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546 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [sage] 投稿日:2010/03/06(土) 23:10:04 ID:m/JMhtdiO
「良かったですね、お猫様」
「にゃー(何が?)」
「私の調査に寄りますと、先週火曜に携帯を水ポチャ。残業が19時まででその後auショプは悉く閉まってて更に自転車がパンク。
 自暴自棄になって暴れそうなのをなんとか自粛、秋葉のヨドバシでパンク修理と代用携帯を入手。しかし代用携帯では話を叩く気になれずやることが無いと気付くと『シンケンレッドの気持ちが少し解った』と呟く。
 今週水曜にauショプからデータ死亡の連絡が入り真剣に投稿を止めようかと悩む。そして見届け様と木曜auショプで旧携帯の電源を入れるとデータが生存、慌てて確保する。
 と、言葉の意味は殆ど解りませんが本当に良かったですね」
プルプルプルプル…
「お猫様?」
「に″ゃー(どーやって調べたー)」
「・・・それでは22桃香です」
「にゃー(無視するなー)」
547 名前:純白への道・初日1-22[sage] 投稿日:2010/03/06(土) 23:16:21 ID:m/JMhtdiO
まだ早朝ですらないギリギリ深夜の時間帯。
ブルルルルッ…
「シー」
馬に対して口に人差し指を立てながら、“静かに”の意思表示する男が一人、その男に従う様に男三人が連れそう。
四人は馬を手で引いて行く、城から城下町に抜ける門の門番は酒で酔い潰している。
自分もすっかり悪知恵が働く様になったと呆れ返りつつも行動に反省の色は無い。
門を抜けてから四人は馬に股がり走らせるとやがて城門にたどり着いた。
「この様な時間帯に何者だ!」
門番の隊長の台詞は極当たり前の問い掛けだ、男が元居た世界ならこの時間帯に出歩いてもそんなに怪しく無いだろうが、
 今男がいる時代は多少変化が在るものの一般的に三国志と言われてる時代、こんな夜更けに出歩いているのは不審者以外考えられない。
「寝ずの門番お疲れ様」
声を聞いた瞬間、隊長が直立になり敬礼する。
「わ!判らなかったとはいえ大変失礼をいたしました!」
判らないのも仕方がない、普段のポリエステル製の服の上にスッポリとフードらしい物を被っていたのだ、何かと光るポリエステルを目立たなくする為である。
549 名前:純白への道・初日2-22[sage] 投稿日:2010/03/06(土) 23:22:49 ID:m/JMhtdiO
未だ事情が解らず隊長の急激な態度の変化に戸惑い槍を構えたままの兵士達に隊長が怒鳴る。
「貴様ら!いつまで槍を向けてるか!我等が君主!片翼を担う、天の御遣い北郷一刀様だぞ!」
カランッ☆
一般兵からすれば突如降って湧いた天上人に驚いて手に持った槍を落とす者まで出た。
「隊長、声デカイって、住民が起きちゃうよ」
シ〜ン★
聞き耳をたてるが幸い起きた者は居ない様だ。
「…で北郷様、この様な夜更けに何の御用で?…」
「ごめん、秘密の任務だから言えないんだ。で、更に謝るんだけど夜間の城外の外出をお願い」
「それでは関羽将軍の夜間外出許可の手形を拝見…」
「だからそれが無いからお願いしてるんだよ」
とたんに隊長が困った顔になる、目の前にいるのは間違いようの無い自分達の君主の一人、北郷一刀その人だ。
そして秘密の任務に就いているとのことで一切合切の許可書が無いと言う。
本来ならば直ぐに関羽将軍に問い合わせるべき所なのだが…恐らく本人はそれを嫌がるだろう。
今の役職に付いて無許可で嘘をついてでも夜間外出をしようとする輩を隊長はごまんと見てきた、隊長に取って残念な事は今の一刀がごまんと見てきた輩の一人に仲間入りした事だ。
550 名前:純白への道・初日3-22[sage] 投稿日:2010/03/06(土) 23:27:54 ID:m/JMhtdiO
まさに一刀でなかったらとっくの昔に連行されてるだろう、不審者として。
しかしこの隊長、実は一刀&桃香の兵士としてはかなり古く反董卓連合の時には既に一兵卒として参加していた。
そして不意に袁術軍、呂布将軍率いる軍勢と更にあわや孫策軍とも戦う羽目になりかけた時を思い出す。
あの時の北郷殿の判断に間違いは無かったと、所詮我らが凡人には計り知れない何かがあるのだろうと。
何故そんな事を思い出したかというと、今一刀の目があの時と一緒だったからだ。
「分かりました北郷様、なにか有りましたら私が責任を取りましょう」
「ちょと、それはいけないよ。俺の為に他人に迷惑がかかるのはいけない……愛紗になにか責任を問われたらこう答えて『悪いのは俺だから警備隊の人達に罪を問うのはお門違いだと』って」
「はぁ…それでは北郷様は怒られるようなことをなさってるのですか」
「うっ…」
鋭い質問に言葉が詰まる一刀に隊長は笑って答える。
「ハハハ…これは失礼、しかし本当に不思議なお人だ。分かりました、事が大騒ぎになるまでは隠し大騒ぎになったら沈静化の為に報告する。これでよろしいですか?」
551 名前:純白への道・初日4-22[sage] 投稿日:2010/03/06(土) 23:35:08 ID:m/JMhtdiO
その言葉に“あっ何となくバレてる?”と思いつつ。
「悪い恩に着る、それで頼む」
と好意に甘える。
「分かりました、城門の脇を開けろ北郷様が通られる」
的確に指示を出す隊長の脇を抜ける一刀一同、城門の脇の狭い門を潜ると城外に出る、そこは漆黒が支配する平野が広がっていてそこを四騎が駆けて行った。
夜中故に街道とはいえ馬の足下から精々2〜3メートル先しか見えないので慎重に進む、両脇の木々も夜中だと不気味さを一層醸し出す。
この時、心底一人で出なくてよかったと考える一刀だった。
後ろの三人は誰かと言えばただの付き添いまたは巻き込まれである、順調に行けば未来の一刀か桃香の親衛隊である…順調に行けばである、ある意味既に道は踏み外しているが…。
彼等は親衛隊候補としてはかなり若く一刀と年齢が近い為によく話す内に他の親衛隊等に比べると比較的親しくなる、そして話から故郷が洛陽だと分かると今回の内緒の旅の道案内を頼んだ。
始めは凄く反対された、当然である。
未来の親衛隊候補が本来守るべき主が内緒で城を抜け出すと言ってきた、しかもそれを手伝って欲しいとまで言われたのだ。
553 名前:純白への道・初日5-22[sage] 投稿日:2010/03/06(土) 23:43:18 ID:m/JMhtdiO
そして少し強く反対した時に、
『そうか残念だな』と言った時の一刀の瞳を見て“あぁこのお方は、おそらく一人でも決行する”と感じ取った。
それからしばらく後、同郷の親衛隊候補を二人連れて来て。『一人では無理でも三人ならどうにか一人分の働きをするかと思いますので』
と、道案内を了承した。
すると一刀から手を差し出されて硬く握手が交わされた。
等と思い出していると不意に突然四頭の馬が一斉に止まる、どうしたものかと馬を見れば一刀にすら解るぐらいに怯えている。
「誰だ!」
無駄を承知で叫んだ、普通怪しい者やなにかを企てる者が姿を現す訳もない、仮に出て来るならばそこそこの自信と腕なのだろう、現実的に一刀が敵う訳が無い。
カポッカポッ…
蹄の音が聞こえる、どうやら後者だったらしい。
同行者三人が自然と一刀の前に出る、情けないと思いつつも黙って状況確認も兼ね今は黙って静止する。
「おまえは本当にバカですの〜形振り構わず逃げ出せば一番助かる可能性が高いのに」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「それは出来ないよ、俺の我儘に付き合ってくれてる三人を見捨ててなんてね。そうだろ…ねね」
555 名前:純白への道・初日6-22[sage] 投稿日:2010/03/06(土) 23:51:09 ID:m/JMhtdiO
一刀に名前を呼ばれたのは自称天下の飛将軍の軍師、ねねであった。
「部下は時には主の危機に命をかけてお守り通すのが普通なのですよ、例えそれが絶対に敵わない相手だとしてもです。
 しかしながらこのへぼ主人はなぜか常に最善の選択をするのが腹ただしい…たまには間違えろなのです…」
等と愚痴っているねねの後ろから人を乗せた一頭の馬が現れる、馬達には悪いが彼らが怯えてる原因の娘だ。
「…ねね、メッ」
「そんな〜恋殿〜、ねねはこのへっぽこに帝王のなんたるかを教えようと…」
そんなねねの台詞を遮ってまで。
「…ご主人様はご主人様…帝王じゃない」
「だってさ、ねね。どうする」
「ぬぬぬ…」
悔しがるねねに軽くからかう様な視線を送る一刀に。
「…ご主人様も、メッ」
「「なっ」」
二人同時に驚愕の声があがる、一人は驚きで一人は歓喜で。
「ヌハハ、怒られたのです!へっぽこが恋殿に初めて怒られたのです!見捨てられる日もそう…」
恋のチョプがねねの脳天に直撃“痛いのです恋殿〜”と泣き言を言う。
「…ねね、更にメッ!…恋は絶対にご主人様見捨てない…そんなこと言っては駄目」
「恋殿……ごめんなさいなのです」
恋の真剣な瞳に素直に謝る。
556 名前:純白への道・初日7-22[sage] 投稿日:2010/03/06(土) 23:56:05 ID:m/JMhtdiO
「…んっ、判ればいい」
許しの言葉が聞けてほっと一安心するねね。
「…ご主人様」
「はい」
初めて恋に怒られた驚きで思わず真面目に返事をする。
「…いくら平和になったからって…城の外はまだ危険がいっぱい……だまって出ると皆心配する…だからご主人様メッ」
恋が一刀の心配だけでなく、一刀の行動によって皆が心配する事を心配する。
恋の心の成長に驚きと感動を覚えるも。
「恋に見つかっちゃたし今回は諦めかな」
フルフルフル…
「恋?」
「…ご主人様、とても大事な用事有る……恋がついてるから大丈夫」
「付いて来るの?」
「・・・コクッ、…皆が言う、ご主人様の旗のそばに常に恋の旗がある…恋はご主人様と離れたくない」
恋の健気さに更に感動、思わずガッツポーズに涙まで流してしまう。
それをジト目に見ているねね。
こうして計六人の旅が始まった。
「そう言えば恋」
今だ、早朝で薄暗く馬を走らせる訳にはいかない為、闊歩させながら一刀が恋に質問する。
「…ん?」
相変わらず可愛い仕草の首捻り。
「どうやって抜け出して来たの?」
一刀が思った素朴な疑問、自分でさえ少し手こずったのに恋はどうしたのだろうと。
557 名前:純白への道・初日8-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 00:01:04 ID:m/JMhtdiO
まさか斬って来た訳でもあるまいと考えてたら。
「…斬った」
「えぇ!」
驚きの声をあげると。
「…冗談」
初めての恋の冗談に文字通り驚いた、そして知った恋の冗談は心臓に悪いと。
恋が初めて冗談を言った事に感動するのを忘れる位に。
「…飛んだ」
恋が立て続けに二度目の冗談を言った事に驚くも。
「飛んだ?」
「…そう、飛んだ」
「恋さん、人は飛べる様には出来てませんが…」
もしや背中に羽が生えるの?とか思っていると。
「……ご主人様、信じてくれない…恋、少し悲しい」
恋の悲しげな声に咄嗟に一刀が向いたのはねねの方向、恋を悲しませると必ずねねのちんきゅうキックが来るのだが!当の本人は蒼白な顔をしていた。
恋の説明では分からないので少し酷だが震えているねねに助けを求めた。
「ねね、説明できる?」
多少カタカタ震えながらも説明に入る。
「なんとか……恋殿が今晩おまえが抜け出すと言うものですから、馬を最初に会った位置に昼間から繋いで置いて、日が沈んでから城外に出たのです」
「それなら馬は問題無いけど、ねね達本人はどうしたのさ」
この言葉にねねの顔が更に青くなる。
「…飛んだ」
恋が答える。
558 名前:純白への道・初日9-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 00:08:06 ID:RyLwjSUUO
「まさか…地面から?」
「…違う、壁の上から飛んだ」
四人は言葉を失った…が、一刀が言葉を絞り出して訊ねる。
「・・・まさか、ねねも?」
「…ねねは無理、だから…抱き抱えて飛んだ」
恋は言う、“飛んだ”と。
“ねねを抱き抱えて飛んだ”と。
実際は“ねねを抱き抱えて飛び降りた”のだ。
ははは…
一刀の渇いた笑いだけが暗い林に響く、他の者であればただの飛び降り自殺だ。
恋の超人振りを見てきた一刀でこうなのだから、付いて来た三人は固まるしかなかった。
「(付いて来たのある意味間違ったかもしれない)」
三人共そう思うも後の祭り、更に激しく後悔するのだった。
◇ ◇ ◇
一刀を起こすのは月の日課に成っていた。
「失礼しますご主人様」
扉の前で一度挨拶、起きてる時も有れば寝ている時も有る。
返事が無い、どうやら今日は寝ている様だ、起こさない様に静かに入る…
掛け布団が膨らんで微動だにしない間違いない寝ている、ご主人様には珍しく頭まで布団を被っているな、等と思いながら支度をする。
まだ寒いこの季節月は顔洗い用にお湯を使わず熱湯を使う、経験を重ね勘を働かせて常に絶妙なタイミングで一刀の前に出る時には丁度良い湯加減になる。
560 名前:純白への道・初日10-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 00:12:56 ID:RyLwjSUUO
もちろん失敗も有ったし時には火傷もした、だから一刀は止めさせようとした。
「俺が火傷するのは構わない、けど月が火傷するのは我慢出来ない」
一刀の言葉でも月は頑として譲らなかった。
そして努力の結果、今の状態に至る。
熱い熱湯には直には触れられないので湯気の熱さと距離で湯加減を測る。
納得いったのか熱湯を放置して上下の上着、ポリエステルの制服とズボンに手拭い、櫛を用意する。
前日に頼めば朝食もついてくる超VIP待遇だ。
室内用の手押し車で朝の仕度道具一式を運び一刀の床の脇に到着、Пの形をした簡易机を一刀の上に股がらさせる。
「ご主人様、そろそろ起きてください。また愛紗さんに怒られますよ」
「・・・」
おかしい?いつもなら『後、五分だけ』とか反応が有るのだが…
一瞬不安に駆られて直ぐ行動に。
「失礼します、ご主人様」
布団を引っ剥がすとそこにはもう一つ布団が丸められていた、月の胸に安堵が走る。
しかし次の疑問が芽生えた“ではご主人様は何処に?”
その疑問も直ぐに解消する疑問だけは…
軽く回りを見渡すと机の上に竹簡が一つ巻かれた状態で置かれていた、普通仕事の竹簡ならば必ず執務室に運ばれるはずだ。
561 名前:純白への道・初日11-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 00:18:08 ID:RyLwjSUUO
そしていつもの月なら絶対にしないであろう行動に出る、竹簡の紐を解いて中身を読み出したのだ。
北郷一刀の事になると結構大胆になる月。
『悪いちょっと華琳の所に行って来る。仕事は当分先まで終わらせているから、即決が必要な用件は桃香でお願い。緊急性が無い仕事なら残してくれれば帰ってからやるから。10〜14日位で帰ってくる予定。
 追伸、月へ
今朝の仕度無駄にしてすまない、いつも感謝しているけど恥ずかしくて面と向かって言えないからここに書くね』
パタパタ…
全て読み終わると急いで竹簡を持って愛紗がいるであろう場所に走る月……
用意した顔を洗う為のお湯はすっかり冷めていた。
◇ ◇ ◇
この時間帯は庭で軽く汗を流すのが愛紗の日課に…そこへ走って来た月の姿が視界に入る。
「どうしたのだ月、いつもならご主人様を起こしている頃だろに……まさかまた誰かの閨に潜り込んで居なかったのか」
フルフル…
首を横に振り否定してから右手に握った竹簡を差し出す。
受け取って読み出すと眉間に皺が増えていく…
ようやく開いた口から出た言葉は、
「月、悪いのだが焔耶に頼んで緊急召集の銅鑼を鳴らしてくれぬか…」
562 名前:純白への道・初日12-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 00:23:19 ID:RyLwjSUUO
コクッと、うなずくと今度は焔耶の部屋に走り出す月。
この時間なら間違いなくまだ寝ているだろうと予想しての行動。
それからしばらくすると、
ジャ〜〜〜〜〜〜ン
豪快な銅鑼の音が城に響き渡る。
緊急召集用の銅鑼の音、独特の音がして聴けば他の銅鑼と違いがハッキリする。
この銅鑼が鳴った時は国家単位の問題が発生したのでなにをやっていても駆け付けなくてはいけない。
食事中や睡眠中は勿論、非番の時間でも厠にいる時でもだ。
ましてや一刀との閨の最中で有ったとしてでも……
◇ ◇ ◇
今や大広間は将官・文官・士官でごった返していた。
「早朝からすまない、召集を駆けたのは私だ。用件だけを言ったら直ぐに解散するのでしばらく聞いて欲しい」
だが一人を抜かして誰も直ぐに帰れるとは思っていなかった、これは非常召集なのだ国家の一大事である、議論・討論で今日一日が潰れるであろうと思っていた。
「粗方集まったな…では報告しよう。我等がご主人様、一刀様がしばらく姿を眩ました」
?・?・?
士官達が特に理解出来ず程よく混乱している。
勇気ある一人から質問が出る。
「つまり北郷様が失踪または誘拐されたのですか?」
565 名前:純白への道・初日13-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 00:30:19 ID:RyLwjSUUO
「そうではない、目的地は解っている。が、現在位置等は把握出来ていないと言うことだ」
「…それは一大事なのでわ?」
「だから非常召集を駆けたのだ」
一瞬。あぁ!…と納得の顔をしたのち事の重大さに気付いた士官達が慌てだす。
「今すぐ捜索隊の編成を!」
「ええぃ!落ち着かぬか皆の者!」
愛紗の一喝に皆が足を止めた…
「ご主人様は心配するなと書かれておる」
手に持った竹簡を流すように開いて見せる、当然だが皆には見えない。
「目的地も解っている。今更ながらあのお方の行動を制限出来るはずもないのだから」
その時大半の者が思った“本当は関将軍が真っ先に飛び出して行きたいはず”だと。
その人が辛抱しているのに我等が慌てふためいてどうするかと。
「そう言えば、恋とねねの姿が見えぬな」
代わりにいたのはそれぞれの副官。
「私室や食堂など探したのですが見つかりませんでした」
「例の場所も見たのか」
例の場所とは恋がよく動物と昼寝をしている場所である、ちなみに一刀がよくここで見つかるらしい。
「はっ!ですが見つかりませんでした。あの場所はどちらかというと昼間かと」
567 名前:純白への道・初日14-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 00:35:55 ID:RyLwjSUUO

「ご主人様は12〜14日位で帰ってくる予定らしい、その間の君主の容認が必要な要件は全て桃香様の方に回す用に」
“えっ!、うそでしょ愛紗ちゃん?”と桃香の苦情が聞こえるも無視して。
「なお、帰ってきたら貯まっている仕事はしてくれるらしいので…急ぎでない物は桃香様の物も含め全てご主人様の仕事として廻すように」
と、言いながら不敵な笑みを浮かべてる。
それを見て聞いた皆が“うわ〜滅茶苦茶怒ってる…”と思った。
「以上で解散する、普段と変わらぬ行動で良い。一刀様はいない事を把握しといてくれ」
こうして召集は解除された「…眠り姫は早朝はあまりあの場所はお気に召さないのか?…」
なにやら一人言の愛紗。
次に、ねねの副官が。
「実は陳宮様の私室の机の上にこれが…」
取り出される竹簡、受け取り紐ほどく愛紗。
『これを見てる時は間違いなくあのへぼ主人に関する事だから報告してやるのです。恋殿がへぼ主人の動きが怪しいとの事なので監視してやるから感謝するです。
 最悪の時は首に縄を括り付けてでも連れて帰るから安心しろなのです』
「相変わらず素直ではない、最後の一文が無ければまるで密告文ではないか」と呟く。
読み終えた愛紗の言葉は続く、
570 名前:純白への道・初日15-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 00:39:19 ID:RyLwjSUUO
◇ ◇ ◇
ジャ〜〜〜〜〜〜ン
銅鑼が響いた、記憶が正しければ最上位の緊急事態を告げる銅鑼だったはず。
「さすがは御遣い様、いきなり最上位の召集ですか?」
既に次元が違うなと思っている隊長。
この場所は兵士宿舎の休憩所、深夜の件で騒ぎになるのはどんなに遅くとも昼前だと読んでの待機だった。
「隊長…」
部下が不安な声をあげる。
「しかし失敗したな」
「そんなにヤバいんですか?」
ますます不安に部下に、
「あの銅鑼が鳴ると分かってたら寝るんだったな〜、あれを聴かされれば嫌でも起きたからな」
検討違いな言葉に部下達の大半が呆れ返る、そんな部下をよそに立ち上がる隊長。
「さて行くか」
「何処にですか?」
「決まってるだろ、将軍様達に報告しにだよ…念のため、お前達もついて来い」
「やっぱ俺達も罰を受けるんで?」
「逆だよバカ、いいからついて来い!」
◇ ◇ ◇
城に着き隊長と近衛兵が二・三言葉を交わし一人が中に入って行く。
しばらくすると帰って来た近衛兵が
「どうぞこちらへ」
と、城内に案内される。
兵士達が行き着いたのは大広間だ、つい先ほどまで緊急の会議が行われた場所だ。
571 名前:純白への道・初日16-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 00:43:31 ID:RyLwjSUUO
その場にはこの国の重鎮中の重鎮、関羽将軍を筆頭に張飛将軍・趙雲将軍・馬超将軍・黄忠将軍と通称五虎将と呼ばれる面子に更にその他多数、一般兵には雲の上に等しい存在の方々が並んでいた。
また昨晩会ったこの国の君主のもう一つの片翼、劉玄徳様の顔の輪郭が判る位置に居る事実に驚愕してる者多数。
驚愕し恐れ緊張のあまり直立不動のままで顔面から変な汗が止まらない。
比較的、普通にしているのは、隊長・副隊長に精々二人の一般兵、この二人が開き直ってるのか、肝が据わってるのか、人として肝心な何かが鈍感なのかは解らないが…
「で、報告が有るらしいな……北門の警備隊々長」
「ハッ!」
愛紗の呼び掛けに一歩前に出て答える隊長。
不真面目な状態しか見たことのない部下達は隊長の真面目な姿にビックリしている。
「(やはり上の人間には弱いのか?)」
と一瞬思ったが、この隊長は平気で上の人間に逆らう人だったのを思い出す。
その為に実は功績の割りには出世してない。
「(では、強い相手…またはこの人達に弱いのか?)」
と考え出す。
だが一人だけはある事実を知っていた、実は酒に関してだが趙雲将軍と厳顔将軍とは普通に会話出来る程の間柄なのだ。
573 名前:純白への道・初日17-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 00:47:19 ID:RyLwjSUUO
「(隊長もその辺を見通しての昨夜の行動なのか?いざとなったら助けてくれると…)」
と考え出していた。
「先程の緊張召集の件ですが我等が君主、北郷一刀様に関わる物と判断してご報告に詣った次第です」
「うぬ、先程の緊急召集は確かに我等がご主人様に関してだが…なぜそれを欠席してた城門の警備隊長が知っている…」
ここで一般兵士全員が緊張する、突然降って沸いた嫌悪感に強制的にそうさせられる。
何度経験してもなれない・なれたくない…本能的に絶対に助からないと感じる状況に…
「それは昨夜、北郷様が北門より城を抜けて何処かへ行かれたからです」
その台詞にますます険悪な空気が色濃くなる。
「ほう…それで夜間外出許可は持っていたのか?」
「いいえ、なんでも秘密の任務とかで許可書一式を持ち合わせていないとかでした」
「それでご主人様を通したと…怪しいとは思わなかったのか?」
「正直怪しいとは思いました。が、目が…過去の対袁術戦の時の目でした。一人の男が、ましてや我らが君主様が秘めたる決意が有るというのに、それを止めるのは野暮ってもんでしょう」
577 名前:純白への道・初日18-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 01:01:06 ID:RyLwjSUUO
「ほう、お前は袁術戦の時に我が軍にいたのか?」
「あの時は北郷様の声が届く位置で弓を構えてましたよ、今でもあの号令は耳に残ってますよあの腹にズッシリ来る号令を。後、正確には反董卓連合の時には既にいました」
「お前はそれほどの古参か」
「無駄に古いだけですよ」
「お主よ、それだけ古参なら…」
「(やはり出てきた、趙雲将軍あたりがなんとかしてくれるのか?)」
「我等に取って、ここにいる将全員が主はどんなに大切な方か分かっているのであろうな?」
「(あれ?)」
思っていた筋書きと違い不安になる一人の一般兵。
「万が一のような事が有れば解っているのだな」
「もとよりその所存であります、しか…」
「ですが!」
その時、隊長よりデカイ声を出す副隊長。
「お前は黙っていろ」
「いいえ喋らせてもらいますよ」
隊長の制止を無視し、
「本来副隊長とは、不慮の事故には代理を努め、間違った選択にはそれを指摘し正すのが任務の内の一つ。それを怠るは最早隊長と同罪。
 君主、北郷一刀様に何か有った時には隊長と私共々、頸を跳ね、目をエグリ、耳・鼻を削ぎ、腹を割き、四肢は砕いて見せしめとして晒し、
578 名前:純白への道・初日19-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 01:06:04 ID:RyLwjSUUO
 以後二度とこの様な過ちが起きぬよう見せしめにして頂きたい。その代わり隊員、隊長の妻子親族には咎が行きませんようご配慮願います。あぁ、私は独り身ですのでご心配なく」
「お前は…」
「反董卓からのお供、今さらあの世までもそんな変わりませんよ」
「しかしなぁ…」
口を挟む桔梗。
「その願い聞けぬぞ、たかが門番の隊長とその副、我がお館様とでは余りに釣り合わぬ。…そうじゃのう、お主ら全員の親族全てを先程申した通り処刑すれば、釣り合うかのう」
「厳顔将軍!!」
桔梗の口から出た内容に無意識に、怒鳴っていた副隊長。
確かに、確かにその考え方が正しいだろう。
だが北郷様や劉備様、又その二人に遣える方々ならばその枠に当てはまらない人物だと信じていた。
それとも失う事で元の枠に戻らされてしまう程の人物なのだろうか?天の御遣い、北郷一刀とは?
副隊長の心の中で葛藤している最中も後ろの兵士たちは、“ああ、やっぱり”と諦め顔やヘタリ込む者、半ベソの者までいる。
「ふぅ…」
ここにきて愛紗が溜め息を漏らす。
「そろそろ止めぬか桔梗、見ろ後ろの兵を…泣いているではないか」
579 名前:純白への道・初日20-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 01:12:19 ID:RyLwjSUUO
「止めぬか、とは何をだ?ワシはただ常識的な事を言っておるに過ぎぬが」
「それを止めぬかと言っているんだ、それ以上はいくら本気で無いとしてもご主人様や桃香様を陥れる事になるぞ」
「そうじゃのう、確かに頃合いかのう。灸も充分据えただろう」
「据え過ぎだ、この者達が兵として再起不能になったらどうする、まったくどいつもこいつも………ふぅ」
再度溜め息を吐くと、
「ご主人様は他になにか言ってなかったか?大方『悪いのは俺だから門番の人達に罰をあたえるのはお門違いだ』だとか?」
一刀の真似をしながら喋る愛紗、妙に上手くて思わず笑いそうなる者が数人。
だが当然、後が恐いので堪えるのに必死だ。
「それは…」
隊長が返答に困りると。
「やはりな。朱里、上二人に相応しい罰は何だ。罪状は夜間外出許可証を持っていなかった者を私に確認することなく外出させた職務怠慢とその隊長への進言を怠った職務怠慢だ」
「そうですね、少し待ってください」
こんなことになるだろうと既に用意させていた二人の経歴を調べる、これがなかなか凄い。ある戦では上官が流れ矢で突然の戦死の際、
 一時的に急遽五千の兵を代理指揮官として指揮し右陣総崩れを食い止めた上に奮戦している。
581 名前:純白への道・初日21-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 01:16:30 ID:RyLwjSUUO
副官は常に隊長の的確な補佐を。
これ程の人材が上に上がって来ない理由は一つだった、隊長が常に自分の上官の反感を買って不当な評価によるものだ。
いくら不平等を嫌う蜀でも、どうしてもチェック洩れは出てしまう。
この隊長がいい例だった。
「そうですね〜、反董卓連合からの実戦経験豊富な職務怠慢な方は…」
雛里を見る朱里。
「…そうだね、あそこが妥当だと思うよ朱里ちゃん」
「雛里ちゃんもそう思う?」
「…うん、そう思う」
「それでは改めまして、実戦経験及び指揮経験豊富なお二方に馬車馬のように働いてもらう為には……先日、親衛隊の指揮官上位二名が高齢で退役されました。
 抜けた分は残った方全員を二つ繰り上げて問題無いんですが、下が二つ空席のままなんですよね。そこに治めてこき使ちゃいましょう」
「こき使うとは、表現が良くないが罰ならば致し方あるまい、夜間北城門警備隊長及び副隊長!」
「「ハッ!」」
「両名を同職から降格の上!親衛隊指揮官の職を言い付ける!」
「はっ?それって」
理解出来ない一人の兵士が呟く。
582 名前:純白への道・初日22-22[sage] 投稿日:2010/03/07(日) 01:20:07 ID:RyLwjSUUO
「私語は慎め!今申し付けてるのは処罰である」
緊張が走る。が、先程までの死に直面している様なものではない。
「もう一度言う。罰として両名を同職から降格!親衛隊指揮官の職を言い付ける。なお他の者には一切不問とする、以上!」
「「ハッ!罰則慎んでお受けいたします」」
「軍師達が申した通り馬車馬のように働かせるからな覚悟しておけ」
「「お手柔らかに願います!」」
「却下だ……ふふ」
こうして白帝城による一連の騒動はひとまず収まった。
一人の男の不幸を確実にして。
…ご主人様、帰って来たらどうしてくれよう。フフフ…
583 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [sage] 投稿日:2010/03/07(日) 01:30:14 ID:RyLwjSUUO
「そう言えばお猫様」
「にゃー(今度は何?)」
「あまりの動揺に今日がホワイトデーと勘違いして、避難所に純白への道を全部桃香しようとしてたとか」
「にゃー(もう止めてー)」
「ではお猫様、任務がありますのでゴメン」
「にゃー(二度と来るなー!後、多数様のご支援ありがとうございました)」

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