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670 名前:絶倫男曰く、[sage] 投稿日:2009/11/29(日) 06:19:30 ID:FVMgTXc6O
何故か眠れぬまま六時間まんじりと。

思いついたネタを深夜テンションで書いた。7レスお借りします。
671 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編)1/7[sage] 投稿日:2009/11/29(日) 06:23:55 ID:FVMgTXc6O
 自分で自分を誉めてやりたい、と思ったのはいつ以来だろうか。

 首を捻ればパキリと乾いた音が鳴り、背を反らせばボキリと不安にさ
せる音が鳴る。開けた窓から飛び込んでくる、外の素晴らしい快晴を
想像させる光から逃げるように目を背け、北郷一刀は己の机に山と積ま
れた書類と竹簡の中に突っ伏した。

「お疲れ様ですな、主」

「……星」

 のろりと顔を上げると悪戯っぽい笑顔の星が、窓の縁に座っていた。

「その御様子では、夜通し励まれましたかな?」

「そう。昨日の夕方に、何でか知らないけど、どばっときてね……。桃
香は昼から休みで鈴々とどっか行ってたし、朱里に雛里も揃って城を外
してて。いっぺんやり始めたら俺も止まらなくてさ、気がついたら朝日
が出るまでやってたよ」

「主がそこまで仕事熱心とは珍しい。今日は昼から雨でも降りますか?」

「そしたら涼しくなっていいかな……なんか強烈に珈琲が飲みたいよ」

「こおひい、とは?」

「天の国の飲み物、だ。眠気覚ましに効くんだよ」

 よいしょ、と一声入れて、一刀は立ち上がる。大きく伸びを入れて、
星が差し出してくれた杯を受け取る。

672 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編)2/7[sage] 投稿日:2009/11/29(日) 06:26:07 ID:FVMgTXc6O
「茶でもこおひいとやらでもない、ただの水ですが」
「構わないよ、ありがとう。……星もこんな朝っぱらからどうしたの?」
 ぬるい水を一気に干して、頭をかきながら尋ねる。まだ日の出から間も
なく、朝議の迎えにしては些か早い。神出鬼没が当たり前の星ではあるが
、訪れるには珍しい時間帯であると言えた。
 星は何、と肩をすくめ、

「昨夜は桔梗と紫苑、私の三人で酒を飲んでおりまして。その席で、紫苑
から面白い話を聞きましてな」

「うん、なんて?」

「主は夜討ちだけではなく朝駆けも受け入れておられる、と」

「ぶっ」

 ニヤリと口の端を釣り上げた星から、一刀は僅かに腰を引く。男とし
て興味のつきない魅力的な話題ではあるが、張った肩に痛む腰、ぼやけた
頭では余り受け入れる気にはならない。

 当の星も、こんな状況にこんな状態の自分は望ましくはないようで、

「とは言いましても、夜を徹したお疲れの主にねだるのも、無粋であり
ましょう」

「ねだるってな……どちらかと言うとそれを言うのは俺からじゃないか」

「おやおや」

 意外そうに星は目を開いた。

「何?」
673 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編)3/7[sage] 投稿日:2009/11/29(日) 06:27:46 ID:FVMgTXc6O
「いえ、主がそういう誘いをするのも、余り想像が出来ませんで」
「……そういう星の評価こそが意外だよ」
 一刀自身、周りから――自分で思うのも悲しくなるが――女誑しの女好
き、そういう評価をされているものだと考えていたし、事実気が多いだの
ち○こだのと、散々言われもしてきた。そのような認識であった為に、一
刀にとっては、星が意外そうな顔をしている事こそが不思議に思えた。

「確かに主は、見境なく“受け入れて”はおりますがーー」

「……もしもし星さん?」

「御自身から女を閨に引きずり込む真似は、余りされますまい」

「……あー……」

 言われてみれば、今まで手を出したほぼ全ての女性、一刀自身から閨に
呼んだ者はいない気がした。男としてどうなのだろう、と思わなくもない
のだが、気がついたらそうなっていた、というのが一刀自身の主観だった
のだが。

「主は鈍いですからな」

「そんなに言うほどかな……」

「私自身、主の部屋に忍んだ身ですので。主のその辺りにやきもきしてい
る娘もおりましょう」

「……考えておくよ。さて、朝議の前に軽く何か食べようか。星はどうす
る?」

「お供しましょう」
674 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編)4/7[sage] 投稿日:2009/11/29(日) 06:29:02 ID:FVMgTXc6O
 欠伸をかみ殺しながら、一刀は部屋を出ようとする。星は後ろから一刀
のよれた服の襟をそっと直し、静かにその後ろをついていった。

//////////

関雲長こと、愛紗の瞳の上で、眉の間に若干の皺が寄っている。

その不機嫌そうな顔に不穏を感じた侍女や警備の兵が、顔を逸らしなが
ら通路の端に寄る。愛紗はその真ん中を早足で歩き、目的地へと急ぐ。

(この時間、ご主人様はもうお目覚めだろうか)

眉間の皺は、そのご主人様が朝議に遅刻しそうだから……という理由か
らのものではない。朝議まで、まだ時間は少しある。

しかし、一刀を呼びに行くその足は、若干の焦りがあった。

(朝食をご一緒しようと呼びに行くのはいいが、支度に手間をかけすぎた。
くぅ……関雲長一生の不覚)

安い一生もあったものだ、と愛紗自身思ったが、今はそのような事に囚
われていても仕方がない。焦りに導かれるままに、足を進めている。

先日まで、郊外での簡単な演習を行っていた愛紗は、一刀の顔を見るの
も、実に数日ぶりである。
675 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編)5/7[sage] 投稿日:2009/11/29(日) 06:30:29 ID:FVMgTXc6O
 城に戻ったのは昨日の夕方ではあるが、文官から一刀は大量の書類仕事
にかかりきりであると聞き、邪魔をするのも申し訳ないと、昨夜に逢うの
は自重した。

(お疲れのようなら、寝顔を見るだけでもよい。それも悪くはない)

その顔に口付けをして、と想像した所で頬が熱を持った。最後に閨を共
にしたのも半月は前だろうか。欲求不満か、と頭に浮かんだ言葉に嫌気が
差すが、実際愛紗は自分でも認めてしまうぐらいには飢えていた。

ずんずん進み、やがては一刀の部屋の扉が目に入る。無意識の内にくく
った髪に手櫛を入れて、そして扉を開けようとした愛紗の手が、他の手と
ぶつかった。

「って、朱里に雛里!? こんな所で何を!?」

「はわわっ!? そっ、それはこちらの台詞でしゅ!!」

「あ、あわわ……」

まずい所で会った。三人は露骨にそう書かれている顔を見合わせる。

朱里に雛里も、ここに来た理由は愛紗と似たようなものである。ここ最
近多忙を極め、愛する人物の顔もロクに見れていない。眠い目をこすり早
起きし、なんとか作った朝の自由時間ぐらい構うまい、と突撃してきたの
である。
676 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編)6/7[sage] 投稿日:2009/11/29(日) 06:33:31 ID:FVMgTXc6O
愛紗は口を引きつらせ、
「二人とも……そこをどかんか」
「愛紗さんこそ……桃香さまを起こしに行かれては?」
「あわ、あわわ……」
バチバチと二人の間で火花が散った。挟まれた一人はあわあわ動揺する
だけである。

「………………?」

そしてまた同じ理由で現れた恋が、首を傾げながらそんな三人を見てい
た。が、すぐに興味を失い、睨み合う二人の脇を抜け、

「ご主人様、朝ごはん一緒に食べる……」
「……って、後から湧いて出て何を抜け駆けしているかっ!!」
「はわわっ! 今日起こすのは私の役目ですよ!?」
「あわわ、私も起こしたいですう〜」

遅れはとらぬと、三人一気に恋の後から押し寄せる。

そんな四人を迎えたものは――

「「「「…………………」」」」

もぬけの殻の部屋と、開け放たれた窓から吹き込む生温い風だった。

//////////

「――では、これで本日の朝議を終わりたいと思います」

ふてくされた顔のままの朱里の声で、本日の第一の業務、蜀の重臣を揃
えた朝の会議は片付いた。因みに、他にもふてくされた顔の人物は、この
場にあと二人いる。
677 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編)7/7[sage] 投稿日:2009/11/29(日) 06:35:42 ID:FVMgTXc6O
 会議が行われる部屋に来た一刀に、挨拶もそこそこにかけられた質問(
朝はどちらに行かれていたのですか?)に答え(星と飯食ってた)てから
というもの、一刀は愛紗、朱里、雛里の三人からじとりとした眼差しを注
がれていた。そこまで責められる覚えのない一刀は、首を捻るばかりであ
った。

 そんな一刀に話があると、律儀に朝議が終わるのを待っていた者がいた


「こらち○こ大守! 恋殿が朝から沈んでおられるのですが、お前何をし
ましたか!!」
「え?」
「何を惚けているのです! 恋殿が最近お前に逢っていないからとお前な
んぞを起こしに行かれたというのに!! 幸せそうな顔で出ていったと思
ったら、すぐに帰って来られて部屋でふて寝を始められたのですぞ!?」
「へ? いや、恋には今日会ってないんだけど……」
「なんと、入れ違いでしたか……いつもはだらだら寝ている癖に、何故今
日に限って起きていましたか!!」
「いや、俺今日仕事で徹夜して……」
「お前の言い分など聞いていないのです!!」

両手を振り上げてがなり立てる音々音は、いや聞いてただろ、と呟く一
刀の手を掴み、口惜しそうに歯をギリギリ慣らしながら、
678 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編)8/7[sage] 投稿日:2009/11/29(日) 06:37:17 ID:FVMgTXc6O
「腹立たしい事ですが、ねねが励ましても恋殿は布団から出てこられませ
ん。ここは原因たるお前がなんとかするのです」

「いや、今日の午前中は少し時間があるから、仮眠を取りたいんだけど」

「お前は寝るのと恋殿と、どちらが大事ですか!!」

「……なんか、休日のサラリーマンのパパみたいだな」

「ええい、何を訳の分からない事を……! いいからキリキリ歩くのです
!!」

分かった分かった、と呻く一刀を引きずりながら、音々音は会議の間を
出ていった。
679 名前:青龍奮戦記〜悪鬼羅刹・昇り龍〜(前編)[sage] 投稿日:2009/11/29(日) 06:41:24 ID:FVMgTXc6O
書き込み初めてな上に携帯なんで、千文字入力出来ない事を初めて知った。

半分ぐらいですが切りのいいとこで切ります。スレ汚し失礼。

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