- 614 名前:中元の孫呉 (1/3)[sage] 投稿日:2009/06/21(日) 22:05:43 ID:ZjfqW3ws0
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時期が早いけど思いついちゃったので桃香しま
何度か桂花をいぢめてましたが、実は呉が好きなんだよぉぉぉぉ
一刀「そう云えば、もうそろそろお盆の時期なのか…」
会議の最中ポツリと洩らした一言を、蓮華が苦笑まじりに咎める。
蓮華「お盆?一刀、お茶なら会議が終わってからにしてもらえるかしら」
その横では思春が剣呑そうな眼でこちらを睨んでいたので、誤解は解いておこうと思った。
一刀「いや、お盆ってのは俺の…天の国の風習のことでさ。毎年この時期に、祖先の霊を祀る行事があるんだ」
蓮華「祖先の、霊…?」
一刀「うん、祖先って言うと何だか古い時代の人のことみたいだけど、亡くなった家族も…含むよ」
自分の言に場が少し湿っぽくなってしまい、己の迂闊さを悔みながらも誤魔化すように言葉を続ける。
一刀「…でさ、その時期には故人の霊魂がこの世とあの世を行き来するための乗り物として、
『精霊馬(しょうりょううま)』っていう胡瓜や茄子で作る動物を用意するんだって」
小蓮「野菜で、周々と善々を作るの?」
小蓮にとって身近な動物と言えばあの二頭なんだろうけれど…
一刀「残念、虎でもパン…大熊猫でもなくて…」
明命「では、もしやお猫さまですか!?」
目を輝かせて期待してるところ誠に申し訳ないんだが、違うぞ明命。
一刀「猫でもなくて…馬と牛ね。4本の棒、例えば箸とかを足に見立てて差し込むんだ。
胡瓜は足の速い馬に見立てて、あの世から早く家に戻ってくるように、
茄子は歩みの遅い牛に見立てて、この世からあの世に帰るのが少しでも遅くなるように…ってね」
供物を牛に乗せてあの世へ持ち帰ってもらうという願いも込められているのだ、と
子供のころ爺ちゃんから教わったことを皆に教える。
- 615 名前:中元の孫呉 (2/3)[sage] 投稿日:2009/06/21(日) 22:07:25 ID:ZjfqW3ws0
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か細い声でも重なれば大きくなるというもので、俺の耳には雪蓮と冥琳の名が聞き取れた。
これぞ孫呉の絆の強さか、と周りを見渡せば、各々顔を見合わせては赤らめたり目を伏せたり。
咳ばらいをし、気を取り直した風に取り繕った感が漂う呉王が言う。
蓮華「一刀、その風習…行事だけれど、貴方に一任しても良いかしら?」
一刀「うん?任せてくれるなら励むけど、でも一応皆の意見を…」
と会議の場を見渡すと、皆一様に俺を見つめてくる。
『雪蓮を、冥琳を…孫呉の為に命をかけた勇者たちを祀りたい』
そんな思いが伝わってきた。
一刀「了解、任された。皆にも手伝って欲しい時に声をかけるけれど、良いかな?」
蓮華「もちろんよ、宜しくお願いするわ…それじゃ、次の案件だけれど……」
会議の後、通常の任務の合間に、思い出す先からお盆の行事を企画・立案していたら、
結局国を挙げての一大イベントになってしまった。
胡瓜と茄子の需要が過剰になって、農家がちょっとした特需に泣いたり笑ったり。
雪蓮への供物ならば酒だろうと用意した酒を祭さんに味見して(ってレベルじゃない量を飲んで)もらったり。
盆踊りの練習で胸をポロリとさせた穏に慌てて上着をかけてやると、何故か亞沙が涙目で俺を見つめてきたり。
- 616 名前:中元の孫呉 (3/3)[sage] 投稿日:2009/06/21(日) 22:12:05 ID:ZjfqW3ws0
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そんなこんなで締めくくりとなる精霊流しの予行演習として、皆で雪蓮と冥琳が眠る河縁にやってきた。
雪蓮の小舟には酒、冥琳の小舟には肴と絵本を添えて、流れに乗せた。
すすり泣く声は聞こえないふり。
そうしないと俺も色々とこらえきれないから。
愛しさと切なさが混ぜこぜになったような気分でいると、背中に温もりを感じた。
蓮華「姉様は…」
振り返ると、少し目元が赤い蓮華が言葉を続ける。
蓮華「…冥琳は喜んでくれているかしら…今の孫呉を見て」
一刀「きっとね…でも二人して『早く子供を作れ』って言ってるかもな」
蓮華「もう、茶化さないで…でも本当に言っていそうで困るわ」
一刀「困るの?」
蓮華「いじわるなのだから…答えが必要?」
唇を交わし、ふと視線を向けた水面上に、冷やかし顔の雪蓮と笑顔の冥琳が見えた…気がした。
雪蓮「来年には甥っ子か姪っ子が見られるかもね〜。ん〜、楽しみ〜♪」
冥琳「もっとたくさんの子らを見れるかもしれんぞ、ふふっ頼もしい限りだ」
- 619 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/06/21(日) 22:21:11 ID:KknJQ4fJ0
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乙。
亞莎が涙目になったのは持つ者である穏の持ち物と、持たざる者の自分の持ち物を比べてしまったからなのだろうか?w
- 620 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/06/21(日) 22:45:02 ID:ZjfqW3ws0
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中国のお盆(中元節というらしい)は、西暦500年辺りから始まった風習だそうな。
日本の風習の多くは大陸由来だろうけど、逆輸入してみるのもなかなか楽しいです。
ひな祭りとか、おひな様役をめぐり血みどろのバトルが始まりそうで怖い。
>>619
Exactly(その通りでございます)
好きな子ほどいぢめたいのです