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430 名前:とある外史の再始動?(1/2)[] 投稿日:2012/05/31(木) 02:32:50.07 ID:rC2507lg0

 とある外史が…その生をまともに全うすることなく散りかけた…そんな危うい時から数ヶ月。
 長らく静かな時が流れていた地に足音が響き渡る。
 月光に満たされた大地にヌッと一つの影が差し込む。
 それは人……それも少年から青年へと変わりつつある頃合に思える。
 彼が身に纏う服は要所要所に汚れも見えるが、月の灯りを受けて、輝いている。
「…………こんなところに」
 疲れた空気を漂わせながら、青年は……銅鏡へと触れる。
 彼を再び外史へと引き寄せた銅鏡。それが今、眼前にある……そのことを何度も瞬きをして、確認し直す。
「やっと……俺は……」
 最後の方は何と言ったのかわからないほど小声になる。その時、銅鏡が光り、うっすらと人影が映り込む。
 それは銅鏡の前にある青年の顔には似ても似つかない。凛々しくも可愛らしい顔。
「――と、――ずと」
「え? 嘘……だろ」
「一刀っ!」
 呆然とする青年の名前を人影が呼ぶ。それは、紅がかった髪を後ろで結わえた一人の少女。
 普段は白を基調とした鎧に身を包んでいる少女だが、今は普段着のようだ……だが、一刀にはそんなことなど些細なこと。
 久方ぶりに見た、その姿に……彼は……彼の目頭は熱くなる。
「……また、会えた……」
「会えてないだろ! おい! いつまで…いつまで、私たちを待たせているつもりなんだ、お前は!」
「っ!? …………ごめん」
「もう少しだけ……あと少しだけ待ってやる。だから、必ず帰ってこい」
 結わえた紅髪を微かに揺らしながら、少女は真剣なまなざしを向ける。
「ああ……すぐ、戻るよ」
「まったく。このまま、私の存在感が薄くて消滅したら、どうしてくれるんだ!」
「ああ……ああ」
「あれじゃあ、まるで私の人気が無いから打ち切られたみたいじゃないかっ!」
「ああ……ああ」
「聞いてるのかっ!」
 銅鏡に写った少女が激昂しているが、一刀はただうなずくだけ。
 彼は眼を細め……愛しき少女の姿を懐かしみながら……涙していた。
431 名前:とある外史の再始動?(2/3)[] 投稿日:2012/05/31(木) 02:36:43.78 ID:rC2507lg0
 一刀の姿を見て……憤りを静めた少女が、彼同様に眼を細め、優しげな表情を浮かべる。
「一刀……私だって、今は凄く泣きたい……やっと、お前と……こうして話せるんだからな」
「…………うん」
「でも、それくらいじゃ満足できるわけがない」
「…………うん」
「だから、帰ってこい。すぐにとは言わん。でも、早く帰ってこい……」
「………………ああ、約束する」
 少ししんみりとしていて、でも穏やかな雰囲気が……流れる。だが、それをぶち壊すように第三者の声が入り込んできた。
「ん? 何を一人でぶつぶつ言ってるんだ、白蓮」
「ひっ!? な、なんでもない……帰れ!」
「いきなり、帰れとはぶしつけな。貴様に言われて、書類を回収しに行ってきたというのに……む?」
「げっ」
 紅髪の少女の苦み走った声の向こうから、新たに現れた人物の姿が見え始める。
 それは藤紫色を肩口まで伸ばした女性。非常に凛々しく、勇ましささえ感じる風貌……それもまた、彼にとって懐かしい姿。
「む? おい、どうして一刀が」
「き、気のせいだ。気のせいっ! 用事は済んだんだろ? なら、ほら……」
「気のせいなものか……す、好いた男の顔を忘れるわけがあるまい」
 頬を僅かに赤らめながら女性が近づいてくる。だが、それを制するように少女の……公孫賛の手が伸びる。
「やめろ! わ、私はまだ話したりないんだ! 後で順番を回してやるから……今はあっち行っててくれ」
「喧しい。独り占めして……自分だけ出番を得ようなどという浅ましい魂胆……わからないとでも思ったか!」
「……っ!? か、華雄……えっと、だな」
 図星だったのか、公孫賛の躰が一瞬だけぴくりと小刻みに跳ね、そして停止する。
 それを見据えながら、女性が……華雄が鼻を鳴らす。
「ふん。私とて、元来出番など無い身。それ故……気持ちはわかる」
「そ、そうだろう? 華雄だって色々と不遇な扱いだったんだ。私の気持ちも――」
「だが、一度ならず、二度までも抜け駆けなど許してなるものかっ!」
「あ、バカっ、やめ――――アッ」
 凄まじい轟音と共に生じた少女の断末魔を残して銅鏡の映像は途絶えた。
 一刀は、その様子に唖然としていたが……すぐに気を取り直すと顔を振って気合いを入れ直した。
432 名前:とある外史の再始動?(3/3)[] 投稿日:2012/05/31(木) 02:38:34.08 ID:rC2507lg0
「ふふ……まだ、ちゃんと生きてる。復興は……可能なんだな」
 まだ終わっていなかった。これからというところで停止していた外史。
「なら……もう決まってるよな」
 もっと続くと思いながらも……唐突に時間が止まった外史。
「俺は……」
 様々な苦難を乗り越え……そして、まだまだ待ち受けているだろう外史。
「……絶対に戻ってみせる」
 両拳を強く握りしめながら、青年は決意の言葉を口にした。それを切っ掛けとするように気配が静かに現れる。
「ご主人様」
「…………はは、まるで見越したようなタイミングで現れたな。貂蝉」
「良い女というのは……殿方が必要と思った時にそっと手をさしのべる……そういうものなのよ」
「…………まあ、突っ込みたい気持ちは山々だけど。いけるか?」
「ええ、バッチリよ。そうね、お礼は……わたしに熱いご主人様のご子息を激しく突っ込んでくれれば……うふふ」
「却下だ。いいから、俺を戻せっ!」
「んもう……ご主人様のい、け、ずー。しょうがないわねぇ、それじゃあ……いくわよ」
 大柄な躰を振るわせながら、桃色の下着を身に纏った人物が一刀の肩に手を添えると……二人の姿が光に包まれていく。
「みんな……戻るからな……待っててくれ」
「あ……そうそう、言い忘れていたんだけど……あの時から、今まであった隙間、そこで起きた事も今を含め話してきたことも……全て消えてしまうわ」
「えっ!?」
「だってぇ、そうじゃないと……外史が成立しなくなっちゃうもの」
「……ああ、そうだよな」
「ま、後は細かいことは気にしないで……わたしに身を委ねてくださればいいのよん」
「なんで……腰に手を回す。お、お断りだぁぁぁぁぁぁっ!」

 青年は再び……舞い戻る。己が物語へと……。
 静止した時が再び動き出そうとしている。
 このまま朽ちるのを待つだけと思われた、外史が……ゆっくりと動き始める。

――――????、再始動――――?
433 名前:名無しさん@初回限定[] 投稿日:2012/05/31(木) 02:40:11.07 ID:rC2507lg0
お久しぶりです。
いろいろあったあげく、凄まじく時間が……。
本当にごめんなさい。

取りあえず、ブランクが恐ろしいので……本格復帰は、あまり期待しないでくださいね。
積み上げたものが、0に戻ってるっぽいので……稚拙さが中断時の比じゃないはずです。
なのでまあ……もし来るなら、また見てやっても……程度にお考えくださいませ。

本当にすみません。

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