- 376 名前:星曰く、[sage] 投稿日:2009/10/31(土) 21:57:11 ID:bYAyxQgk0
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えっと今日がハロウィンだから勢い余って書いちゃったんだけど…桃香して大丈夫か?
- 380 名前:星曰く、[sage] 投稿日:2009/10/31(土) 22:01:16 ID:bYAyxQgk0
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良し、なら今直ぐ桃香開始だ!
5レス分で正直ハロウィン成分は最初だけなんだが…広い心で読んでくれれば有り難い
さぁ、みんな!オラに元気を分けてくれ!!(感想的な意味で
- 381 名前:肉饅くれなきゃ、悪戯するぞっ!(1/5)[sage] 投稿日:2009/10/31(土) 22:03:10 ID:bYAyxQgk0
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―肉饅くれなきゃ、悪戯するぞっ!―
それは秋の気配も深まりに深まった頃の出来事だった。
「そう云えば……もうハロウィンの時期なのかな?」
「…………??はろ……いん……?」
思わず口を吐いて出てしまった言葉に首を傾げる恋の可愛さはいつも通り。
今日は粗方政務を片付けたから午後が暇となり、さてどうするかと思った矢先に恋に発見され……
――後は御馴染の市へレッツ・ゴー!となった次第。
ちなみにちゃんと財布は取りに戻ってるぞ?無一文で恋と出歩いたら悲惨な目に遭うからな、ウン。
「ははっ、“ハロウィン”ってのは西方の方の御祭みたいなモンでな――」
「…………」
そうやってハロウィンの事を簡単に恋に説明する。
秋の終わり辺りに仮装をした人達が『Trick or treat.』と言って御菓子を貰って回る等々……。
話を聞いている間に無意識なのか恋が首をコクコクさせるのは思わずキュンと来てしまったのは秘密だ。
「――で、『Trick or treat.』って云うのは『御菓子をくれなきゃ、悪戯するぞ』って意味なんだ」
「……御菓子あげないと、悪戯される?」
「実際あげない人を見た事ないからなぁ……別に御菓子でなくても構わないらしいし」
そもそもハロウィンは仮装した人達によって悪霊を驚かせ、退散させるのが目的らしいからな。
仮装して訪ねて来た人達に御菓子をあげるのは悪霊を追い払ってくれた事に対する謝辞の代わりの様なモノだ。
他にも妖精が家の子供を攫うのを止める対価として……って考えみたいに諸説あるみたいだけど。
「…………ご主人様」
「ん?」
「……とりっく、おあ……とりーと」
「…………」
――何と云う学習能力!
先刻ハロウィンを教えたばっかりだと云うのに早速正しい(?)使い方を!!
それに袖を掴んで上目遣いで下足らずな感じで言って来るなんて……応ぜずにいられないっ!
「……ご主人様?」
そこで首まで傾げないで!
- 382 名前:肉饅くれなきゃ、悪戯するぞっ!(2/5)[sage] 投稿日:2009/10/31(土) 22:06:43 ID:bYAyxQgk0
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「ははっ、恋に悪戯されちゃ敵わないからね……そうだな、肉饅とかで良い?」
「……(コクッ)」
そうと決まれば恋の独壇場。幸福感を周りに振り撒きながら馴染みの店へ一直線。
店長も「いらっしゃいませ、将軍様、御遣い様」と挨拶した後に「蒸し立てを!蒸篭に追加入れとけ!」と手慣れたものだ。
直ぐに追加分を準備しなきゃしばらく売り物なくなっちゃうもんなぁ…本当に。
「今日は肉饅を15個に……焼売を20個。後は桃饅頭を10個に――」
恋の目線の先と表情の微妙な変化、後は経験則で注文を告げて行く。
注文を告げる度に店長の背後では熱気と檄を飛ばす声が響き渡る……戦場状態だな、厨房は。
それでも長い時間待つ事はなく、直ぐに注文した品々が紙袋と共に渡されるのは流石と言わざるを得ない。
心なしか店長の顔が清々しく輝いて遣り切った感がする。本当にお疲れ様でした、毎度御世話になってます。
「はい、恋にコレあげる――コレで悪戯されずに済むかな?」
「…………(パアァッ)」
肉饅諸々が入った紙袋を受け取った恋の顔はまさに至福。
もうそれを見ただけで無条件で幸せな気分になってしまうと云う最強武器だ。
「はぐっ、むぐっ、んん……」
「本当、恋には敵わないな」
最早日常風景と成り果てたのか道行く人達は驚愕ではなく笑顔を浮かべて通り過ぎて行く。
最初の頃は何処の大食いの奴だよ、みたいな感じで見られたからなぁ……仕方ないんだけど。
それが今では歩いてるだけでみんなから声を掛けられて食べ物を何かしら貰えるんだから凄い。
そしてその食べてる姿を見てみんなが幸せを感じる事が出来るんだから、恋は本当に凄いと思う。しかも素でやってるから尚更。
「あっ、口元にまた付いてるぞ?」
「んん……ありがと、ご主人様」
そして相変わらず何処かに食べ物を付けてる。でもそこが可愛い!
あぁもう、ほっぺたパンパンに膨らませて……本当に恋は可愛いなぁ。
そんな事を考えながら先刻取った食べ粕を口の中へ入れた瞬間――恋の頬が真っ赤になった。
「何か辛い奴でも齧っちゃった?」
「…………ご主人様、恋の口に付いてたの、食べた」
「……あ」
「…………(ポッ)」
- 383 名前:肉饅くれなきゃ、悪戯するぞっ!(3/5)[sage] 投稿日:2009/10/31(土) 22:09:08 ID:bYAyxQgk0
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無意識に俺は何たる事を!
いや恋とはそりゃ色々とシちゃってますけど!コレはコレで恥ずかしさが違うと言いますか!
そして恋も食べるのを止めて唇を指でなぞらないで!色々と胸の中から湧き上がって来ちゃうから!!
「………………い?」
「え?」
「……美味しい?」
「え、あ、ウン……オイシカッタデスヨ?」
「……良かった」
変に片言な返事になったけど、恋はホッとした様子で再び食べ始めた。
……けど、明らかに気にしてるな。ほっぺた赤いまんまだし、食べるペースも控え目に。
そして極め付けはチラチラとコッチを窺う様にして食べてる……くぅっ、抱き締めて良いですか?抱き締めて良いですか!?
そんな感じで悶えている最中……
――ドドドドドドドドドドドドド……
「ん、何だこの音……はっ!?」
恋と二人っきり!肉饅食べさせてる!何だか幸せ一杯!
このシチュエーションでこの音が聞こえた際に導き出される答えは!?
「ちんきゅーーーーきぃーーーーーーーーーーっく!!」
「甘いわ!」
背後から襲撃ならぬ蹴撃を掛けて来たねねを半身反らす事で回避する。
ふふっ、毎度同じ手に掛かると思ったら大間違いだぜ、ねね!陳宮敗れたり!!
そう勝利を高らかに謳い揚げようとした瞬間――
「――はぶわぁっ!?」
目の前に、星が飛んだ。
着地した衝撃を逃す事無く跳び上がっての後ろ回し蹴りで顎を一蹴。
崩れ行く意識の中で理解出来たのはそこまでであり……
「コレぞ名付けて『追尾型ちんきゅーきっく』なのです!」
得意いげな様子で新技の名前を発するねねの声が聞こえただけだった。
- 384 名前:肉饅くれなきゃ、悪戯するぞっ!(4/5)[sage] 投稿日:2009/10/31(土) 22:11:50 ID:bYAyxQgk0
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“温かい”。
微睡みの中で先ず最初に感じたのはソレ。
次に感じたのは後頭部の辺りに感じる柔らかな感触、そして優しい香り。
再び意識を沈ませそうになる……が、記憶がハッキリしてくる。
完璧に避けたと思った蹴撃、顎に走った衝撃、脳が揺さぶられた感覚……。
「…………んっ、く……」
「あ、ご主人様……」
近くで聞こえる声は恋のモノ。流石は恋、傍に居てくれたのか。
声には心配の色が出ているからな……早く目を覚まして安心させないと。
そして俺はゆっくりと瞼を押し上げて――
「……え?」
――目を、疑う事になる。
「ご主人様、大丈夫?……吐き気、ない?」
心配そうな感情が全面的に浮かぶ顔が良く見える。そう、“良く見えるのだ”。
後頭部に感じる柔らかさは恋が膝枕をしてくれているから。
顔が良く見えるのも膝枕している恋が俺を覗き込んでいるから。
一気に状況を理解した俺の頭は沸騰寸前になる……が、いつまで経っても返答がないと恋が心配するな。
「あ、あぁ……大丈夫。それより此処は?」
「……お城の庭。まだお城の近くだったから……」
明らかにホッとした様子で告げる恋にようやく冷えかけた頭が再度沸騰しそうになる。
取り敢えず何か喋らないと恥ずかしさで死ぬ!
「そっか……本当に迷惑を掛けたね。ゴメン、そしてありがとう……恋」
「(フルフル)……謝るのは、恋の方……ねね、恋の家臣だから」
「あぁ、そう云えばねねの姿が見当たらないな……どっか隠れてんのか?」
「……恋、叱った後……愛紗や星に、連れてかれた……」
「…………」
恋の事だ、あんまり厳しくは叱らなかったんだろうけど……愛紗と星に捕まったとあらばタダでは終わるまい。合掌。
恐らくは地獄を見ているであろうねねの事に思いを馳せていると髪に温かな感触が触れた。
確認はせずとも分かる……恋の指だ。
膝枕の状態で髪を梳いている恋の指をじっと見る。
こんなにも細く綺麗な指で重い戟を握り、戦場で三国無双の働きを見せているなど嘘の様だ。
- 385 名前:肉饅くれなきゃ、悪戯するぞっ!(5/5)[sage] 投稿日:2009/10/31(土) 22:14:36 ID:bYAyxQgk0
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「ご主人様は……」
「ん?」
「ご主人様は……やっぱり、あったかい」
「それを言うなら恋だって温かいよ?それに柔らかくて気持良い」
「(フルフル)……恋、筋肉付いてる……だから、柔らかく、ない」
「まだ言うの?恋は十分柔らかいよ……だからこの膝枕も気持良いんだ」
他の誰よりも優しい心を持っているのに戦場に立たねばならない恋。
本当はのんびりした生活を送るのが好きなのに戟を持って駆けなければならない恋。
こんなにも女の子らしいのに……それに気付けずに日々を過ごすなんて、悲し過ぎる。
だから――
「……恋」
「何、ご主人様……?」
今、コノ平和な刻だけは――
「『Trick or treat.』」
「……恋、何も持ってない」
「ははっ、なら悪戯しないとな?(チュッ)」
「…………(ポッ)」
恋がゆっくりと過ごせる日々を――
その後、恋がみんなにハロウィンの事を話したらしく、行く先々で捕まって何かを買う羽目になったのは言うまでもない。
- 386 名前:星曰く、[sage] 投稿日:2009/10/31(土) 22:18:47 ID:bYAyxQgk0
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以上となりまふ!
そして早速誤字発見!!>>384の8行目、『傍にに居てくれたか』になってるorz
まとめさん、直して頂けると有り難い。
ではでは皆さんのハロウィンをお楽しみあれ!