- 18 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 00:37:13 ID:woAomhNU0
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誰もいなければ10分後に投げ始めます。mob男が含まれています。
火急の用がある人はお早めにどうぞ。
- 20 名前:日常はしにました 1/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 00:49:23 ID:woAomhNU0
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生温い、肌に纏わりつくような風を感じながら、ゆっくりと砂を踏みしめて歩いてゆく。
視線を上に向けてみれば空模様は曇り三分といった具合だ。日差しが弱まりはじめる時期
とはいえ、それでも太陽に雲が掛かっているのは喜ばしい。一日中日向にいなくてはならな
いわけではないにしろ。
丁寧に植え込まれたいくつもの植物が、あるものは枝を繁らせて、あるものは花を咲かせ
ている。不在の間のごたごたで荒れていると聞いたが、俺にはとてもそうは見えなかった。
機会を見て、恐らく最もここで長い時間を過ごしているだろう方に尋ねてみた事もあるが。
『……まあ、俺にもわからないな。……分かる事っていえば、俺みたいなのにわからないよ
うに維持するのにも、みんな本当に気を使ってるんだなって、そういう事ぐらい』
そう告げられてしまった。なるほど、荒れないわけだ。
ふと視線をやると、中庭を横切るようにのびる廊下の間に、小さな影が目に入る。誰だと
思い一瞬槍を構えかけるが、見知った姿だった。手摺を越す程度の小さなそれは、忙しそう
にぱたぱたと廊下の間を走っていき――突然、姿が消えた。
……なんだ? 自分の中から湧き出した疑問は、すぐに自分自身によって解決された。
――転んだ?!
「だ、大丈夫ですか?!」
「はうぅ〜……」
慌てて走り寄りながら声をかけると、恐らく今打ったであろう額を右手で抑えながら、小
さなその体躯をゆっくりと起こす。服の端で、小さな鈴がちりちりと震えていた。
「大事になるといけません。念の為、すぐに手当てを」
「は、はわわ……い、いいんですっ。本当に大丈夫ですから……」
「ですが……」
「ほ、本当にちょっと転んだだけなんですってば……」
ともすれば食事処で給仕でもしていそうな、ただの少女に見えるその方は額に置いてあっ
た手を『もう痛くない』と言わんばかりに離して、食い下がるこちらの提案を頑なに突っ
ぱねた。
俺のような一介の兵士でも、或いはだからこそ知られている一国の趨勢を左右するとされ
る軍師殿である。大変失礼な考えだがこうしている分には拗ねた幼子のようでもあった。
何にせよこうまで突っ張られては仕方ない。あまり食い下がっても失礼だ。後で常駐の医師
に話だけでも通しておくことにしよう。ともかく……。
- 21 名前:日常はしにました 2/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 00:52:16 ID:woAomhNU0
-
「そんなにお急ぎになられて、何か火急の用でもあるのですか?」
身を自然とこわばらせるわずかな緊張を持ちながら、俺はそう尋ねてみた。
この大陸に天の御使い様が降り立ち、ひとまずの安寧が訪れてから久しい。何か大事が起
こったのかと身構えてしまう。
「いえ、そういうわけではないんですけど……愛紗ちゃ……関羽将軍を見ませんでしたか?」
「は……関羽将軍ですか?」
言い掛けたそれ――真名なのだろう――には目を瞑って、その質問に頭の奥が記憶を辿る。
「いえ、この辺りでは」
「そうですか……。う〜ん、部屋にも中庭にもいないし……また後にしようかなぁ。でも、
私も今日は……う〜ん……」
……返事をしていたと思ったら、顎に手をあてて俯いたまま動かなくなってしまわれた。
「あの」
「ひゃいっ?!」
「だ、大丈夫ですか? 申し訳ありません」
「い、いえ、お気になさらないでください……ええ、とそれで?」
「もし見かけたら、何か伝えておくべきでしょうか?」
「そう……ですね……」
眉根を寄せながら、軍師殿はあー、とかうー、とか声にならない声を漏らしながら何かを
考えているようだった。そんなに悩むような事なのだろうか? 所詮俺のような浅学ではそ
の理由を想像することも出来ない。
「……それなら、お願いします。私が探していたと伝えてくだされば、それでいいですから」
「はっ。承りました」
軽めの鎧を擦らせながらはっきりとした声で了承すると、『それではお願いします』とだ
け言って、小さな軍師殿は渡り廊下の向こうへと去っていった。
「……ふぅ」
その姿が見えなくなった頃、自分の話していたのが誰かをはっきりと思い出して、思わず
喉の奥から空気を吐き出していた。言葉を交わしているうちは何も感じなかったが、思い返
してみると喉が詰まりそうだ。何か出すぎた真似をしなかったか、失礼をしなかっただろう
か、そんな事ばかり頭の中を巡ってしまう。……駄目だ駄目だ。
「さて、行くか」
いつまでも気を取られていてはいけない。俺の仕事は警備なのだから……とりあえず関羽
将軍の事は仲間にも伝えようと頭に仕舞い込んで、経路を考え回ることにした。
- 22 名前:日常はしにました 3/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 00:56:27 ID:woAomhNU0
-
日はまだ高い。時おり少し外れた茂みの奥や建物の影を見渡して将軍の姿を探しつつ、俺
は決められた巡回路を消化していた。もう少し慣れていれば効率のいいやり方もあるのかも
しれないが。
そう、配置替え。平民上がりで長らく街の警備の一角を担っていたが、つい最近何かしら
の事情で欠員が出たのか、それとも何か密かに評価されていたのだろうか、城に勤めるよう
言い渡されたのである。……俺としては後者の方を期待したいが。
この大陸にもう大きな戦らしい戦は起こることもないだろうが、それでも不埒な奴らはそ
れなりに城下に見られるように、いつでも備えというものがなくてはならない。天上人をは
じめとしていずれも民に聞こえるだけにその身を狙う不届き者が現れないとも限らない。そ
う考えれば多少退屈に感じる警備も暇を感じられまい。
手も届かぬような大陸の英雄を護ることと思えば、何より誇らしい。
「さて……」
鎧の下を抜ける風に僅かな涼しさを感じながら、俺は渡り廊下も繋がっていない、奥にあ
る倉庫の方へと足を伸ばした。未だに一線級を退かないらしい倉であるが、人の気配がしな
いせいか見た目以上にうら寂れて見える。
こんなところに将軍が用があるとも思えなかったが、敷内を把握するためでもある。俺は
その寂れた倉庫の裏側へと足を伸ばす――
「……っ、……っ」
――その足を止めた。
鎧の間を抜けるような微風にかき消されるほどの小さなそれではあったが、確かに何か、
聞き間違いではない『音』がする。
「……っ、はっ……」
俺は無意識に使い込まれた槍を両手で支えていた。ぴりぴりと背中に緊張が走る。
くぐもった、何か、息が漏れるようなそれは気を張っていなければ間違いなく聞き逃すも
のではあったが、一度気づいてしまえば疑いようがない。
――誰だ? ……まさか、賊か?
頭の中でいくつもの似たりよったりな考えが交差する。この息を押し殺すような音、ただ
ごとではない。疑ってかかるのも当然であろう。
誰かを呼ぶことも考えたが、その間に取逃がすかもしれない。ともかく様子を窺ってみよう
と思い、俺はそろりと倉庫の角へ足を向けた。
壁によりかかるように積まれた荷の隙間から、ちらちらと躍っている黒が映った。
- 23 名前:日常はしにました 4/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:01:14 ID:woAomhNU0
-
隙間は俺が中腰になるとちょうど目のあたりに来ていて、向こう側の様子がはっきり見え
る。それに身を隠しながら、様子を窺った。
揺れる黒が一体何によるものなのかは、覗いてみればすぐに分かった。
「関羽……将軍?」
驚いた。
紛れもなくそれは、俺がさっきまで探していたその人であったからだ。本人の凛とした気
質を受け継ぐかのような黒髪は、彼女の頭に付き従ってひらひらと揺れている。
しかし――俺は呼びかけようとはせずに、様子を窺っていた。
「はぁっ……ふ、ん……ぁっ…」
様子が、おかしい。
くぐもった、鼻から抜けるような声を漏らしながら、我らが将軍はその滑らかな線を描く
腰の辺りをもじもじと動かしていた。時おり堪えきれずに微かに声をあげ、宝石のように綺
麗な漆黒の瞳を揺らめかせる。
その様子はまるで――いや、まさか、そんな事が。
「……んっ……ふ、ん、くっ……」
しかし、俺のそんな考えを裏切るかのように――或いは期待を後押しするかのように――
その声は段々と明瞭になっていく。よくよく見てみれば頬は僅かに紅潮していて、堅く閉ざ
された口の隙間から出る声は、どこか、熱っぽい。
疑いながらも、ほとんど自分の中で確信的な事実が浮かび上がる。将軍は、その、誰しも
が、俺も含めた俗人達が皆持つような欲望の一種に身を委ねているのだと。
……彼女は間違いなくこの国において他に類を見ない将である。恐らくは大陸でもそうだ
ろうし、それが世界の果てになろうが変わるまいと信じている。長い黒髪をまるで生き物の
ように振り乱し、青龍刀を振り翳すその凛とした姿は間違いなく我らが求める英傑そのもの
なのだ。美しく、気高く、そして強い。
「んっ……はぁ、ふ……ひゃんっ! ぁ……」
その彼女が、人目につかない倉庫の裏で痴態を晒しているという現実に、みるみる身の内
が昂ぶっていくのが分かる。
先ほどまで軽快に動いていた足は、縫い付けられたようにもう動かない。自らを下種だと
蔑みながらも、俺はもうその場を離れることができなかった。先ほどまで凛々しく美しく、
理想と呼ぶにもおこがましい存在を探していた俺の目は、今は同じ、けれども決定的に既知
と食い違うその存在を食い入るように見つめてしまっている。
- 24 名前:日常はしにました 5/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:06:25 ID:woAomhNU0
-
ごくりと、唾を飲み込んだ。
こんなところが見つかればどうすればいいのか、そんな事にも頭が回らず、俺はただ目の
前の状況を目に焼き付けているしか能がない。
こちらに向きながらも、まるで気付いていないようだ。普段の様子からは発せられる事が
信じられないほどの耳を疑うようなか細い声を喉の奥から絞り出しながら、初めてその口か
ら言葉らしい言葉を紡ごうとしていた。
「はぁ、ふ……ん、ごしゅじ、ん、様っ……」
「……」
――その瞬間、俺の心は多少なりとも落胆するような気持ちがあった事を否定はしない。
無論、知っている。
この城下にいるもの、否、いまや大陸にいるものでそれらしい話を聞かぬ者はいまい。
武神と呼ばれる将達、鬼を謀るとされる軍師達。彼女達がいずれも天の御使いたる北郷
一刀様と懇ろにしている、という風聞を。
俺自身も城下で精勤していた際、幾人もの将を或いは軍師を連れ立って街を回っている姿
は見掛けたことがあるのだ。その様子はただの主従関係では計れない……なんというか……
とても親密な様子であったのだ。だから、流聞も事実に基づくだろうと思ってはいた。
思ってはいたが……どちらも俺にとっては遥かな憧れの存在だったのだ。それがはっきり
と示されてしまい、心の隅の辺りがほんの少し痛む。
……まあ、仕方ない。俺が勝手に神秘などを感じていたものを、勝手に落胆するなどという
のはおこがましいにも程がある。
「は、くぁっ……ん、んんむっ……は、ふ」
しかし、その事実は却って俺の別の部分に火を点け始めてもいた。
尊敬し崇めるその存在も、俺達と全く同じその衝動に突き動かされることがあるのだ。
均整に整った顔はくしゃくしゃに歪み、黒々とした瞳は濡れたように光を鈍く返している。
今まで自然と目に入らなかった、その豊かな胸は時おり弾む体に合わせて柔らかく跳ねてい
る。露出した肌には珠のように浮かんだ汗がきらきらと光っている。今までにないほどの興
奮を感じ、股間の辺りが窮屈になるのを感じる。
下劣だと蔑む自らの心の裡が、むしろ余計に興奮を煽る。俺は下劣だ。しかし彼女は何だ?
自らの主を呼ぶその姿にたまらない劣情を催して、気付けば目はかっと見開いていた。
だから、何か妙なことに気がついた。
- 25 名前:日常はしにました 6/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:09:40 ID:woAomhNU0
-
むしろ今まで気付かなかったことが不思議なほどである。よほど俺は興奮しているらしい。
自慰を行っているだろう彼女の両手が、しかし下半身の裾の下まで伸びていないのだ。
将軍は女性らしく細く、しかし力強い腕で裾を押さえるようにしながら時おりぐいぐいと
下に向けて引っ張るだけで、その行動は今の彼女の様子とまるで噛み合っていない。まるで
独り相撲のように両手で布を引っ張り、艶かしく体をくねらせる彼女に、疑問を抱かずを得
なかった。
積荷の隙間に思わず目を押し付けてもっとよく見ようとすると、そこでとんでもなく奇妙
なものに気がついた。
「はぁっ……ん、ふ、あぁ……んっ」
彼女が抑えてる裾の、その下。
まるで布を押し上げるように、時々何かがもごもごと動いているのだ!
それが動きを見せるたび、将軍はたまらずに声を漏らしている。一体何なんだ?
疑問に思ってさらに下に視線をやると、しなやかな将軍の両脚に間に割ってはいるように
して――何かが存在していた。
――まさか。まさか。
「ひぁあんっ……! ごしゅじ、さま、何をっ」
見間違えようはずもない、陽光を照らし返すその衣。それが将軍の下でもぞもぞと動き、
回転し、突き上げるようなこともしてみせる。
……な……
何が起きているんだ俺の目の前で一体?!
目を丸くする俺の目の前で、裾を持ち上げて、大きな何かが姿を現した。どう見ようが頭
だった。座り込んだその姿は、どう見ても――。
「御主人様っ、どこを舐めているのですかっ」
……多分その時の俺は世界一間抜けな顔をしていたのではなかろうか。
やはりというか、何というか、彼女の下から姿を現したのは天の御使いその人であった。
平時にも増して悪戯っぽく口の端を吊り上げながら、荒く息をつく将軍を見上げている。
「どこって言われても……愛紗の素直なところかな」
「なっ――」
ろくに返事を聞かないうちにまた再び股座の下に潜り込むと、一際大きな嬌声があがった。
自然逃れようとするその足をがっちりと掴んで離さず、頭(だろう)に押されてぐいぐいと
布が持ち上がる。
憧れの人が自慰していたと思ったら、それは……あれ、俺はどんな状況に遭遇してるんだ?
- 27 名前:日常はしにました 7/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:13:50 ID:woAomhNU0
-
将軍の下半身でもぞもぞと一刀様の頭が動くたびに、まるでそれに操られるようにして彼
女もまたその身を妖しく捩り、抗議のような、喘ぎ声のようなどちらともとれる声をあげる。
僅かばかりも立たずに、二人の密着した部分からはぴちゃぴちゃという粘りけのある音が
響き始めていた。よく見ると彼女の股の付け根から、とろりと一筋の何かが流れ落ちている。
「ごしゅじん、さまっ……あ、こんな、ことっ……」
「愛紗のここ、どんどん奥から流れてきて……凄いよ?」
「そんな事、わざわざ言わなくても構いませっ……あ、ひぃぁんっ……!」
我が国でも最重要と言っていい中枢を担う二人が真昼間に倉庫の裏で下半身に顔を突っ込
ませて行為に及んでいる。現実と空想の壁が容易くぶち破られすぎて、却ってこれが事実な
んだと俺が受け入れるのは簡単だった。
「御主人様っ……いいかげんにしてくださらないと、怒りますよっ……ひゃ、ふ、んっ」
「……」
「へ、返事を……あっ、んっ、ど、こっ……あ、ゃあっ!」
言葉そのものは厳しくても、本気でそう思ってはいないことが俺にすら分かる。
じゅるる、と一際大きな水音に言葉を中断させられて、将軍は首をいやいやと振りながら
悶えている様子だった。両脚をがっちりと掴まれて浮いた腰では刺激を逃がせず、目を瞑っ
て堪えているようだ。
「ぁ、や、そんなところ……ぁ、そこはぁ……っ舐めないで下さい、御主人様っ……!」
――舐めるってどこをだ?
「か、噛むのはもっとだめで……っ、あっ、ひゃぁあああんっ!」
――噛むってどこをだ?!
俺の突っ込みも虚しく、応えるものは何処にもいない。それにしても人気がいないとはい
えこんなに声をあげても大丈夫なのだろうか。気をつけなくては。……いや、何で俺が人の
行為の番犬をしなくちゃいけないんだ? いやでもあれは一刀様と将軍で……あああ。
「……そんなに声をあげたら誰かに聞こえちゃうよ、愛紗」
「だ、誰のせいだと思っているのですか!」
「俺と愛紗のせいかな」
そうして一言二言交わした後、追撃しようと口を開く将軍を封じるようにして、また二本
の脚の間へと一刀様は顔を埋めていく。将軍は言葉をまともに喋れず中断させられて、空気
を飲み込んでは喉を鳴らしながら吐き出していた。
- 29 名前:日常はしにました 8/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:18:31 ID:woAomhNU0
-
将軍の鍛え上げられたはずの足腰が、今、たった一人の男によって崩されようとしている。
膝の辺りは目に見えてがくがくと震え始め、きつく一文字に引き締まった唇からは荒い吐息
が漏れて、我慢しきれずに声をあげるたびに足元が定まらなくなる。
脚の表面を伝って流れ落ちる彼女の露はもはや止め処なくなっていて、足元にまで間もな
く達しようというほどになっていた。
「ぁっ、ぁ……御主人様、わたし……だめです、潰れてしまいま、す」
弛緩した彼女の体は、下半身をしっかりと固定されることでようやく体裁を保っているよ
うな形だった。もうやりとりをする余裕もないらしい。
それが分かっているのか、足元の一刀様も返事をせずに動きだけが激しくなっていく。今
までのような蕩けさせるように緩い動きとは一転したものへと。辺りに響く水音は激しさを
増して、見えない部分で行われているだろう苛烈な舌使いを否応なく想像させた。
「んっ……ちゅる、ん……じゅるるるっ」
「あっ、ん、ぁ、だめでっ、御主人様、私、立っていられなくっ……」
「ん、む……ちゅううっ」
「ひぁああああっ!」
防戦一方の将軍はいよいよ限界らしく、全身を痙攣しているかのように微かに震わせてい
る。折り曲げた脚の間から快楽の奉仕を享受して、なお身体を溺れさせている。よく見れば、
腰がまるで真下にいるそれに擦り付けるような動きへと変化しつつあった。それに気付いて
いるだろうか、気付いていないのだろうか。
開いた口からは一筋の涎と共に、真っ赤な舌がのぞいている。
普段の凛々しく強い将軍からはまるで感じさせない、恥じらいが混じった紛れもない女の
顔だ。それに興奮すると共に、未だ下で這い回るその男に、今までとはかなり色が違う尊敬
が加わっていた。凄いぜ天の御使い。
「ひっ、あぁぁ、はげし、くっ……わ、私もう……ごしゅじん、さまっ」
前触れのように彼女が一際激しい嬌声をあげはじめる。いよいよか。
それをしっかり感じ取ったようで、下半身に潜り込んでいるそれが突き上げるかのように
背中から伸ばされ、彼女の腰をしっかりと支えると共に、より深く二人の身体が密着する。
かたかたと二人の身体が、どこか不恰好にお互いに揺れ、動き――
「あ、ひゃ、ん、あぁああああっ……!!」
- 31 名前:日常はしにました 9/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:21:45 ID:woAomhNU0
-
その見事な稜線を反り返らせながら、関羽将軍は絶頂を迎えていた。体勢を崩しそうにな
っている彼女の下半身を、一刀様ががっちりと支える。
「ん、うぅんんんっ……! あ、は、ふぁ……ん、んっ」
身体の奥から盛り上がってくる熱を逃がすかのように息を吐きながら、高みを迎えた将軍
はゆっくりと、ゆっくりと前に倒れこんでいく。それを一刀様は両腕で受け止めると、彼女
を仰向けにするようにして背中を支えていた。
何というか……いや、素直に感じておこう。いいものを見た。
「……愛紗。大丈夫?」
「はぁ、ふ……ご主人、様……わたし、は……」
ようやく下半身から頭を離した一刀様は、口元から首にかけて満遍なく滑った光沢が存在
していた。あの体勢なら恐らく口の中はもっと凄いことになっているはずだが……その様子
はおくびにも見せない。
未だ余韻を残しているようで、豊かな胸を上下させながら一刀様を見つめるその瞳は、ど
こか焦点が合っていない。辛うじて単語をおぼろげに発している言葉からは、果たして質問
の意味を理解しているかどうかも怪しかった。
「ちょっとやりすぎたかな……。愛紗があんまり可愛かったから」
「またそのような、お戯れを……ご主人様は、は、ふ」
……何故だろう? ひどい桃色の背景が見えるぞ。
反面俺の背中の寂しさを余計に感じながら、軽く言葉を交わす二人の様子を覗き続ける。
敬愛しているであろう、その姿に将軍が呼びかけ、そして――
「……って、違います! 何をやっているのですか!」
突然、緩やかな風のように流れていた空気をぶち壊すように、彼女が起き上がった。
抱き止められていたような格好から、素早く腕を振り払って立ち上がる。自分の姿を見直
すと服装を改め、キッときつい視線を浴びせかける。
さっきまで脱力していたとは思えないほどの変わり身だ。、変なところで感心してしまった。
そんな彼女に合わせて、しかし決して急がずに、一刀様も立ち上がってお互いに向き合う。
……ん? そういえば将軍の下着は何処にいったんだ? まさか下着の上から弄っていた
という事はないだろうし……はて。
「ご主人様! 悪戯では済みません! これは……ですね、その……とにかく、駄目です!」
俺の疑問を無視して、事態は進んでゆく。
- 32 名前:日常はしにました 10/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:24:26 ID:woAomhNU0
-
「ご主人様は一体何を考えているのですか! このような恥辱――」
事の次第が何なのかわからない俺に推測する事はできないが、将軍の剣幕はなかなかのも
ので、ただでは終わりそうに見えない。
しかし、対峙している一刀様は思いのほか冷静だ。城下ではしばしば怒鳴られて沈黙する
姿も見られていたのだが、時と場合というものだろうか。
「怒らせちゃった……かな?」
「当たり前です! あのような――あまつさえ、その、真昼間からこんな、こんな事を!」
あまつさえの前後に並ぶ事例が逆のような気がするのは、俺の気のせいなのだろうか?
「それは、ごめん。けど、愛紗とこうするのも久しいから――何か、盛り上がっちゃって」
「……は?」
真摯に相手を見つめながらそう零す一刀様に、対面から一気に何かが抜けたような声が出
る。まだ事態を把握できない彼女を尻目に、男の方は心底申し訳なさそうな顔をしながら頭
を下げていた。
「色々、俺の先走りだったな。ごめん」
「ち、違います!」
度重なる否定の言葉。将軍は必要以上に慌てているようで、語気を荒げながら手をぶんぶ
んと振って意を表す。対面している一刀様の方が驚いているようだ。無論俺も驚いている。
さらに被せるように、将軍は言葉を続けた。
「違うというのはですね、その――いえ。ご主人様のそういったお気持ちは、その、私に勿
体無いほど嬉しいものです。それは、その、くれぐれも誤解なきよう」
……なんか空気が怪しくなってきた気がする。
「私が言いたいのはですね。ただ……その――何といいますか」
今日はつくづく、誰かに対する印象がころころと変わる日だ。胸に手をあてて、僅かに紅
潮させながら言い淀む姿は、ともすれば親に言い訳をする子供のようでもあった。
突っかかった言葉はなかなか出てこなかったが、その先を察することが出来たのだろうか、
或いは焦れたのだろうか。向い合った一刀様の方が、その右足を一歩前へと出した。
「愛紗」
たった一言の、しかし優しく肌の表面をくすぐるような呼びかけだった。
それだけで次の瞬間には、もう彼女は表情を綻ばせて火に誘われる蛾のようにふらふらと
一刀様の方へ近付いていってしまうのだ。
ほんの一時見つめあった後、彼等はその唇を交わした。
- 34 名前:日常はしにました 11/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:31:49 ID:woAomhNU0
-
「ん……ちゅ、ふ……ん」
「はぅん……ん、く……」
……いや、これでいいのか?!
さっきまでぴりぴりした空気だった気がするのだが……これが両者の信頼関係が成すもの
だという事なのだろうか、それとももっと別の何かなのだろうか。
唇を重ね合わせるだけとは呼べず、しかし貪り合うには遠い、求め合うような接吻はしば
らく続いた。特に待っている俺には、長い時間だったように感じられる。
どちらからともなく唇を離すと、その間に透明な二人の唾液が落ちてゆく。見ている方が
胸焼けしそうになるくらい、幸せな表情を残したまま。
「愛紗、色々とごめんな」
「わ、私は――。……ご主人様が謝罪して下さるのであれば、もう何も遺恨に思うところは
ありません。ですから、その……」
真っ先に否定したかったであろうそれをしなかったのは、将軍なりの、展開を呼び込むた
めの駆け引きのつもりなのだろう……その、ばればれで幼稚ではあるが。
だからこそ効果的である事は否めない。俺がそう感じてしまっているように、また彼女の
目の前の天上人もそう感じているのではないだろうか。
それを証明するかのように、一刀様は少し躊躇いながらもその展開を切り出していた。
「……今度は一緒に気持ちよくなれるかな、愛紗」
「ご主人様……」
ああ、やはり……いや、分かりきった事ではあったのだが、本当にやるの? と思ってし
まった私を誰が咎めることが出来るのか。
関羽将軍は少し前の様子が嘘のように、完全に蕩けた表情をしてしまっている。それにし
てもこの何十分かの間にどれぐらい嘘のようだって思ったんだろうな俺。
二人は顔を寄せて小声で何事かを話し合っているようだったが、その小さな会議が終わる
と、将軍は散々な目にあって荒れたスカートをゆっくりと捲り上げ、前傾姿勢になりながら
倉庫の土壁へと体重を預けていく。
俺が悟り終える前に、全ての準備は整っていた。下半身を隠す布を捲って、露にしたその
何より大切な秘裂を持ち上げる。完全に挿入される事を待ち望んでいるような体勢で、将軍
は頬を完全な朱に染めながら振り向いた顔で催促するように視線を投げか
けていた。
一方の一刀様も、服の中から自身のもっとも鋭利であろう凶器を取り出していた。
- 36 名前:日常はしにました 12/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:35:40 ID:woAomhNU0
-
決して大柄とは言えないが、成長のよいその体から出された抜き身の刃。既にそそり立ち、
傘の部分がくっきりとしている。多分、大きくはない……とは思う。大きさなら俺でも勝て
る。勝てるよな?
ただ、何というか、違う。反り返る凶器は、大きさなどという指標では表しようのない雰
囲気というか、貫禄というか……実に馬鹿馬鹿しい話ではあるが、まるで妖刀のような鋭く
危険な空気を撒き散らしているように見えた。男にしか分かるまい。
「それじゃ、いくよ……愛紗」
「は、はい……その、恥ずかしいですから、早く……」
「誰もいないってば。……ともかく、それじゃ……」
まあいるのだが。
先ほどの奉仕ですっかり蕩けさせられてしまった将軍の秘所は、何もしなくても、まるで
何かを強請るかのように自然とその奥から粘液が噴き出し、腿を伝っていた。陽をうけてぬ
らぬらと輝くのと、腿を伝うそれのせいでもじもじと将軍が腿を擦り合わせるのが、また何
ともいえず興奮を促進する。
そんな洪水状態の秘裂に、ずぶりと柔らかい肉に刃物を入れるように逸物が進入していく。
「はぁああああ、んっ……!」
「う、くっ……愛紗のここ、すご……っ」
挿れているのは間違いなく一刀様の方であるのに、壁に手をついた彼女がくいくいと腰を
振るたびに一際強く侵入していく様は何か錯覚のようなものを引き起こさせる。
見たままの感想を言うならば、まるで膣内の方が逸物を引きずり込んでいるかのようであ
ったという他はない。
「ご主人様の、熱いです……っ、は、凄く……っ」
「愛紗のがいつもよりずっと凄いんだよ……」
どっちの言ってることが真実なのか、確かめる術は残念ながら持っていない。
ただ言えるのは、表情を歪めながらあっという間に奥へと到達する二人の性器は、間違い
なく今、形容し難いほどの快楽を貪っているのだろう。
「愛紗……動くからな」
「は、はい……あ……はぁ、ふ……んんんっ……!」
- 38 名前:日常はしにました 13/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:37:33 ID:woAomhNU0
-
きちんと返事が届くのを待って、一刀様は目の前の丸い曲線を描く尻をしっかりと両手で
固定してから、入刀したその凶器をゆっくりと扱い始める。かき回すように腰が8の字を描
いたかと思えば、ずるりと頭の方まで出してみて、さらに一気に突き入れる。
奥へ奥へと再挿入を始める接合部から、じゅぶじゅぶと音と共に粘液が零れ出ていた。
「あ、はぁぁあんっ……! ご、主人様、もう少しゆっくり……っ」
「頑張ってはみる、けど……っ愛紗、それは……」
恐らくは自身の情欲が止められないというのも混じっていただろうが、一刀様が困惑した
ような声を出すのも仕方のない話ではあった。
「は、私、私はっ……あぁっ」
何せ言葉とは裏腹に、将軍の臀部はより強い刺激を求めるかのように、自然奥へ手前へと
動を繰り返しているのだから。時に予測のできないような動きで見る者を楽しませ、中のモ
ノを苦しめる。
胸が高鳴り、自然と唾を飲み込んでしまうのを止めることはできなかった。
「愛紗……いいんだ。今はただ、感じて欲しい」
「あ、ふっ……ん、そんな……っ」
ほとんど言葉の体裁を成していない将軍の、その蜜壷を渾身の力で責め続けているようだ
った。その叩きつけられるような衝撃を、いやいやをするように首を振りながらもしっかり
と彼女のそこは柔軟に蠢いて受け止めている。
あくまで優しい言葉をかける一刀様だったが、余裕がないのは傍からであれば火を見るよ
りも明らか。そもそも最初のうちに一方的に奉仕をしていたのがどちらかという事を考えれ
ば、あらゆる面で余裕がないのも当然のことかもしれない。
「ぉ、かしくっ、なりそうです……こんな、ぁ……っ」
「いいんだよ、愛紗……大丈夫だから。愛紗の熱いのが、俺にも伝わってくる……」
「ぁ、嬉しいっ……」
言葉だけ取ってみれば甘い語らいにも見えなくもなかったが、そのじつ二人の腰はまるで
より強い刺激を求めるかのようにお互いを密着させては離してを繰り返していた。
- 39 名前:日常はしにました 14/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:38:25 ID:woAomhNU0
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そのたびにどちらのものか分からないほど混ざり合った粘り気のある透明なそれが、空気
をぷつぷつと潰すような音と共に触れ合う部分から次々と溢れ出していく。操作することも
できずにただ溢れ出すそれは、先程将軍が腿に零していたそれを塗りつぶすかのように二人
の肢体や服へと流れつき、また足元へもぽたぽたと零れ落ちていくのだ。
そんな事はないはずなのに、零れ落ちた足元の草が燃えるような錯覚を感じてしまう。
「も、だめですっ……ご主人様、申し訳……ぁっ、もうっ……!」
「俺も……そうだよっ、愛紗! たくさん、感じて……」
「っ! あふ、んんんんんっ……!」
最後の追い込みをかけるように、やや中腰に構えて斜めに擦りあげるように腰を突き出す
と、たまらず壁に爪を食い込ませながら、彼女は全身を歓喜で震わせているように見えた。
「あ、ぁあああっ……!」
「く、うっ……射精るっ!」
どちらが先に絶頂を迎えたかは、判別する事はほとんど不可能に近かった。
先に声を漏らした関羽将軍に追従するようにして、強い出し入れ運動を繰り返していた一
刀様もまた、ちょうど最奥へ突き込んだところで背中を強く反らす。
それでも、ぐったりとして倒れ落ちそうな将軍の体に手を回して支える事は忘れなかった。
「はぁ……ぁ、凄い……です……こんな」
夢見心地のように、焦点の合わない瞳をぼうと倉庫の壁へ向けながら将軍が呟く。
ややあって一刀様が腰を引くと、ごぽりという音と共に白濁が混ざった粘液がどろりと膣
内から外へと流れ落ちた。いっそう粘り気を増したそれが、足元に付着する。
- 40 名前:日常はしにました 15/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:43:25 ID:woAomhNU0
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「ぁ……ん、んんっ」
ようやく我を取り戻した将軍が立ち居を直すと、却って姿勢が直立に保たれた分だけその
脚の間から、太ももに白濁が零れていた。もっとも、彼女は特にそれを嫌がっているように
は見えない。
「愛紗……その、また激しすぎたかな」
「ぁ、いえ……その、今度は私もというか、相子といいますか、その……」
しばらく視線をうろうろとさせて言葉に迷っているようだったが、ふと口元を綻ばせて、
穏やかに笑いかけながら――たった一言。
「……気持ちよかったです」
「……そっか」
どうやら、終わったようだ。果たして二人が結合してからどれほどの時間が経ったのだろ
うか。かなり速かったのだろうが、見ているこちらとしてはかなり時間が経っているように
も思えた。それほど長いというか、充実した時間ではあった。
色々あったが、これで一段落だろう。……そういえば、軍師殿から頼まれた件はどうすれ
ばいいのだろうか? このまま部屋にでも帰るのを待って、機会を見計らって話しかけるこ
とにすればいいだろうか?
「それで……あー、その、ご主人様。ずいぶん早く終わってしまいましたね」
「んー……そうだな」
――まさか。
背中が凍りつくような、ひどい予感が俺の頭に唐突に訪れていた。
「その、ご主人様がどうしてもと仰るならば……私は……」
「……愛紗」
「ひゃんっ、ご主人様?! んっ……ちゅ、んむ……っ」
そうか。
そうか、余裕で二回戦突入決定か。そうか。そうかそうか。
駄目だ、いくらなんでもこれ以上は付き合っていられない。というよりは限界だ。最初の
方、地面に針で縫い止められたかのように動かなかった足も、もうすっかり元通りだった。
後ろからあがる嬌声を聞きながら、俺は未だに混乱した頭の中と、かなり呆れ気味の溜息
だけを残して、音をたてないように忍び足でその場を後にした。
- 41 名前:日常はしにました 16/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:47:19 ID:woAomhNU0
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ああ、月が綺麗だ。
済んだ夜に見えるその冷厳な光は、たとえ四分の三程度だったとしても俺の心に静かな安
らぎを与えてくれる。とりわけ今の俺には。
昼間の事は混乱してしまうのであまり思い出したくないが、否が応でも思い出してしまう。
あそこまでいくといっそ清清しくもある気はしたが、それで心の内側が全て解決するほど俺
は上手く出来てもいなかった。難儀なものだ。
ちなみに結局軍師殿からの頼まれごとに関してはタイミングを失ってしまった。
こういう時は、肌寒い夜の風も悪くないと思える。例え警備の仕事の一環だとしても、内
側の熱を冷ますかのような風は、俺の心を適度に冷ましてくれる。
ともかく今は仕事を成すことだ。それでこそ俺にも疑問を解決する機会が設けられる。
――たっ、たっ、たっ、たっ
そう思った瞬間、またもや異変が訪れた。
渡り廊下を巡回していた俺は、槍をもう一度握りなおし、通路の向こう側へと穂先を向け
る。石畳を叩く足音は最初こそ微かだったものの、加速度的に大きさを増してこちらへと近
づいているのだ。昼間の軍師殿のように関係者の可能性もあったが、時刻が時刻だ。
今度こそ、何かが出るのだろうか。今の俺なら鬼や物の怪から飛将軍と呼ばれる呂布とさ
え互角にやりあってみせる!
「さあ、来――」
瞬間、目の前で火花が散った。
いや、星だろうか? まあ何でもよかった。とにかくろくに捉えることは出来なかった。
意識が沈んでいく前に感じたのは、視覚で捉えた黒い影と痛覚による後頭部の痛み。
「明命ってばなーいすっ♪ 相変わらずいい仕事だねっ! これで邪魔者は滅びた!」
「えっと……ごめんなさい。でも、あまり一方に集中するのはいけませんよ」
そして、聴覚で捉えた別々の女の子の声くらいだった。
- 43 名前:日常はしにました 17/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:52:39 ID:woAomhNU0
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ぼうっとした意識の中。ぱちぱちとした音が聞こえる。
頭の後ろがずきずきとして少しだけ痛みを訴えている。俺は一体何をしているんだろう?
こんな明るいところで、一体何を――
「……あれ、ここは……」
「おう、起きたか。新入り」
ぶんぶんと頭を振ると、おぼろげだった視界がはっきりとした像を結んでいく。地面に直
接置かれた灯りが照らし出すのは、黒い柱と、天井。周りを見渡せば、暗くてよく見えない
ものの植物が繁茂しているのが分かる。位置こそ違うものの、城の中庭には違いない。
廊下の端っこ、あまり目立たない建物と壁の死角のような場所で、灯りに群がるように何
人もの人が集まっている。その光景を疑問に思いながらも、とりあえず視線を止めた。
「災難だったな、そんなとこ殴られちまって。手当てはしておいたが……」
「……っ、そうだ、あれは?! 奴らは?!」
「あー、まあ待て。落ち着け。いいから座って落ち着いてろ」
立ち上がって飛び出そうとする肩を先手を打って掴まれ、体重をかけるようにして強引に
座らせられる。訝しみながらも、とりあえず俺はそれに従う。よく見れば、それは俺よりず
っと前からの城の警備兵だった事を思い出したからだ。
多少の居心地の悪さを感じながらも、俺は目の前の男に向き直った。
「まあ、とりあえずお前が出遭った不審者の話からだけどな」
「はあ」
……何故だろう、俺と同い年ほどに見えるのに、やけに老成したような雰囲気を感じる。
「呉の姫さんだ」
「……はあ?」
思わず間抜けな声を出してしまったのは俺のせいじゃない。俺のせいじゃねえってば。
「呉の姫って……あの……孫家の、ええと」
「末っ子の方だな。今、呉の面子がこっちに来ているのは知っているだろ?」
「いや、それは知っていますが……それは、余計に放っておくと不味いのでは?」
「それはないんだ。そういう心配はいらないんだよ。事こういう事に関しては」
「あの、話が飲み込めないのですが」
「簡単に言えば、天の御使い様の人徳ってところか」
- 44 名前:日常はしにました 18/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:55:26 ID:woAomhNU0
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……余計に話がわからない。いや、分かったような気もする。
ただ、頭の奥が理解することを拒否しているだけで。
「お前も知ってるはずだ。天の御使いが色々と、まあ、懇ろにしている者がいるって事は」
「それは知っています」
昼間に確認したばかりだ。
「とはいえ、多忙な方だ。そしてその寵愛を受け得る者もまた、多忙だ。となると偶然暇が
出来た時、それはもう一日中凄いことになるわけだ」
「凄いことですか」
「凄いことだ。具体的に言うと朝駆けから夜這いまで気が抜けない生活を送る。当然という
か、お前が出遭った姫さんのように多少過激な手段に出る者もいるというわけだな」
「多少ですか」
「多少だよ」
僅かに口の端を吊り上げながらそう呟く先輩は、何かを悟った高僧のような雰囲気すら纏
わせていた。そこに横から他の人の茶々が入る。『先輩、ついさっき東の通路で西涼の二人
娘も見かけましたよ!』『そうか……喧嘩になって部屋が壊れるか、それとも5Pで御使い
様が壊れるか』
混沌だ。ひどい混沌だ。そしてさりげなく物騒なことを言っておられる。
「まあともかく、俺達城に勤める警備兵はそれらの邪魔をしてはならないんだよ。夜這いに
来る者はさりげなく道順を空けたりして素通りさせ、昼間からの淫行は見逃し、かつ異常は
見逃さない。これが求められる」
……頭が痛くなってきたぞ?
よく見れば灯りの傍に集っている警備兵達はいずれも一つの茶碗を囲んでちんちろを行っ
ているが、時おり外からやってきた誰かと交代するようにして音もなく闇へと消えていく。
何だこれ? どうなっているの?
見逃すって……それならつまり、昼間に起こったあの事も、わざと見逃されたという事な
のか? ひょっとして割と日常茶飯事なのか?
というか、もしかして俺が覗きをしてたのはとっくにバレてるのか?
いくつもの疑問が沸いては消える俺は、きっと愉快な顔をしていたに違いない。その様子
に目の前の先輩はうんうんと大げさに頷いてみせ、俺に言い聞かせるように口を開いた。
「お前の言いたい事も分かる。何もそんな事をする必要ないじゃないかとな。しかし家を守
るだけならデクにも出来る。俺達がやらなきゃいけないのは、もっと複雑なことなんだ」
- 45 名前:日常はしにました 19/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 01:59:35 ID:woAomhNU0
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「大丈夫、お前ならできる」
きらん、と歯を光らせるかのようないい笑顔をこちらに向けて、先輩の代表格はそう言っ
た。出来るとか出来ないとか果たしてそういう問題なのだろうか……。俺にはわからん。
「……つつ」
妙な事を考えていたら、また後頭部が痛みだしてしまった。触ってみるとぱっくり切れて
いたりするわけではないのであくまで打撃なのだろうが、それでも一撃で意識を刈られるか。
「まだ痛むか。手加減されたようだが、多少手元が狂ったのかもしれんな」
「ごめんねぇ。不肖の妹が迷惑を掛けるわね」
心配そうに喉を唸らせる先輩と一緒に聞こえてきたのは、耳憶えのない声だ。誰か警備兵
に女なんていただろうか? そう考えて声がした方へと視線を移し――本日何度目かわから
ない、仰天をした。
「そ、そそ、孫策様っ?!」
「こーらこら。しーっ」
「え……」
「大声出さない、誰かすっ飛んできたら困るでしょ? そんなに畏まらなくてもいーから」
『まあ、体面上「様」は付けてもらわないと困るけどね?』そう言ってかんらかんらと笑
うその人は、見間違えるはずもない。壁にもたれ掛かるようにして、警備兵と共にちんちろ
に興じるそれは所謂俺でも知っている重要人物だ。燃える炎、或いは流れる血を連想させる
ような紅を基調とした服は、闇に染まって仄暗く血を湛えているかのようだった。
「このようなところで、何故……」
「だーって退屈なんだもん。皆忙しそうだし。これで夜早く寝ましょうなんて頭が腐るわよ。
せーっかく遠路遥々、故郷のことは任せてきたっていうのにねぇ」
ねぇ? と同意を求めるようにこちらに視線を向けられても、俺は困る。そんな俺を知っ
てか知らずか、先輩の方が言葉を紡いだ。
「国許には孫権様が?」
「そ。今頃はきっと、残してきた処理の仕事で涙ぐんでるわね」
にやり、と口の端を吊り上げるその姿は間違いなく悪人顔であった。それだけは間違いな
い。
……それにしても、そんな理由で天下に覇を唱えすらした英傑がこんなところにいていい
のだろうか。昨日までの俺なら有得ないと言い切れたのだろうが、今の自分ではそれをはっ
きりと否定することもできない。虚しい。
「何だか、言いたいことがありそうな顔じゃない」
- 46 名前:日常はしにました 20/19[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 02:02:44 ID:woAomhNU0
-
ぎくり、とした。紅の覇王が口を尖らせた一瞬だけ、寒気がするような威圧感が押し寄せ
てくる。しかし、彼女が次に口にしていたのは割と見当外れの推測であった。
「ひょっとして、私も一刀に押しかけないのかなぁーって、思ってる?」
「ん……その、まあ……そうです」
それはない。ないが、気にならないわけではない。ただでさえ濃い一日なのだし、今日一
日で出来るところまで知っておくのは悪いことではないように思えた。
「何故ですか?」
やけくそになったとも、言うかもしれない。
丁度その時、ちんちろの茶碗が孫策様の前に差し出される。どうやら満を持した親のよう
で、嬉しそうに手元に椀を引き寄せると、隣から犀を受け取ってぐっと拳で握り締める。
そうすればいい目が出るとでも、言わんばかりに。
「まあ、私には何といってもめーりんがいるしね。それに……」
ぐっと力を込めた手の平から、滑るように三つの犀の目が吐き出される。ちんちろりん、
と出た目は5が二つと、1が一つ。いわゆる五の目だ。
その目を出した女性は、唇の端を高く吊り上げ、ここまでで最も凶暴な、にやりとした笑
顔を見せて、こう言った。
「……それに、別に焦るようなことでもないでしょ?」
そうして発せられたものには、言外にいくつもの言葉を含んでいるのは疑いようがない。
威圧的で、凶暴で、そして強かだった。なるほど、彼女は勝手だ。あと強者だ。
俺にはその有様は真似できるものではなかったが、何かの指標にはなる気がした。
「あ、孫策さまー。456の倍づけです」
「えぇ?!」
「あ、孫策さま。私も5ゾロ出ました」
「ちょっとー、冗談でしょ? 嘘でしょ? どーなってんのよぉ!」
さっきまで静かにと人に注意していた覇王の、悲痛な叫びを聞きながらとりあえず俺はさ
っと目を反らした。
夜空では、相変わらず月が輝いていたが、どことなくその光も冷厳というより俺を慰める
ようにも見える。気のせいか。気のせいだな。
『頑張れよ――きっと楽しい日々が来るさ』
頑張りますよ、頑張りますとも。頑張ればいいんだろ?
なんだか知らなければいいような世界を、今日で一気に覗いてしまった気がする。
俺の未来はこれからどうなるのだろう。城下の点心の匂いが懐かしい……。
- 47 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/08/06(木) 02:05:59 ID:woAomhNU0
-
以上終了。すまん長引いた
2kバイト縛りが予想以上に厳しくて投稿中に文かなり削ってました、すいません
デバガメはいいものだ
【求人】城の警護兵
誰にでもできる簡単なお仕事です!