うららかな午後の一時。
美以を中心に南蛮兵達がすやすやと木陰で昼寝をしている。
何とも無邪気で愛らしいその様子に、通り掛かる者は皆頬を緩ませ、そして彼女達を起
こさないようにそっと通り過ぎるのだった。
と、不意に一人が起き上がった。
「……んにゃ……おしっこにゃ……」
トラだった。
トラは寝惚け眼でもそもそと起き上がると、それでも仲間達を起こさないように静かに
その場を離れ、中庭の外れにある茂みの奥へと入っていった。
しゃがみこんで用を足していると、目の前を何かが横切った。
「にゃ?」
キョロキョロと辺りを見回す。
すると春の陽気に誘われたのか、ひらひらと飛び回る蝶の姿が目に入った。
「蝶々にゃ!」
蝶を追い掛けてトラがててててっと駆け出す。
暫く蝶を追い掛け回していたトラだったが、更に彼女の興味を引く物があった。
「にぃにぃにゃ!」
四阿にあつらえられた椅子に座る一刀の姿が目に入ったのだ。
「ん?お、トラか。珍しいな、一人か?」
「にゃ!にぃにぃは何してるにゃ?」
「朱里と雛里がお菓子を作ってくれてるんだよ。それをここで待ってるとこ」
「お菓子!?トラも!トラも食べるにゃ!」
「ははは、じゃあ一緒に食べるか」
「あ、でもだいおー達にも教えてあげないとだにゃ」
「あいつ等には朱里達が別にあげるよ。だからトラはここで俺と食べようぜ」
「にゃ?」
一刀の言葉にちょっとだけ考えるような表情を見せるトラだったが、すぐに顔を上げて
パァッと表情を輝かせた。
「にぃにぃと食べるにゃ!」
そしてよじよじと一刀の膝によじ登るり、ちょこんと腰を下ろした。
「おいおい、わざわざ俺の膝に乗らなくても」
「何時も璃々や鈴々が乗ってたにゃ。だからトラも乗ってみたかったのにゃ」