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294 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 00:54:12 ID:aXrBt1UN0
はじめまして。
1時半頃から10スレ程SS投下したいと思いますので、
よろしければ支援お願いします。

なお、以下の要素が含まれますので、NGな方はご注意を。
・一刀は無印後
・左慈&于吉も登場(しかもメインで)
・長編の第0話な位置の話
・女の子出てきません
・オリジナルな真名あり
・設定は無駄に壮大
305 名前:294[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 01:32:25 ID:aXrBt1UN0
気が付けば、一面の暗闇の中に立っていた。

「え、な、何だこれ!?」
驚きの声を上げて周囲を見渡す。
「なんだよ、ここ……」
いつも通りの朝。寮の部屋から学園に向かおうと寮の玄関を出た。次の瞬間、ここにいた。
そんな滅茶苦茶な記憶が頭に残っている。
「……えぇー」
訳が分からない。
「いや、そもそもココどこだ?」
前後左右上下に至るまで、全部が奥行きの分からない黒だった。足元だけは、かろうじて硬
い感触があるが、ほかは何もない。
一つだけ見えるのは自分の体だ。聖フランチェスカの制服にいつものスニーカー。普段の平
日の服装だ。違うとすれば、玄関を出た時には確かに持っていたはずのカバンが無いところ
だろうか。
「あれ?」
自分の体は見える、ってことは、この暗闇は明かりが無いせいじゃない、ってことか?もし
明かりが無いせいなら、自分の体も見えないはずだし。
「いや、だとすると、ホントに何なんだ、ここ」
明かりが無くても自分の体は見える暗闇?何だその半端なファンタジー空間。害があるのか
ないのかも分からない。
「出れる、のかなぁ?」
ぼそりと呟いて、とりあえず、歩き回ってみようかと一歩踏み出す。
途端、

「なぜ貴様がここにいる、北郷一刀!」

背後から、殺気満々な声で名前を呼ばれた。
思わず振り返る。
306 名前:294[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 01:38:00 ID:aXrBt1UN0
そこにいたのは、聖フランチェスカの制服を着た、俺と同い年ぐらいの男だった。額に不思
議な紋様の刺青を入れた整った顔を怒りに歪め、威嚇する獣ように両腕を構え、俺を睨んで
いる。
「答えろ本郷!外史の存在である貴様が、なぜこの空間に存在している!」
いや、なぜって訊かれても。
そもそも、アンタ誰だ?聖フランチェスカの生徒みたいだけど、あんな顔学園じゃ見たこと
無い。何で俺の名前を知ってるのかも疑問だ。
────────違う。あいつはの名前は───
(……何だ?)
一瞬、変な記憶が浮かび上がった気がする。就学前に読んだ絵本を、この年で読み返したみ
たいに。
「……だんまりか、しらばっくれる気か。まあ、いい。ここにはあの女共はいない。つまり
──」
右足を引き、男は構える。
「貴様を殺す邪魔が入らんということだ!!」
「!」
風切音と共に男の脚が襲いかかって来た。
「っ!」
反射で仰け反って、それをかわす。こめかみを狙っていたのだろう、眼前を通り過ぎたつま
先が前髪を数本持って行った。
思わず後方にたたらを踏んだ。
「いきなり何すんだよ!?」
「今更それを訊くか!隠そうとも分かるぞ、貴様はあの外史に居た北郷一刀だ。それが貴様
を殺す理由だと分かれ!」

310 名前:294[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 01:43:05 ID:aXrBt1UN0
それだけ宣言して、男は再び蹴りを繰り出す。
「っ、わかんねぇよ!そもそも外史って何だ!?」
「問答無用!」
「こっちは要り用だっつの!」
男は一方的に会話を切り、襲いかかってくる。
──────鳩尾を狙うそれは■■の龍牙の様で
──────脇腹にかすっていくそれは■■の青龍偃月刀の様で
──────心臓へと繰り出されるそれは■の銀閃の様で
──────首元に迫るそれは■■の颶鵬から放たれる矢の様で
──────頭蓋を叩き潰そうとするそれは■■の八丈蛇矛の様で
──────かわす先を絞るように繰り出される連撃は■■の智謀の様で
半端に靄のかかったような記憶が浮かび上がる。体験したことも無いような情報が頭から出
てくる。
「だから何なんだよ、さっきから…!」
頭を振って、知らない記憶を無視する。そんなものより、今は目の前の男だ。
あいつの攻撃は俺を殺す為のものだが、なんとか避けられている。
──────当然だ。■や■■に鍛えられたんだから、避けるぐらいはできる
「だっから……」
誰だよ、それは!!
一瞬、頭の中からの声に気を取られた。繰り出された蹴りを避けきれず、脇腹に重い一撃を
くらう。
「グっ!」
避ける足が止まり、どうぞ蹴ってくださいとばかりに頭が下がった。
「もらった!」
男がそれを見逃すはずはなく、渾身の蹴りが放たれる。
死ぬ、と。そう直感した。
「─っ!」
思わず目を瞑る。
311 名前:294[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 01:49:00 ID:aXrBt1UN0
が、

「何をやってるんですか、あなた達は」

呆れた声に目を開ける。
「人が真面目に仕事している時に遊ばないでください、左慈」
パシン、と。
男の放った蹴りは、俺の背後から伸びた手によって、こめかみ寸前で止められていた。
慌てて振り返る。
男の蹴りを止めたのは、またも聖フランチェスカの制服を着た男だった。眼鏡をかけており
、襲ってきた男とは違った刺青を、同じく額に入れている。
「なぜ止める、干吉!」
自分の足を掴む手を蹴り払い、左慈と呼ばれた男は眼鏡の男を睨む。
「なぜはこちらの台詞です。そもそもどうしてここに北郷が────」
「た、助けてくれ!」
干吉と呼ばれた眼鏡の男の言葉を遮って、助けを求める。
「あいつに殺されそうになってるんだ、なんとかしてくれ!」
襲ってきた男との間に干吉を割り込ませるように、背中側に回って頼み込んだ。
「…………どういうことです、左慈?」
「知るか」
いや、と左慈はすぐに言葉を翻す。
「そういえば様子がおかしかったな。あの外史の北郷なのだからただしらばっくれているだ
けかと思ったが、お前に助けを求めるとなると説明がつかん。外史という単語にも無反応だ
ったな」
「ああ、そういうことですか」
合点がいった、といった感じで干吉が頷く。
「ここに来た理由は分かりませんが、あの北郷なのだとしたら、記憶を無くしているのでし
ょう。外史の存在が、我々の加護も無しにここへ来ればそうなります」
「ああ」
なるほどな、と左慈も頷いた。
313 名前:294[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 01:53:47 ID:aXrBt1UN0
「だが訊き直すぞ干吉。なぜ止めた」
「現状が現状ですからストレス解消に殺らせてあげてもいいんですがね。あの外史の事を考
えれば、1ついい案が浮かびましてね」
「…………こいつに、アレが何とかできると?」
「少なくとも、いつも通り私達がなりすますよりマシだと思いますが?」
「……なるほど。確かに適任だ」
俺を見て、左慈が嘲笑う。
とりあえず襲われないのは嬉しいんだけど、なんか別の方向に不安になる顔だ。
「では、記憶を取り戻していただきましょうか。このままでは不気味ですし」
「……え?」
一方的に決めて、干吉が俺の前で空中に何やら方陣のようなものを描く。
瞬間、俺の体が光に包まれて、
「――――――――――」

彼女達の事を思い出した。

ああ…………そうだ。思い出した。
泰山での決戦。
その、最後の場面。
干吉に投げられた鏡を受け止めて―――――
そこまで想いを馳せて、今の状況を思い出した。慌てて2人から距離を取る。
「記憶が戻った途端それですか。御挨拶ですね」
呆れるように干吉が肩を竦める。
「――当然だろ。いきなり殺されそうになったんだ」
「それについては謝罪しますよ。左慈がここまで考えなしだと予想できなかった私の失態で
すし。まあ、それは置いておいて、話を聞くつもりはありますか?」
「話?」
「ええ。ここがどこか。あなたがどんな状況にいるのか。そして」
「どうして殺されないのか、ってとこか」
「フム。その程度には頭が働くようですね」
さすが天の御使いです、と全く感心していない声で言われた。
316 名前:294[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 01:57:22 ID:aXrBt1UN0
「では順番にいきましょうか。まず、この空間ですが、あなたに分かりやすく言えば、『外
史の狭間』といったところでしょうか」
「狭間?」
「ええ、外史と外史の間の空間。例えるなら、本棚に並べた本と本の間の、隙間みたいなも
のです。本来は私達のような存在しか入れない空間なのですが、何らかのイレギュラーが起
きたのか、あなたも存在できている」
たいした問題ではありませんがね、と干吉は言う。
「次に、あなたの置かれている状況ですが、あなたは、あの時に誰かの想いによっていくつ
かに分岐した北郷一刀の一つなのでしょう」
あの時……鏡に触れて、あの外史が終わった時か。
「あれで生まれた外史は我々の想像以上に多数でした。大きな――それこそあなたのいたよ
うな外史が10前後。すぐに消えるような小さな外史が百数十。さして身を入れずに探してもそれぐらいの数は見つかりました。そしてその中には、『あの外史の北郷一刀』が主役にな
っているものが多数あります。そういった北郷一刀達の中の一人があなたです」
「???」
「要するに、自分が記憶のままの北郷一刀だと思って問題ない、ということだ」
理解できない俺を呆れてか、左慈が助け舟を出してくれた。
「では3つ目、あなたがここにいて殺されない理由――同時に、本題に入りましょうか」
まずはこれを見てください、と干吉は光る指先で空間に長方形を数個描く。
描いた端から、まるでテレビみたいに映像が映り始めた。
「適当に選んだ外史の様子です」
長方形の中では、それこそマンガみたいな、数々の風景が広がっていた。
ビルほどもある巨大ロボット同士の戦い。宇宙空間を行く戦艦。時代劇の様な町で働く人々
。手から炎を放ち、西洋剣で切り合う騎士達。平和な学園生活。
「………これがなんだって言うんだ?」
正直、見せられた意図が見えない。
「まあ、少し見ててください」
言われ、それこそテレビを見るように外史に注目する。
5分程経った時だろうか。騎士の戦いを映していた長方形が、いきなり消え去った。
同時に、左慈の舌打ちが聞こえる。
「どうしたんだ、今の?」
「消えたんです。正しい終端を迎えずにね」
……え?
317 名前:294[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 02:01:45 ID:aXrBt1UN0
「一から説明しましょうか。外史というのは、人の想いによって生まれ、他の人々に受け入
れられることで存続し、いつか淘汰されて終端を迎える。このシステム上、発端の数は、終
端の数よりも多数。故に、外史の総数は常に増加しています」
「だが世界というものは、それほど多量の外史を保持できるようにはできていない」
「だから、飽和に近い数字まで外史が増加したとき、アレが現れます」
「アレ?」
「正式な名称は不明だ。俺達は便宜的に『外史喰らい』もしくは『削除者』と呼んでいる」
「『外史喰らい』………」
不吉な名前だ。
「姿形どころか、生物なのか概念か何かなのかも不明。分かっているのは、『外史喰らい』
がその名の通り外史を喰らう存在だという点です」
やれやれ、とでも言いたげな感じで干吉がため息をついた。
「何というか、最悪な存在だな、そいつ。で、それと俺がどんな関係にあるんだ?」
まさか左慈の蹴りじゃなく、そいつに喰わせるために殺してない、なんて言うんじゃないだ
ろうな?
「言いませんよ。それでヤツが止まるなら、あなただろうが左慈だろうが喜んで生贄にしま
すがね」
「そっか……ん?」
『止まる』?
「今我々は『外史喰らい』を止めるために動いています。あなたにはそれに協力していただ
きたいのです」
「―――何でだ?あんたらの目的は外史を消すことなんだろ?」
俺の指摘に干吉がほぅ、と感心したように息を吐く。
「なかなかに鋭い。二つ返事で了解するようなら単なる神輿にでもしようと思っていました
が、なかなかどうして」
「確かに俺達の存在理由は外史を消すことだ。ヤツが外史を喰らうだけの存在ならば捨てお
くさ」
「だけ、じゃないんだな?」
319 名前:294[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 02:05:54 ID:aXrBt1UN0
「そういうことです。ヤツが外史を喰らう速度は、発端が開かれるそれとほぼ同じ。ですが
、お話しした通り『外史喰らい』とは別に、終端を迎える外史も存在します。つまり」
外史の減少。
「そしてヤツは外史を喰らうたびに力を付けます。より強大な外史を喰らうための力を」
そして、それを繰り返せば最終的には、
「全ての外史を喰い尽した後、ヤツは正史さえも喰らう力を身に付ける」
「正史……って、ヤバいんじゃないか?それが喰われたらどうなるんだよ…?」
「知らんさ。だが、ロクな事にはならんだろう」
少なくとも、俺たちも貴様も消え去るか喰われるかするのは間違いない、と吐き捨てるよう
に左慈は言う。
「正史の消滅など我々は望みません。それを回避するためにヤツを止めるのです」
―――ってことは何か?
俺に、そいつを止める手伝いをしろと?
「無理に決まってんだろ、そんなん!俺はお前たちみたいに道術が使えるわけでも、彼女達
みたいに戦えるわけでもない」
「安心しろ、貴様にそんなことは望んじゃいない」
「あなたにはもう一度、外史を作っていただきます」
は?
「『外史喰らい』を止める方法はひとつだけ。外史の存続を願う強い想いです」
あなたにはその想いを集めていただきます、と何でもないかのようにいう干吉。
「そっちこそどうしろってんだよ…」
「単純な話です、あなたに惚れてもらえばいい。その想いを変換するだけなら容易いですし
ね」
惚れさせろとか言われても、聖フランチェスカじゃ恋愛のレの字も無かったんだけど。
「そちらの心配もありませんよ。あの外史と似通った外史は、すでに見つけています。あの
世界でならば、充分にもてることが可能だと思いますが?」
………もう御膳立て済んでるんじゃないか。やるしかないんだろ、この場合。
「ええ、そうですね。それに、彼女達にも会えますよ」
「―――彼女達……って」
「あの関羽や張飛のことですよ。会いたいでしょう」
「―――――――――分かった、やらせてもらう」
320 名前:294[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 02:09:49 ID:aXrBt1UN0
皆に会える。あの外史が終端を迎えた、と聞いてもう会えないと覚悟していた。でも、また
会える。なら、断る理由が無い。
「随分と即決だな。次の外史で出会ったとしても、向こうは貴様の事など知らんのだぞ?」
「構わないよ」
たとえ向こうは初対面だとしても、彼女たちならば、もう一度愛することができる。あの外
史の彼女達の代わりとしてではなく、一人の女性として。
そう、確信できる。
「では、契約成立、ということでよろしいでしょうか?」
ならば、と干吉は一歩下がり、

膝を折って、俺に頭を垂れた。
「我が名は干吉。真名はユンと申します」

突然の出来事に、俺は勿論、左慈も目を丸くして干吉を見る。
「え、え?」
「これから向かう外史では、あなたには天の御使いとして、そして我々の主として振舞って
いただきます、北郷殿。主が臣下の真名を知っているのは当然でしょう」
「どういう事だ、干吉!」
左慈が叫ぶ。
「どうもこうも、北郷一刀一人だけを送り込むわけにもいかないでしょう。魏・呉・蜀のど
こかに保護されて、その勢力内でのみ愛されることになります。それにそれでは大陸統一ま
でに何年かかるか、分かったものじゃありません。故に我々が臣下として同行し、あらゆる
面でサポートします」
「冗談じゃない!北郷の下で働けだと。それぐらいならば」
「北郷を下に付けて自分が王をした方がマシ、ですか?ではひとつ訊きますが左慈、あなた
はあの関羽達武将を愛せますか?」
「それはこいつの仕事だろう?なぜ俺が」
「そんなクーデターの見本みたいな状況でいると?それこそ冗談じゃありませんよ」
そしてもう一つ、と干吉は付け足す。
「これは老人達の決定です」
「何だと…?」
321 名前:294[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 02:13:14 ID:aXrBt1UN0
「彼等は北郷一刀を気にしています。外史の発端を開き、終端を創り、そして無数とも言え
る『次の外史』を創りだした存在だ、とね。ですので」
申し訳ありませんが、拒否権は無いのです、と心底愉快そうに干吉は笑った。
「グぅ……!」
そんなに悔しいのか、左慈は音が鳴りそうなぐらい力強い歯軋りをする。
しばらくそのまま突っ立っていたが、当たるように大きく地面を踏んで、こちらに向いた。
「――――いいだろう、現状が現状だ。まずは『外史喰らい』を止めるの対処が先だ。この
際、プライドは捨てる……貴様の部下になってやろう」
とても納得したとは思えない視線で俺を睨み、
「名は左慈。字は元放。真名はコウだっ!」
それだけ吐き捨てて、背を翻した。
えぇ…っと、真名で呼んでいいのかな?
「構いませんよ、左慈――コウも、そのうち公私の区別がつくでしょう」
「公私?」
「ええ、北郷一刀と敵対していたのは外史を消すためであって、北郷一刀自体をどうにかす
るためではない、ということです」
俺自身に敵意を向けるのは筋違い、ってことか。
「そういう干吉――ユンはどうなんだ?」
「外史が関わらなければ、あなた自身の事は高く評価していますよ私は」
敵対していた時の挑発するようなものと違った笑みを見せながら、ユンは空中に字を書いて
行く。
「コウの真名はこちら、私の真名はこう書きます」
暗闇には、「光」「雲」と浮かんでいた。
325 名前:294[sage] 投稿日:2009/03/18(水) 02:23:38 ID:aXrBt1UN0
以上です。

真名はに関して
話の都合上、必要だったので、中の人からアイデアもらいました。
光:緑川光→光→音読み=コウ
雲:ジャック・クラウド→クラウド→雲→中国語読み=ユン

女の子に関して
スタート時のメインキャラが男ばっかりなので、早くても黄巾の乱まで出てきません。

お目汚し、失礼しました<(_ _)>
需要があれば、書き進めたいのですが、どうでしょうか?

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