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625 名前:曹魏学園[sage] 投稿日:2009/05/11(月) 02:39:21 ID:whqzE4t+0
曹魏†学園六時間目を専用アップローダに上げました
ZipファイルでアップしたのですがURLの貼り方がよく分からないので告知だけしときます
連休の最後に大慌てで仕上げたので少し粗いかもしれません
誤字脱字・言葉の使い方に関してミス等ありましたら報告して頂けると助かります

http://koihime.x0.com/bbs/ecobbs.cgi?dl=0265



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◆ 曹魏†学園六時間目side桂花「凸凹白昼夢」
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「見てみろよ桂花。ほら、鹿だぞ」
「そうですね」
そっけない態度で生返事を返してくる桂花。
「お、あっちには熊だ」
「そうですね」
先ほどからずっとこの調子だ。何か話しかけようにもこれでは取り付く島もない。
「………」
なんで俺が桂花と二人っきりで散策しているかと言うと、「うーん、桂花ちゃんはお兄さんと一緒に探してください」という風の指示に基づいてのことである。
当然、猛烈に反対した桂花であったが迷子の一件を持ち出されては反論の余地もなかった。多分、あの春蘭にまでからかわれたのが堪えたんだと思う。
俺も誰かあと一人くらいは一緒について来て欲しかったのだが、それは稟に却下された。
確かに稟の言う通り、ここは各自散開して例の二人を探さないと見つかりそうにない。
「お、キツネだ。まるで桂花みたいな耳してるな」
「そうですね」
「笑って?」
「なんでアンタなんかに微笑みかけなきゃならないのよっ!」
…なんだろうこの理不尽感。
「あ、そうだ。桂花、喉渇いてないか?」
周りを見回しても春蘭らしき人物も、華琳のくるくる巻いた金髪も見当たらない。
その代わり自動販売機を見つけた俺は桂花にそう提案をした。まだ先は長そうだし焦っても仕方あるまい。
「そんなに焦ってもこの辺には居そうにないし、もしかしたら向こうから来てくれるかもしれないぞ」
「はぁ…暢気なもんね。ま、別にいいけど変なモノを飲ませるんじゃないでしょうね?」
「そりゃ、あの自販機に聞いてくれよ」
懐から小銭でずっしりと重い財布を取り出しながら俺は足取りを自販機に向けた。
後ろでは「やっぱり飲ませるつもりなのねっ!」とか何とか桂花が騒いでいた。
「うーん、と。炭酸でいいか」
一通りラインナップを見渡して、ボタンを押すとガタンゴトンと音を上げてジュースが転がり落ちてくる。
「で、桂花はどうするんだ?」
勝手に転がり落ちてきたお釣りに財布の硬貨を足して、俺はもう一度お金を投入しながら尋ねた。
「あら?奢ってくれるの?あなたにしては殊勝な心がけね」
「これくらいならお安いもんさ」
「明日は雨なんじゃないかしら。まぁいいわ。それ、そこの橙色の」
右端のオレンジジュースを指差しながら、手を伸ばすがそこからじゃちょっと足りないんだよな。
代わりに右手を伸ばしてボタンを押してやった。
「ほれ、桂花の分」
ポンと差し出したオレンジジュースを引っ手繰るように受け取った桂花は踵を返してスタスタと歩いていった。
「あれ、ここで飲まないのか?」
「これだから野蛮人は」
そう言って桂花が指差したのは少しくたびれたベンチ。長年の風雨に晒されたそれは、ところどころペンキが剥げて下地の木材が露出していた。
「あ。言っておくけど私はここ、アンタはそこよ。それ以上近寄ったら悲鳴を上げるから」
狭いベンチの端に陣取った桂花は絶対空間を間に設けることを条件に俺に同席することを許してくれたようだ。
「それじゃ有難く座らせてもらうよ」
ベンチに腰掛けプルタブを引き抜いて一口。うん、やっぱり暑い日に飲む冷たい炭酸は格別だな。
目の前の柵越しに鹿が物欲しそうな顔でこちらを見ている。動物もさすがに暑いのかね。
ふと隣の桂花を見やると何やら缶ジュース相手に悪戦苦闘していた。
「なにやってんだ?」
「何って…見れば分かるでしょ…。これのどこが飲み物なのよ!」
どうやら開け方が分からないらしい。無理もないか。
「どれ、貸してみろよ」
ひょいと桂花の手から缶を抜き取って蓋を開ける。
「こうやって開けるんだよ」
桂花は差し出された缶を受け取りプルタブをじっと見つめていた。
「へー。こういう仕組みになっていたってわけね」
「さすがに飲み込みが早いな、桂花は。春蘭なんて三回くらい開け方を聞いたと思うぞ」
「あんなのと一緒にしないでよ」
そう言ってオレンジジュースを一口含んだ桂花は顔をしかめた。
「何よこれ、酸っぱいじゃない」
「そりゃオレンジジュースだからな」
「私はお茶が飲みたかったのよ」
「なんだ。それならそうと言えば良かったのに」
お茶、お茶、お茶…。ああ、あったな。でもあれは冷たい方じゃなかったっけ。
「あなたが勝手に選んだせいでしょ」
「俺は選んでないし、それを言うなら見た目で分かるだろ。橙の色をしたお茶なんて聞いたことないぞ」
紅茶を薦めれば良かったのだろうか。華琳は甚く気に入っていたけど、逆に春蘭は炭酸やスポーツドリンクを美味い美味いとガブ飲みしていたな。
…案の定、飲みすぎて秋蘭に禁止令を出されていたが。
「どれがお茶なんて分かるわけないじゃない」
「じゃあ何でそれ選んだんだよ」
「なんとなくこれかなって。大体説明しなかったアンタもアンタよ」
どうやら桂花の中ではなんとなくでオレンジ色のお茶はアリらしい。
「そういえばあの中に温かいお茶はなかったぞ」
以前、お茶が飲みたいと言った華琳に冷たいお茶を差し出したら珍しい物でも見るような目で観察していたのを覚えている。
彼女たちの世界ではお茶と言えば熱いものが普通なんだよな。
「はぁ…。本当に使えないわね、あなたの世界の道具は」
「はいはい」
「はい、は一回でいいわよっ!」
そんな日差しの強い昼下がり。

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