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625 名前:曹魏学園[sage] 投稿日:2009/05/11(月) 02:39:21 ID:whqzE4t+0
曹魏†学園六時間目を専用アップローダに上げました
ZipファイルでアップしたのですがURLの貼り方がよく分からないので告知だけしときます
連休の最後に大慌てで仕上げたので少し粗いかもしれません
誤字脱字・言葉の使い方に関してミス等ありましたら報告して頂けると助かります

http://koihime.x0.com/bbs/ecobbs.cgi?dl=0265



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◆ 曹魏†学園六時間目side春蘭
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「うわー。でっかいなー。ねぇ、兄ちゃん、これ何て動物なの?」
巨体を指差して季衣が尋ねる。
「あれはキリンっていう生き物で主に木の上の葉を食べるんだよ」
「へー。あんなに首が長くて困らないのかなあ」
誰しもが一度は持つ疑問を投げかける季衣。誰が見てもこんなに長い首は邪魔でしかないはずなのに生き物の進化は面白い。
「あれでは水を飲むのも一苦労ではないでしょうか。確かにこれだけの巨体ならば並大抵の獣なら見た瞬間、恐れを抱いて逃げ出すところでしょうが、これでは森の中を駆け抜ける時にも苦労するはず。第一これでは天敵に見つけてくれと言っているようなものです。」
キリンの巨体を見上げ、眼鏡をくいっと持ち上げる仕草をしながら稟が理論的にまくし立てる。
「それはキリンの生息地を見れば一目瞭然なんだが、アフリカってところは森が極端に少ない、いや、ほとんどないっていうほど草原がどこまでも続いてる場所なんだ」
「ふむ、待ち伏せも伏兵も安易に配置できない草原ですか。その"あふりか"という土地に少し興味が沸いてきました。」
多分、今の稟の頭の中には伏兵も奇襲も効かない戦場での戦略図が広げられているんだろうな。
昔の自分ならば、まさか動物園で戦の戦略を考える人間がいるとは思わなかっただろう。
「なぁ、一刀。馬はおらへんの?」
「ええっと、ああ。丁度ここから反対側になるな。ほら、ここ」
そう言いながら霞にパンフレットの園内図を見せる。
「今おるとこがここやから…おっしゃ!ほな、ウチは先に馬見に行ってくるさかい。真桜!沙和!行くでー」
そう言うやいなや猛スピードで駆け出していく霞、
「あいよ、姐さん」
「あーっ!沙和を置いて行くのー?」
と、真桜と少し遅れて沙和。に加えて意外な人物。
「隊長、私も行ってきます」
「あれ?凪も馬が好きだったっけ?」
よく軍馬の世話をしていたのは覚えているけど、霞のように特別愛着があるといった様子は見た覚えがない。
「いえ、そうではないのですが…」
凪は視線をあらぬ方向に泳がせながら口を濁す。
「じゃあ、真桜と沙和が好きなの?」
「はい!それはもう…って隊長!」
「ごめんごめん。つい、な」
「一刀殿、あまりからかってばかりいると嫌われますよ」
片手を上げて、ごめんというジェスチャーをしながら答える俺に稟の容赦ない言葉が飛んでくる。
「これが俺たちの意思疎通なんだよ」
「え?そうだったんですか、隊長」
「そこで突っ込まないの!」
どうやら凪にこの手の冗談は通じないようだ。
「おーい北郷。我々は先に行ってるぞー」
向こうから春蘭の呼ぶ声に「わかった」と返事をした俺は「あの三人が暴走しないよう見張ってくれ」ということを言い含めて凪を送り出す。
「では行って参ります」
「おう、気をつけてな」
「またねー」
「御武運を」
何の武運なんだというツッコミを稟に入れる俺に、一礼をした凪は背を向けて霞たちが走り去った方角へと駆けていった。
走り去った凪を見送った俺たちはキリンコーナーを後にし、華琳たちが向かったという猿山へと足を向けた。
だが追い着いた俺たちが見たのは何やら言い争いをしている春蘭と桂花であった。
「何を言い争ってるんだ?」
別に春蘭と桂花が口喧嘩しているのは見慣れているんだが、何でまたこんなところで言い争っているんだろうか。
少し気になった俺は秋蘭に尋ねてみた。
「ああ、北郷か。実はな…」
「他愛もないことよ。ここで休むか否か、ただそれだけのことなのにこの子たちったら…」
華琳は呆れたような口調だが、二人の口論は満更でもないといった雰囲気で楽しんでいる様子だ。
「いい加減暑いんだから影のある室内に入るべきと言っているのよっ!耳に綿でも詰まってるんじゃないかしらっ!」
「猿のあとは虎を見に行くのだと何遍言わせる気だ!華琳さまもそう思いますよね?」
「あら?魏武の大剣ともあろう者が一人じゃ正々堂々と戦えないのかしら」
どうも二人の言い分にはそれぞれ理由があるようだ。
俺としては桂花の言う通り何か飲み物でも買って休憩したいところだが、下手に口を挟めば藪蛇だ。
「秋蘭さま、二人をお止めしなくてよろしいのですか?」
「まぁ、言って止まるほどの者なら既に誰かが仲裁に入っているさ」
流琉の問いに「放っておけばそのうち収まるだろう」と返す秋蘭も手馴れたものだ。
「こうやって言い争って時間を潰していることこそ、よほど無意味だと思うのですが、あの二人は気づいているのでしょうか」
「おうおう、姉ちゃん。それは言わないお約束だぜ」
苦言を呈する稟にツッコミを入れる風、の頭に乗った宝ャ。
「終わりそうにないねー。どうする、流琉?」
「どうするって言われても…兄様?」
視線が集まる。
「あら、今日の仲裁役は一刀なのね。見事二人を取り成したら褒めてあげるわよ」
「多分その期待には応えられそうにないが、努力するよ」
俺は恐る恐る二匹の虎に近寄った。「春蘭」「桂花」と呼びかけてみたが気づいてくれない。
二人とも興奮しているのか他の声が聞こえていないようだ。だんだんと距離が短くなっていく。
「桂花!この私が卑怯だと申すかっ!」
「おい、二人ともその辺にしておいたほうが…」
いよいよ手を伸ばせば届きそうなまでに近寄って呼びかけると二人がこちらを振り向いた。
どうやら気づいてくれたようだ。が、
「貴様は黙ってろっ!」
「アンタは黙ってなさいっ!」
かわす間もなく飛んできた拳は鳩尾と顔面にクリーンヒット。
二人とも…プロになれる…ぜ…。薄れ行く意識の中で俺は素直な感想を述べたのであった。

「所詮あなたみたいな野蛮人はあそこにいる猿と同じよっ!」
桂花が指差すのは堀の中に作られた猿山の一角。
「言わせておけば…!私のどこが猿だというのだっ!」
次第に口論が子供の喧嘩染みて来ている事に二人は気づいていない。
「猿を猿と呼んで何がいけないの!猿と一緒に毛繕いでもしているのがお似合いだわっ!」
「では桂花はあのチビ猿だな。貴様によく似て陰湿そうな顔をしておるわっ!」
春蘭は一匹の猿を指差して言う。
「なんですってーっ!」
顔を真っ赤にした桂花は怒り心頭。ここまで来ると、もはや両者共に収まりがつかない。
「見ろ!小童を苛めた挙句、華琳さまに叱られておるではないか。はっはっはー!」
春蘭は先ほどの猿を指差して哂う。小猿から餌を掠め取ろうとしたその桂花猿は、小猿の母親と思しき猿から追い掛け回されていた。
「おい、姉者。そういう物言いは…」
流石に苦言を呈そうと口を出しかけた秋蘭を遮って華琳が口を出した。
「…春蘭」
「はっ!」
「誰が…猿ですって!?」
「はっ!?」
華琳は顔でこそ微笑んでいるが目は完全に据わっていた。
「この私を猿と同列視するとは…」
「いえっ!別に華琳さまが猿だなどということは微塵もなく…」
今さら自分の言った言葉に冷や汗を垂らしつつ春蘭は一歩下がった。
「春蘭にはきっつーい、お仕置きが必要なようね…」
一歩また一歩と春蘭に迫りながら、華琳は一つ一つ罰の方法を挙げていく。
先ほどまでの勢いはどこへやら、春蘭の顔はすっかり青ざめていた。
「か、華琳さま。茶の支度をしてきますねっ!」
「あ」
くるりと180度回れ右をすると、季衣がたった一音を発し終わらぬうちに春蘭は物凄い速度で走り去っていった。
「逃げましたね」
「逃げましたねぇ」
「姉者…」
逃げ出す春蘭を冷静に横目に見る稟と風。そして溜息を吐く秋蘭。
「待ちなさい!春蘭っ!」
「華琳さまぁ!お仕置きだけはご勘弁をーっ!」

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