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774 名前:全身精液男曰く、[sage] 投稿日:2009/12/01(火) 06:13:38 ID:qnEolzvoO
青龍奮戦記(前編)の残りを投下します。6レスお借りします。
775 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編の続き)1/6[sage] 投稿日:2009/12/01(火) 06:15:44 ID:qnEolzvoO
「なんか、凄い勢いだったね……」

あはは、と困ったように笑いながら、桃香は呟いた。あらあらと言いな
がら似たような笑顔を浮かべた紫苑も、同調するように肯く。

「ふむ。お館様が徹夜仕事か……」

「何か思う事があるか、桔梗よ?」

顎に手を当て、悪戯っぽい笑顔を浮かべた桔梗に、星が言葉をかけた。
桔梗は何、と笑顔のまま星に顔を向け、

「ところで星よ」

「何かな?」

「朝駆けでお館様に奉仕をしたか?」

「いや? 朝食をご一緒しただけだ。お疲れのようだったしな」

周りの者が吹き出す音に構わず、星は冷静に答える。

桔梗はその返答に、さらに笑みを深めた。
776 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編の続き)2/6[sage] 投稿日:2009/12/01(火) 06:16:48 ID:qnEolzvoO
「で、それがどうしたというのだ、桔梗?」

「何、それなら今日、お館様は女を連れ込みはせずに、さっさと寝るだろ
う、と」

「うむ」

「昨日、今日と溜まる限り、明日の夜のお館様はは、さぞ激しくなるだろ
う、とな」

「ふむ……そうかもしれんな」

「休養たっぷりのお館様が、襲いかかってくるのだ。それはそれは手強か
ろう。どのような男を見せるか、味わってみたいものよ」

それはもう獣のように、貪るようにくるだろう。と言いながらからから
と笑う桔梗の明け透けな言葉に、その場にいる全員がぴくりと震え、動き
を止めた。

ふん……と鼻を鳴らし、興味なさそうにするものの、足元が落ち着かな
い者。半開きの口を上に向け、露骨に頬を染める者。湯だった顔を下に向
け、ふるふる震えだした者。その様子を横目に眺め、茶々をいれる者。

そして、牽制するように周囲を見渡し、落ち着きを失った者。

「ふむ。しかし、今この瞬間に、恋とねねに搾り取られるやもしれんな」

「……………っ!!」

星のぼやきに応えるように、爆発音のような物凄い踏み込みの音がして
、その会議場から一人の影が消える。
777 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編の続き)3/6[sage] 投稿日:2009/12/01(火) 06:18:00 ID:qnEolzvoO
全員ぽかんと口を開け、矢のような勢いで飛び出していった愛紗が開け
放ったままの扉を見る。

そして、誰ともなく呟いた。

「……必死すぎなのだ、愛紗」
「……そういえば、愛紗ちゃん最近あんまり構ってもらえてないみたい」

寒々しい空気が満たす部屋の中。唖然とした皆の内、一人ニヤリと口の
端を吊り上げる者がいた。

//////////

「あー……せっかく来てくれたのに、ごめんな、恋」
「………………………」
「昨日は徹夜で仕事しててね、たまたま早かっただけなんだ。悪気があっ
た訳じゃない」
「………………………………」
「…………恋? 起きてる?」
「………………………………………起きてる」

掛け布団を被った恋の頭を布団越しに撫でながら、一刀は必死に恋に呼
びかけているが、恋はなかなか出てこようとはしない。監督するように腕
を組んで睨んでくる音々音の視線は時間の経過と共に鋭さを増していき、
一刀を少しずつ追い込んでいく。

「………………最近、ご主人様は忙しい」

「ん? まあ、仕事はなくならないよ」

布団からは、触角のような恋の髪の毛だけがはみ出ている。
778 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編の続き)4/6[sage] 投稿日:2009/12/01(火) 06:19:47 ID:qnEolzvoO
一刀は寝台に座り、隙間から手を差し込み、手探りで探し出した恋の頬
を撫でた。

「…………最近、恋と遊ぶ時間もない」
「あー…………まあ、それは」
「…………ワガママは、言わない」
「……いや、構わないよ。言ってくれて構わない」

苦笑いしながら、一刀は恋を優しく撫で続ける。恋は擦りつけるように
、その掌に頬摺りを返してきてくれた。

「俺も鈍いからさ、言って貰わないと分からないんだ」
「…………」
「おまけに気もきかないし。こんなんじゃ恋に嫌われちゃうかな?」
「………………(フルフル)」

首を振りながら、むくりと恋が起き上がる。

「機嫌、直してくれた?」
「…………ん」

ぽてり、と恋は一刀の胸に顔を押し付ける。側頭部に突き刺さる視線を
極力無視し、一刀は抱きしめるように頭を抱えた。くぁ……と出てくる欠
伸をかみ殺し、

「……ご主人様、眠い?」
「うん……」
「……一緒に、寝る」
「……昼から仕事だから、それまでだよ?」
「……昼まで寝て、ご飯一緒に食べる」
「そうだね」
779 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編の続き)5/6[sage] 投稿日:2009/12/01(火) 06:20:35 ID:qnEolzvoO
視線は、気がついたら消えている。珍しい事もあるものだ、と閉まった
扉に目を向ける。

掛け布団の中に入る一刀の横に、恋はいそいそと滑り込んでくる。抱え
るようにくっついてくる、恋の柔らかい感触と匂いに湧き上がってくる物
もあるのだが、圧倒的な眠気の前に、一刀はあっさりと屈伏した。


//////////


 そんな二人が寝ている部屋の外で。

「……何をしてるのですか」

「こ、こんな朝っぱらからやましい事はせぬように、一言言いに来ただけ
だ」

何も考えずに駆け出したはいいものの、いざ着いたら何をしたらいいも
のか、と右往左往していた愛紗を、苦虫を噛み潰しながら部屋を出た音々
音が問い詰めていた。

「まあ見ての通り、何事もなく寝ているのです。仮に恋殿の寝姿に汚らし
い劣情を抱いたとしても、ちんきゅーきっくで潰してやるのですよ」

「う、うむ。それならばよかろう」

失った何かを取り戻そうと、殊更尊大に頷いた後、これ以上の無様は晒
せぬと、愛紗は踵を返す。

今更過ぎるその背中を、音々音はしらっとした目で見送った。
780 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編の続き)6/6[sage] 投稿日:2009/12/01(火) 06:23:29 ID:qnEolzvoO
//////////

さて、その後の北郷一刀の一日は。

あっさりと寝過ごし、執務室にて待ちぼうけを食らった桃香と朱里に叩
き起こされ、頭を下げつつ仕事をこなし、その後はふらふらとしながら寝
台に倒れ、泥のように眠りについた。

部屋の外にてその姿を確認し、よしと拳を握って明日を思う愛紗と、月
見をしながら酒を飲み、さてどう出し抜くか、と愉しげに笑う星の事を知
らぬまま。


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……までが前編です。面白かったと言って頂きありがとうございました。

>>743 新人です。よろしくたのんます。

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