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371 名前:北郷帝番外編予告1/4 ◆1KOsYU0skY [sage] 投稿日:2009/11/29(日) 01:47:31 ID:hJaPj1bZ0
相も変わらず、週末しかネットにつなげない一壷酒です。皆様お久しぶりです。
出張からの帰還が12月の18日と決まったので、いけいけぼくらの北郷帝は、それ以後の更新となる事
をお知らせに参りました。第三部本編は、おそらく年末年始にいくつか投下かな、と思っております。
その前に、第二部と第三部の幕間とも言える番外編をやる予定です。
今回は、その番外編の予告を置いておきます。



 ――新年の足音も迫る東京で、北郷一刀は一人星空を見上げていた。
「洛陽では……」
 その呟きを、聞く者は誰もいない。
 だが、そこに現れたのは……。

 栗色の髪、強い意志を感じさせる青の瞳。大きめの縁なし眼鏡をくいと上げる黒手袋のその仕草。
なによりも、真剣でただひたすらに物事を見極めようとするようなその凛然とした表情。
 街を歩いていれば、眼を引かずにはいられないような美少女が、そこにいた。
 だが、彼女を見ているのは、彼一人。
 彼一人、なのだ。
「お前は、幻影だ」
「幻影、なんだ」
 その言葉は誰に向けたものか、少女か、あるいは、自分自身か。
372 名前:北郷帝番外編予告2/4 ◆1KOsYU0skY [sage] 投稿日:2009/11/29(日) 01:47:55 ID:hJaPj1bZ0
 ――魏の都洛陽では、覇王が物思いにふける。
「ねえ、季衣。成都攻略から……何年だったかしら?」
「ええっと、成都を落とした時って一度目のですか? 二度目のですか?」
 思い返すのは、懐かしき記憶。
 すでに過ぎ去った、大切な日々。
「そう。では、一刀が消えてから、もう八年か」
 取り戻せない、そんな大事なものたち。
「でも、なんで急に……?」
「夢を見たの。夢を……ね」
 だが、彼女は立ち止まるわけにはいかない。覇王として、そして、なによりも、曹孟徳として。
 だが、その時、華琳という名の一人の少女はどこにいるのだろう。
 大陸に君臨する絶対者という孤独の中で、彼女はなにを思うのだろう。


 ――洛陽を魔の手が襲う。それを救うのは……。
「皇兄劉弁、ここにあり!」
 身にまとうは光り輝くぽりえすてる。天から下されたというその衣服を着るのは、かつて短い間だ
け帝位に上ったものの弟に位を譲り、一人の武将として立った男、弁皇子。
「連合は董相国に暴虐の汚名を着せ、国事を私せんとしている! 叛徒は洛陽にあらず、関外にあり!」

「いやあ、ほんま助かるわ。あんたがいるといないとじゃ、兵の士気が段違いや。これからも、よろ
しゅうな、皇兄はん」
「そんなたいそうな呼び方する必要ないのよ。霞」
 ふん、と鼻を鳴らして呟く少女の視線は鋭い。だが、その鋭さの奥にあるものは……。
「一刀で十分よ。一刀で。ほんとは真名でもないんだから」
373 名前:北郷帝番外編予告3/4 ◆1KOsYU0skY [sage] 投稿日:2009/11/29(日) 01:48:33 ID:hJaPj1bZ0
 ――南皮で行われるは、決戦。
「さ、どうされました、白蓮殿。兵たちがお言葉を待っておりますぞ」
 かつて幽州の太守として乱世を糾さんと立った女性は、城壁の上で戸惑っているように見えた。白
馬長史と謳われる、戦場での勇姿に比べると、その様子はいかにもおかしい。
「え、えと、趙雲お前がやるわけにはいかないのか」
「またものの私が演説など出来るわけがありますまい」
「陪臣とも微妙に違うけどな。星は白蓮の盟友である俺の臣下なわけだから」
 楽しそうに笑う常山の昇り龍。そんな二人の様子を眼を細めて見つめるのは、天の御遣いに他なら
ない。
「そもそもなんでこんなに兵が……」
「まったくなにをいまさら……。白蓮殿。いまより袁紹軍最後の根拠地、南皮を落とすのではありま
せんか」
「え、ええええええっ!!」


 ――長安に花開くは、時代の徒花。
「やはり、夢じゃったのう、麗羽ねえ様」
 仲王袁術は、従姉である夏王袁紹に語りかける。
「まあ、こんなものでしょう。幕を引くにはちょうどよろしいんじゃなくて?」
 麗羽は疲れたように呟く。こんな袁紹の姿を誰が想像するだろうか。
「七乃。戦況のほうはどうじゃ?」
「はい。函谷関では魏軍とにらみ合い。南は蜀との一進一退が、もうずぅうううっと続いてますね−」
 その報告を袁家の主たちは心底つまらなさそうに聞いている。
「まったく、どこの誰が考えたのやらのう」
「ええ、本当につまらない筋書き」
 そこに現れた人影は、彼女たちの感情を少しも波立てはしなかった。彼の瞳に宿る意志の力強さを
見るまでは。
「あら、一刀さん……いえ、違う、あなたは……あなたは!」
374 名前:北郷帝番外編予告4/4 ◆1KOsYU0skY [sage] 投稿日:2009/11/29(日) 01:49:45 ID:hJaPj1bZ0
 ――涼州の大地に翻る旗の数。幾千、あるいは幾万か。
「さてさて、離間の計か。相も変わらずつまらぬことをしてくれるな、曹孟徳」
 壮年の男が眼下に居並ぶ敵軍の群れを見て、馬上から吐き捨てるように呟く。それを受けるのは、
これもまた立派な馬にまたがった一人の少女。その脇には、彼女を一回り小さくしたような快活そう
な少女が控えている。
「義父上……」
「まあ、これも一興。涼州を侵す者は馬家が退ける。違うか、翠?」
「そうだな、義父上。……いえ、一刀殿。その通り!」
 答える言葉に迷いはない。ましてや握る槍には逡巡などありはしない。
 誰が相手であろうとも、涼州を守り通すのが、馬家の役目なのだから。
「さあ、行こう、馬家の棟梁! 錦馬超の名の意味を、あやつらに知らしめてやるのだ!」
「はいっ。遅れるなよ、蒲公英!」
「もちろんっ」


 ――それは、痛いほどの懇願。悲しいほどの希望。
「あなたは、ここから戻らねばなりません。この世界を捨てて、あなたの居るべき世界へと」
「長き夢からお覚め下さい、一刀殿」

           世界が、軋む。

「さようなら、稟」


 いけいけぼくらの北郷帝番外編 「北郷一刀の消失」
       12月20日頃公開


今回は嘘予告じゃないです。いや、ほんと。
ただし、日にちは前後する可能性があります。クリスマスは他の人がいそうなので、そこは避けたい所存。
では、また来月に。

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