- 870 名前:一壷酒 ◆1KOsYU0skY [sage] 投稿日:2009/10/16(金) 00:06:45 ID:RezBmEJo0
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本来の予告を書いていたら、いつの間にかできあがっていた嘘予告を投下してみます。
洛陽の闇は深い。
夜ともなれば、門は固く閉じられ、道を行くのは野良犬か、吹き抜ける風くらいのものだ。
だが、中には、そんな闇の中で蠢く者もある。
「ほら、鍵を開けろってんだよ」
「でも……」
「この店の鍵を開ければ、あんたの借金はなくなるんだぜ。また賭場通いで楽しめるってもんだ」
「わ、私はもう賭場になんて……」
「じゃあ、今すぐ銭を返せるって言うのかい? さあ、がたがた言わずに開けやがれ」
商家の使用人の風体の男を囲んで、風体の悪い面々が低い声で脅しかける。彼らは一様に武器を
帯び、すでにその手に握っている者たちも幾人かいる。
そして、脅されていた男は、ついにその手に持っていた鍵を店の扉へと向けた。
「そこまでよ」
声がかかった時には、一人が地に倒れ、二つの首が飛んでいた。
「な、なにっ」
現れたのは、闇夜に浮かび上がる白い鬼。
血刀を下げ、凛とたたずむその姿は、あまりに美しく、非現実的なものさえ感じさせる。
その鬼は一団があっけにとられている間に手近にいたもう一人を手に持った剣で切り捨て、さら
に他の者たちにも向かおうとしていた。
「ちっくしょおおおっ」
一人が、やけになったのか、鍵を開けようとしていた使用人の腹に短刀を突き立てる。ずるずる
と崩れ落ちる男の姿を見て、鬼の形相が変わった。
「あななたちって本当に最低の屑だわ」
刀の、振るわれる速度が上がり、盗人たちは、声を上げる間もなく倒れていく。
闇に、赤い血と白い鬼だけが踊っていた。
- 871 名前:一壷酒 ◆1KOsYU0skY [sage] 投稿日:2009/10/16(金) 00:07:16 ID:RezBmEJo0
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盗人の一味の中で目端の利く者は、白い鬼――雪鬼が現れた時点で、その場を離れ、駆け去って
いた。その進む先に、ゆらりと浮かぶ、漆黒の鬼。
彼女は手を開き、彼らの前に立ちふさがる。
そこで、朗々と口上を語り始める、黒き鬼。
「右手に大力、左手に義! 伝法、されど侠に溢れし胸懐に佩用されたる我が霊……おっと」
彼女の手から逃れようと、さらに方向を変えて走り去る数人は、そんな口上を聞いてもいない。
ただ、逃げなければいけない、そう思っているだけだ。
だが、彼らは気づく。
必死で走る自分たちの横を、悠々と滑るように移動する、闇の鬼――冥鬼の姿に。
「口上の途中で逃げ去るとは。お前たちのような者にもはや名乗る名はない。疾くこの世から去る
がいい!」
その言葉が届くより早く、彼らの生は終わっている。
そして、もう一人。
「やー。二人ともノリノリじゃのう。うぃー、ひっく」
赤鬼は屋根の上で一人、杯を傾けていた。だが、彼女は、何かに気づいたようにその手に持った
酒杯を投げ捨て、すっと屋根の上に立ち上がる。
「何者じゃ」
「混沌の都に、愛と美を届けんと、美々しき蝶が、いま舞い降りる」
そこに降りてきたのは、白い着物に身を包む、蝶の仮面をつけし者。
「遅かったな、華蝶の者よ。正義はすでに執り行われたぞ」
「鬼面連者よ。お主らのやりようは正義に非ず!」
槍を構え、華蝶仮面は言い放つ。
「力なき正義が、なにをほざく。悪は滅ぼすべし、人に紛れた獣は死すべきじゃ」
「確かに、悪は滅ぶべきであろう。なれど、正義なき力は暴力に過ぎん。その力の振るい様、我は
認めるわけにいかんっ」
ああ、正義を求める者たちよ。
なぜ彼らが争わねばならぬのか。
- 872 名前:一壷酒 ◆1KOsYU0skY [sage] 投稿日:2009/10/16(金) 00:07:44 ID:RezBmEJo0
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戦いの時が去り、蝶の仮面を持ち、彼女は独りごちる。
「正義とは、なんであろうか……」
だが、彼女には仲間がいる。
「おなか……すいた」
古き盟約を、再び果たす者がいる。
「巨乳は敵!」
新たに華蝶の運命を受け入れる者がいる。
果たして、彼らの目指すべき正義とは、どこにあるのか。
連者の一画は、動けない。
「ふにゃ〜。眠いにゃあ」
「ねむいにゃあ」
「ねむねむー」
「……ぐー」
真の悪とはいったいなんなのか。
「警備担当の我らには皆迷惑なのだがな」
「ちゅうても……あれ、なあ……。中身が中身やし」
「でもー、そうなると、止められるのって誰なの? まさか、華琳様を頼るわけにも……」
警備隊を率いる三人の苦悩。
「そうだ、隊長だ」
「せやな。たいちょががつんと言ったら大人しうなる面子やわな」
「放置している隊長が悪いと沙和は思うのー」
導かれる真実。
「ふむ、真の悪は隊長か」
- 873 名前:一壷酒 ◆1KOsYU0skY [sage] 投稿日:2009/10/16(金) 00:09:56 ID:RezBmEJo0
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そして、ついに現れる、帝都の真の支配者。
「ツンツンツンツンツンツンツンデレ♪」
新感覚ツンデレ魔法少女の正体は、誰も知らない、知られちゃいけない。
「知りたかったら、七度生まれかわって、美少女になってきなさいね」
いま、まさに洛陽は魔都と化す。
勝つのは『どの』正義か。あるいは――。
「あー、もう。ほんと、勘弁してくれ……」
いけいけぼくらの北郷帝異聞「三大連者大激突 〜洛陽の都に華は散る!?〜」新春公開!!
* *
* + うそです
n ∧_∧ n
+ (ヨ(* ´∀`)E)
Y Y *
そういうわけで、嘘予告でした。
今週投下予定の第二部北伐の巻第十回は、なんとか週末のうちには投下できそうですが、土曜に
なるか日曜になるか現時点ではわかりません。きちんと完成させたいので、気長にお待ち下さいませ。