[戻る] []

951 名前:小ネタ[sage] 投稿日:2009/05/03(日) 17:07:19 ID:D86pEbAo0
「嫌ぁぁっ!だ、誰か助けて──っ!」
「へへっ、諦めな!こんな街道からも外れた場所に都合よく助けなんか来ねぇよ!大人しくすりゃ優しくしてやるってんだよ!」
 いかにも野盗然とした輩が若い娘を追いかけていた。
 男達の言うとおり、普段なら旅人も通らないような山道であるのだが──
「待てぃっ!」
 突如轟いた怒声に男達の動きが止まった。
「チッ、誰だ!?」
 辺りを見回す。
「アニキ、あそこ!」
 一人が指差すと、そこには大剣を背負った美女の姿があった。
「夜空の星が輝く影で、悪の笑いが木霊する──」
 朗々と声が響き渡る。
「ひ、昼間なのに何言ってんだこいつ……?」
「黙って聞けぃっ!」
「ヒィッ!?」
 彼女の迫力に押され男達の声が止まった。
「ゴホン……。夜空の星が輝く影で、悪の笑いが木霊する。街から街に泣く人の涙背負って地上の始末。魏武の大剣夏侯元譲、お呼びとあらば即参上!!」
 口上を終えた春蘭が跳んだ。

「で?あれは何?」
「いや、あいつ前に俺が張三姉妹に教えたギャラクティカって言葉気に入ってただろ?あの後もっと他に何か無いかって聞かれてな。色々と記憶の中から引っ張り出してアレンジしたりしながら考えたらあれに落ち着いた」
「あれんじ……?まあ良いわ。とにかくあれは一刀が教えたのね?」
「ん、まあ、そう言う事になるな」
「ならばあなたがしっかりと言い含めておきなさい。戦の時にはあの口上を禁止すると」
「え?ダメなのか?」
「当たり前でしょう!私の旗を掲げて戦うのよ!?あんな三文芝居みたいな口上述べられたら、恥ずかしくて道を歩けなくなるわよ!」
「…………まあ、そうかも」
「もし次の戦で春蘭があれを言ったら、一刀もお仕置きを覚悟しておきなさい」
「うへぇ……」
 一方で春蘭の姿に目を輝かせる者もいた。
「うわぁ、春蘭様格好良い!」
 そしてそのキラキラした眼差しで今度は一刀に目を向ける。
「兄ちゃん、ボクも……」
「えーと、その……。──あの、華琳さん?」
「さあ、私は知らないわよ。あなたが責任を持って相手をなさい。但し、季衣を悲しませる事のないようにね?」
「なら実戦では……」
「無論禁止」
 その後春蘭と季衣を説得するのに、一刀は一晩掛かったと言う。

 [戻る] [上へ]