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39 名前:朱里曰く、[sage] 投稿日:2009/05/06(水) 23:31:11 ID:59vA5djQ0
猫耳頭巾で顔隠した気になってる桂花可愛いw

さて連休最後を偲んで桃香
キャラ的に誰得感満載ですが
数は5レスほどで
40 名前:折鶴 1/5[sage] 投稿日:2009/05/06(水) 23:32:44 ID:59vA5djQ0
「うーん、美味しかったぁ」
 季衣が満足そうな笑顔を浮かべた。
 今日の彼女は休日を利用して洛陽の街の散策を楽しんでいた。
 もっともその殆どは新たな名店発掘のための食べ歩きに費やされるのだが。
「あのお店はラーメンが最高だったなぁ。スープが良いんだね」
 独り言を言いながら往来を歩く。
 良い店を見つけたと言う達成感が季衣の気分を高揚させていた。
「さて、と。次はどのお店に入ろうかな〜?」
 飽くなき探究心と底なしの胃袋で次の標的を狙い定めようと通りを見回す。
 と、よく見知った人間の姿が視界に入った。
「あれ?兄ちゃん?」
 警備隊の鎧に身を包んだ一刀が、数人の子供達に囲まれて何かをしていた。
「おーい、兄ちゃーん!」
 ブンブンと手を振って呼びかける。
 一刀の方でも気付いたらしく軽く手を振って応えた。
「兄ちゃん、何やってるの?」
 近寄って声を掛ける。
 一刀は小さな紙を折っていた。
 それを覗き込む子供達が殆どが女の子である事に気付き、季衣は複雑な表情を浮かべた。
「兄ちゃん、幾らなんでもこの子たちにまで手を出すのはどうかと思うよ?」
「ぶ────っ!!」
 一刀が盛大に噴き出した。
「ば、馬鹿!そんな事する筈無いだろ!」
「えー、でもボクや流琉にだってあんな事したんだし、もうちょっと小さい子にだって兄
ちゃんなら……」
「お前は俺を一体何だと……?」
「魏の種馬」
「だぁーっ!その呼び方は止めてくれ!どうせ桂花辺りが広めたんだろうけど──って、
嘘だから!誤解だから!逃げなくても大丈夫だから!」
 子供達の一人がませた性格だったらしく、一刀と季衣の会話の内容を理解したようで、
一刀に不審な視線を投げ掛けながら友達の手を引いて後ずさっていく。
「そんなに怖がんなくても大丈夫だよ。兄ちゃんならきっと優しくやってくれるから」
「だから何もしねぇって!大体あれは季衣たちの事が好きだからやったんであって、手当
たり次第に手を出しまくってるわけじゃないんだぞ?」
「あっ……」
 季衣の顔がみるみる紅く染まる。
「あの、あの、えと、そ、そだ!兄ちゃんさっきから何してたのさ!?」
 あまりに強引な話題のすり替えに一刀が苦笑する。
 自分は直情的な割りに意外と直球には弱い辺り、彼女の慕う春蘭と通じる物があった。
 可愛らしい照れをもう少し弄りたかったが、やり過ぎると拗ねてしまう。
 以前それで季衣が機嫌を直すまで延々奢らされた経験がある一刀は、素直にその話題転
換に乗ってやる事にした。
「これは折り紙って言ってな、俺の居た国での遊びさ」
「兄ちゃんの国の?」
「ああ。俺の国での女の子の遊びを教えてくれって訊かれたんだけどさ、そんなの俺もよ
く知らないからな。これは厳密には女の子の遊びって訳じゃないんだけど、俺に教えてく
れたのが親戚のお姉ちゃんだったんだよ」
 説明しながら手の動きを再開する。
「ここをこうして……。これを、こう……。んで、こうすると……。ほら、出来た」
 一刀が手のひらを見せると、そこには一羽の鶴が翼を広げていた。
 子供達から歓声が上がる。
「うわぁっ!何これ、凄い、どうやったの!?兄ちゃん、ねねねボクにも出来る?うわぁ、
凄い凄い、ボクにも教えて、ねぇねぇねぇねぇl!」
「お前食いつきすぎだろ、季衣。少し落ち着け。──ほら、もう一回やるからよく見てろ」
 一番興奮してる季衣に半ば呆れながらも、一刀はもう一度ゆっくりと鶴を折り始めた。
 食い入るようにして見つめる季衣を微笑ましく感じながら、一刀はもう一羽鶴を折りあ
げた。
「ほら、季衣もやってみるか?」
 紙を一枚手渡すと、季衣がおずおずと受け取った。
 それを皮切りに、他の子供たちも次々に手を出してきた。
41 名前:折鶴 2/5[sage] 投稿日:2009/05/06(水) 23:33:44 ID:59vA5djQ0
 一人ずつに紙を手渡してやると一斉に折り始める。
 季衣も子供たちに混じって折っているが、元来細かい作業が苦手なだけに悪戦苦闘して
いるようだった。
「兄ちゃん、出来たよ!」
 ようやく折り終えたらしい季衣が、誇らしげに一刀へ見せる。
「うっ……」
 しかしそれはお世辞にも上手な出来とは言い難く、鶴と言うより身体の捻じれた魚か何
かの様に見えた。
 考えている事が顔に出てしまったのか、季衣が表情を曇らせる。
 その悲しそうな表情に一刀の胸がチクチクと痛んだ。
「だ、大丈夫だって!最初からそんなに上手く折れる奴なんて居ないから!」
 しかし直後に、
「出来た!」
「私も私も!」
「私のも見ーてー!」
 次々と子供達が出来上がった折鶴を一刀に見せる。
 そのどれもが季衣の折った物より上手だった。
「やっぱりボクだけ下手っぴだったんだ……」
 益々季衣がしょげ返る。
「ま、待て、季衣!」
 しょんぼりした表情で立ち去ろうとする季衣を、一刀が思わず呼び止めた。
「なあ、上手く出来なかったんなら練習すれば良いんだよ!ほら、流琉だって最初から料
理が上手だった訳じゃないだろ?一回で諦めるなんて季衣らしくないぞ。練習するなら俺
が教えてやるから」
 何とか季衣を慰めようと一刀が必死で言葉を紡ぐ。
 その気持ちが通じたのか、季衣の表情がパッと明るくなった。
「ホント!?ホントに兄ちゃんが教えてくれるの!?」
「ああ、勿論仕事の無い時に限るけどな」
「うん!」
 その日から暫く間、一刀の部屋に入り浸る季衣の姿があった。
 一刀が季衣に折り紙を教える様になって数日目の事。
「に、兄ちゃん、これ、どう……?」
「ん?どれどれ──」
 おずおずと季衣の差し出した鶴を手に取った。
 ピンと広げられた翼といい、真っ直ぐ伸びた首や尾羽といい、今にも羽ばたき出しそう
な見事な出来栄えだった。
「うん、よく出来てる。凄く上手になったじゃないか、季衣」
「ホント!?」
 季衣の表情がパァッと明るくなった。
「ああ。これで千羽鶴なんて折ったら、さぞかし見栄えが良いだろうな」
「せんばづる?」
「俺の国では願いを込めて折鶴を千羽折るって言う風習があるんだよ。例えば誰かの病気
が治って欲しい時とか、試合や競争での必勝を祈願してとか。後は離れ離れになる人に、
また何時か逢える時まで元気で居てくださいって気持ちを込めたりな」
「ふーん。じゃあボクも千羽鶴、折ろうかな?」
「季衣のお願いって言うと美味しい物を沢山食べられますように、とかか?」
「もう、兄ちゃんボクそんなに食べ物の事ばっかり考えてないよぉ」
 季衣がぷーっと頬を膨らませる。
「ハハハ、冗談だって。で、ホントの所はどんなのなんだ?」
「うーん、やっぱり何時までも皆と一緒に居れます様にって、かな?華琳様も、春蘭様も、
秋蘭様も、流琉も、桂花や他の皆も、そして兄ちゃんも。皆とずっと一緒に仲良くね」
 そう言って笑う季衣の姿に、一刀もその想いが叶う事を共に願わずにはいられなかった。
 
42 名前:折鶴 3/5[sage] 投稿日:2009/05/06(水) 23:35:15 ID:59vA5djQ0
「逝くの?」
 華琳がぽつりと呟く様に問い掛けた。
 一刀が頷く。
 魏による大陸制覇とその後の三国同盟締結による戦乱の終結。
 それらを祝う宴の席をそっと離れ、一刀と華琳は共に夜空を仰いでいた。
 歴史の流れを捻じ曲げて、覇王曹孟徳の悲願を助けた異邦人。
 彼に対してこの世界が科した代償は、自身からの追放だった。
 蒼く光る月明かりに照らされ、二人の傍を流れる川の水面がキラキラと輝いていた。
 幻想的とも呼べる光景の中、二人は出会ってからの様々な想い出を語り合った。
 華琳と出会い、拾われた。
 首を刎ねられかけたりもした。
 やがて、愛し合い。
 終生を共に過ごすと誓った事もある。
 そして今、別離の刻を迎えようとしていた。
 不意に川面に映る一刀の姿が、淡い光に包まれる。
「待ちなさい!」
 光の中、その姿を薄れさせていく一刀を、華琳が鋭い声で呼び止めた。
「まだ、ダメよ!あなたには、他に別れを告げなくてはならない相手もいるでしょう!」
「華琳?」
「魏の種馬と呼ばれたあなたの事、心当たりは多いのでしょうね?その全員に別れを告げ
る暇などありはしないでしょうけど、あの子にだけは自分の口から別れを伝えなさい」
 言って華琳がある方向を指差した。
 微かに震える指先を辿ると、そこには春蘭と秋蘭に付き添われた季衣の姿があった。
「季衣……」
「兄ちゃん、これ見て!」
 季衣が両手を掲げる。
 その手には色取り取りの折鶴が繋がれていた。
「ボク、ちゃんと千羽折ったよ!皆と一緒に居れます様にって!兄ちゃんとずっと一緒に
居れます様にって!だから、だから──」
 季衣は顔を涙と鼻水でグシャグシャにしながらも、一刀を想って必死に叫ぶ。
「だから逝かないでよ、兄ちゃん!ボク達と何時までも一緒に居てよ!」
 幼い妹のように思っていた少女の直向な愛情に喜びを感じ、彼女のこの先の成長を見守
れない事に対する寂しさに包まれる。
 二つの感情が混ざり合い、言葉を思う様に紡ぎ出せぬまま、一刀はただ微笑んだ。
 その姿が一層希薄になる。
「待ってよ、兄ちゃん!」
 季衣は思わず駆け出していた。
 同時に華琳も一刀の傍を離れ、一人歩き出す。
 季衣とすれ違う瞬間、華琳は小さく唇を噛み締め、その足を速めた。
 春蘭達がその後を追う。
43 名前:折鶴 4/5[sage] 投稿日:2009/05/06(水) 23:36:11 ID:59vA5djQ0
「華琳様……」
 小さく震える背中に、秋蘭が声を掛けた。
「なぁに、秋蘭?私が泣き崩れるとでも思った?フン、だとしたら残念ね。私は私の物に
ならない者には興味が無いの。一刀なんか、精々季衣と別れを惜しんでいればいいわ」
「ですが……」
「もう止せ、秋蘭」
「姉者?」
「去り逝く者を追い求めても仕方あるまい。北郷が華琳様の下から居なくなると言うので
あれば、我等があやつの分まで忠誠と愛情を持って華琳様にお仕えすれば良いのだ」
「そうよ、秋蘭。春蘭の言うとおり。それに私は、居なくなる者に何時までもかかずらっ
てはいられないの。私は、王なのだから」
「そう、か……。そうですな」
「やるべき事は沢山あるわよ。これから素晴らしい国を造って、その場に居ない事を一刀
に悔しがらせてやるのだから。春蘭も、秋蘭も、それまで私に全霊を持って仕えなさい」
『御意!』
 華琳が頷いた。
「ですが華琳様。今宵だけは飲み明かしませぬか?」
「秋蘭の言うとおりです。この一時くらいは王である事を忘れ、去り逝く友≠偲んだ
とて問題はありますまい」
「……そうね。それも悪くないわ」
 一瞬華琳が一刀と季衣に目を向けた。
「では、行きましょう、二人とも」
 振り向いた華琳の頬が、一筋月明かりに照らされ輝いていた。
 一方季衣は、一刀の前に立ち尽くしていた。
「逝かないで……。逝かないでっ!!」
 それだけを叫びながら季衣が一刀に向かって両手を伸ばす。
 既に一刀の身体は、人の形をした微かな光の集まりの様になっていた。
 季衣が身を投げ出すようにして飛びつく。
 身体を優しく抱き止められ、回した腕には幾度も感じた温もりが伝わった。
 そして──次の瞬間、その全てが掻き消えた。
「兄……ちゃん……?」
 虚空を抱く自分の腕を見つめながら、季衣が小さく一刀を呼んだ。
 それに応える一刀の声は無い。
「兄ちゃん……。兄ちゃんっ!」
 激しい感情の流れが、季衣の小さな身体を駆け巡る。
「兄ちゃん!兄ちゃん!!兄ちゃぁぁ──────ん!!」
 一刀を呼ぶ季衣の声が、何時までも木霊していた。
 
44 名前:折鶴 5/5[sage] 投稿日:2009/05/06(水) 23:37:15 ID:59vA5djQ0
 大陸に平和が訪れてから数年が経った。
 相変わらず華琳の親衛隊を率いる季衣も、美しく成長していた。
 あどけなかった顔つきは大人びた美貌と変わり、身長は伸びて春蘭と比べても遜色が無
いほどである。
 特に胸などは真桜に匹敵するのでは、と思われるほどに育っており、桂花や流琉達貧乳
同盟からは裏切り者との謗りを受けていた。
「あーあ、疲れた〜」
 久々の春蘭との手合わせに心地よい疲れを感じながら、季衣は部屋に戻るなり寝台に倒
れ込むように寝転がった。
 ふと横の壁に目を向ける。
 そこには色褪せて古ぼけた千羽鶴が掛けられていた。
「兄ちゃん……」
 ぽつりと呟いた。
 と、いきなり部屋の戸がドンドンと叩かれた。
「許緒将軍、ご在室ですか!?」
 親衛隊の一人の声だった。
「何?何かあったの?」
「陳留から少し離れた所を彷徨っていた不審な男を捕らえたので調べてくるように、と」
「ち、陳留ぅ〜!?」
 彼女の今いる場所は洛陽である。
 わざわざ陳留まで、しかも親衛隊長である季衣が一不審者の取調べに向かうなど通常な
らあり得る事では無かった。
「それって何かの間違いじゃないの?大体ボクが取り調べなんて出来ると思えないよ」
 身体こそ成長した季衣だったが、頭の方は彼女の慕う春蘭譲りの武辺者だった。
「私も典韋将軍の方が適任なのではないかと思ったのですが、その男の風貌を聞いた曹操
様が直々に許緒将軍を赴かせるように、と」
「どう言う事?その人、どんな人だったの?」
「何でも白くてピカピカ光る面妖な服を纏った若い男と──」
 兵士が言葉を終える前に季衣は部屋を飛び出していた。
 神速の張遼騎馬隊もかくやと思えるほどの速さで城内を走る。
 城門近くに着くと、既に数人の部下が準備をしているところだった。
「あっ、将軍!何時でも出発出来──」
 言い掛けるのを無視して一頭の馬に跨る。
 馬腹を蹴ると一気に駆け出した。
「ちょ、将軍、お待ちください!」
 慌てて後を追う部下達に目もくれず季衣がひた走る。
(還って来た、還って来た!)
 両目に涙を滲ませながら、長く伸ばした髪を靡かせ、ただただ走り続けた。
 途中で幾度も馬を替え、半月は掛かる筈の道程を三日で駆け抜けた。
 陳留の街に入るや否や馬を乗り捨て、不審者が囚われていると言う城の一室に駆け込む。
「季衣か?綺麗になったなぁ。ってかこっちではそんなに時間が経ってたのか。俺の世界
じゃ、まだ一年くらいしか経ってなかったのにな」
 男が親しげに声を掛けてくる。
 以前と全く変わらぬその姿を見た瞬間、季衣は彼の胸に飛び込んでいた。
「おかえり、兄ちゃん!」
 泣きじゃくる季衣を優しく抱きしめ、一刀が一言口にした。
「ただいま、季衣」
 と──
45 名前:朱里曰く、[sage] 投稿日:2009/05/06(水) 23:43:24 ID:59vA5djQ0
以上です
ゲームの魏√が華琳個別EDって感じだったのでこれは季衣個別EDを意識してみました
またネタが浮かんだら他のキャラの個別EDも書いてみたいと思ってます
レス毎に文章の長さがまちまちなのは4レスで収めるのにほんの数行足りなかったためいっそ文脈重視で区切る事にしたからです
外史スレへの転載はして頂けるとありがたいのではありますが、投稿可能行数の違いで結構面倒くさいと思いますのでその辺気にしないで下さる方が居ましたらお願いします

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