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874 名前:K-999[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:03:35 ID:V/SSADcM0
ちぃっ、しょうがない!
俺は後編を桃香することに決めたぞJOJO−!!

焔耶「だれかこのSSに支援してくれる者はおるかー!!」
876 名前:K-999[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:06:50 ID:dlHVJ+A80
警告!

唐突&超展開あり!
ご都合主義的展開あり!
オチが……

それでも良ければここにいるぞー!
878 名前:K-999[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:08:51 ID:dlHVJ+A80
 かたん。

「「?」」

 物音に、二人は音がした方を向いた。今気がついたが扉が少し開いている。そこには、

「あ、」

 心なしか顔を青褪めさせているように見える、華琳だった。

「「華琳(さま)!?」」

「っ!」

 驚いた二人が声をかけると、華琳は身を翻し、走り去った。

「追って、北郷!」

 桂花は咄嗟に叫ぶ。

「桂花は!?」

「行くに決まってるけど先に行きなさいよ! 私一応妊婦よ!?」

「・・・・・・そうでした」

 一刀は、頷いた後華琳を追った。
880 名前:覇王の憂鬱(後編)2/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:09:56 ID:dlHVJ+A80
「はっはっ・・・・・・」

 華琳は駆けていた。いや、逃げていたと表現したほうが正しいかもしれない。
 もっとも、その理由は本人でも納得できない物だったが。

 華琳は走りながら自問していた。今走っている事に対する理由だ。

 あの後、二人の事が気になって一刀の部屋に行ったのは良いとして・・・・・・

「痛っ・・・・・・」

 華琳の頭を頭痛が襲う。一刀と出会ってからは鳴りを潜めていた頭痛だ。

 桂花が一刀の子を宿していると聞いたとき。
 桂花が一刀と痴話喧嘩にしか見えないやりとりをしたとき。

「あうっ!」

 そしてそのことを思い返したとき。今までにない激痛が華琳の脳を走った。

「な、なん・・・・・・で」

 華琳は自問する。なぜ今更この頭痛がするのか。

 いや、そんな事は些細な事。自分の行動がわからない。
 そもそも、なんで立ち聞きなどしたのだろう。いつもならそんなこそこそした真似はせず堂々と踏み込んで祝福してやっただろう。
 そして主を差し置いて行けるところまで行った二人を軽くいぢめて満足して終わりなはず。
 だが今の自分の行動はなんだ。なんで逃げている?

「う・・・・・・・・・・・・」
883 名前:覇王の憂鬱(後編)3/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:13:07 ID:dlHVJ+A80
 気のせいか吐気まで催してきた気がする。頭痛だけでもきついと言うのに。

「華琳!」

 一刀が華琳の名を呼びつつ駆けつけてきた。

「か、かず・・・・・・と・・・」

 華琳は、一刀の声に思わず振り向く。その瞬間、

「っっっ!!」

 一際鋭い痛みが脳内を走り抜ける。

「う・・・・・・」

 そして、そのまま意識を手放した。

「華琳っ!?」

 一刀は華琳が倒れる前になんとか体をキャッチする。
 そして、程なく桂花が駆けつけてきた。

「北郷っ、華琳さまは・・・・・・ってなにしてんの!!」

 桂花は、一刀が華琳を抱きかかえているのを見て、ムッキー! と猛る。

「いや、倒れるままにするわけにもいかんだろ!?」

 弁解する一刀に桂花は一応納得するも、一刀が華琳に触れているだけでなんか嫌そうだ。
885 名前:覇王の憂鬱(後編)4/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:17:29 ID:dlHVJ+A80
「・・・・・・まぁそれよりも医者よ! 早く医者に見せないと! それ以上触れられたら華琳さまが穢れるっ!!」

「そっちかよ!!」

 等と、この期に及んでじゃれている(?)二人に、背後から声が掛かった。

「よう、北郷に荀ケじゃないか。いったいどうし・・・・・・」

「「華佗ぁぁぁぁぁぁぁぁあああッ!!!」」

「なっ、なんだぁっ!?」

 血走った目で突然振り返り奇声じみた叫びを上げる一刀らに、あまり物事に動じない華佗も思わずのけぞった。

「何でここに居るかはさておきナイスタイミングっ!!」
「ああもう名医とは言え男に華琳さまなんか任せたくないけど背に腹は代えられないから早く診なさいっ!!」

「二人とも落ち着け! 特に荀ケ!」

「この華琳さまを見て解らないの!? 解れ!!」

「む。こいつは」

 一刀が抱える華琳の様子を一目見た華佗は、眉を顰める。

「・・・・・・成る程。確かに具合が悪そうだな。とりあえず、寝かせられる所で詳しく診ない事には・・・・・・」

「マジで解ったんだな・・・・・・」

「しょうがないわね。北郷!」
892 名前:覇王の憂鬱(後編)5/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:21:52 ID:dlHVJ+A80
「・・・・・・はいはい」

 命令口調の桂花に、一刀は苦笑しつつ華琳を抱え上げた。

 余談だが、華佗が要る理由は最近頭痛が増えてきた華琳が呼んだからである。


「ん・・・・・・・・・・・・」

「華琳? 目が覚めたか」

「一刀? ・・・・・・ここは」

「華琳の部屋だよ。気分は?」

「正直、良いとは言えないわね・・・・・・」

 華琳は、まだ軽く痛む頭を抑え、上半身を起こす。

「華琳さまっ!」

 桂花は、華琳の意識が戻った事に気付くと、安堵の表情で駆け寄ってきた。

「う・・・・・・け、桂花・・・・・・」

 華琳は、桂花の大声に顔を顰める。今の状態でその声は、ダイレクトに響く。

「あ、も、申し訳っ・・・・・・ありません」

 桂花は、またも大声を出している事に気付き、「申し訳」の時点で慌てて声量を抑えた。

「ん、その様子だと今は大丈夫そうだな」
894 名前:覇王の憂鬱(後編)6/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:22:34 ID:dlHVJ+A80
「華佗?」

「ああ。久しぶりだな、曹操」

「しかし、華佗がいいタイミングで立ち寄ってくれて助かったよ」

「んな話は後でいいのよ!! それより、華琳さまの容態はどうなのよっ!?」

「容態? ・・・・・・ん、それなんだが・・・・・・」

 華佗は、彼にしては珍しく若干言い難そうな態度をとる。

「ハッキリしないわね。ま、たとえどんな病気でも、あんたの鍼なら治せるんでしょ」

「いや、これは鍼でどうこうとなるモノじゃない」

「どういうことだ? 病気じゃないのか?」

「まぁ、そうだな」

 華佗の歯切れはやはり悪い。桂花は苛ついている顔を隠そうともせず、華佗に詰め寄る。

「さっきから歯切れ悪いわね! こっちは」

「桂花、いいのよ」

 華琳は、桂花の言葉を遮った。

「華佗、私はもう寿命なんじゃないの」
899 名前:覇王の憂鬱(後編)7/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:29:15 ID:dlHVJ+A80
「え」

 華佗は言葉を詰まらせる。

「なんだって!? どういうことだよ華琳! いくら鍼が効かないからって・・・!」

「いいえ、思えば最近身体の調子が変だったもの。
 頭痛は言うに及ばず、吐き気は断続的に来るし、食事する気もあまり起きないのよ。
 ・・・・・・それに、精神的に不安定なのも、もう認めざるを得ないほどになってきてる」

「そんな・・・・・・そんな、華琳さま・・・・・・」

 桂花は、あまりのショックに蒼白な顔で今にも崩れ落ちそうだ。

「これも天命、かしら。・・・ふふ、まだまだこれから、と思っていたけど、天は私に休めと言ってるのかもしれないわね」

「華琳・・・・・・」
「華琳さま・・・・・・」

 部屋が重苦しい雰囲気に包まれるが、華佗が慌てて声を出す。

「お、おいおい、違うぞ曹操! 寿命じゃない!」

「え?」
「そうなのっ!?」

 一刀よ桂花は勢い良く俯いた顔を上げた。

「寿命じゃない? じゃあなんなの。
 鍼は効かない。病気ではない。寿命でもない。でもこの身は確かに不調を訴えてるわよ」
900 名前:覇王の憂鬱(後編)8/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:29:47 ID:dlHVJ+A80
「・・・・・・。解った。では言うぞ。曹操、あんたは・・・・・・」

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 三人の喉が、ごくりと鳴った。

 華佗は軽く息を吸い込み、言った。



「おめでただ」



「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 部屋が沈黙に支配される。しかし華佗は予想していたのか、もう一度繰り返した。

「おめでただ」

 二度目の華佗の言葉に、一刀は、恐る恐る口を開く。

「おめでたって、華琳が妊娠した・・・・・・ってことか・・・・・・?」

「そうだ」

「いやああああああああああ!!」

 桂花は絶望の表情で頭を抱えた。その絶望っぷりは、華琳が死ぬと勘違いした時を遙かに超えている。
906 名前:覇王の憂鬱(後編)9/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:34:51 ID:dlHVJ+A80
「じゃあ、この慢性的な頭痛は・・・・・・?」

「妊娠による体調の変化は個々人で多岐に及ぶ。曹操の場合、昔馴染みの頭痛という形で来たんだろう」

「この吐き気は・・・・・・?」

「妊娠の一般的な症状だな」

「精神的に不安定なのも・・・・・・?」

「それも妊娠の一般的な症状だな。体に自分以外のもう一つの命を抱えるんだ。そうなっても何の不思議もない」

「・・・・・・」

 華琳は呆然と目を見開いている。珍しく事態に頭が追いついていない。

「うっ、ううっ、うぐぐぐぐぐぐぐががぐぐぐぐぅ・・・・・・っ!!」

 桂花は顔を真っ赤にして頭を掻き毟った。
 北郷、殺す! → でも本当に殺したらもう魏には居られない。この世にも居られるかどうかもちょっと怪しい。
 こうなったら堕胎しか! → でも華琳さまは絶対にそんなことはしないだろう。
               認めたくないが華琳さまは北郷を愛しt・・・ぐああああ認めねぇええええ!!
 華琳さまを殺して私も死ぬ!! → うん。それ無理。

 上記は桂花の思考のほんの一部である。

「華琳・・・・・・華琳に俺の子どもが・・・・・・ははっ」

「一刀・・・・・・」
909 名前:覇王の憂鬱(後編)10/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:42:11 ID:dlHVJ+A80
 呆然としていた華琳が、漸く反応した。

「やった! やったな華琳!! 俺の子なんだよな!? ははっ、はははははは!」

「バカね・・・。あなた以外に誰が居るというの?」

「ぐぐぐぐぐぐ」

 わたしの時はそこまで喜ばなかったくせに! ・・・・・・などと思う桂花だが、それが何故腹が立つかまでは解らないようだった。

「ん? そういえば荀ケも妊娠しているな。時期は・・・・・・む。曹操とほぼ同時期か」

 看破された桂花は、華佗の眼力に若干引いた。

「・・・・・・あんた、見ただけで解るの?」

「医者だからな」

 答えになってねぇー。

「まぁ、一刀が桂花とするときは私と一緒だから、そのときだったのね」

「華琳さまとほぼ同時、というところは嬉しいんですが・・・・・・」

 胡乱気な目で一刀を見る。なんか納得いかない。

「おほんっ、でもまぁ、これで腹は決まったわ」

「何が?」
912 名前:覇王の憂鬱(後編)11/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:48:11 ID:dlHVJ+A80
「喜びなさい一刀。あなたを、この曹孟徳の伴侶にしてあげる」

「えっ」
「なっ」
「!」

 上から一刀、桂花、華佗である。ほとんど変わりはないが。

 絶句する二人を余所に、一刀はいち早く我に帰り、

「華琳。そんな言葉じゃあ俺の心は動かないなぁ」

 いっそ不遜とも言える一刀の言葉に、華琳は、なんとも驚くべき事に、心底幸せそうに、目を細めはにかんだ。
 しかも、薄く頬を染めている!



「結婚しましょう、一刀」
「ああ。結婚しよう。華琳」

 

 流れるような一連の展開に、二人は口を挟めない。いや、口を挟むという選択枝すら浮かばない。
 それほどまでに自然な呼吸。間。

 まさに、約束されていた一瞬、と言えるだろう。

「俺は今、もしかして歴史的一瞬を目撃しているのか・・・・・・?」

 華佗さえも目の前の光景にそう呟くのがやっとだった。
915 名前:覇王の憂鬱(後編)12/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 00:56:12 ID:dlHVJ+A80
「……せ……い……」

「え?」

「いくら華琳さまでも、許せないいいいッ!!! 私のほうが先に伝えたのに………………はっ!?」

「へぇ……私の何が許せないの? 桂花?」

「は……その……うぁ……」

 思わず絶叫した桂花に、華琳は、今まで見た事が無いくらいにこにこしながら問い掛ける。表情の中にサドっ気は欠片も無い。
 いつもなら、「私が尋ねているのよ、答えなさい」くらいは言うはずなのだが。

「う、う…………うわあああああああああああああああああん!!」

 桂花は号泣しながらダッシュでその場から逃げ出した。

「あ、おーい。妊婦がそんなに走ったら……行ってしまったか」

「しかし桂花のやつ、華琳におれの子供が出来たのがそんなに嫌だったんだなぁ。言葉を選び間違えるなんて」

「ふむ。そういうことなのか」

 この鈍すぎる男二人に突っ込みを入れる者は居なかった。華琳は幸せを噛み締めていてそれどころではなかったようだし。
 もしここに第三者がいたなら、同情の意をこめてこう言っただろう。

「不憫な」と。
918 名前:覇王の憂鬱(後編)13/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 01:00:20 ID:dlHVJ+A80
 それからは大騒ぎだった。
 華琳による電撃結婚宣言を皮切りに、魏の内外問わず対応に追われていた。
 魏の文官等は、祝文を携えた使者の対応に追われ、訪れる人にごった返した城下の見回りに武官までも借り出されるほど。

 それでも魏の人間の表情は明るい。数々の偉業を成し遂げた覇王その人が伴侶を得る。これで曹魏はますます磐石になった……というのはごく一部。
 実際は、華琳が愛する伴侶を得たのが喜ばしいのである。みんな華琳のことが好きだったから。


 そして、一週間後。

「っは〜〜〜。華琳と結婚できるのは嬉しいけど、こうも連日宴ばっかりだと流石にしんどいよなー」

 宴では否応無く一刀も視線に晒される。呉や蜀からも一刀に対し面会があり、どうにもこうにも気疲れする。
 今まで他国と関わるときに矢面に立つことがなかったため、値踏みするような視線に余計に疲れるのだろう。

「しかしなんだって華琳の婿だからって俺のところばっかりに来るのやら。俺なんか華琳どころか春蘭たちに比べても取るに足らないだろーになー」

 これは一刀の誤解である。

 以前はどうあれ、再び魏の警備隊長になってからというもの、魏全体の士気の向上は目を見張る程であった。
 また、現代に帰ってから貪欲に知識の吸収に努めていた為か、一刀の授ける天の知識による魏の文化・技術レベルの向上は凄まじく、その要が他国から注目されないほうが

おかしい。
 いままではともかく、堂々と一刀と接せられるのだ。機を見るに敏。ここぞとばかりに他国からの接触が多くなるのも無理からぬことである。

「周瑜さんや諸葛亮ちゃんと話せるのは良いけど……」

 話が事務的なことから逸れ、雑談に入ると何故か周囲からの風当たりが強くなる。

 例:春蘭「北郷貴様! なにをサボってデレデレしておるか!!」
922 名前:覇王の憂鬱(後編)14/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 01:07:06 ID:dlHVJ+A80
 などと邪魔が入る。その度に会話していた女性は、「やれやれ」とか「あらあら」と苦笑しつつ肩をすくめ、去っていくのだ。

 それはともかく。

 一刀は場から抜け出し、城壁の上に来ていた。夜風が火照った体に気持ちいい。
 そして周囲を見渡すと、先客がいることに気付いた。

「ん? 霞じゃないか」

「一刀?」

 一人酒をちびちびと飲っていた霞が、ほろ酔いの顔をこちらに向けた。

「どうしたんだよこんな所で」

「うん・・・・・・」

 霞は曖昧な返事で、酒をぐい、とあおった。

「・・・・・・一刀。結婚、おめでとうさん」

「ああ、ありがとう」

「・・・・・・ウチな、一刀と大将の結婚、これでも心から祝福してるんやで?
 大将のことは好きやし尊敬してる。一刀もや。勿論異性として、な」

「・・・・・・」

 一刀は気まずげに頬を掻く。実を言うと似た様な台詞は今日までも何度か頂戴している。
924 名前:覇王の憂鬱(後編)15/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 01:11:20 ID:dlHVJ+A80
「あんな、誤解せんと聞いてほしいねん。
 ウチが一刀らを祝福しとるんはホンマや。嘘やない。
 でもな、一刀。いつかウチと約束したことあるやろ。憶えとるか?」

「・・・・・・ローマ、か」

「憶えとったか」

 霞は嬉しげに呟き、杯を煽る。

「繰り返すけど、一刀らの結婚はウチかて嬉しい。ホンマやで。
 でも、でもな・・・・・・」

 一拍置いて、霞は声を絞り出した。

「ウチ、一回でええから、一刀と一緒に、羅馬(ローマ)行きたかった・・・・・・」

「霞・・・・・・」

 一刀は霞の名を呟く事しか出来ない。
 今更何を言えというのだろう。

「あはっ、なぁんて、な。いや気にせんといて? 一刀を困らす気ぃなんかホンマ無いんや。
 でも、今だけは、だれかがウチらを見つけるまでは、ウチの酒に付き合ってくれへんか……?」

 実際、霞もこんなことを言うつもりはなかった。心に秘めておくつもりだったのだ。
 だが無理だった。心が弱くなってしまったのか。霞自身にもわからない。
 確かなことは、口に出してしまった本心は取り消せないということだ。

 城壁の上を気まずい空気が流れる。お互いがお互いに対して申し訳なく思うが故だが。
926 名前:覇王の憂鬱(後編)16/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 01:15:35 ID:dlHVJ+A80
「話は聞かせてもらったわ!」

 突然第三者の声が響き渡った。二人はぎょっとして声のしたほうを向く。
 そこには、腕を組み仁王立ちする曹孟徳。

「一刀。それに霞」

「「は、はいぃっ!」」

「新婚旅行は、羅馬にするわよ!」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」」

「勿論、主な武将・軍師は全員参加よ」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 絶句だった。

「い、いや、全員参加て、この国もぬけのカラになるやんか!?」

 霞のもっともすぎる突っ込みに、華琳はふむ、数秒考え、

「それもそうね。だったら留守中は桃香が雪蓮あたりにでも留守番してもらおうかしら」

「ちょっ! 流石にそれは問題ありまくりだろ!?」

「いいのよ。仮に国を乗っ取られたりしたとしても、また奪い返せばいいのよ」

「いやいやいや」
928 名前:覇王の憂鬱(後編)17/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 01:18:42 ID:dlHVJ+A80
 流石にこれは冗談だと思いたいが、妊娠発覚後から続く晴れやかなこの笑顔は本気に見える。

「まぁ細かいことは今から考えるわよ。二人とも来なさい! あ、桂花や稟、風も呼ぶのよ。予定を練らなきゃ」

 酔ってる所為だと思いたい。
 そう思いながら、一刀は華琳に引き摺られていった・・・・・・。
931 名前:覇王の憂鬱(後編)18/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 01:30:51 ID:dlHVJ+A80
 2年後、出発時は19人(魏の主要メンバー+西洋の医術目当ての華佗と追っかけの貂蝉&卑弥呼)だった新婚旅行の人数は、
 帰還時約五千人にまで膨れ上がっていた。
 その約半数は数え役萬☆姉妹の魏〜羅馬間ツアーで獲得した熱狂的ファンだが、
 華琳のカリスマ&一刀のたらしテク(無自覚)に惹かれて集った者たちの数も少なからず含まれていた事を明記しておく。
 また、華琳と桂花以外にも妊娠・出産した者がいたが、旅行中に増えた新メンバーもその中に何人か含まれていた。
 主要な武将など言うまでもない。一刀自重。
 そして、華琳と桂花は二人目の子を妊娠していた。

 華琳ら一行が魏への帰還に際し、本国でイザコザや争いがあったかどうかは定かではないが、
 その後華琳が無事に魏の王として善政を敷き、永らく繁栄を築いたことは確かだったようである。

 常識的に有り得ない事なので後の歴史家はさぞかし困惑したことであろう。

 ただ、後の歴史家の事情など、今を生きる恋姫たちにはまったくもって関係の無いことである。
932 名前:覇王の憂鬱(後編)19/19[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 01:31:20 ID:dlHVJ+A80


                           三国時代を調べる前に言っておくッ!
                      おれは三国時代の天の御遣いをほんのちょっぴりだが調べた
                    い…いや…調べたと言ってもまったく理解を超えていたのだが……
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 調べた結果を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『出発時は19人だったが
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        帰還時は約五千人になっていた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何が起こっていたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    曹操のカリスマだとかアイドルの追っかけだとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしい無自覚たらしの片鱗を味わったぜ…

        ↑後の歴史家
935 名前:覇王の憂鬱(後編)あとがき[sage] 投稿日:2010/05/24(月) 01:52:37 ID:dlHVJ+A80
タイトルの由来
妊娠発覚後の華琳さまのテンションが涼宮ハ○ヒそっくり。
だからタイトルもそれっぽく、涼宮ハ○ヒの憂鬱→覇王の憂鬱となったんです。
嘘ですけど。

実を言うと今作は、前作「桂花の風邪」で、

 人生で一番激怒したとき。
 ―――――天に帰った一刀が、再び自分の前に締りのない笑顔で現れたとき。

 人生で一番嬉しかったとき。
 ―――――華佗に「これは……おめでただな」と言われたとき。

 人生で一番驚愕したとき。
 ―――――桂花に、まるで虫を見るような目で見据えられつつ毒舌を吐かれたとき。

という華琳さまの自伝の記述がありましたが、それに対する感想レスに、

「いつか「最も嬉しかった時」のSSも拝見したいです」

というものがあったことがきっかけです。
いつか一番激怒したときの話を書く機会があるでしょうか……。

もしそうなったら9割の登場人物が春恋キャラになるかもしれませんが。

それでは皆さん。最悪なオチでしたが、声援・支援ありがとうございました!

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