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832 名前:風鈴 ◆VOACf8e.7. [sage] 投稿日:2009/06/12(金) 03:39:15 ID:8jpL5FI20
──真√──

真・恋姫†無双 外史
北郷新勢力ルート:Interlude6


いったいいつまで規制なのか?というわけで、いつもの様に専用UP板に挙げさせて頂いております。
何とも桔梗さんの口調が怪しい感じですが、多めに見て下さると嬉しいです。
それでは、本作における共通の注意事項をいくつか。

・オリジナルルートの為、登場人物同士の呼び合い方が、原作とは異なるものがあります。
  例)風→一刀=原作:お兄さん・本作:ご主人様
    ※独自の呼び名は、そのキャラのイメージによりますので、人によっては違和感を感じるかもしれません。
・エロ成分は極薄……もとい皆無です。
・北郷一刀の立ち位置、作品内にて歩んだ道筋により、『天の御遣い』と言う名の持つ影響力は、原作より強くなっています。
・原作にてセットになっているものを崩す傾向にあります。
  例)張三姉妹→人和  北郷隊三羽烏→凪
・本作にはご都合主義成分が多分に含まれております。用法、用量を守ってお読み下さい。


URL:
http://koihime.x0.com/bbs/ecobbs.cgi?dl=0299


今回は前回の拠点?の直後の内容。
良く考えたら、拠点から直接本編へ繋がったはこれが初めてですね。
……まぁ本編といってもInterludeですが。
そして内容が短すぎるのはご愛嬌……
兎にも角にも、気が向きましたら、お付き合い下さいませ。



──真√──

真・恋姫†無双 外史
北郷新勢力ルート:Interlude6

**

「……お久しぶり、桔梗」

 梓潼太守・厳顔が、己が真名を呼ぶその声を聞いたのは、城壁上から市街を見渡している時だった。
「紫苑か?……まったくもって久しいの。……一年振りぐらいか?」
 そう言いつつ振り向くと、そこには予想通りの人物が、娘を連れ立って立っていた。
「……来てくれた……と言うことは、わしの話を受けてくれたと取ってよいのじゃな?」
 厳顔の問いかけに、黄忠は「ええ」と頷くと、彼女に並んで立って城下を見下ろす。
「漢中は賑やかだったけれど……此処はのんびりしていて落ち着くわね。
 此処だけを見ていると、まるで乱など起きて居ないみたい。……流石は桔梗、と言うところかしら」
「そう言うてくれるのは嬉しいがな。いろいろとせっつかれておるよ。
やれ兵を出せ、糧食を出せ、金を出せ……まったく、上の連中は勝手を言ってくれるわ。
 ところで……漢中に寄って来たのか。……かの街の様子はどうであった?」
「そうね……昔からそれなりに活気のあった所だったけど、それでも今に比べたら、
雲泥の差に感じるくらいかしら」
 黄忠の言葉に、厳顔は「ほぅ……」と溜め息混じりの吐息を漏らす。
「それほどとは……こちらとは大違いだの」
 今度は黄忠が、厳顔の言葉に険しい顔をした。
「文にも書いてあったけど、そんなに酷いの?」
「うむ。……十日ほど前、とうとう劉焉様が亡くなられてな。
 病に伏せっておられた頃から続いている跡目争いが、一層激しくなりおったわ」
「そう……では私達は私達で、できる事をやりましょうか。とりあえずは、民心を落ち着かせることかしらね」
「……そうじゃな。だが……頼んだわしが言うのも何だが、本当に良いのか?
紫苑であれば、他にも引く手あまたであろうに」
 そう申し訳無さそうに言う厳顔に、黄忠はゆっくりとかぶりを振る。
「気にしないで、桔梗。親友のたっての頼みだもの」
 黄忠のその言葉に、厳顔は「そうか……」と呟き、自分の我侭を聞き、
夫を亡くしてからの隠遁生活から脱して、態々益州まで来てくれた親友へ、感謝の意を述べた。

 その後しばらく、互いの今までの状況を語り合った後、厳顔は漢中での出来事を聞き、思わず破顔する。
「ほほぅ……璃々が嫁に行きたいと言う程の人物か。それは是非一度逢うてみたいものよなぁ。
 して紫苑、その者の名は?」
 厳顔にそう訊かれたところで、黄忠の動きが止まった。
「………………あら?」
「紫苑、お主もしや名を聞き忘れたか?……らしくないのう」
 厳顔の言葉に「困ったわね……」と頷く黄忠だったが、その時、クイクイと服を引かれているのに気が付いた。
「どうしたの、璃々?」
「お兄ちゃん、『ほんごーかずと』っていうんだって」
 唐突に言った璃々の言葉に、二人が驚いた顔を見せる。
「はっはっはっ!璃々の方がしっかりしておるではないか?
 ……それにしても、北郷一刀とはのう……」
「知っているの、桔梗?」
「うむ、噂ぐらいはな。……紫苑も聞いたことがあると思うぞ?
 『天の御遣い』……と言えばわかるであろう?」
「……!……そう……あの人が……」
 きっと、北郷一刀の顔を思い出しているのであろう。
 少々呆っとしつつ言う黄忠の様子を見て、厳顔はニヤリと笑うと、
「して紫苑よ。本当に良かったのか?」
 その唐突な再三の問いかけに、黄忠は訝しげな顔を向けた。
「いやなに、将来の婿殿の所の方が良かったのではないかとな?」
 それに対し、黄忠は厳顔へとにっこりと微笑み返し、
「……それは確かに魅力的ね。璃々の件もあるし……あっちに行こうかしら?」
「ぬっ……」
「くすくすっ……冗談よ。残念ながら、一度引き受けたことをそう簡単に反故に出来る人間ではないわよ?」
「ふんっ……解っておる。冗談で言うただけじゃ」
 黄忠に諭すように言われ、少々憮然と、拗ねたように言う厳顔に、くすくすと笑いかける。
「それで、私はどこに行けば?」
「うむ。……とりあえずは江州に行ってもらいたい。……亡き劉焉様の信任状を渡しておく」
「ええ、確かに」
 黄忠はそれを懐へとしまうと、もう一度城下を眺めた。
 厳顔もそれに習い、街を見下ろしつつ、ぽつりと呟く。
「世は既に大乱の様相を呈していると言うに……やつらはいつまで下らぬ諍いを続けるのか。
…………紫苑よ、念のため、いざと言う時の心構えはしておくようにな。
その相手の見極めは……主に任せるよ」
 最悪は、上の連中を見限る──そんな意味を含んだ言葉に、黄忠は静かに頷いて、空を見上げる。

 そこにはまるで、この益州の地を表すかのような、先の見えぬ暗雲が立ち込めていた──。

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