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427 名前:風鈴 ◆VOACf8e.7. [sage] 投稿日:2009/08/22(土) 01:50:38 ID:6+aXhpP30
──真√──

真・恋姫†無双 外史
北郷新勢力ルート:Interlude8


短いですよ。


・オリジナルルートの為、登場人物同士の呼び合い方が、原作とは異なるものがあります。
  例)風→一刀=原作:お兄さん・本作:ご主人様
    ※独自の呼び方は作者の勝手なイメージです。
・当作品では、『天の御遣い』と言う名の持つ影響力は、原作より強くなっています。
・原作にてセットになっているものを崩す傾向にあります。
  例)張三姉妹→人和  北郷隊三羽烏→凪
・本作はご都合主義で出来ています。
・オリキャラ注意。

URL:
http://koihime.x0.com/bbs/ecobbs.cgi?dl=0391

では、宜しければお付き合い下さいませ。



──真√──

真・恋姫†無双 外史
北郷新勢力ルート:Interlude8

**

 時は、劉備が永安へと船を走らせ、曹操が河北四州を平定しようと猛進し、孫策が江南を平定しようとしている頃。
北郷一刀は、一人の少女の訪問を受けていた。
 訪問と言っても正式なものではなく、深夜に近い夜、部屋に一人で居たところ、いつの間にか部屋の中に居た……
と言う形でだが。

「それで……君は誰で、俺にどんな用かな?」
 普通に考えれば暗殺者辺り……だが、一刀はそれを除外した。仮に暗殺者であれば、自分は既に死んでいておかしくない。
……それほどまでに、少女は一刀の部屋に『自然に』存在していた。
 一刀に問われた少女は恭しく礼をすると、静かに口を開いた。

「お初にお目にかかります……我が名は管輅。予言を授けに参りました」

 ……と。


                      ◇◆◇


 一刀は、自分の正面に座った、管輅と名乗った少女を見ながら、正史における管輅の事を思い浮かべる。
……といっても、彼が知っているのは大雑把な事でしかないのだが。
 つまり、管輅は三国時代に生きた『占い師』である……だ。

「……管輅さん、さっきあなたは予言って言ったけど……占いとは違うのかな?」
「おや、そこに気づかれましたか。はい、世間一般の占い師であれば、予言も占いも同じ事でありましょう。
ですが、私の場合は少々事情が変わりまして……。
 私にとっての占いとは、星の数ある未来の中からある程度を絞り出し、選択の為の指標や助言を授ける……と言った事。
 ですが予言は違います。
 ……私にとっての予言とは、星の数程ある未来の中で、“起こさなくてはいけない事象”を起こす為に行う事ですから」
 
 北郷一刀は一瞬、管輅が何を言ったのかが理解できなかった。
 ……無理もあるまい。彼女はこう言ったに等しいのだ。『自分が予言を行えば、それは必ず真実となる』と。
「…………そんな事が……可能だって言うのか?」
 信じられないと言う様子で呟く一刀へ、しかし管輅は静かに頷き、そして言った──

「はい。それがこの外史の管理者の一人である私の役目であり──貴方様をこの外史へ呼んだのもまた、その予言の力なのですから──」

 一瞬にして、体を緊張が駆け巡り、ゴクリ、と、息をのむ音が聞こえた。
 それは己が立てた音であるにも関わらず、北郷一刀には、遠い音に聞こえていた。

 ……自分をこの世界へ連れてきた“原因”が目の前に居る──。

 その突如突きつけられた事実が重く圧し掛かる。
 「そんなばかな」と、笑い飛ばしてしまえればどれ程楽になるだろうか。
 だが──目の前に居る少女からは、決してそれが冗談ではない思えるほどの雰囲気が漂っていた。
 そして恐らくは……それは事実なのであろう。理由も根拠も無いのだけれど。
 一刀はそれを頭の中で幾度と無く繰り返し……一刀はふとその緊張を解き、僅かに微笑んだ。
 その反応に、管輅が「意外」といった表情を見せる。
「……私を、お恨みにならないのですか?」
「そう……だね。もしもっと早くに君と出会っていたのなら──俺は君に怒り、怒鳴り散らしていただろう。
 もし俺がもっと辛い目に遭っていたのなら──俺は君を恨みに恨んでいたと思うよ」
 そこまで言って小さく息を吐き、軽くかぶりを振って「けど──」と続ける。
「だけど、今は然程恨んではいない……かな?
 確かに大変な事ばかりだった。
 確かに辛い事も多く有った。
 だけど、この世界に来たお陰で……俺は大切なものがいくつも出来たんだから」

 一刀の言葉を聴いた管輅は、「……そうですか……」とふと柔らかな微笑みを浮かべ、言う。
 そして静かに立ち上がり、もう一度、先程の様に恭しく礼をすると、
「では……予言を述べさせて頂きます」
 その言葉に、一瞬身を硬くした一刀へ、
「そう緊張なさらないで下さい。……大丈夫です。これは、私から貴方様への、せめてもの謝罪と御礼ですので……」
 と、微笑みかけながら告げた。

 そして──


「──汝、遠き未来に決断の時が訪れる。

 其は汝が行く末を決めしもの。

 心せよ。其は終りの時に訪れる。

 心せよ──其は全て、汝が心のままにある──」


 管輅は現れた時と同じように……一刀が気が付いた時には、既にその場から消えていたのだった。

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