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747 名前:清涼剤 ◆q5O/xhpHR2 [sage] 投稿日:2010/05/15(土) 21:32:19 ID:IKR5Ycw50
無じる真√N-41話を専用板にUPしましたので告知させていただきます。

(この物語について及び注意点)
・展開などのため、原作と呼称が異なるキャラが存在します。
・恋姫 †無双(真ではありません)のED前からの派生となっています。
・後々、特殊な仕様が出てくる予定です。(恐らくはこの章か次の章になります)
・時折18歳未満にはよくない場面が出てくることがあります。
・特殊なカラミや不快に思う可能性のある場面が出てくることもあります。
・複数の資料を参考としつつ書いています。(資料に関してはQ&Aにて)
※あくまで参考なので読む方があまり気にはならないよう気をつけてはいます
ですが、どこかで出ていることがあるかもしれません

上記が苦手な方にはおすすめできません。

(その他)
・話の都合上、未プレイの方は原作のプレイをお勧めします。
・過度な期待などはせずに見てやって下さい。
・未熟故、多少変なところがあるかもしれません。
・URL欄はメールフォームです。(必須項目は設けていません)
※意見、感想などはそちらでも構いません。
また、メールフォームから以前頂いた質問と解答へのリンクがあります。


気がつけば拙作を書くことが趣味どころか私生活の多くを占め始めている今日この頃
時折、遠くから見える自分がなんだか恥ずかしくもあり……身もだえする日々。
なのに、先はまだまだ遠い。とにかく頑張ります。

URL:http://koihime.x0.com/bbs/ecobbs.cgi?dl==0528



 「無じる真√N41」




 徐州の完全統治のために下邳に滞在中である袁術の声が室内に響く。
「ぬははー! そうれ、そうれ!」
 ご機嫌な袁術が手に持った玉璽でポンポンと印を押していく。何に? それはもちろん――
「このハチミツも、そのハチミツもじゃ!」
 ハチミツが蓄えられている壷を覆う布にだった。
「妾の……いや、帝のためのハチミツなのじゃ!」
 景気よく印を押すしつつ、袁術はふと、視線をあげてみる。臣下たちはみな微妙な面持ちをしている。それが気に障り、一人を除いて皆外へと出るように命じた。
 肩を落としてぞろぞろと退室していく家臣たちを眼で送ることもせず、袁術は残した一人へと眼を留めた。
 残した一人こと、張勲が笑顔で諸将たちへと手を振っている。そんな彼女をじっと見つめているうちに袁術は素晴らしい名案を思いついた。
 そして、張勲へと声をかけて手招きする。
「七乃、ちょっとこっちに来るのじゃ!」
「はいはい、何ですか?」
「うむ、妾に背を見せてみよ」
「はい?」
 袁術の言葉の意味が分からないのか、張勲が小首を傾げる。
「いいから、さっさと振り返るのじゃ!」
「はいはい、わっかりました〜」
 ニコニコと満面の笑みを浮かべたまま張勲が後ろを向く。その瞬間、袁術は瞳をキラリと光らせる。そして、さっと彼女の背へと腕を伸ばした。
「えいっ!」
 かけ声一番、張勲のスカートの中へと手を差し入れ下着――桃色の生地、ワンポイントのリボンが特徴らしい――を勢いよく下げる。それによってハリのある尻肉が反動でぷりんと飛び出す。
 予想外だったらしく張勲の身体が跳ね上がる。
「ひゃあ!」
「可愛い声じゃのう。ぬふふ、ではでは……ほいっと!」
「あっ!」
 シミ一つなく、すべすべしていそうな尻肉へ玉璽を押しつける。そして、ポンという音共に離すと、谷を挟んだ二つの白い桃山にその渓谷をまたぐようにして印がしっかりと出来ていた。
 それを満足そうに見て何度も頷くと、袁術は満面の笑みで高らかに宣言する。
「これで、七乃は正式に妾のものなのじゃ〜」
「あら、こんなことしなくてもいいのに」
「うむ? 何故なのじゃ?」
 張勲の反応がよくわからず袁術は瞳で訊ねる。すると、張勲は微笑みを称えた表情を浮かべた。
「だって、七乃はいつだってお嬢さまのおそばにいますよ」
「そうか、そうじゃな。うむ、七乃はいつでも妾と一緒じゃ。とはいえ、折角じゃからな。一種の証ということでやってみたのじゃ」
 そう言うと、袁術は玉璽を振り上げて高らかに笑う。
「なっはっはっは! 妾は帝ぞ! 元号は仲! ふはは〜」
 そんな袁術を、下着の位置を手直ししている張勲が微笑ましげに見つめてくる。
「ふふ、もうお嬢様ってば……そういえば、雛里ちゃんにはするんですか?」
「そうじゃのう……やはり、やっとくかの!」
 僅かに思考を働かせた袁術がすぐに結論を出すと、張勲が手を組んで見上げてくる。気のせいか、瞳がキラキラと輝いている。
「でしたら、その場には是非とも同席させてください!」
「うむ、構わぬぞ!」
「やった! 雛里ちゃん早く帰ってこないかしら〜」
「今から胸が躍るのう。あっはっはっはっはー!」
 二人の笑いが室内に大きく響き渡るのだった。

 †

 都に辿り着いてすぐに宮廷での一件があったため、劉備は少し疲れていた。宿舎へと案内されたのも日も沈み月が代替するようにして空を独占するようになってからだ。
 口から出ようとするあくびを劉備が噛み殺していると共に止まっている関羽が近寄ってくる。
「桃香様、今日はお疲れのことでしょうし。もう寝られては?」
 関羽は労るような優しい声で語りかけてくれた。そんな彼女の気遣いに感謝しつつ劉備は頷く。
「うん。そうだね」
「私はもう少し身体を動かしてから寝ますので少し部屋を出ていますね」
 そう言うと関羽は外へと出て行ってしまった。おそらくは鍛錬、そして警備だろう。朝廷の中心へと接触し、今もなお都にいる。それ故に関羽は警戒しているのだろう。
(心配性なんだから……もう)
 ため息を吐くと苦笑を浮かべて寝台へと寝転がる。天井を見つめながら劉備は考える。今日あったこと……朝廷で官僚の一人と曹操が交わした言葉。そして、知ってしまった事実。
 この大陸にある"根本に存在する悪環境"という現実と帝の不在、これらが一体何を意味し、劉備の未来へと影響を及ぼすのか、今の彼女にはわからない。
「問題なのはそれよりも……」
 関羽の言う通り、精神的な疲労が溜まっていたのか今更になって重くなる瞼をそのまま下ろし、劉備はそっと目を閉じた。
 今、なによりも劉備が考えたいことは、この先どうするかということ。いつまでも曹操の元にいるわけにもいかないのは間違いない。それは曹操すらも思っていることのようだった。
 しかし、仮に独立し、再び自分の勢力を手にしたとして何が出来るのか、そして何をするのか。考えれば考える程に想像は追いつかず、具体的な映像が浮かび上がらない。
 劉備は前髪へと指を通しくしゃくしゃにするようにかき混ぜる。
「なんで、ここにきてこんなにも……」
 立ち止まってしまった自分に劉備は苛立つ。仲間たちは皆、目標を持ってそれぞれの行動を取っている。そんな中、劉備は自分の行き先すら定めていない……いや、定められずにいる。
「なに、してるんだろ。わたし」
 重苦しいため息が口から漏れるのと同時に部屋の扉に気配を感じる。それと同時に声が聞こえてきた。
「劉備殿はおられますか?」
「……はい」
 気怠くて重さを増している身体をのっそりと起き上がらせると、劉備は扉へと歩み寄る。
「夜分に申し訳ありませんが、少々お時間をいただけますか?」
「…………」
 何か嫌な予感がしながらも劉備は仕方なく扉を開ける。そこには曹操軍でも劉備の元にいるのでもない兵士が立っていた。
 劉備はその姿に首を傾げつつ、用件を尋ねることにした。
「一体、何の御用ですか?」
「えぇ、実は劉備殿とお会いしたいという方がいまして。もし、よろしければ屋敷へ招きたちとのことです。あ、お車はこちらで用意させていただきましたので」
 車まで用意するとは一体何事なのだろうか、劉備の予感はますます嫌な方へと募っていく。
「でも、ちょっと」
「もし、ご心配でしたら。お供の方をお連れになってはいかがでしょう? それと帯刀も構いません」
「そうですか……それなら」
「おや、桃香様。む、客人ですか?」
「あ、愛紗ちゃん」
 僅かに首の方向を変えると、そこには青龍偃月刀を肩に担いだ関羽が二人の元へとやって来るところだった。
 その顔は訪問者へと疑いの眼差しを向けている。やはり警戒していたようだ。
「その、ちょっと話をしに行くんだけど。一緒に来てくれる?」
「はぁ? まぁ、桃香様がそれでよいとおっしゃるのでしたらついて行きますが」
 訪問者と劉備を交互に見ながら関羽が小さく頷いた。
「ではさっそく参りましょう」
 そう告げる遣いの導くままに外へと出ると、劉備と関羽は用意されていた車に乗り込む。
 それから、劉備が五度ほど空を見上げたあたりで目的地へと到着した。その門に人影がぽつんと存在していた。
 劉備は気を引き締めると、その影の方へとゆっくりと歩み寄っていく。
 そこにいたのは昼に面会した官僚だった。
 劉備は、自分の中にある嫌な予感がますます膨れあがったのを感じた。そんなことなど気がつきもしない様子のままうやうやしく一例をすると、官僚によって劉備たちは中へと通された。
 一体、何故呼び出したのかを何度か訊ねようとするが官僚の他愛ない世間話のせいで話を切り出すことができないまま一つの部屋へと案内されることになった。
 そこで話が区切れたのを機会に、劉備は腰掛けながらさっそく切り込んだ。
「それで、一体何のお話でわざわざ遣いの方をこちらへ?」
「それはですね……おほん」
 対する官僚は咳払いすると、横目を使い劉備の傍で立ったまま控えている関羽をちらりと見やった。
 その意味を察すると劉備は関羽の方へと顔を向け、視線だけで外で待機するよう伝える。
 顔を近づけてきた関羽が「……よいのですか?」と囁いてきたので劉備はただ黙って頷いた。それに対して何か言いたげな色を瞳に残していたが、関羽はそのまま部屋の外へと出て行った。
 官僚は関羽の姿を見送っていた視線を劉備に戻すとようやく口を開いた。
「では、お話しするとしましょう」
「他の人に聞かれてはまずいことなのですか?」
「えぇ、出来れば劉備殿、そして、劉備殿自身が信頼なさる方のみがその胸の中で知る話としていただきたいのです」
「わかりました。そうします」
「感謝します。では、さっそくですが……本日の曹操殿の発言、如何お思いですかな?」
「どう、って。どういう意味ですか?」
「朝廷すらも相手にするといわんばかりの発言、あれについてです」
「……それは」
 目の前の人物が一体何を期待し、劉備に何を望もうというのかがなんとなく見えてきた。
「あれこそ逆臣! いずれは災いをもたらすに違いない。出来るならば早き段階で何とかこの国から取り除かねばなりません」
「……それを何故、わたしに?」
「このことはまず、帝の話からしましょう」
 そう言うと、官僚は遠くを見つめるような瞳でふっと軽く息を吐き出した。
「帝の姓が劉なのは知っておりますな?」
「……はい」
「そして、貴女も――」
「ちょ、ちょっと待ってください。まさか、わたしと天子の間に繋がりがあるとでも?」
「そうです。それは何よりも貴女の傍にあるものが証明しております」
「な、なんですかそれ?」
 一体、何処へ向かって話が進もうとしているのか劉備にはわからなくなってきた。帝と自分の間に近しいナニカがあると言わんばかりの態度が意味不明だった。
 そして、自分の傍にあるもとは、一体……何なのだろうか?
「曹操殿と共においでなさったとき、危険と判断したものは預からせていただきましたな」
「えぇ、確かにそうですけど」
 確かに朝廷の官僚たちと会うために宮廷を訪れた際には確かに丸腰だった。
「逆に今はお持ちになっておられるソレのことですよ」
 そういって完了が劉備の腰にある一振りの剣を指す。
「この靖王伝家がどうかしたましたか?」
「おぉ、名前も靖王ですと!? それはそれは」
 あごに手を置いてじっくりと を眺める官僚に劉備はどう対処しようかと頭をめぐらせる。だが、官僚は劉備が結論を出す前に再び口を開いた。
「その剣、靖王伝家は中山靖王こと劉勝より継承された名刀に違いありません!」
「え、えぇ!?」
「その他の剣とは異なる装飾、風格……見紛うことなく劉家の宝刀」
「そ、そんな……だってそんなこと、わたし知りません」
 初めて言われたことだった。この靖王伝家がそんなにも格式の高い剣だったとは思いもよらなかった。劉備自身もそれなりの価値はあるだろうとは思っていたが予想を超えていた。
「やはり、その剣からしても、あなた様は帝の親族に違いありませぬ!」
 官僚はわが意を得たりと膝を打って喜びをあらわにしている。
「で、でもやっぱり何かの間違いじゃ」
「そんなはずはありません。よくみれば劉備殿にはどこか高貴さが感じられますなぁ」
 官僚は気分が良くなってきたのか、次々と賞賛の言葉を並べ立てていく。
「そんな劉備殿だからこそ、曹操の打倒を是非とも実現していただきたいのです」
「わ、わたしは……」
「別に正面からでなくとも……そう、暗殺だろうとなんだろうと構いません。曹操を討ってくだされ。それが朝廷の……ひいてはあなたの親族であらせられる帝のためなのです!」
 目を剥くようにしてじっと見つめてくる官僚に劉備は何を言えば良いか、言葉が出てこない。
 そんな間にも官僚は必死な姿勢を見せる。床に手を突き仰ぎ見るようにして劉備に対して目を据えている。
「是非に、是非に! どうか、お頼み申し上げます」
「…………即答は出来かねます」
 ついには平伏している官僚を見て、無碍にも出来ず劉備は期限の引き延ばしへと走った。
「仕方ありませぬな。何しろ急な願い。一言で承諾していただこうというのが無茶なことでしたか」
「すみません」
「そんな頭を上げてくだされ」
 そう言われ劉備は下げていた頭を上げる。そして、すぐさま口を開いた。
「そういうわけなので、これで失礼します」
 そう言うと劉備はすっと立ち上がり、門まで送るという官僚の言葉を丁重に断り、関羽と共に屋敷を出て行った。
「一体、何の話を?」
「うん……ここじゃちょっと言えないから後でね」
 どこに曹操の手の者がいるかはわからない。故に即座に答えることはできないと劉備は判断した。例え関羽が相手でも、しばらくは伝えるわけにもいかないかもしれない。少なくとも兗州に戻って他の者たちと合流するまでは……。

 †

 翌朝、劉備は日が昇るのと同時に眼を覚ました。
 妙に外が騒がしかったのだ。おそらくは曹操がいるであろう方向へと駆けて行く足音、朝廷の官僚たちの各自の屋敷へと向かいながらに飛び交う声。
 さすがに、それらがあっては劉備も寝てはいられなかった。
「い、一体、何事なんだろう?」
 そう思って窓から外を伺おうとしたとき、扉が開き関羽が入ってきた、どうやら、いつの間にか外へと出ていたらしい。
「あれ? 愛紗ちゃん何処行ってたの?」
「朝の鍛錬ですよ。桃香様」
 何気なく訊ねた劉備に律儀に答えると、関羽は「それどころではありません」と前置きし、話を始めた。
「実は、外に出ていて耳にしたのですが、なにやら徐州で動きがあったそうです」
「え? それ本当?」
 劉備は勢いよく寝台から飛び降りて関羽へと詰め寄る。徐州と言えば、かつて劉備が統治し、後に袁術によって簒奪された土地である。
 その徐州に動きがあったと言うことはつまり、袁術がなにか行動を起こしたと言うことである。
「詳しくはよくわかりませんが、もしかしたらこれは絶好の機会なのかも知れません」
「…………う、うん」
 劉備はいつの間にか溜まっていた唾を飲み込む、喉がごくりと音を立てたような気がした。
「袁術が兗州、豫州へと進行を企てるようなら我らが曹操に誓った"仕事"を果たすことが可能やもしれません」
「うん、そうだね」
 そして……どうするのだろう、自分は。そんな疑問が劉備の脳裏を掠める。大切な家族の一人は未だ徐州にいる。仮に彼女を救い出し、曹操への恩義を果たしたら次は何をすればよいのか?
 それを考えると、一つの答えしか出てこない。
「何はともあれ、曹操の元へ行くべきでしょう」
「え? あ、あぁ、そうだね」
 関羽の言葉に思考を遮られた劉備は余計な事を考えないよう気をつけながら寝間着から着替えた。ちょうどそれが終わる頃に曹操からの遣いがやってきて、彼女の元へ向かうように言われた。
 劉備はすぐさま、関羽と共に曹操の元へと赴いた。そこから今度は宮廷へと向かうことになった。先日、曹操が宣戦布告らしきものをしたばかりの場所へ……。
 一体、何が起こっているのか、朝廷の官僚たちがどのような心持ちで曹操と劉備を待っているのかなどわからぬことばかりで多少の困惑を胸に秘めたまま劉備は再び大広間へと通されることになった。
 そこには、先日同様多くの官僚たちが勢揃いしている。洛陽へと出ている王允及びその側近たちは間に合ってはいないようだ。
「さて、この曹操を呼び出したのにも訳があるのでしょう?」
 もっともらしく曹操が話を切り出した。官僚たちは苦虫をかみつぶしたような表情で曹操を睨み付けている。余程忌々しく思っているのだろう。
 そして、曹操の破滅を願わんとして劉備に密約をさせんとした官僚が返答をはじめた。
「曹操殿も恐らくは既に耳にされておられるだろうが、袁術が……あの不届き者が、愚かにも帝位を僭称しおったのだ」
「え?」
 関羽が言っていた徐州の動き……それがまさかそのようなものだとは思いもしなかった劉備は息を呑んだ。
 袁術が無茶苦茶なところを内包しているのはうっすらと感づいてはいたが、まさか天に唾するような真似をするとは思っても射なかった。
「ふふ、そうね。既に聞いている。それで? 要件は?」
「うむ、あの不忠者を討っていただきたい」
 それは朝廷の人間としては当然の言葉である、劉備にもそれはわかる。だが――
「理由は、朝廷とって不義の臣となるから……だけではないのでしょう?」
「……ぐ、そ、それは」
「明確にさせてもらおう! 理由は天子の不在という最悪の時期に帝を僭称したことが一番の理由なのだろう?」
 そう、そうなのだ。先日帝が行方知れずとなっているという話を聞いたばかりのことだった。だからこそ、袁術を早急に討たせようとする理由はそこにある……劉備にもそう思えていたのだ。
 曹操が確信に満ちた瞳で相手を貫くが、反応を示したの他の官僚たちの群れの中にいた高官だった。
「そんなことなど、貴様には関係あるまい。お前はただ、あの逆臣を討てばよいのだ!」
「黙れ! 私はいま、この者と語らっているのだ。余計な口出しをしてもらっては困る」
 曹操にキッと睨み付けられ、高官は腰を中途半端に浮かせた体勢のまま固まった。それで意を決したのか、官僚が口を開いた。
「すまぬが、理由は逆臣。この一点させていただこう。帝はあそこにおわす。それは絶対なのですから」
 そう告げる官僚の瞳はとても重々しく、曹操にのしかからんとしているようだった。だが、曹操はそれをものともせず、ただ不適な笑みを浮かべ一言「まぁ、それもよし、か」と呟き頷くだけだった。
「では、頼みましたぞ。曹操殿、そして劉備殿」
 今までまるで対象として捉えていなかったはずの劉備に視線をくれた官僚。その瞳に含まれる色から、劉備は「頼む」という言葉の裏には袁術のことだけでなく、目の前にいる覇王のこともあるのだと本能で察した。
 それからの曹操の動きは速かった。それこそ同じ統率者として目を見張る者があった。
 宮廷を出てすぐに、荀ケを呼びつけ、事の経緯を改めて説明した。荀ケはそれを訊いて「袁術ならやりかねない愚行ですね……」と呟きすぐに自らがするべきことを判断し、兵士たちの中へと姿を消した。
 それとほぼ同時に既に軍量の調達に出ていたという夏侯淵及び兗城にいる郭嘉、程cへと伝令を放とうとしていた。
「夏侯淵には共にいる将兵をつれ、すぐに徐州との境辺りに陣をしき警戒にあたるように伝えろ。また、兗城にて留守を預けている郭嘉、程cにはすぐにでも将兵を出させろ。また、この曹操が合流するまでの間、将兵たちの統率を任せると伝えておけ」
「は!」
 兵士も無駄な動きもせず、すぐに早馬として出立した。
 それから、曹操は将兵の準備を整え戻ってきた荀ケにどれ程で戦場となる地点へと到着できるかを尋ね、すぐさま全軍に対して「直ちに兗州へと戻る」と宣言し、長安を後にした。
 それらの動きはまさに一分の隙もないほどに的確で、また素早かった。
(これが、一勢力を束ねる人の中でも秀でた才能を持つと言われる曹操さんなんだ……)
 あまりにも自分と違うその姿に劉備は何度目になるかわからない脅威を覚えた。思わず複雑な表情をしていた劉備の方へと曹操が視線をちらりと向けてきたような気がしたが、頭の中が様々な感情、情報によって混乱状態に陥っている劉備が気付くことはなかった。

 †

 辺り一面を照らす日差しが遮られている僅かな部分……屋根の下で公孫賛はため息を吐いた。
 もし、心の持ちようと息の重さが比較していた間違いなく重みで沈んでいってしまうと言えるほどに深く重量感のある息だ。
「なんだかなぁ」
「やれやれ、一体何があってこのようなことになってしまったのでしょうな」
 公孫賛の隣に座っている趙雲が腕組みをして天を仰ぐ。
 朗らかで陽気な光に満ちあふれた中庭のなか、二人のもとにのみ暗雲が漂っていた。
「一刀と最近、話してないんだが……」
「私も以前と比べれば大分減りましたな」
 そう言うと、互いに深く息を吐き出す。一体、何がどうしてしまったのだろうか……一刀は、いや最近の彼は。そんなことを思い公孫賛はまたもやため息を吐く。
 公孫賛は、気のせいか徐々に彼と接触が取れる回数が減っているように感じた。実際、数えてみれば少なくなっている。
 酷いときには一刀が直接くればいいのに代理を立てたこともあった。
「一体、どうしてなんだろうな」
「さぁ、わかりませんな」
 今日の趙雲は珍しく塞ぎ気味だ。まぁ、それは公孫賛も一緒だが。最近は暇が出来てもこの調子のことが多くなった。恐らくは趙雲も同じなのだろう。
 一刀が来てからは彼との日常になれてしまったのだ。だから、彼がいないだけで、暇に思えることもあるし、手持ちぶさたになりがちにもなる。
「もしかして、私たちはあいつに女として見られてないとか?」
「いえ、すくなくとも私は違いますぞ」
「え?」
 公孫賛は、自分の言葉に手を振って無い無いと示す趙雲へと一瞬で視線を向ける。
「なにしろ、押し倒された経験ならありますからな。主に女として見られていないというわけではありません」
「え!? あれ? いやいや、よく考えたら私だって……あれ?」
 公孫賛は咄嗟にあのたった一度きりの夜のことを思い返して反論しようとしたが、あれは押し倒されたわけでもない。あくまで公孫賛の動いた結果だった。というよりも公孫賛が奇襲をかけただけだった。
「……わ、私は押し倒されてすらいない! そもそも、私からなにか接触を計らねば進展も望めないような微妙な関係。しかも、それすら危ういこの頃……ってどういうことだよ!」
「……もしや、魅力が」
「ふざけるな! 私だって、魅力はあるはずだ! それともなんだ? 私にはそんなにも魅力が無いとでもいうつもりか!」
「いえ、普通程度にはあるのでは?」
「なんだ? 普通じゃダメなのか! というか、普通ってなんだよ!」
 公孫賛は立ち上がり趙雲に詰め寄らんと一歩を踏み出す。そこへ張遼がやついた顔でやってきた。
「なんやなんや? 昼間から酔っぱらっとるんか?」
「ん? あぁ、霞か。よし、お前も座れ!」
 足を元の位置へと戻し、再び腰を下ろす。張遼がそれに従って座るのを確認すると公孫賛はすぐに質問を投げかける。
「それでなんだが、霞。お前は最近の一刀をどう思う!」
「はぁ? いきなりなんや?」
「いいから答えろ」
 公孫賛が問答無用とばかりに眼で煽ると、首を傾げていた張遼がうぅむと考え始める。
「そうやなぁ……最近はあんま構ってくれへんからつまらん……かな」
「そうだろう!」
 公孫賛は仲間を見つけた嬉しさのままに両手を思い切り卓へと叩きつける。
「さ、さっきからなんや?」
「いや、実はな。一刀と最近顔を合わせることがなくなってきてる気がしてな。もしかしたらあいつのほうから避けようとしてる疑いが浮上してきてな。そのことで星と話をしていたんだ」
「一刀が避ける? んなアホな」
「いや、あいつと共に過ごす時間が減っているのは覆しようのない事実だ」
「うむ。それには私も同意なのだ」
 趙雲が強調するように頭を何度も振る。
「そ、そういわれると、なんやウチまで不安になってくるわ」
「そうは言うが、よく考えてみろ。主と仕事があって共に過ごす。それくらいなら私にだってあるぞ……だが、私的な時間のときは確実に減っている」
「た、確かに思い当たらんこともないな」
 趙雲の言葉に張遼が苦い表情を浮かべる。そして、うなだれた彼女が改めて最近を振り返るのを見ながら公孫賛は口を開いた。
「そうだろう。近頃の一刀は何かおかしい」
「せやかて、どうおかしいかなんてわからへん。一緒にいるときだって依然となんらかわらへんし……」
 そう、張遼の言葉通りだ。たまに会うことができたときの一刀の様子は別にこれといって不振なところはないのだ。
 そのため……だけではないが、ついつい見逃しがちになってしまうのだ。それから後になって気がつく。そう、まるで今のように……。
「主は一体何を考えておられるのか……折角、今度押し倒されたときのために色々と気構えを――」
「ちょ、まちぃ!」
 何気なく告げた趙雲の一言に張遼が待ったをかける。対する趙雲は止められた意味がわからないのか首を傾げる。
 公孫賛も張遼の一言で先ほどのことを思い出し、ふつふつと怒りの感情が再燃焼し始める。
「む? 何か?」
「何か? やあらへんっちゅうねん! 今度押し倒されたときってなんや!」
「むろん、主に強引に閨をともにするよう迫られる、ということだが?」
「誰が言葉の説明をせいっちゅうとんのや!」
 故意なのかはわからないが、さらっと流そうとしている趙雲に張遼のツッコミが入る。
「ふむ、ではどうせよと?」
「やから、今度っちゅうことはや。すでに一度目があるっちゅうことやろ?」
 その言葉を耳にした瞬間、公孫賛はあることに気がつき、それを口にする。
「そういえば星。お前からそのことについての説明をされてなかったな」
「い、いや、そのですな……それは、言わないと……ダメですかな?」
「当然!」張遼と公孫賛の声が一つになり趙雲へと降り注いだ。
「わ、わかりました……仕方がありませんな。そう、あれは――」
「くれぐれも嘘、誇張はせんようにな」
「む、話が聞きたいのならばちゃちゃをいれるのはやめていただこうか」
 遮るような張遼の言葉にむっとした表情を浮かべると、趙雲は腕組みをして視線を二人からそらしてしまった。
「わ、悪かったて。あくまで釘刺しただけやん」
「次はないぞ」
「気をつけるさかい、はよ始めぇな」
 へりくだった張遼の態度をちらりと一別すると、趙雲は咳払いをした。
「では、今度こそ――」
 そうして、趙雲から一刀の部屋を訪れた際の話を聞かされることとなった。その間、張遼、公孫賛は共に黙り込み一言もききもらさないようにしていた。
 公孫賛は趙雲の話を聞きながら、頭の中でうまくまとめようと試みる。
 趙雲が一刀の部屋いき、寝台に座っていたら突然立ち上がった一刀が覆い被さってきて寝台に横にされて身体に触れてこようとしたところで中断させた。
「――という感じでしてな」
 趙雲が締めの言葉と息を出したところで、公孫賛は半目で彼女を見つめる。
「結局は最後まで至ってないんだな」
「まぁ、そうですな。いわばお預けというやつですな」
「……はぁ」
 趙雲が余裕を見せたまでと胸を反らす一方、張遼は頬杖をついて意識個々にあらずといった様子で趙雲を凝視している。
「どうした?」
「なんや、ウチだけ置いてかれとる感じがしてな……」
「そうか?」
「星はもう一歩ってとこまで……白蓮はすでに一回しとるし……ウチも進展させたい! つか、約束を果たしとらんやないか!」
「あのなぁ、真っ昼間からしてるとか言わないでくれ。後、約束ってなんだよ」
「そら秘密や!」
 公孫賛は頬が熱くなるのを感じながら声をかけるが、張遼は一刀の部屋の方に目を留めたまま真剣な表情をしている。
 その一方で趙雲が「ふむ」と考えるそぶりを一瞬だけ見せる。その後すぐに頷いて、張遼へと目をやる。
「それならば、行動あるのみだろう」
「そうやな……一刀が動かへんのやら、こっちからいくしかあらへんか」
 呟くようにそう言った張遼の瞳にはうっすらと炎が見えるようだった。
「……一体、何をしてますの?」
「ん? あぁ、麗羽か」
 声の方へと目を向けると、袁紹が呆れたような顔をして立っていた。
「それで、何をそんなモグラみたいな顔をしておりますの?」
「もぐら?」
 袁紹の言葉に場の時間が止まる。しばらく沈黙が続いた後、袁紹がため息混じりに肩をすくめた。
「まったく。発想力のない方はこれだから……モグラといえば地中、地中といえば真っ暗。つまりは暗い顔をして、と言ったのですわ」
 胸を張る袁紹。その反動で放漫な果実がぷるんと弾む。大して、公孫賛たちはため息を漏らすことしかできない。
「まぁ、そんなことはどうでもいいとして。何の話をしていたんですの?」
「あぁ、一刀のことをな」
 公孫賛はこれまでのあらましをところどころ省きながら袁紹へと説明する。
「ふぅん、最近顔を合わせることが少なくなってると……」
「あぁ、特に私がな」
 あえて「わたし」の部分を強調して説明する。
「なんや、それ」
「まるで自分が一番だと言わんばかりの発言ですな」
 二人の視線が身体へと突き刺さるが、公孫賛はそれをものともしないばかりか、むしろはじくくらいの勢いで背筋を伸ばすようにして立ち上がる。
「お前らにわかるか! 普段から仕事に追われて会う機会もなく。仕事関連の連絡で会えるかと思えば、一刀自身が自分の仕事で忙しいだのなんだのと理由をつけて代わりの人間をよこされる。どれだけ会ってないと思ってるんだー!」
 そう叫ぶと、趙雲と張遼が苦笑うかべながら謝罪の言葉を述べてきたので公孫賛は許すことにした。
「あらあら、きっと愛想を尽かされたのですわね」
「…………っ」

 哀れみの視線を向けてくる袁紹の言葉に公孫賛は息をのんだ。これまであえて考えないようにしていた可能性……一刀に飽きられたかもしれないということ。
「ちょ、言い過ぎやで」
「あら? そうですの?」
「うむ、白蓮殿の顔を見よ。あんなにも青白くなっている」
 趙雲が何か言うが公孫賛の耳にはそれが届かない。それよりも、頭の中を埋め尽くそうとする"もしかしたら"という言葉を打ち消すので手一杯だった。
「冗談ですわよ。白蓮さん」
「じょう……だん?」
「せや。冗談。やから落ち着きいな」
「冗談か……」
 内心、疑念が残ったままだがひとまずは周囲の言葉に乗ることにした。
(可能性はないとは言い切れないが、すくなくともあいつ自身から言われた訳じゃないんだ。大丈夫さ)
 自分にそう言い聞かせて白蓮は再び一刀についての会議を再開した。
「それよりも一刀のことだな。麗羽どうだ?」
「別に普通ではありませんの?」
「なに?」
 袁紹の答えに公孫賛は眉をひそめる。とくに違和感を覚えていない、ということは一刀とは特に何もなく接しているということになる。
「な、何故だ……」
「いえ、何故と聞かれましても。わたくしは知りませんわ」
 睨み付けんばかりに凝視するが、袁紹は困った様子で空目を使って見つめ返してくるだけだった。
「あぁ、そら……あれやないか?」
「ん?」
「つまり、主の異変と同時期に我らの下に降ることになったのですから、元を知らないということですな」
「あぁ、なるほど」
 趙雲の説明に公孫賛は納得がいったと手を打った。
「まったく、なんなんですの?」
 袁紹は事態がよくわからないからか、首を傾げ今にも疑問符を周りへと発しそうだ。
「いや、さっき言った一刀への違和感を覚え始めたのが、お前がきた頃とほぼ同じあたりのことだった、という話だ」
 そこまで言って公孫賛はなにか引っかかるものを感じた。
(まてよ、あれ以降確かに私や話を聞けば星も霞もあまり共に過ごすことがなくなってきていた)
 そう、一刀と接する機会が減った者は公孫賛以外にもいる。だが、袁紹はどうなのだろう……公孫賛が世話をするように言ったのだ。もしかすると公孫賛よりも接する機会は多いのではないか。
「なぁ、麗羽」
「なんですの?」
「一刀とはどれくらいの頻度で会ってる?」
「何が知りたいのかしりませんが、あの方と会ってるのは――」
 袁紹が口にした頻度は間違いなく公孫賛よりも圧倒的に上だった。いくらなんでも差がありすぎる、そう思いながら視線を漂わせると趙雲、張遼の二人も目を真開いて驚きを露わにしている。
「どういうことだ……」
「だから、さっきからなんなんですの?」
 眉間にしわを寄せて袁紹が訝しむ。
「明らかにおかしいやないか」
「これは、一刀に直接問いただすべきかもな」
「その前に確認をとりませぬか?」
「確認? なんの?」
 意味がわからず眉をひそめつつ訪ねると、趙雲が真剣なまなざしを浮かべる。
「他に差がある者がいるかどうか、をですよ」
「なるほど、確かにそら気になるな」
「言われてみればそうだな。確かに麗羽一人と比べるだけでは何ともいえないな」
 そう、もしかしたら世話をするという理由だけで実際には仕事のうちとしてあっていたのかもしれない。そう考えることで、公孫賛は心が軽くなったように感じた。
 それからの行動は早かった。三人は席を立つと袁紹を置き去りにしてかけだした。
「どないする? 誰からにしよか?」
「いま、時間があるのは誰ですかな?」
「確か――」
「……なにしてるの?」
 公孫賛が答える前に、該当者が姿を現した。
「恋、ちょうどよかった。少々聞かせてもらいたいのだが? よいか?」
「…………」
 趙雲の問いかけに呂布が黙って首を縦に振るやいなや張遼が質問を始める。
「そんじゃ、単刀直入に訊かせてもらうで。一刀と最近出かけたりしとるか?」
「…………」
 こくりと頷く呂布、返答は肯定のようだ。張遼がさらに一歩踏み込んで訪ねる。
「ど、どのくらいや?」
「…………」
 今度は首を傾げる。質問の意味がわからないらしい。張遼の代わりに公孫賛が質問し直す。
「あっと、だな。その、一刀とどれくらい出かけたりしてるのかってことだ。しょっちゅうなの、たまになのか」
「…………ふつう」
 いまいち要領が得ない答えに公孫賛も困惑する。と、そこへ誰かがかけてくる。
「恋殿! お待たせしました」
「…………全然待ってない」 
 駆け寄る陳宮に無表情のままそう答える呂布。
「ん? 何をしているのですか?」
「ようやく気づいたんかい!」
 今までずっと呂布しか間に入っていない方らしい陳宮に張遼がツッコミを入れる。
「実はだな、主とどれほど出かけているか訊いていたのだ」
「なるほど、それなら簡単なのです」
「どういうことだ?」
 いまいち言っている意味がわからず公孫賛は小首を傾げる。
「ねねに訊けばいいのです! ねねと恋殿はいつもいっしょですから」
「それでは、訊かせてもらうとしよう。主とはどれほど出かけた?」
 どうやら趙雲は、胸を張ってその中央をどん、と平手で叩き自信ありげに答えた陳宮へと質問対象を変更したようだ。
「そうですなぁ……確か――」
 その後の陳宮の話を聞く限り、呂布の言うとおり頻度は少なすぎず多すぎず、普通といったところのようだ。
「悪かったな。いきなり変なことを訊いて」
「別に構わないのです、これくらい。さ、質問も終わったようですし、行きましょう、恋殿」
 呂布が頷くと二人は歩いていった。
 公孫賛たちもすぐにその場を後にして、次なる相手を捜しに向かった。
 呂布たちと話をした場所が遠目に見えるくらいまで離れたとき、ふいに張遼が二人のホウを見た。
「なぁ、こっからは別々に動いたほうがええんとちゃう?」
「確かに、まとまって動いても時間がかかる可能性はあるな」
 そこで三人は頷きあい、それぞれ担当を決めて走り出した。
 この日、公孫賛、趙雲、張遼の三人が出会ったこと、丁度同じくらいに時間が空いていたことを公孫賛は運に感謝しながら目的の人物と接触することに成功した。
「へ? ちぃたちと一刀?」
「そうだ。どうだ、以前と比べてなにか物足りないとか……ないか?」
 張三姉妹の一人、張宝が公孫賛の担当だった。他の二人はいなかったが、なんとか一人を捕まえることができたのは幸いだった。
 張宝は人差し指を口元に添えながら考える仕草をとる。
「うーん。物足りないといえば、領土が拡大した影響で一刀自身、それにわたしたちの仕事が一気に増えて会えなくなってるのがちょっと物足りないかな」
「そ、そうか……」
 どうやら張宝も公孫賛たちと同じで一刀とはあまり会えていないようだ。
「あ、でもこっちに帰ってきたときとかはちゃんと相手してくれてるかいいんだけどね」
(あれ?)
「それも一刀の都合がよければの話だし……だいたい、数え役萬☆姉妹の公演の手伝いも仕事の一つなのに前より来なくなってるし……」
「それでも、ちゃんと行ってるんだな」
「それはそうよ。ちぃたちの世話役なんだから」
「そ、そうか。いや、そうだな……うん、ありがとな」
 怪訝な表情を浮かべそうになる張宝に適当に相づちを打つと、公孫賛は礼を言ってその場を後にした。ちらりと振り返ると、張宝が不思議そうに見つめていた。

 †

 公孫賛が張宝に当たっている間、趙雲は別の場所でたまたま見つけた華雄に声をかけていた。
 華雄は新兵の調練を担当した後だったらしく、涼しい顔に流れる一滴の汗を指で拭った。
「華雄よ、少々訊ねたいことがあるのだが」
「ん? なんだ、私はこれから鍛錬の次の項目へと移らねばならんのだが?」
 そう言いながらも律儀に立ち止まって趙雲の話に耳を傾けている華雄に笑みを零しながら趙雲は一歩距離を詰める。
「なに、そう時間はとらせぬさ」
「ふむ……わかった。それで一体何が訊きたい?」
「うむ。華雄は主とはどれくらいの仲だと自負している?」
「はぁ!? な、何を突然」
 今まで冷静な戦士の顔をしていた華雄の顔が真っ赤な花になる。驚きのせいか瞳も普段のバイになってる。
 そんな反応を見せる華雄に肩眉をついと上げながら趙雲は肩を竦める。
「だから訊ねると一言告げたではないか」
「そういう問題じゃない!」
「では、どういう問題だと?」
「そ、それは……一刀と……その交際なんて……そんな」
 急に得物を両手で握りしめてごにょごにょと要点を得ない華雄にしびれをきらして趙雲は質問を続ける。
「つまり、主とは肌を重ねてはおらぬと?」
「……お、お前には関係あるまい」
「いやいや。そんなことはないぞ。むしろ、多くの者に関わる話だ」
「意味がわからん」
「いかから、応えれば良いのだ」
「だからって……一刀とその、なぁ」
「私はただ単に主と最近は出かけているのか、と訊いておるのだが?」
「え?」
 華雄が再び驚きを表情に表す。趙雲はその様子に思わず口元を歪める。
「何を勘違いしておるのやら……このスケベめ」
「な、ナナナナ!」
「くく、誰が主との経験数を言えといったのだ?」
「お、おのれぇ!」
 華雄の顔が一層赤みを増す。ただし、その要素は周知から怒りへと変わっているようだ。目つきが再び鋭いものへと戻っている。
「まぁ、冗談はここまでとして。実際、どうなのだ?」
「あぁ?」
「そうやさぐれるな」
「誰のせいだと……」
「いいか、これは真面目な質問なのだ。応えて貰わねば困る」
「あ、あのなぁ……なら、最初っから真剣に訊けぇい!」
 怒髪天な華雄がくわっと眼を真開く。それをいなしながら趙雲はさらっと一言で返す。
「それでは面白くあるまい」
「お、お前は……本当に嫌なヤツだ」
「お褒めにあずかり光栄、と言っておこうか」
 半眼でジトと睨んでくる華雄の視線もものともせずに趙雲は相手をする。
「はぁ。もういい。それで、一刀と出かけてるか、だったか?」
「うむ。どうなのだ?」
「普通には出かけているぞ。まぁ、そこまで回数が多くはないがな」
「ちなみに、頻度は?」
「ん? そうだな、だいたい――」
 華雄の口からもたらされた情報を吟味すると、趙雲は礼をしてすぐにその場を後にした。
「華雄ですらあれ程とは……む、いかんな」
 知らぬ間に口から完走が漏れたことに趙雲は軽く驚き、きゅっと口をつぐむのだった。

 †

 目の前を歩く"めいど"姿の二人組に張遼は背後から駆け寄った。
「よ、お二人さん」
「あ、霞さん。どうも」
「あら、霞じゃないの? どうしたの?」
 振り返った二人は対照的な表情を浮かべている。
 霞から見て右側にいる董卓は柔らかな笑みを、左側にいる賈駆はいつもとかわらぬ憮然とした目つきを顔に貼り付けている。
「いやぁ、ちぃっとばかし訊かせてもらいたいことがあるんや」
 苦笑しながら人差し指と親指で小さく隙間をつくり"ちょっと"というのを強調する。 
「はぁ……訊きたいことですか」
「ふぅん、なによ」
「ん……そのな、一刀の事なんやけどな」
「ご主人様のことですか?」
「ごしゅ……おほん、あいつがどうしたって?」
 一瞬だけ隣の董卓に釣られたのか何かを言いかけた賈駆がわざとらしい咳払いをするのを本来ならつっこみたいところだが、今回は我慢して張遼は本題に入る。
「そのなぁ、一刀と最近どんな感じや?」
「意味が分からないんだけど?」
「ご主人様とですか? うぅん、そうですねぇ」
「ゆ、月?」
 呆れた様子でジトと睨む賈駆が隣で質問に答えようとしている董卓の姿に驚いている。張遼はそれを意にも介せずに董卓をじっと見つめて答えを待つ。
「その……最近は給仕の仕事を頼まれることがなくなってきてますね」
「大方、何かよからぬことでも企んでるんじゃないかしらね?」
 言葉はとげがある賈駆だが、その表情は隣の董卓同様沈んだものだった。それを見て張遼の心にも少しだけ重いものがのしかかった気がした。
「そっか……そうなんか」
 張遼も最近はあちこち出なければならず忙しかった、とはいえそのことには全く気付いていなかった。
「で、でも!」
「月? どないしたん?」
 両の拳をきゅっと握りしめて強い眼差しで自分を貫く董卓に張遼は目を丸くする。
「でもですね、きっとご主人様は忙しいんだと思うんです。いろんな事があって慌ただしかったですし。だから――」
「確かに、ごたごたしてるうちに二州も手にして急速な領土拡大になっちゃったものね」
 董卓の肩にそっと手を乗せながら賈駆も憂いを帯びた瞳をする。
「…………」
 それ以上、張遼には何も言えなかった。ここで二人に一刀に感じている違和感を言ってしまえばきっと彼女たちをさらに追い込むことになりかねない。そう判断した。
 だから、彼女は――
「ほな、あんがとな」
 一言だけ、例だけを口にして踵を返した。その背中に疑惑、疑問という二つの視線が送られているのに気付き軽く手をひらひらとふった。

 †

 公孫賛が自室へと戻ると、丁度よく反対方向から趙雲が歩いてくるのが見えた。
「星、終わったのか?」
「えぇ。どうやらそちらも済んだようですな」
 互いに目と眼で頷き合う。そして、公孫賛は扉を開こうと手を伸ばす。
「お。ちょうどええときに来たようやな」
「ほう、霞も来たか。まるで示し合わせたようだな」
「ま、いいから入れ」
 妙な感心をしている趙雲と来たばかりの張遼を扉の中へと誘う。
「二人とも収穫はあったようだな」
「まーな。なんにしてもそれぞれの情報を合わせる必要がありそうやな」
「うむ。主の行動に見る傾向とそこから伺い知ることが可能であろう思惑について考慮し、対策を練らねばならぬからな」
「いいから、席に着け二人とも」
 部屋に入ってから立ち話を始める二人を促しつつ公孫賛は自分の席に腰を下ろした。
「それで、一刀と他のやつらとのことだが……まず、私から報告しよう」
 両手を組み、肘を卓の上にのせた体勢で公孫賛は語り出す。意識的に真剣な眼差しで前を見る。
「張三姉妹のうち、地和に会った。結果としては我らよりは頻度は高そうだ。もっとも、それでも以前よりは会えなくなってはいるようだがな」
「ふむ。ということは、三姉妹はわれらより上の扱いと判断してよさそうですな。それで、こちらの調査対象であった華雄に関してですが……袁紹と同じくいまいち要領が得られませんでした。ただ、恐らくは我らよりは高頻度で主と会っておられることでしょう」
 顎に手を添えて語る趙雲。その瞳は公孫賛同様に真っ直ぐと正面を見据えている。そして、次は自分の番だとばかりに腕組みした張遼が口を開く。
「で、ウチやけど……月と詠の二人が丁度一緒やったから訊いたんやけど」
 妙に歯切れが悪い。一体、どうしたというのだろうか、そう思い訊ねようかと公孫賛が考えたとこおで張遼が再び言葉を紡ぎ始めた。
「そのな、あの二人もウチらとあんま変わらへんかった……」
「つまり、あの二人と我らが主との関係における格付けでは下段であると」
 その言葉で場に沈黙が訪れる。誰も何も言えない。趙雲の言葉を覆すような事実もなければ意見もない。もしかしたら、本当に一刀との間に溝が出来ているのかも知れない。
 だが、その理由はなんなのだろうか?
 いくら考え手も公孫賛には答えを導き出すことが出来ない。
「くそ。理由さえ分かれば関係修復だって可能だというのに……」
 気がつけばそんなことを口から零していた。
「張三姉妹や華雄が上とすれば、恋とねねの組は中、袁紹と月、詠……そして、ウチらが下か」
「その差は一体なんなんだろうな」
 一刀に嫌われてしまっているのではないか、もしくは嫌われるのではないかという焦りと不安にかられ公孫賛は思わず唸る。
「困りましたな……主は一体何を考えておられるのか」
「ホンマ、どうしたらええんやろな」
 いっこうに打開策も見いだせず膠着状態に陥る三人。そのとき、ふと思い出したように張遼がぽつりと一言漏らす。
「そいうや一刀のやつ、貂蝉と出かけとったな」
「うぅむ……以前、一度は否定されたが……やはり」
「え? ちゅうことはまさかあの二人って実は……」
 二人のやり取りを通して、公孫賛の頭の中に一つの映像が浮かび上がる。
 筋骨隆々で頭頂部が日の光を弾いている桃色の紐パンを履いた妖怪と一刀がねっとりと絡み合う姿だ……それは、脳裏に描くにはあまりにもむごいものだった。
 ふと、二人の方を見れば、どちらも眉を潜めたりと微妙な表情を浮かべて、子供がいやいやをするように首を左右に振っている。
 なんだか気持ちの悪い想像が場を支配している……公孫賛はそれを肌で感じた。
 余計なことを考えたせいで、一層何の言葉も交わされることはなくなり、それから長いのか短いのかわからない時間が無情にも流れていった。
 さすがに何か言わねばと公孫賛がそわそわし始めたとき、そとから誰かが駆けてくる足音がした。それに気がついた三人が扉の方をみるのと同時に外から声がやってきた。
「と、殿! おられますか?」
「どうした?」
「し、失礼します!」
 その言葉と同時に勢いよく扉が開かれ一人の兵士が転がり込むようにして入室してきた。その顔は余程慌ててやってきたのか僅かに青ざめていたり、脂汗が吹き出たりと余裕のない表情だった。
「それで、一体何事だ?」
「た、大変なことが起こりました!」
「だから、なんだ!」
 今まで情緒不安定気味になっていた反動か、思わず苛立ってしまう。そんな公孫賛の声に肩をびくりとふるわせると、兵士が頭を下げる。
「も、申し訳ありません。しかし、なにせ非常事態ゆえ」
「はぁ……少々気が立っていたのだ。すまん、度が過ぎた。それより、先を言ってみろ」
「は。袁術が……袁術が帝を僭称しました!」
「なんだと!」
 兵士のことばに公孫賛は卓に手をつき勢いよく立ち上がる。
「なんということだ……すぐに軍議を開く。諸将をすぐに呼び集めろ!」
 そう叫ぶと、兵士はすぐさま外へと出て行った。それを見送ると、公孫賛は振り返り、今まで共にいた二人へと目をやる。
「どうやら、この問題は先送りとすべきようですな」
「さ、ウチらもさっさと行くで!」
 二人とも既に立ち上がり、公孫賛の方を見据えている。二つの視線に公孫賛が頷くと、三人は軍議の間へと向かった。

 †

 先日のことを考えていた一刀の元へ兵士が訪れたのはもう昼も大分立った頃のことだった。
 余程の緊急事態らしく、慌てる兵士に返事をするのもそこそこに一刀は軍議の間へと駆け込んだ。
 そこには、既に一刀にとって親しく思っている者たちが集っていた。今回は軍議にしては珍しく、袁紹までもがいる。
 普段ならば余計な事をいいそうなため、もしくは本人が乗り気でないために参加はひかえることになっていたはずだ。
 そのことに気を取られていたがために、知覚するのがおくれたが、少女たちの視線が集まっている。戸惑いを含む揺れる瞳、疑惑を抱く厳しい眼差し、憂いを含んだ寂しげな色、様々な要素を含んだ視線、それが一刀を貫いているのだ。
 一体、なんなのかと一刀が首を傾げるとの同時に公孫賛が咳払いをする。それが自分を背かしているのだと理解した一刀はすぐさま自らの定位置へとついた。
「では、先程徐州へと放った間者から入った情報を伝える」
 真剣な表情で告げられたのは、信じがたく、それでも多少三国志に関する知識を有する一刀にはどこか納得出来なくもないものだった。
 袁術が帝を名乗り、自らの領土を一つの、それこそ漢とは別の一国とし、元号を仲としたという。
(三国志としてなら……あり得るが、あんな娘がそんな真似をするのか?)
 一刀は反董卓連合時に見た少女の姿を思い出す。姉である袁紹とよく似た性分しているように見えた。
 そこまで考えて一刀はここに招かざる人物がいる意味がわかった。その人物はうつむき気味にしていて表情はわからないが全身をぷるぷると震わせている。
 一同がそれを心配するようにしていると、その人物……袁紹が顔を上げる。そして、
「美羽さん……このわたくしを差し置いて目立つだなんてぇ、きぃぃいい!」
 怒りを爆発させた。彼女ご自慢のロール状の髪が暴れんばかりの動きにあわせて両側頭部を中心に鞭のごとく乱れ飛んでいる。
 それに打たれながら文醜と顔良が宥めようと試みているようだ。
「痛っ! ひ、姫落ち着いてくださいってば」
「れ、麗羽さ――あいたっ、ちょ、いたいでっすて、怒りを収めてくださいよ!」
「おいおい、話が進まないし、一旦静かにしろって。麗羽の話って結構重要になるだろうしな」
 見てられずに二人の補佐に回った一刀の一言に、今までビシ、バシと音を立て髪の毛で左右の二人の頬を張っていた袁紹の動きがようやくとまった。
「仕方ありませんわね。それで? 詳しくお話しいただけますのでしょうね?」
「あぁ、これからそのことを話し合わなきゃならないんだからな」
 袁紹の言葉に深く頷いた公孫賛が賈駆へと視線を向けて進行を委ねる。
「それじゃあ、今回の議題。袁術の帝位僭称とその対応に関してだけれど」
「まぁ、間違いなく朝廷からは狙われることにならうやろうな」
「うむ。まさに反逆の意図があるとしか見えぬからな」
 張遼と趙雲がため息混じりに頷く。
「もっとも、あの袁術にそこまで深い考えがあるとは思えんがな」
「……華雄が言うと、変な感じだな」
 肩を竦める華雄に対して、一刀は彼女同様に肩を竦めて眼を向ける。
「なんだ、その眼は……というか、お前ら全員同じような表情をするな!」
 気がつくと、全員が何とも言いがたいというのが良く現れている表情をしていた。それは、一刀が抱いた思いが暗黙の総意だということなのだが当の華雄は薄々気づいているようで不満げにしている。
 そんな華雄のことは皆流して話を再開する。
「それで、袁術に対してなんらかの動きは取るべきなんだろうな」
「あぁ、一刀の言う通りだな。袁術を打倒することになるだろうな」
 何故か、"一刀"という部分のときに表情を一瞬――それこそ気付ける者にしか分からない程度ではるのだが――綻ばる。それから公孫賛は、息をする間もなく複雑な表情へと一変させて袁紹を横目で見る。
 袁紹は落ち着き払ったのか、はたまた、思うところがあるのかすっかり大人しくなっている。
「まさか、そこまで愚かな娘だったとは……思いもしませんでしたわ」
 先程まで目立つ行為をとった妹に対して炎のごとき激しき嫉妬に狂いかけていたとは思えない言葉が袁紹の口から出た。
 場にいる者たちはそれが信じられず、表情を一様に驚愕の色へと変えて彼女に視線を集中させる。
 それに不服があるらしく、全員をキョロキョロと見渡しながら袁紹が眉を潜める。
「な、なんですの? わたくしが何か変なことを言ったとでもおっしゃりたいんですの?」
「さすがに、普段の姫からすれば……なぁ、斗詩?」
「う、うん。ちょっと、ねぇ? ご主人様」
 文醜の言葉に複雑な表情で頷きながら顔良が一刀へと顔を向ける。
「お、俺に振るなよ!」
「なんですの! 言いたことがあるならハッキリと仰ってくださいな!」
 柳眉を吊り上げた袁紹が一刀の方へと詰め寄ってくる。
「ま、待て、気のせい、気のせいだ!」
「とてもそうとは思えませんけれど?」
「きっと勘違いだ……そうさ、お、俺は麗羽の勘違いだと思うぞ」
 訝しむ袁紹の視線に一刀は背中を冷たいものが伝うのを感じた。
 しばし、見つめあう二人。疑いが晴れていないためなのか理由は不明ではあるが、じっと一刀の顔を見る袁紹。視線を逸らせば疑惑が深まると思い目が離せない一刀。
 その距離が縮まろうとする。
「お前ら、余計な話をしてるんじゃない! 今はもっと大事なことがあるだろうが!」
 何故か、公孫賛の怒号でその何とも言えない空間は打ち払われた。
「お、怒るなよ白蓮。そんな顔を真っ赤にしてまで……」
「う、ううう、うるさい! いいから、話を本筋に戻せ!」
 一体何故それほどまでに責められねばならないのかと頭を掻いたところで一刀は気付く。場にいるほとんどの諸将が公孫賛と同じ目つきをしていたことに。
「なんなんだよ、まったく……」
 今度は口にしてぼやいてみた。一層、彼女たちの目力が増した気がした。

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