」

 差し込まれたその指を、愛紗は躊躇なく舐めていく。先の方から丹念に
、そして絡ませるようにぴちゃりぴちゃりと音をたて。一刀はくすぐった
いようなその感触をこらえつつ、上目でこちらを窺う愛紗に笑いかけた。

「は、んむ……」

 指の先を頬の裏側でこすり、舌を伸ばしたその先で指の間をちろちろと
弄う。
381 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(中編)7/9[sage] 投稿日:2009/12/15(火) 08:07:25 ID:XB0+H2B2O
 一刀は愛紗の熱い吐息を手のひらで受け止めつつ、愛紗の背中に回して
いた手を腰にやって撫で回す。

「んぷ、んんっ!?」

「おっと」

 若干痺れてきた愛紗を乗せている太股を動かしたら、愛紗は驚いたよう
な声を上げた。両足で挟むように跨いでいる為に、その間の敏感な部分を
刺激してしまったらしい。

「は、んぅ、んちゅ、ぅん……はぁっ」

 気付いた一刀は、愛紗の口の端から垂れてきた涎を舌で拭うと、ゆらゆ
らと足を動かし、悪戯を開始した。その狼藉を責めるどころか受け入れる
ように自分からも腰を動かしつつ、愛紗は荒く息を吐きながら、顔を寄せ
て伸ばした舌で唇をねだる。一刀は悪戯っぽく笑い、その舌を指で押さえ
つけた。

「ふぶ、ん、ちゅ……」
「いて」

 不満げに歯を立ててから、愛紗はその指を吸い上げた。熱さと冷たさが
入り混じった視線を一刀に向けるが、指はくわえられたままであり、妙な
愛嬌になっている。

 一刀は口から指を抜いて、愛紗の頬に手を添える。その唾液に濡れた指
で首筋をそっとなぞりつつ、一度だけ愛紗に口づけて身を離した。
382 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(中編)8/9[sage] 投稿日:2009/12/15(火) 08:10:47 ID:XB0+H2B2O
「ご主人様!?」

 驚き、焦りを浮かべた愛紗に笑みを浮かべ、一刀は肩を竦めた。

「折角愛紗が用意してくれた料理があるんだ。……食べてからの方がいい
んじゃない?」

 耳元で囁くように言われた後半部分に、愛紗は顔中を真っ赤に茹で上が
らせて俯いた。

/////////

 二人は無言のままもそもそと食事を済ませ、寄り添いながら廊下を歩い
ていた。

 ゆったりと歩く一刀に、もどかしげな歩調の愛紗は、何故ここに至って
、こうも泰然としていらっしゃるのだ、と不満を感じて一刀の顔を睨む。

「愛紗?」

 それに気付いた一刀のきょとんとした顔が、こちらの尖った視線を受け
て、悪戯っぽい笑顔に変わる。

(……そして、こういう時だけ察しが良い)

 気がついたら、既に一刀の寝室の前に到着していた。羞恥に目を背けた
愛紗の肩に手を回し、扉を開けて中へと誘う。

「愛紗」

「ご主人様……」
383 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(中編)9/9[sage] 投稿日:2009/12/15(火) 08:17:39 ID:XB0+H2B2O
 見つめ合い、二人の顔が近付く。煩いぐらいの鼓動が愛紗の耳に届く。
 そして唇が重なろうとして――



「かっ、華蝶仮面が出たぞーーーーっ!!」

「なっ、し、城の中に侵入したのか!? 城外の警備の奴らは何やってん
だ!!」



 廊下をバタバタ駆ける兵士達の足音と叫び声の中、一刀の腕の中の愛紗
から、ぶちりと何かが千切れる音がした。


*********


……中編は以上です。SS書くのって難しいですね。特にち○こさんと桃香
のキャラクター。

んじゃ、失礼しました〜。

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