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129 名前:まほつか[sage] 投稿日:2009/05/30(土) 12:15:47 ID:3+/BvoOn0
またまた懲りずに魏√ENDを妄想してしまいました。
12:20頃から投下を開始したいと思います。

今度は規制されない様にたっぷりと間をおいて桃香致します…
5レス程の予定です。
130 名前:1/5[sage] 投稿日:2009/05/30(土) 12:22:10 ID:3+/BvoOn0
(ちなみに、冒頭部は 〜春蘭編〜 とあまり変わっていません。)

― 妄想・魏√END 〜秋蘭編〜 ―


 三国による戦乱は終幕を迎えた。
今ここに魏・呉・蜀の面々が一同に介し、卓を囲み、料理に舌鼓を打ち、酒に酔いしれている。
華琳が追い求め、そして勝ち取った理想の光景を目にし、俺の胸に熱い何かが込み上げてくる。
そして、それと同時に去来するものは…寂しさだった。
 その気持ちを押さえ込み、華琳の居る方向へ目を向けると、丁度劉備さんと孫策さんに酒を注がれている所だった。
困った顔をしながらも注がれた酒を一気にあおった…かと思えば、手近な徳利を2つ持ち、2人の口元へ突きつけた。
まるで「さあ、次はあなた達の番よ」とでも言いたげに口の端を持ち上げている。
劉備さんも孫策さんも目をパチクリとさせていたが、やがてその徳利を受け取り、華琳と同じ様に一気に飲み始めた。
突如として始まった飲み比べに、周囲の盛り上がりも最高潮を迎えていた。
 三国それぞれの王が、まるで長年の友であるかの様に睦まじく騒ぎ、周りの人々もそれを喜んでいる。

 もう、憂う事は何も無いんだよな…

 そう自分に言い聞かせ、この場を後にする事を決意する。
そして最後に一度だけ、一人の女性へ視線を向ける。
彼女は何も告げずに去る俺を怒るだろうか…
(さようなら…華琳……皆…… そして、ごめんな…秋蘭…)



「…北郷? 様子がおかしいとは思っていたが… 何処へ行く気だ?」
「あれ秋蘭様。どちらへ行かれるのですか?」
「うむ。少し夜風に当たってくる。流琉、後は任せるぞ」
「はい、分かりました!」
132 名前:2/5[sage] 投稿日:2009/05/30(土) 12:27:10 ID:3+/BvoOn0
「随分と会場から離れてしまったぞ、北郷」

「秋蘭…?」

「様子を見に着いて来てみれば… 月などを見上げてどうした。
 この期に及んで天の国が恋しくなったか?」

「恋しい訳じゃないんだけどさ… ただ、今日ほど俺が異世界人である事を悔やんだ日は無いよ」

「…だが、そのお陰で私はこうして生きていられる」

「確かに…な」

「あそこで北郷が助けてくれたからこそ、こうして傍に居られる」

「秋蘭…」

「…………」

「…………」

「行って…しまうのか…?」

「本当は、残りたいんだけどな…」
134 名前:3/5[sage] 投稿日:2009/05/30(土) 12:30:51 ID:3+/BvoOn0
「…華琳様が悲しむぞ」

「華琳…」

「…姉者や季衣、流琉達も傷つくだろうな」

「なんだか、もの凄くすまない気持ちになってきたよ」

「ふっ。黙って行こうとした馬鹿者への罰としては、丁度良いではないか」

「…秋蘭はどうなんだ?」

「私か? 私は…今は怒りでどうにかなりそうだ」

「…やっぱり、怒る?」

「もちろんだ。何故言ってくれなかった? 何故黙って行こうとした?」

「…ごめん」

「許さぬよ。私の心の中に住み着いておいて、突然戻るだと?
 責任も取らずに、勝手が過ぎるとは思わぬか?」

「…………」
136 名前:4/5[sage] 投稿日:2009/05/30(土) 12:35:27 ID:3+/BvoOn0
「だから、お前の前では絶対に泣いてなどやらぬ」

「…なら、俺が消えたら泣いてくれるのか?」

「………知らぬよ」

「…泣かせたく、ないなぁ… 傍で、笑ってて欲しいよなぁ…」

「一刀…」

「でも…出来れば、俺が消えても…笑ってて欲しい」

「また…勝手な事を……」

「最後に…秋蘭が傍に居てくれて良かった…」

「…………」

「さようなら、秋蘭… 愛していたよ…」

「………笑える訳がないだろ…… 馬鹿……者ぉ…」



137 名前:5/5[sage] 投稿日:2009/05/30(土) 12:40:47 ID:3+/BvoOn0
 定軍山。
 自分の運命が“変えられた”この場所に立ち、秋蘭は一人、空を見上げていた。
 するとその後姿へ一人の人物から声が掛けられる。
「秋蘭さん?」
「これは紫苑殿」
 視線の先には黄忠その人の姿があった。
 ゆっくりとした動作で秋蘭へ近づき、隣へ並ぶ。
「…もう、1年が経つのですね」
「そうですね… こんな事を言うとおかしいかも知れませんが、ここで秋蘭さんを討てなかった事に感謝しなくては」
「ふふふ。紫苑殿も異な事を仰る」
「あの時、神算の如き増援には正直、恐れを成しましたわ…」
「…“天の加護”があった。ただそれだけの事です」
 そう言った秋蘭は、再び空を見上げた。
 事も無げに“天の加護”と言い放つ秋蘭に驚く紫苑であったが、
その“天”が朝廷の事では無い事を悟り、自分も同じく空を見上げた。
 紫苑は思う。
 秋蘭は空を見上げているのでは無く、その先…“天”へ想いを馳せているのだと…

                         〜 秋蘭編・完 〜

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