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353 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [sage] 投稿日:2010/11/13(土) 11:24:54 ID:jds3RYR1O
「にゃー(眠い)」
「ならば寝れば良いのです」
「にゃー(ならばお言葉に甘えて…ぐー)」
「・・・バカ猫、バカ猫。本当に寝ちゃいましたね、仕方ありません脱線のお話『管渡の戦い(前)』が始まりますよ〜、18桃香です」
352 名前:管渡の戦い(前)1-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 11:22:27 ID:jds3RYR1O
雪蓮と一刀達が建業に向かう途中、周泰によってある報告がもたらされる。
「曹操と袁紹が戦う?」
「はっ!そのようです雪蓮様」
「戦力差は?」
「袁紹軍約十万強、対して曹操軍約一万五千弱との事」
「その差……約七倍かあ、曹操もやきが回ったかしら?」
「……いや、雪蓮。おそらく華琳が勝つんじゃないかな?」
「なに、一刀。やっぱり曹操の肩を持つの?」
「違うよ、まるっきり全部が史実通りとは言わないけど……えっと……周泰さん?」
「な・なんでしょう、御遣い様?」
お互いの呼び方を妙で面白いと感じる雪蓮は笑いを堪えるのに必死だった。
「曹操と袁紹が戦う場所って……管渡じゃない?」
「―!、なぜそれを御遣い様がご存知なのでしょうか?」
「明命〜、そこは驚いても態度に出しちゃ駄目でしょう」
「はひ、す・すみません」
「いやいや、素直が一番だよ女の子は」
「・・・」
異性からまともに女の子扱いされた周泰の頬がほんのり紅くなる。
「あら、明命。まんざらでもないみたいね」
「しぇ、雪蓮さま…」
ますます顔を紅くしてまう周泰。
「で、一刀。私は素直じゃないと・・・」
「そこで俺に振るの!?……でも実際さあ……ねえ?」
354 名前:管渡の戦い(前)2-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 11:32:52 ID:jds3RYR1O
「一刀の考えが…よ〜く分かったわ。後日、覚えていなさい」
「お、お手柔らかに…」
等と雑談と笑いを交えながらも本題に入っていく。
「――で、やっぱり最終的に華琳の方が勝つと思うんだ」
「う〜ん、言われてみれば確かにそうかも……でも、だからってどうするの?」
「うん、ちょっと手を出そうと思っている。今華琳に華北を手に入れられると、雪蓮と俺達にとってスタートからのハンデが更に開いちゃうから」
「確かにそうかしら、ようやく領土を手に入れた私達に比べて曹操は既にスタートラインが違うのよね」
「華琳には悪いけど、多少袁紹に加担して戦力を削ろうかと思う。あわよくば今回は引き分けも狙ってる」
「へ〜」
一刀の考えが結構深いのに感心しながら、
「それなら是非やりましょう」
「ならちょっと周泰を使って良い?」
「あらお安いご用よ♪明命ちょっとこっちにいらっしゃい」
「ハッ!」
一刀から極秘任務を受けた周泰が早速行動に移った。
・・・
・・

◇ ◇ ◇
場所は管渡。
曹操軍は何度かの前哨戦を仕掛けてみたが、兵力を分散させない戦い(袁紹の性格から“分散させる=大兵力に因る派手な戦いが出来ない”を良しとしない)に、苦しい戦を強いられていた。
355 名前:管渡の戦い(前)3-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 11:39:20 ID:jds3RYR1O
「お〜ほっほっほっ、あのくるくる小娘がまた不様に逃げて行きましたわ。なんて、な〜んて!愉快なんでしょう!このまま大兵力を持ってして、ジワリ・ジワリとけれど確実に落としますわよ。お〜ほっほっほっ」
◇ ◇ ◇
「春蘭さまー!退却命令が出ました。一度管渡まで引けとのことです、急いで撤収しましょう」
「何故だ季衣?この戦場は勝っているぞ」
「ここだけ勝ってても他が全部が撤退してます、このままだと囲まれてしまいますよ春蘭さま」
「……仕方ない、この戦場を放棄する!総員撤退する、管渡まで引く準備に入れ!」
戦術での勝利では、戦略の敗北を覆すことが出来ないのであった。
如何に将が豊富で優秀とはいえ袁紹軍兵士十万全てを相手にすることは出来ず、如何に兵士も勇敢とはいえ実質的に一人が対応しなきゃならない相手が七人では一人、また一人と確実に兵の数が減っていく。
そんな中、管渡の砦から曹操はまだ遙か彼方にもかかわらず、朧気ながら見え隠れする袁紹軍を見つめていた。
相手の大将があの袁紹といえ、その純粋な兵力十万は見た目にもまた戦力でもそれは強大で驚異で有った。
「このままでは、ただのジリ貧ね……流石にここは一度撤退するべきかしら?」
356 名前:管渡の戦い(前)4-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 11:46:29 ID:jds3RYR1O
すると脇にいた荀文若が、
「華琳様。我が軍が寡兵で、敵軍が多勢なのは、出陣前から解っていたこと。出陣前の申したように袁紹軍は多勢なれど烏合にすぎません、戦は数ではないのは華琳様もご存知のとおり」
「けれど桂花。今回の、この戦力差はあまりに…」
割って入った曹操の言葉を敢えて遮り、更に言葉を続けた。
「この戦を各群雄は見ています。ここで引けば、これから先、各群雄を傘下に治めることは難しくなるでしょう。我が軍は華琳様が思われるとおり劣勢の真っ只中で、袁紹軍は優勢の極みです。
 が、必ず変化が訪れます。それを見逃さず、勝利を収めるのは、今、この時にかかっているのです。故に、“至弱をもって至強にあたって”ください。そして天の時を見極め、地の利を活かして勝つのです。
 それが出来るのは華琳様しかいないのですから」
「……桂花。貴女、言うようになったわね」
少し怯えたような表情になれど、この進言決して間違って無いと確信している荀文若はしっかりと堂々としていた。
「……けれどお陰で目が覚めたわ礼を言うわ桂花」
「とんでもございません、華琳様」
そして、振り返ると配下に対して覇気を取り戻した声で告げる。
357 名前:管渡の戦い(前)5-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 11:52:36 ID:jds3RYR1O
「好機は必ず訪れる!今は辛いだろうが皆それまで暫し耐え忍んで頂戴!」
「「「ハッ!」」」
覇気を取り戻した覇王に応えるように将達もまた勢いを取り戻したのであった。
◇ ◇ ◇
「誰!?」
顔良が人の気配に気付いて身構えながら問いかける、戦中にしかも一人になった時に訪れた人の気配、一番に暗殺者を想定するのは普通だろう。
「怪しい者ではございません、とある方からの密書をお届けにあがりました」
「・・・・」
しばらく考えてみるも、このままでは埒があかないと判断した顔良が。
「その密書の内容は?」
「この戦に関わる事に関してでございます」
「それなら私なんか…」
『じゃなく麗羽様に』と言いかけて、そこで口が止まった。
「その理由は顔良将軍が一番良くご存知かと」
「…あはは…」
顔良は女性の間諜に聞こえない程度に笑ったつもりだった。
「そして内容は?」
「これに」
密書を顔良の一歩手前の地面に置き、また元居た位置に戻る。
それを念のため、視線は女間諜に向けたまま、軽い手探りで探り出して拾う。
拾った密書を見た顔良の顔が驚愕に変化する。
そこには、これまで進行してきた大まかなルートなど取るに足らないモノばかりだが、どうしても無視出来ない情報が二つ。
358 名前:管渡の戦い(前)6-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 11:57:29 ID:jds3RYR1O
『烏巣にこの戦いにおける袁紹軍の食料を貯蔵している事』、そしてもう一つが『おそらく投降者が出てそのことを喋り、それを聞いた曹操が烏巣を襲う』だろうと云った内容だった。
「ねえ、この手紙の…」
「申し訳ございません。その密書の内容、私は存じ上げません」
「それもそうか…」
冷静に考えれば直ぐに分かるようなことも、密書の内容が内容だけに軽く取り乱してしまい失敗する。
そして、一刀は敢えて投降者の名前を載せなかった。
この密書がどこまで信用されるかも分からなかったし、歴史的に投降した者がこの世界でも投降するか分からないからだ。
もし万が一に内容を重要視され当の本人が投降する意志も無いのに捕らえられ死罪にされても困る。
そして一刀に取って最悪な出来事、いや絶対に起きてはいけない事が、全てにおいて袁紹側に事が上手く進み、曹操が敗北・捕らえられて殺される事である。
一刀には精々完全逆転勝利の切っ掛け、烏巣の陥落を避けて袁紹側も勇猛果敢な曹操軍将兵に攻めあぐねて飽きた袁紹が撤退、両者痛み分けが理想であった。
束の間、密書の内容に考え耽て次に顔良が女間諜を思い出した時には既に姿形も消え去っていた。
◇ ◇ ◇
360 名前:管渡の戦い(前)7-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 13:02:01 ID:jds3RYR1O
袁紹の天幕が騒がしくなる。
原因は先程、密書を受け取った顔良である。
「ちょっと斗詩さん、何事ですの!騒がしいですわよ」
「あのですね、姫。ちょっと気になることが有りまして」
「ご注進!!」
「なんですの?性懲りもなく、またくるくる小娘が攻めてきたんですの?」
「いいえ、違います。顔良将軍からの申し付けで、姿が見当たらなくなった者がいるか調べるようにと」
「はあ?何故そんなことを斗詩さん」
「姫。その前に報告を聞いてもよろしいですか?」
「・・・まあ良いですわ、好きになさい」
「それでは姫、失礼して。それは誰ですか?」
「許攸殿です」
「あら?」
袁紹と文醜はその名前を聞いてもあっけらかんとしていたが、顔良の顔が一気に青ざめる。
今朝の会議でも戦の方針について袁紹と衝突をしていたし、正直以前から反りも合わないところがあった。
袁紹軍の参謀なので軍の内部情報にも精通している、あの密書に書かれていた条件を満たし動機も十分である。
だが顔良は迷っていた、だからといって本当に裏切ったりするのか?と。
そんな迷いも追加の報告『許攸殿。偵察と称し極少数の親しい部下と共に陣の外へ行かれた模様』に消え去った。
361 名前:管渡の戦い(前)8-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 13:09:32 ID:jds3RYR1O
「麗羽様!私に三万…いえ二万で構いません、お貸し戴いて烏巣の防衛に行かせてください!」
「はあ?・・・そんなの却下ですわ」
「麗羽様、これをお読みください」
顔良から袁紹に手渡される密書、それを読み終えると。
「胡散臭いですわね」
「ですが麗羽様、この手紙を受け取った時間と許攸が陣から出て行った時間では明らかに手紙を受け取った方が早いんです!つまりこの手紙の主は予言をしたんですよ」
「けれど斗詩さん。この手紙には名前が書いてませんことよ、これでは誰でも出て行けば予言的中ですわ」
「いいえ麗羽様、それでは予言的中に条件が足りません。軍の内部情報に精通した者、特に我々の生命線、烏巣の食料を知っているのは極僅かで!それを予言しているんですよ。
 それ以前に部外者でる筈の手紙の主は烏巣の事も知っているですから、十分凄いと思うですが」
「まあ・・・確かにそうですわね」
顔良の迫力に押され出した袁紹、そして顔良が更に一言。
「それに麗羽様。万が一に烏巣が襲われて食料が無くなったら、文ちゃんが暴れ出しますよ。そうしたら誰が止めるんですか?」
「それは…」
「私は嫌ですよ!忠告もしましたし、空腹で暴れる文ちゃんは私でも無理ですからね、麗羽様」
362 名前:管渡の戦い(前)9-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 13:14:24 ID:jds3RYR1O
“文醜が空腹が原因で暴れる”この脅しが効いたのか。
「な、なら仕方ありません、三万を率いて烏巣に行きなさい。そしてさっさとくるくる小娘達を撃破するか、予言が外れて襲ってこないと判断したら、速く!一刻でも速く戻ってくるのですよ。良いですわね斗詩さん」
「了解しました、麗羽様」
そして、一礼すると。
「これより顔良、袁紹様の命に従い烏巣に強襲予定の曹操軍を迎撃、及び撃退してきます。吉報をお待ちください麗羽様」
再度、一礼すると天幕から出て戦場になるだろう烏巣に三万の兵を引き連れて出陣して行った。
◇ ◇ ◇
その頃、曹操軍側では。
一刀の世界の歴史通り、許攸が投降する。
当然、その許攸から袁紹軍の食料の情報が伝わり。
「待ちに待った時が来た!皆ここが正念場である、命を惜しむな名を惜しめ!そして私に続け!!」
曹操自ら夏侯淵・典韋、軍師に郭嘉を引き連れ烏巣に強襲するのであった。
◇ ◇ ◇
「間に合ったかな?」
烏巣の砦に着いた顔良が一言呟いた。
「でもあの予言擬きが当たるなら時間が無い筈。みんな直ぐに配置に着いて!砦の補強に周りに陣地の作成。少しでも烏巣を難攻に改装してください!斥候も出て!もし曹操軍を見かけたら直ぐに報告。直ぐ様、迎撃態勢に入ります」
363 名前:管渡の戦い(前)10-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 13:25:50 ID:jds3RYR1O
◇ ◇ ◇
顔良が烏巣に着いたその約数刻後。
ドドドドドドドッ……
「来た!攻撃開始!」
顔良の合図と同時に砦から数千の矢が飛び出す。
砦の周りは突貫とはいえそれなりの数の対人・対騎兵用の柵を設けた為においそれと近付けない筈である。
出端も挫いた、これで曹操軍はおいそれと烏巣を陥落はおろか、近付くことさえ容易ではないだろうと考える。
後は、曹操軍が諦めて撤退さえしてくれればと心底願う顔良だった。
それは曹操軍の旗を見れば曹の牙門旗・夏侯に典の旗印が見え、軍師の一人郭の旗まで見えたからだ。
曹操自らが遣って来て、夏侯もどっちが来ようと間違い無く敵わない、典韋が相手でも勝てるのか怪しい?と、自己解析した結果であった。
相手にとって不足甚だしいと感じ、ただ一つ勝っているのが兵数だけと判断し早く嵐が過ぎ去ることを願いながら防戦に徹するしかなかったのだ。
◇ ◇ ◇
「見えました華琳様!烏巣の砦で…!」
「どうしたの秋蘭…!」
言葉に詰まる夏侯淵に声かけた曹操も声を詰まらせた。
見えた烏巣には柵が大量に設けられ、明らかに砦に入りきれない兵が周りの柵の内側で陣地を形成していた。
「許攸の奴、この私を騙したの!」
364 名前:管渡の戦い(前)11-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 13:32:48 ID:jds3RYR1O
焦っていた時の起死回生の情報だっただけに、おもむろに凄い殺気が沸き立つ曹操。
「お待ちください華琳様。奴の話とても嘘を吐いてる様子はありませんでした、あれは恐らく裏切るのを見抜かれて偽情報を掴まされたか…」
「でも、彼奴は直前の喧嘩まで全く裏切るつもりは無かった……それならば裏切りがバレて対応されたか」
「しかし、華琳様。バレてからでは対応が早すぎます、見抜かれた方は色々と無理が有るかと」
「ならば、この事態どう説明するの秋蘭、よもや予言でもされてたと言うの?」
「そうとは言いませんが、それだけで裏切りがバレた後に対応されたと言うには説得力に欠けます」
「……それもそうね、それに今はそこにいる袁紹の軍勢を排除して食料を灰する事が先決、詮議は後」
「御意、総員突撃!烏巣の砦、なんとしても攻め落とすぞ!」
こうして烏巣の激しい攻防戦が始まった。
・・・
・・

◇ ◇ ◇
数刻後。
「華琳様、こうも徹底的に砦に籠もられは……周りの柵も未だ全て壊せてませんし」
典韋の報告は決して明るいモノではなかった。
対する顔良は苦しい防戦の筈なのだが、普段の二人の相手に比べれば比較的楽なのだろうか良く善戦した。
365 名前:管渡の戦い(前)12-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 13:38:54 ID:jds3RYR1O
夏侯淵が不意に顔良の姿を城壁の上に見つけた、現在の状況を直接視に来ていた時を捉えたのだ。
「華琳様、これより顔良に直接一矢報いてみようかと。上手くいけば砦を落とせるようになるかもしれません」
前線にギリギリまで前に出だす、少しでも命中率を上げる為である。
勿論目標は城壁の上に見える敵将顔良、弦を力一杯に引く・・・
獲物を確実に葬る為に動く矢尻は、まるでレクイエムを奏でるタクトのようだ。
そして、顔良の命を刈る取る為に、今獣の牙が放たれたのだった。
「顔良将軍!」
一人の将校が事態を把握し叫ぶ。
「キャー!!」
その直後、声は顔良の悲鳴に変わった。
◇ ◇ ◇
一方この頃、袁紹軍には管渡から烏巣に向かった兵数が約一万との情報が斥候からもたらされる。
「なら、今管渡にいる曹操軍は五千弱じゃん!姫、今なら簡単ですよ。みんなで管渡を攻め立てましょう、駄目ならあたいに三万の兵を貸してくださいよ、見事管渡を攻め落としてみせますから」
目を輝かせ出陣許可を請う文醜に対し、ふてくされた顔で無言で対処する。
「麗羽様〜。斗詩にわ出撃許可を出しておいて、アタイには許可が下りないんですか!」
そう言われてしまっては声に出して答えざるえない袁紹。
366 名前:管渡の戦い(前)13-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 13:45:02 ID:jds3RYR1O
「斗詩さんに関しては必要だとの要請に応じただけですわ、今管渡を攻めるのにさして必要性を感じませんことよ」
「必要性なら大いに有りますよ!姫。さっさと曹操をぶち壊して斗詩を此処に呼び戻させること、あたい達は三人一緒じゃないと。それに管渡にはまだ強い奴が残ってる筈だし、やっぱいるなら戦いたいじゃん強い奴と」
「最後の理由が些か不満ですが……そうですわね、ならば猪々子さん。四万の兵を預けますわ、見事くるくる小娘の本陣を攻め落として、早急に斗詩を此処に連れ戻して来なさい」
「麗羽様!宜しいんですか?此処の守りが四万しか残らなくなっちいますよ」
「元よりあなた達が居なければ動くつもりが有りません……守らせるだけならそこらへんの誰にでも出来るでしょうから、さっさと行きなさい猪々子さん」
「了解しました。斗詩を連れてさっさと帰って来ますから、麗羽様ご馳走準備して待っていて下さいよ〜」
片手を力一杯振って、まるで遠足でも行くような雰囲気で天幕を出て行った文醜。
「ふんっ…さっさと帰ってきなさい、……それと誰か!戦勝会の準備をなさい」
それだけ言うと、どっしりと椅子に座り直した後、一切喋らなくなってしまった袁紹であった。
367 名前:管渡の戦い(前)14-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 13:55:15 ID:jds3RYR1O
◇ ◇ ◇
『袁紹軍、来襲!旗印は文!袁紹軍が二枚看板の一人、文醜かと』
曹操軍、本陣管渡に響く敵来襲の報告。
「数はいくつだ!」
「およそ約四万!」
ザワッ!!
残った将達の間にざわめきが起きる、無理もない話だ、残った兵は一万も無い約五千弱なのだから。
「え〜い、何をうろたえておる?華琳様から留守を預かったのだから何が有っても守り通すのが道理だろ」
夏侯惇の無茶苦茶な理論にまたもや将達の間にざわめきが起きた。
「ええ〜い不甲斐ない奴らめ!なら貴様等は出なくて良い、行くぞ季衣」
「はい!出るんですね春蘭さま♪」
「えっ、夏侯惇将軍?撃って出られるんですか」
「そうだ!」
慌てて止め出す将校や文官。
「また春蘭の猪ぷりっが出た」
一人呆れているのは荀文若。
「お待ちください!今此処には五千足らずの守備兵しか残ってないのですぞ、その全ての兵を持って行かれては、此処の守りは如何なさいます」
「全てなど連れて行かん。私と季衣、兵は親衛隊千人もいれば十分だ」
「そのような少数で…」
出ようとする夏侯惇を更に止める将校と文官。
368 名前:管渡の戦い(前)15-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 14:00:47 ID:jds3RYR1O
「再度、再度お待ちください夏侯惇将軍!曹操様の右腕、魏武の大剣と謳われる夏侯惇将軍をみすみす見殺しにしたとあっては、我等が曹操様から咎めを受けまする」
次の瞬間、天幕の内が殺気で満ちる。
「ヒッ!」
ある者は腰を抜かし、またある者は気絶する、普段馴れてる筈の荀文若ですら緊張で顔が強張っていた。
「貴様等はこの夏侯元醸が、たかが十万の袁紹軍兵士や、その将文醜如きに後れをとると『本 気 で 思 っ て い る の かー!』」
これで荀文若を抜かした文官が全員気絶した、そして夏侯惇が進む先にたまたま荀文若が立っていて。
「桂花よ、よもや貴様まで『出るな』などと言わんだろうな?」
「言うわけ無いでしょうそんな事。せいぜい派手に殺されてきなさい、そしたら華琳様は私一人が独占するんだから」
「それは叶わない望みで残念だな桂花。それと霞、腑抜け共で悪いが残った連中の面倒、よろしく頼む」
「ほいな、帰ってくる所は死守しとくさかい。安心してうちの分まで暴れてきー」
「うぬ、悪いな。季衣、行くぞ」
「はーい、春蘭さま」
こうして夏侯惇は許緒を連れて出陣して行った。
◇ ◇ ◇
370 名前:管渡の戦い(前)16-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 14:07:56 ID:jds3RYR1O
「文醜将軍!敵管渡から撃って出て来ました、数はおよそ千。ふっ、自暴自棄なのか我々を舐めているの!かはっ」
喋ってる最中の将校の顔面に裏拳をヒットさせた文醜、倒れかかる彼の胸倉を掴むと。
「おまえは“相手を侮ったり自暴自棄になったからといって、千人の部下で四万人を相手に撃って出れるか?あぁ”・・・なんだ、聞いちゃいねえ」
ドサッ!
手を放すと支えを失った将校はそのまま崩れ落ちる、他の者が介護の為に抱えて連れ去って行く。
「報告!続き」
「ハッ!旗印は夏侯、惇か?淵か?どちらなのかは現在調べています」
「どっちかなんて、こんなことするのなんて夏侯惇に決まってるじゃん!いいね、いいね。熱く燃えてきたね!総員粛々と迫る騎馬隊に前進、敵の将はこのあたいに回すんだぞ!」
嬉々として命令を出す彼女がいた。
◇ ◇ ◇
程なくして夏侯惇の部隊が文醜の部隊に突っ込む、先頭の夏侯惇が大声を張り上げながら部隊を進ませる。
「我が名は夏侯元醸!敵将文醜、臆病風に吹かれてないのならば私と立ち会え!」
「その喧嘩買った!」
「ほお、逃げ出さずに挑んで来るか。それだけは誉めてやろう」
372 名前:管渡の戦い(前)17-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 14:13:01 ID:jds3RYR1O
「なんで逃げる必要があるのかアタイには分からないね?やっぱ強い奴と戦って自分が最強だって証明したいじゃん!」
「その心意気は良し!だが半端な強さは寿命を縮めるだけだ!行くぞ、どりゃー!」
夏侯惇と文醜の打ち合いが始まった、苛烈を極める二人の打ち合いは近くの兵を敵味方問わず巻き込み黄泉へと導く、慌てて兵は離れるも既に軽く二ダースの残酷な死体が出来上がっていた。
そして、最初は互角だった戦いも個人の絶対的な実力差が現れ始め。
「隙有りー!」
「しま!…」
夏侯惇の渾身の一撃が文醜を襲った。
「・・・・・あれ?」
よじった身体を直ぐに戻し文醜が居た位置を確認すると、後には何も残っておらず思わず呟いた言葉だった。
「…?…?・・・!そうだ、あれだ!私の攻撃が凄すぎて跡形も残らず消し去ってしまったのだな、そうだそうに違いない」
と、結論付けた夏侯惇が高々と勝ち鬨を上げた。
「魏武の大剣にして曹孟徳が一の家臣!夏侯元醸が敵将文醜討ち取ったりー!」
二人が戦っていた場所には残った夏侯惇が高々と七星餓狼を突き上げていた、少なくとも文醜の姿は見当たらない。
373 名前:管渡の戦い(前)18-18[sage] 投稿日:2010/11/13(土) 14:18:17 ID:jds3RYR1O
「「「ワワアアアァァァ―――!!」」」
「「「ウワワアァァァー!?」」」
夏侯惇の近くの兵士達は片一方は歓声を上げ、もう片一方は悲鳴を上げた。
「何をしている!文醜将軍の敵を討たぬか!敵将を討てば恩賞は思いのままぞ」
「舐めるなー!」
迫ってくる雑兵を、まるで草を刈るかのように七星餓狼を振るうと死体の山が築かれる。
多勢に無勢と云えども、いや圧倒的な多勢に無勢だからこそ勝ち戦を確信し、勝ち戦を確認しているからこそ“生きて勝利の酒を飲みたい”と生に執着し死から逃れようとする、だから逃げ出すのだ。
何百の歓声と数万の悲鳴が波紋のように広がり袁紹軍四万の軍勢が敗走し出す。
「逃げるな!未だ我等がか!ぐばぁ…」
指揮する将校を切り捨てながら、
「深追いはするな、適度に削れば良い!戦いはまだ続くのだ」
眼下の敵に気付き得物を振り上げる夏侯惇、迫る絶対的な死に恐慌状態の兵が奇跡的な動きを見せた。
得物を振り下ろして終わる筈だったそれはからくも腰を抜かしたことで地面に倒れこんで初撃をかわした、咄嗟に出した手は誰かが捨てたのか?廃棄させられたのか?落ちていた弓矢を掴んで、構えて……

そして、放たれた……
374 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [sage] 投稿日:2010/11/13(土) 14:23:52 ID:jds3RYR1O
「にゃー(ぐー)」
「まだ、寝てやがりますね…ではご静聴、ご支援ありがとうございました。脱線話はまだ有るみたいですよ?『曰わく、曹操涼州平定』とかなんとか。出来るんですかね〜?ふわ〜風も眠いので失礼します〜、でわでわ〜」

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