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965 名前:鬼畜王文台 ◆C6nfqQUYs. [sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:25:32 ID:pOw09BVw0
第七章四節が仕上がったので投下。
今回の第四節は非常に尺が長いです。
20〜25レスほどを予定しております。
966 名前:1[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:26:55 ID:pOw09BVw0

-4-



夏侯淵「華琳様……」

曹操「何? 今忙しいのだけれど」

夏侯淵「はっ、しかしながら、急ぎお耳に入れておきたいことが……
     誰も入れないように、鍵をかけさせて頂きたいのですが」

曹操「いいわよ。 何かしら、言って御覧なさい」

夏侯淵「それが……信じられないことに、孫家の王族の者たちが、
     四名とも建業を出で、はるか北東の絶域、楽浪の地に向かっているようなのです」

曹操「……楽浪? 楽浪って、あの三韓や倭国との玄関口って言われている、
   あの辺境の?」

夏侯淵「……信じて頂けないのは百も承知です。 ですが現に、彼ら一家は
     一万にも満たぬ少数の手勢のみを率い、あの天の御使いといわれている人物ともども……」

曹操「……呉を出た、と?」
967 名前:2[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:27:44 ID:pOw09BVw0

夏侯淵「……御意……その通りです」

曹操「…建業に残っている将は?」

夏侯淵「はっ、陸遜、呂蒙、黄蓋の三名のみであると」

曹操「……明らかに何かの罠ね。 でも変ね…えさにしては上物過ぎるし、
   釣り針してはあからさま過ぎるし……至極不可解ね。
   何を考えているのかしら、あの連中は」

夏侯淵「それだけではありません、もうひとつ…」

曹操「聞きましょう。 言ってみなさい」

夏侯淵「はっ、『呉が、わが国との国境、合肥の南方付近に大規模な陣を敷き、
     魏に攻め入ろうとしている。南方の防衛に時間がかかれば、
     呉が高句麗の軍勢を率いて遼東に進撃し、はさみうちにするだろう』……と」

曹操「なんですって!? ……まずいわね 主だった将が全部楽浪に向かったのは、
   最初から極東の軍勢と手を組んで二方向から同時に進撃するつもりだったからなのね」
968 名前:3[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:28:31 ID:pOw09BVw0

夏侯淵「いかがなされますか、華琳様? このまま放置しておけば我らは二正面作戦を強いられてしまう
     やもしれませんが…」

曹操「そうね…… いいでしょう、出陣するわよ秋蘭。 全兵に伝達。
   私と春蘭と秋蘭、風、それから季衣と流琉は楽浪に向けて進発。
   凪・沙和・真桜・稟は寿春を防衛。桂花は首都の防衛。
   洛陽には必要最低限の兵のみを残して、残りはすべて出撃させるわ。
   親衛隊も出すわよ」

夏侯淵「はっ! ではすぐに軍議の準備を」

曹操「ええ、お願いするわ」

夏侯淵「御意!」



曹操「ふぅ…私が危惧していたとおりね。……江北が荒れてしまったわ」

969 名前:4[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:29:47 ID:pOw09BVw0
ヤツらは、危険だ。
誰か一匹とでもそばに居るだけで、猫科の猛獣の匂いがプンプン漂ってくる。
楽浪滞在中の十日間で、一体どこまでいけるのか。
煌蓮さんが出した課題は、回数ではなく日数だった。

煌蓮『あたしらぁ全員の腹を膨らすつもりでしっかり励みな。
   孫呉の誇りと天の根性、どちらが打ち勝つか……
   これは、孫呉と天の大喧嘩。正真正銘の、戦じゃぁぃ!!
   “当たった”数だけ、お前さんの勝ち星がひとつ増えるってぇこった。
   言っとくけど、建業に帰ったら、亞莎・祭・穏・公孫の嬢ちゃんとの
   第二戦が待っとるから、そのつもりでな。 がーはっははははは』

俺は煌蓮さんから宣戦布告を受けると、
いざ鎌倉ならぬ建業に至る前に、それはもう入念な準備を行ってきた。
まず、滋養強壮に利くマムシ酒。
続いて、こちらも精力増強の効果が名高い蛇のから揚げと、豚のレバニラ炒め。
文字通り完全武装で望む腹積もりだ。

だが、心配して親身になって色々支援くれるこちらの味方は、
比較的おとなしい蓮華と、主に忠実な思春の二人だけ。
あとの連中は皆、獲物が来るのを今か今かと待ち構える、
江東の地に巣くう百獣の王、大虎、山猫、黒豹、サーバルキャットといった、性に飢える猛獣どもだ。
つまり、この大乱交大会に冥琳も巻き込まれたのである。
970 名前:5[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:30:39 ID:pOw09BVw0
まず、彼女たちは、隙あらばいつでも襲い掛かって俺の男根を口にしてもよいという、
とんでもない命令をあのお母さんから言いつけられている。
本日の正午の銅鑼が鳴るのを合図に、戦は始まる。
俺たちが滞在している街役場に備え付けられた水時計を見ると、
そろそろ未の時に差し掛かろうとしているところだ。
要するに、銅鑼はもうとっくに鳴っているので、
俺と奴等との大戦(おおいくさ)はすでに開幕していることになる。
しかし、今のところ、この三人が襲いかかってくる気配はなさそうだった。



雪蓮「ねぇ〜、一刀、おなかすいたー。 お魚食べたーい。
   あ、あと楽浪名物のキムチもね」

一刀「……あれは辛いから勘弁してくれないか? まったく、天のと違ってとにかく滅茶苦茶辛いんだ。
   それにこのあたりの料理って、何だかんだで辛味を前面に押し出したものが多いし」

雪蓮「え〜、それがいいんじゃない〜。ねー、シャオー?」

小蓮「え〜、お姉ちゃんの好みって、なんか、ヘン」

雪蓮「ぶーぶー」

蓮華「はぁ…姉様、いい加減にしてください」

971 名前:6[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:32:07 ID:pOw09BVw0
雪蓮が車椅子をカラコロさせながら、相変わらずぶーたれる。
ちなみにこの前、雪蓮が暴れだして結局車輪が脱輪しかけていて
雪蓮・穏ともども煌蓮さんより大目玉を食らったらしい。
そこで、俺が天の記憶を元に可能な限り忠実に再現した、鉄製の車輪に革の座席、安全ベルトつきという
丈夫な特注品に切り替えられていた。
んで、点滴袋ならぬ牙門旗を立てるための、折りたたみの支柱まで用意されている。
まるでラジオのアンテナのようだ。

雪蓮「それにしても、楽浪の街ってホント、いろんな人がいるわね。
   白い服を着た道士みたいな人に、駱駝に乗ってる行商人に…
   あら、あっちはあれかしら、倭国の人ね。髪を左右で揚巻きにしてるわ」

一刀「倭国!? 倭国って、大和の人か!!? どこだ!?」

蓮華「ちょ、ちょっと一刀!? 声が大きいわよ! 周りの人たちに、変な人だと思われてしまうわ」

一刀「あ…ごめん。 でも俺が大和…蓬莱の出身だってことは話したよな? 蓮華」

蓮華「え? ……えぇ」

一刀「君たち三人だから包み隠さずに言うけれど、正直言って、故郷の地を踏んでみたいという思いは
   無論ある。むしろ、無い方がおかしいかもしれない。
   でもそれとは別に、俺の故郷の民の着ている服装から、
   今のこの世界が、おおよそいつの時代なのかっていうのが、大体だけど予想がつくんだ。
   倭国と大陸との間において時代的な齟齬はないかとか、色々ね」

雪蓮「そう。じゃぁ一刀、ひとつ聞くけれど、もし呉と倭国が戦になった場合、
   今のあなたならどちらの側に立つ?」
972 名前:7[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:33:05 ID:pOw09BVw0

一刀「………!!」

小蓮「お姉ちゃん……!」

蓮華「姉様っ、それは…!」

雪蓮「あなたたちは黙ってなさい。 で?どうなの一刀」

一刀「……少し、考えさせてもらって、いいか?」

雪蓮「構わないわ。 その代わり、今この場で答えを出しなさい」

一刀「……分かった」



雪蓮のその目が、性のそれではなく、敵としての獲物を狩る目へと変わる。
はっきり言って、雪蓮の出した質問には、非常に答えにくい。
俺としては、『その時になってみないと分からない』と答えたいところだが、
雪蓮はそれを認めてはくれないだろう。
冥琳あたりに、即断できぬ軍師など呉には不要だと斬り捨てられるのがオチだ。
俺はいまや、呉の一将軍だ。天譴将軍などと呼ばれている身である。
故郷の地を踏んでみたいというのは、俺の一個人の身勝手な願いだ。
もし勝手に建業を出奔でもしたら、首と胴体が離れた形で倭国の地を踏むことにでもなりかねない。
仮に許しが出たとしても、「次に会った時はお互い敵同士」などと言われる可能性も捨てきれない。
今、俺の目の前に対峙している雪蓮だったら、まずそう言ってくる可能性は非常に高い。

ならば、答えはただひとつ。
973 名前:8[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:34:05 ID:pOw09BVw0

一刀「……俺は呉の忠臣だ。俺個人の身勝手な欲のみで呉を出ることはできない。
   俺は今や、孫呉の地に住む民を守る一将軍だ。
   ならば、俺は迫りくる大和の軍勢に対しては、たとえ相手が同朋の民だったとしても、
   俺は、今ある自分の知識を、君たち孫呉のために使う所存だ」

悲壮な決意とともに、俺は三人にそう告げた。
今の俺の心の中にあるのは、ただただ、悲哀の二文字だ。


蓮華「一刀、あなた… 姉様、あんまりです! 一刀を困らせるような姉様は姉様などではありません!!
   撤回を要求します! そして、その手の質問は今後一切しないと
   孫呉の名において誓約してくださいっ!! 我ら孫呉はそのような国ではありません!!!」

小蓮「そーだよお姉ちゃん! 一刀、泣きそうな顔してるじゃない!
   そんな意地悪な質問なんかしちゃダメッ!!」

974 名前:9[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:35:26 ID:pOw09BVw0

雪蓮「分かった、分かったから、そんなに怒らないでよ二人ともー」

蓮華「孫呉の名において、その問いを以後封すると誓いますか!?」

雪蓮「誓う! 誓うからぁ〜 許してよぉ二人ともおおぉぉ〜〜」

蓮華とシャオの剣幕があまりにもすごかったので、思わず雪蓮は俺に向かってペコペコと謝る。
俺は苦笑いしながら、雪蓮の謝罪を受け入れていた。

雪蓮「それにしても、一刀もやるわね。あーんなえげつない作戦を思いつくなんて、
   あなたも母様と同じ、とんだ鬼畜ね」

一刀「仕方ないさ。あの時は本当、雪蓮を失う悲しさとか悔しさとか恨みでいっぱいだったし、
   いつかこの借りは必ず返してやるって思ってた。それに俺は、もう二度とあんな悲しい思いはしたくない。
   冥琳に、『自分たちが犯したことが一体どういう意味を持つのか、
   その犯した罪によってどういう罰が下るのか、あの者たちに身をもって分からせてやるのが、
   軍師そしてのお前の務めだ。 我ら孫呉一同、お前の策に期待しているぞ、北郷よ』 なんて言われちゃったらね」
975 名前:10[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:36:25 ID:pOw09BVw0
俺の考えた作戦はこうだ。

まず、俺と雪蓮が建業にこもっている間に煌蓮さんは、曹操ら魏と対抗する力を蓄えるべく
広州の南征に力を注いでいた。
南方制圧後、煌蓮さんには韓当という将に、率いていた二十二万を建安に留め置かせ、
残りの八万でそのまま建業に戻ってもらった。
あの人は高句麗の出身で魯粛さんの部下だった人らしい。遊牧民らしく騎馬と弓にめっぽう強いのが売りだ。
今は祭さんの部下に昇進している。

そして、俺たちは北東の絶域、楽浪に向かい曹操に大きな隙を見せ付ける。
祭さんには、烏江に形ばかりの大規模な陣地を築かせ、
「呉軍が合肥に攻め入ろうとしている。楽浪方面と同時作戦で遼東に侵攻し、
魏を挟み撃ちにするつもりだ」という流言をばら撒いた。
次に、祭さんが合肥に、これも形ばかりの進撃をかけてもらい、
釣ってきた曹操軍を、建業侵攻組と南方侵攻組とに分ける。
976 名前:11[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:37:51 ID:pOw09BVw0
そして、建業防衛には穏。新都から南方の建安、
さらに南の臨賀まで敵を釣り出すのは祭さんと亞莎にやってもらう。
しつこく逃げまくる祭さんと亞莎に、曹操軍は日ごと消耗し、やがて彼らの内に疫病が流行るはずだ。
彼らは北方の民族だ。南方の暑さは苦手であり、その中で常に追撃しながらの消耗戦はさらに苦手なはずだ。
そして逃走の際の道中で、みんなで探して集めておいた、あの大量の毒草が役に立つ。
あの後さらに兵たちに、硫黄と鉄粉と泥炭を運んできてもらった。
それらを兵たちにこね合わせてもらい、奴らにそれを投げつけて、くしゃみ鼻水咳を患って頂く。

連中は毒煙と鼻汁と止まらない涙に悩まされ、ろくに武器も震えぬまま士気は一気に低下するだろう。
その隙を突いて、韓当さん率いる二十二万の突撃部隊が建安を過ぎた逃走部隊をひそかに後方から追撃し、
桂陽の地で魏の軍勢を丸かじりにしてもらう。
追撃隊全滅の報に驚いた攻城部隊は、建業から大慌てで軍を退(ひ)いてくるはずだ。
そこで攻守反転、毒を塗ってある弓矢や槍で確実かつ一気に曹魏を蹴散らし、
そのまま寿春方面と遼東方面の二正面から許昌になだれ込んで予州以東を丸ごと分捕り、
ついでに徐州にいる劉備や関羽も同じ毒草作戦ですべからく生け捕りにしてしまう。
977 名前:12[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:38:59 ID:pOw09BVw0
草の報告によれば、劉備軍の主だった将は、関羽・張飛・諸葛亮・鳳統・呂布・陳宮の六人のみだという。
なぜあの名将といわれる趙雲や黄忠といった者たちが含まれていないのかが気になるが、
敵が少ないに越したことはないので、これは好機と見るべきだろう。

一方の楽浪においては、ここ最近の度重なる不可解な事件に対し、
曹操自身もかなり神経質になっているはずだ。
俺たちが楽浪に駐屯している間、今まで散々呉によって風を送られ続けているので
いい加減痺れを切らし、この俺や孫一家との直接対決に臨むべく、
必ず魏の管轄外の楽浪まで侵攻してくるはずだ。

そして、痺れを切らして楽浪までのこのこと大群を率いてやってきた曹操の本隊を、
南方は魯粛さん率いる韓の軍勢であらかじめ進路をふさいでおき、
東方の峡谷も歳の民兵で固めさせ、、
北方には楽浪までやってきた後、高句麗の軍勢で後ろから逃げ道を完全に塞いでしまう。
残るは海路のみとなるが、これも魯粛さんの伝で、卑弥呼という人物が
倭国から水軍を率いてやってきてくれるらしい。
この時点において曹操軍は八方塞となり、逃げることも進撃することもできなくなり、
よもや全滅か降伏のみかという決断を迫られることになるだろう。
978 名前:13[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:39:34 ID:pOw09BVw0
これが俺の考えた策だ。 そして、これを聞いた冥琳は開口一番、

冥琳『北郷よ……私は時々、お前をとても恐ろしく感じるよ。お前が呉の忠臣で本当に良かったと思っている』

と、頭を下げられてしまった。 雪蓮の場合はというと、

雪蓮『すっご〜い、一刀、もしかして冥琳以上に頭いいんじゃない?』

とべた褒めされた。 そこでお母さんのコブシが炸裂!!

ゴスッ!!

煌蓮『まったくいつもいつも、この馬鹿娘は…勘ばっかりに頼らないで少しは坊主を見習ったらどうだい?』

雪蓮『うえぇ〜〜ん だぁって、これがあたしのやり方だったんだもん、仕方ないじゃなーい
   そうだよねー、か〜ずとー』
979 名前:14[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:40:16 ID:pOw09BVw0

そして、その夜………



ゴスッ!!



煌蓮「グウゥゥゥバルルルルルアァァァーーーッッ!! こんんんの 馬っっっ鹿娘ええぇぇぇぇぇ!!!!!
   あんんんれほど、坊主を困らせるなって言ったじゃないか!!?? ダアァァホウゥッッ!!!
   お前は罰として、今日から四日間、夜伽抜きぃ!!!
   いいね!!!?」

一刀「ふぁ……煌蓮さん……」

煌蓮「坊主はお黙りっっっ!!!」

980 名前:15(終)[sage] 投稿日:2009/09/26(土) 00:42:03 ID:pOw09BVw0

一刀「はっ、はひぃっっ!!」

雪蓮「うえぇぇぇ〜〜ん、みんなのいぢわるうぅ〜〜〜 グレてやるううぅぅ〜〜〜」

迅雷「グウゥゥルルルルルオオォォゥゥ……(周々と交尾中)」

周々「ガルルルルルル………」

孫呉の虎が四頭、満月の夜に吼えていた……。



第七章四節終了  五節に続く


以上です。
ありがとうございました。

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