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732 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(1/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 21:00:46 ID:taEF3K0M0
「ああぁぁぁぁあああああああああ!!幾千万の外史を巡り、無数のオノコの誘惑に打ち勝って、幾度も諦めそうになりながら!ついにこの貂蝉、あなたの元の辿り着いたわ、ごォォ主じ」
「寄るな」
取り敢えず、手近にあった薬箱で、顔面をぶん殴った。
「うう……酷いわ、ご主人様。こ〜んなにもあなたを求めていた漢女のか弱いお顔を、そんな固いモノで打つなんて〜……」
よよよ、と泣き崩れる真似をする貂蝉。
泣きたいのはこっちだ。違う外史まで来て、何でお前と再会しなくちゃならんのだ。
あと、木箱の角で顔殴られて平気な奴をか弱いとは言わない。
はあ、と大きく溜息を吐いて、天を見上げた。
恨むぞ、この外史の作者。
よりにもよって、何で貂蝉なんだよ。


第二話:「二つ。例え強大な病魔といえども、恐れるべからず」


着地の衝撃で無数の小さな傷が出来たと言うので、取り敢えず塗り薬の入った小瓶を放った。
「適当に塗っとけ」
「あら、あ・り・が・と」
受け取って、鼻歌まじりに貂蝉は薬を塗り始める。
正直、放っておいてもすぐに治ると思うが、医者になると心掛けた端からでは、妙に座りが悪い。
「それにしても、随分探したわよ?ご主人様から派生した外史は、本っ当に数が多いし……」
「あっそ」
「んもぅ、つれないんだからっ」
照れてるみたいに言うな。
734 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(2/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 21:05:01 ID:taEF3K0M0
「ところで、こんなところで一人でどうしたのん?学生服も着てないし……背負ってたそれは、薬箱……?」
「ん、ああ。学生服は……まあ、燃やした」
「あーらら。何でまた」
「えっと、この薬箱とも関係してるんだけど、今は医者見習いやってて、それで血も付いたし、あんな目立つ服邪魔になるだけだし」
心情全部は気恥ずかしくて言えない。
「へえぇぇぇ……お医者様。道理で『天の御遣い』設定の無い外史にいる訳ね」
あ、やっぱり設定からして無かったのか。
まあ、それはいいや。さして気にする事でもないし。
「それで?医者見習いってことは、誰に師事してたのかしら?」
「してた、じゃなくて、今師事してる最中でさ―」
と。
「おーい、一刀!」
今しがた駆け降りた山の麓から、華佗があげた声を聞いた。
華佗はそのまま、こちらへ駆けてくる。
「あれが師匠。華佗って言えば分かるよな?」
肩越しに指さして言う。
「あ〜ら、随分な有名人に弟子入りしてるのねぇ……」
頬に手を当てて、感心する貂蝉。
自分の師匠が褒められるのは、やはり嬉しい。
そうこうしている内に、華佗が到着した。微かに、表情が厳しい。
「はぁ……、いきなりどうしたっていうんだ、一刀?山道で急に走り出して」
さて、どう説明するか。
「えーと、な―」
「いや、それはどうでもいいんだ。ちょっとこっちに来て座れ」
「え?おい―」
腕を取られて、下ろしてあった薬箱の近くに強引に座らせられた。
「ああ、やっぱり。傷だらけじゃないか。足首も痛めてる様だし……まったく、山道を駆け降りるなんて馬鹿な事するからだぞ」
呆れ半分、怒り半分で言う華佗。
736 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(3/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 21:10:01 ID:taEF3K0M0
「ほら、手当てしてやるから、腕を出せ」
「え、いいよ、そんなの。これぐらい放っておいても別に……」
「馬鹿な事を言うな。街の中でならともかく、山中での傷は、消毒を怠ると面倒な事になるんだぞ」
ほら、と催促が入る。
「分かったよ、頼む」
返事をして、まずは右腕を差し出した。
鍼を使う程のものではないらしく、華佗は傷口を洗って薬を塗っていく。
そこに、
「ちょ〜っといいかしら?」
貂蝉が口をはさむ。が。
「悪い、ちょっと待ってくれ」
とだけ返事して、華佗は俺の治療を続ける。
………この様子じゃ、貂蝉が話し掛けたって頭に入ってないな。
そうじゃなかったら驚くし。あんなの見たら。
「お前は医者になるんだろう、一刀。それがこんなに傷を作ってどうする」
「そんな大きな怪我でもないし、そんな神経質になるなよ…」
「怪我の大小を問題にしてるんじゃない。考えてみろ、掛かりに行った医者が生傷だらけだったらどう思う?」
「あー……」
得心がいった。
「心配になるな」
染め屋の白袴、か。
「だろう?分かったら、次からはあんな馬鹿をするんじゃないぞ―――ああ、顔にも傷がついてるぞ。ほら、こっち向け」
「ちょ、顔はいいよ。薬渡してくれれば自分でやるから」
さすがにそれは恥ずかしい。
「駄目だ。治療は最後までしっかりと受けろ」
「うー……」
渋々と顔を上向ける。
「仏頂面するなよ、薬が塗れないだろ」
「へーい」
眉間の皺を解いて、力を抜いた。
738 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(4/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 21:15:06 ID:taEF3K0M0
薬を塗り終わって、華佗は手をはたき小さく息を吐いた。
「もうするなよ?」
改めて念を押してくる。
「分かった――あ」
頷いて、そこで貂蝉をほったらかしにしていたのを思い出した。
「華佗」
不本意ではあるが、一応知り合いだし、紹介ぐらいはしておいた方がいい。不本意だけど。
えーと、どう紹介するかな。貂蝉とは何も口合わせてないし、まともに言うべきか。……他人のふり出来そうにないし。
同類だと思われないといいなぁ……。
「紹介するよ」
たしかこういう設定だったよな。
「都で踊り子してる貂せ―――んん?」
華佗に紹介しつつ、俺の後ろにいるはずの貂蝉の方を振り返ったところで、気が付いた。
何と言うか、こう、貂蝉から黒いオーラっぽいモノが出てる。いや、馬鹿げた表現だと思うけど、そう見える。
両手を見るようにうつむいて、「主人」だの「泥棒」だの「私の」だのぶつぶつ言ってるし、どうにも気味が悪い。
と。
「な、……何だ、これは……!?」
深刻な声で華佗が言った。
「馬鹿な……。この気配は確かに病魔のもの。だが、肝心の姿が……!」
「華佗?」
どうした?
「っ下がれ、一刀!!――危険だ!!」
「――!」
反射的に薬箱を抱え、華佗の後ろに回った。
743 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(5/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 21:20:03 ID:taEF3K0M0
村で聞いた話を思い出す。
五斗米道を極めると、病気の元である「病魔」を視認できるようになるらしい。
そして病魔は、自分を消そうとする――つまり、病気を治療しようとする――者に、害を与えるそうだ。
大抵は「病気がうつる」形になるらしいが、極稀に、強力な力を持った病魔は、物理的な影響を与える事ができる。
つまり貂蝉は、
「強力な病魔に侵されている―?」
「そのはず、だ」
はず?
「強力な病魔の気配はするんだ、俺が診てきた中でも最強に近いぐらい強いやつが。……だけど、いくら集中しても、姿が視認できない……!」
華佗の頬に、冷や汗が垂れる。
「見れない……って、どうすんだソレ!?」
「分からない。けど、病魔に侵された人を見捨てて逃げる訳にもいかない。――何とかするさ」
腰のケースから鍼を取り出し構える華佗。やせ我慢だろうが、その顔は笑っていた。
「もう少し離れてろ、一刀。どういう動きをしているのかさえ分からないんだ。いざという時に、助けてやれる確証が無い」
「分かってる!」
両手をフリーにするために改めて薬箱を背負い、貂蝉から10メートルばかり離れる。
この距離なら邪魔にはならないだろう。
「いいぞ華佗!」
「よし……行くぞ!」
745 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(6/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 21:25:10 ID:taEF3K0M0
と。

「いかあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

「!?」
物凄い叫び声が聞こえた。
華佗と揃って、声のした方を見る。
そこに――――――…………………………そこに、えっと、変態がいた。
性別は男で、身長は二メートルを超えるぐらいか。よく鍛えられた筋肉が、がっしりと付いている。肌は良い感じに焼けていて、頭の両脇で結った白髪を総の様に垂らしている。口元には立派なカイゼル髭が蓄えられていた。
それだけならいい。
どこが変態って、その男の服装だ。
まず下半身。白の捩り褌一枚である。
海辺、もしくは川岸なら納得できるが、生憎ここはユーラシア大陸のど真ん中である。当然、近くに川なぞ無い。
そして上半身。布面積が極端に少ない白のエロ水着(乳首だけ隠れる形だ)と、見せつける様に前を開いたマントだ。
どうみても変態である。
取り敢えず、変態その二と呼ぼう。
「いかん!!いかんぞ、貂蝉!確かに、愛するオノコを一人占めしたいと思う心は、漢女にとって大切なもの!しかし!その想いも度が過ぎれば心を病んでしまう!」
………しかも、貂蝉と知り合いっぽいし。ああ、類は友を呼ぶ、か。
「嫉妬の心に負けてはいかんぞ貂蝉!病んだ心に負ければ、小舟を褒める様なこととなってしまう!!そうなれば、愛するオノコをも傷付けてしまうぞ!!」
拳を握って、熱弁する変態その二。
しかし貂蝉は何の反応もしない。しかも、時間経過でだんだんと黒いオーラが濃くなってる気がする。
748 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(7/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 21:30:03 ID:taEF3K0M0
「ぬぅぅ!既にワシの言葉も届かぬか!?………かくなる上は仕方が無い。少々手荒になるが、恨むなよ貂蝉!!」
そう叫ぶなり、変態その二は胸の前で手を打ち合わせて、唸った。
「うぬぬぬぬぬ………………………はあっ!」
気合い一閃、変態その二が二人に分身した。
…………やっぱり人外の知り合いは人外か。そして、これで驚かない自分に少し自己嫌悪する。
分身した片方が跳び、地面から一メートルぐらいの高さで地面と水平に回り始めた。
首から下が、緑色の光に包まれる。
変態その二が叫んだ。
「漢女道が奥義!!」

「超救!」
「倭王!」

回っている方の叫びに呼応して、もう一人も叫ぶ。

「「伝影弾!!」」

掛け声に合わせ、立っている方の変態その二が回っている方を掌底で打つ。
その衝撃で、回っていた方が打ちだされ、

「伝心!!」

その勢いのまま貂蝉に抱きついて、縺れ合いながら三メートルばかし転がっていった。
うん。二メートル超えの筋肉ダルマ二人が半裸で抱き合ってるのは、さすがに暑苦しい。
しかし、今の技に何らかの効果があったらしく、貂蝉から湧き出ていた黒いオーラは霧散していた。
751 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(8/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 21:35:12 ID:taEF3K0M0
「あら……?わたしは一体何を……?」
「おぉ、正気に戻ったか貂蝉!」
「卑弥呼…?どうしてこんなところに?」
ちょっと待て、今ヒミコつったか?
ヒミコって、やっぱり邪馬台国の卑弥呼だよなぁ……。はぁ、また「名前を借りた」クチか。
だから、せめて男から借りろよお前ら。
「イイオノコの匂いを探ってきたのだが、いざ発見すれば貴様が小舟を褒める寸前になっておったからの。少々手荒いが、治療をさせてもらったぞ」
「小舟を……それ程にまでなってたなんて……。感謝するわ、卑弥呼」
「う、うるさい!べつに、貴様のためにやったのではないぞ!あのままではイイオノコが怪我をしていたから、仕方なく助けたのだからな!」
「あら、そうなの」
「ニヤニヤと笑うでないわ!」
……………………。
二人でイチャイチャしてるし、今の内なら逃げられるかな?
抜き足差し足……と。
「おぉっと!わたしとしたことが、ご主人様を放ったからしだわ」
ち。
754 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(9/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 21:40:09 ID:taEF3K0M0





で、その後同類と思われないか心配しながら華佗に貂蝉の事を嫌々紹介したり、
卑弥呼と華佗が微妙にズレた会話で納得し合ったり、
何故か懐かしい感じのおっさん三人を化け物二人が襲ったり、
この外史の紫苑……じゃない、黄忠と出会ったり、
みたいなことがあったけど、まあ、割愛する。
思い出さない方がいいことも世の中にはあるのだ、ということにしておこう。連中に関することは特に。




756 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(10/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 21:45:09 ID:taEF3K0M0
「だぁりん、今戻ったぞ!」
「ただいまぁん、ご主人様」
筋肉ダルマ二人が帰ってきた。
「どうしたんだ、二人共?事情があるからしばらく別行動を取るんじゃなかったのか?」
「うむ。そのつもりだったが、予定より随分早く用事が片付いてな。だぁりんに会いたくて急いで戻ってきたのだ」
「そうか。まあ、用事が済んだならいいか」
うん、と頷く華佗。こいつら二人の服装の件といい、どうも細かいことはあまり気にしない性格らしい。
まあ、こいつらの動向に関しちゃ、俺も興味はない。
今の興味の対象は、通る街通る村で囁かれている反董卓連合だ。
「大丈夫かな……」
連合の結成、そしてその結果、董卓達がどうなるのか。
前の外史だと俺達がいたから偶然助かったけど、今回の外史じゃ………考えたくもない。
かといって、たんなる医師見習いに何が出来るという話だ。
「はぁー……」
大きく溜息を吐いた。
「あんらご主人様、そんなに董卓ちゃん達が心配?」
「………………」
人の心を読むな。
「心配にならない方がおかしいだろ?」
「大丈夫。今頃は仲良く涼州を目指してるはずよ」
「……何で分かるんだ?」
訊くと、貂蝉は得意げに笑った。
「ふっふん。私がどんな存在なのか、忘れたのかしらん?」
ああ、そういえば、外史の外の存在だとか何とか。
何かしらそういう情報を手に入れる、俺達には出来ない方法があるんだろう。
「そっか、無事か……」
安心した。呂布とはぐれてないなら道中も安全だろう。無事に涼州まで行けるといいな。
「サンキュー、貂蝉」
「気にしないで。私も気になってただけだから」
757 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(11/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 21:50:01 ID:taEF3K0M0


「……貂蝉。北郷一刀には、おぬしが董卓達を助けたと言わぬのか?さすれば貴奴も、少しはおぬしの事を見直すだろうに」
「い・い・の。たしかにご主人様は褒めてくれるでしょうけど、そんなことで気を引こうなんて思わないわ。恋は尽くすもの、見返りを期待しちゃ駄目なのよ」
「その意気や良し。されど、引いてばかりでは相手は靡かぬぞ。時に自ら主張することを忘れるなよ、馬鹿弟子よ」
「あら、心配してくれるの?大丈夫。ご主人様との付き合いは長いんだから」
「ほざきよったな?面白い、振られて錆びついたおぬしの心、どこまで通じるか見せてもらおうではないか」

759 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(12/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 21:55:03 ID:taEF3K0M0
「ここが魏の都か……大都会だな」
「うむ。……しかし、都、と言う割には、随分と空気が荒んでおるな」
「ん?……ああ、そう言えば…」
何と言うか、ギスギスしている。
厭戦の空気という感じでもあるけど、魏ならむしろ戦勝ムードで湧いてるはずだが……。
あと、どうも周りから注目されてる気がする。首都で旅人が珍しいってのも変だし、どうしたんだ?
「こ、ここですっ!!ここに変な人達がっ!!」
突然そんな声が聞こえた。
そっちを見ると、町人らしき人を先頭に、魏の鎧を着た兵士の一団がこっちへ向かってきていた。
「うおっ!何や、このごっついの!キモいにもほどがあるで!」
部隊長らしき女の子二人の内、大きなゴーグルを首から下げた子が叫んだ。
「誰がキモいですってぇぇ!カワイイが抜けてるんじゃないのさ!」
「どう考えてもその四文字はいらんやろ!」
うん、俺も女の子に同意する。むしろ、キモいで済んだことに驚く。
「と、とりあえずどうするの……?」
もう一人の、丸眼鏡をかけた女の子が、ゴーグルの子に訊く。
「とりあえず逮捕してから考えんで!こんな怪しい連中、野放しにできん!」
ゴーグルの子の号令で、兵士達が俺達の――正確には貂蝉と卑弥呼の――周りに展開した。
「……おい、剣呑な空気の原因、お前らってことじゃないのか?」
「失礼ね、ご主人様。そんなはずないじゃない」
じゃあ、この状況は何だ。
「お、おい……どう見ても良い雰囲気じゃないぞ。どうなってるんだ?」
華佗が不安そうに訊く。
「ふむ。華佗。おぬし、ここに仕事で来たのであろう?」
「そうだけど……」
「ならば騒ぎを大きくして、だぁりんの邪魔をするわけにはいかん!ここはひとまず姿を消すぞ、貂蝉!」
「分かったわ卑弥呼!」
「「とぉうっ!!」」
即決、筋肉ダルマ二人は頷き合って、すぐ横の民家の屋根に跳ぶ。
そこで何故かポーズを決めて固まった。ちょうど逆光になっていて、シルエット(のみ)がカッコいい。
「ふん!貴様らごときに捕まる我等ではないわ!」
「悔しかったら追って来てみなさぁい!」
760 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(13/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 22:00:01 ID:taEF3K0M0
そのまま要らない挑発をして、裏通りへ姿を消した。
……騒ぎを大きくしないんじゃなかったのか?
「あっ!逃げたの!」
「追うで!沙和!」
「当然なの!あんなこと言われて、黙ってはいられないの!」
ほら、案の定ヒートアップしてるし。
二人はそのまま兵士達を連れて、傍の通りから貂蝉達を追いかけていった。
「……………」
呆然とする華佗。
仕方ないか、この手の騒動は慣れてないだろうし。
「華佗」
「あっ、ああ!何だ!?」
妙にうろたえられた。
「この街での仕事ってのは?」
「あ、ああ。えっと、ある人に治療を頼まれたんだけど……」
「そっか。じゃあ、その人のとこへ行こう」
淡々と進める。
「……凄いな、一刀」
「ん?」
「いや、あんなことがあったのに冷静だから、さ」
「ああ……、まあ」
仕方ないことに、この手の騒動に慣れてるんで。
「あいつらなら大丈夫だろうし、それこそ騒ぎを大きくする訳にはいかないからな。早いとこ用事済ませちゃおう」
「そうか……そうだな、うん」
納得する華佗。
と。
「もし、おぬし」
背後から声をかけられた。
「ん?何だい?」
振り向く華佗に倣って、俺も後ろを見る。
鎧姿の、夏侯惇と夏侯淵がそろってそこにいた。
763 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(14/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 22:05:14 ID:taEF3K0M0
「……!?」
思わず、眼を丸くした。
いや、そりゃ、魏の都で曹操も帰ってきてるんだろうからいるのはおかしくないけど、大将軍が二人揃って俺達に何の用だろう?
…………貂蝉達の仲間ってバレてて捕まるとか?
夏侯惇が口を開く。
「赤髪長身の、薬箱を持った男……五斗米道の華佗殿とお見受けするが、相違ないか?」
「違う!」
え?
「む。ならばすまなかった、人違い……」
「五斗米道じゃない!五斗米道だ!」
………おい、華佗。
「……ご……ごっと…べ?」
「発音が甘い!五斗米道だ!」
「ごっと……?」
「姉者、ごっとべいどーだ」
「それも違う!五斗米道だ!」
「ご、ごと……?」
姉妹揃って困惑顔だ。
まさか会う人会う人全員にコレやってるんじゃないだろうな?
764 名前:男だらけの恋姫†無双第二話‐1(15/15)[sage] 投稿日:2010/01/30(土) 22:10:03 ID:taEF3K0M0
「あのー、ちょっといいかな?」
このままじゃ終わりそうにないんで、割り込んだ。
「む。何だ、貴様は」
「名前は北郷一刀。華佗の弟子だよ」
「そうか。それで、その弟子が何の用だ?」
「ウチの師匠、流派の読まれ方に凄くこだわりがあるみたいなんだけど、どうにも発音が難しいんだよ。だから、単に華佗ってだけ呼んでもらえないかな?……華佗も、それでいいだろ?」
「ああ!」
と、気持ちいい返事。
「…………」
「…………」
「…………」
三人そろって唖然としてしまった。こだわりがあるのは、本当に流派名だけらしい。
「……とりあえず、華佗よ。我らが主、曹孟徳がお待ちかねだ。一緒に城まで来てもらおうか」
「分かった!」
767 名前:外史喰らい ◆g3lwFV02dE [sage] 投稿日:2010/01/30(土) 22:24:12 ID:taEF3K0M0
今日の分は以上です。
時間軸は、原作第1章〜第2章前半となります。


・原作第1章後半に当たる部分を書かなかった理由
自分の発想ではこの部分に一刀がいる意味があまり作れなく、原作とあまり変わらない展開になってしまったからです。
原作の展開を視点だけ変えた文章を書くぐらいなら、いっそ書かない方がいいと判断しました。
この外史の紫苑に出会って一刀が暴走しかける、というのは外史喰らい編の方でやりましたしね。

>>735
事前告知だけで十分だと思い、時間になったので投下してしまいました。
次からは事前告知にプラスして、投下前の一言があった方が良いのでしょうか?

支援ありがとうございました。
明日もよろしくお願いします。

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