- 731 名前:名無しさん@初回限定[sage] 投稿日:2009/03/11(水) 03:15:54 ID:VICdtQay0
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今日は董√の人こなさそうかな?
何なら寝る前に一本ぶっこんで寝ようかと思うのですが。
6レス程。
- 732 名前:真√:Interlude4[sage] 投稿日:2009/03/11(水) 03:20:24 ID:VICdtQay0
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まあ投下しておきますw
真・恋姫†無双 外史
北郷新勢力ルート:Interlude4
──四面其歌 ソノウタハ、スベテヲツツム──
少しだけ、お付き合い下さい。
- 733 名前:真√:Interlude4 1/6[sage] 投稿日:2009/03/11(水) 03:23:57 ID:VICdtQay0
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その日、私は彼が反董卓連合に参加したという噂を耳にし、
曹操様について行けばよかったと、今度ばかりは心から後悔した。
そして思い浮かんだのは、彼と初めて出会った時の事だった。
私が彼と始めて会ったのは、今からもう半年近く前になる。
あれは荊州地方への、約一月という長丁場の出張公演だったか。
最初の一週間が過ぎた後、息抜きに散策して見つけた小さな池のほとり。
誰も居ないと思って、大きく伸びをした所を思いっきり見られたっけ。
キラキラと、陽の光を映す不思議な服を着た人。
最初は上質な絹かとも思ったけれども、どこか違う。
でもきっと高貴な身分のお坊ちゃんなんだろうなって思った。
初めて聴いた彼の言葉は、にっこり笑って言った「こんにちは」だった。
私は黙ってぺこりと軽く頭を下げただけ。
その日はそれで終わり。
次の日も、私は昨日の場所へ行った。
その池のほとりの落ち着ける雰囲気が何となく気に入ったから。
行ったら……やっぱり彼はそこに居た。
その日の去り際に、初めてお互いに自己紹介をしたっけ。
そのときの彼の台詞は今もハッキリ覚えている。
「そう言えば昨日も会ったよね?
俺は北郷一刀って言うんだ。これも何かの縁だし、また会ったらよろしくね」
それに対して、私は思わず口ごもってしまった。
だって、自分達が世間にどう思われているか知っていたから。
『世を騒がす、黄巾賊の首領の一人』
- 737 名前:真√:Interlude4 2/6[sage] 投稿日:2009/03/11(水) 03:33:11 ID:VICdtQay0
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一部の私達の支持者が暴走して、略奪とかのいけない行為をしているのは知っていた。
そして、それを隠れ蓑にして、山賊や河賊なんかが活動してるのも。
でも……あのときの私は、そんなの知ったことじゃなかったな。
私達は、ただ歌えれば良かったから。
そう、知ったことではなかったハズなのに、私は口ごもってしまったんだ。
「私は……私は『れん』……」
きちんと名乗ることも出来なかった。
貴族の子だったら、私の名前を知っているかも……なんて思ってしまったから。
今思えば、たった二日の邂逅で私は彼に惹かれていたのかもしれない。
それぐらい、その二日のその場の居心地はよかったんだ。
そして、計らずとも『れん』は、彼だけが呼ぶ私の特別な呼び名になってしまった。
こういうの、嬉しい誤算って言うのかな?
それから、私の公演の最終日が近づくまでの間、
私達はその池のほとりで何度も会った。
ただ一つ……お互いの事は詮索しないっていうのが、
ほとんど暗黙の了解の様になっていたけど。
たくさん話をする日もあれば、ほとんど何も話さないでぼーっとしている日もあった。
私にとって、“張梁”でも“人和”でもなく、“れん”で居れるその場所は、
荊州に滞在している間、何よりも大切な場所になってた。
天和姉さんにも、ちぃ姉さんにも教えていない、大切な場所。
彼は精神的に疲労していることが多くて、
そこに来て、立場を忘れられる時間が、すごく大切なんだって言ってくれたときは、
思わず嬉しくて涙がでてしまったぐらいだ。
……我ながら、らしくないと思うけど。
- 738 名前:真√:Interlude4 3/6[sage] 投稿日:2009/03/11(水) 03:37:23 ID:VICdtQay0
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……だけど……
荊州方面での公演も、残す所はあと数日までになった有る日、
私はある話を聴いてしまった。
私達の親衛隊の人が話していた事。
この一月の間、私達が公演に来た為に活気付いた支持者達が、
それまで以上に激しい活動を……表裏問わず、していたということ。
そう、正に『黄巾賊』としての活動だ。
それを聴いた私は、思わずその親衛隊の人に詰め寄っていた。
「この地方の略奪の被害はどれほどなのか」って。
きっとそうとうヒドイんだろうなって思ってたら、
帰ってきた答えは全然違っていた。
「『天の御遣い』と言う者が率いる義勇軍が奮戦しているため、
民衆への被害はかなり少ないそうです」
だそうだ。
それを聴いて安心して、私はつい聴いてしまった。
「天の御遣いとはどんな人なのか?」
と。
そして、返ってきた答えは、私にとって衝撃的な物だった。
「詳しくは知りませんが……なんでも、キラキラと陽の光を映す不思議な服を着た、
まだ年若い男だそうです」
……そう、あの池のほとりで会う彼が、天の御遣いだったんだ。
彼が精神的に疲労しているのが多かったのも当たり前だ。
だってずっと戦場に出ているのだから。
そしてそれが、私達が来たからこそ引き起こされたことなのだと思ってしまった私は……
その日から、あの池のほとりへ行くことができなくなってしまった。
- 741 名前:真√:Interlude4 4/6[sage] 投稿日:2009/03/11(水) 03:41:52 ID:VICdtQay0
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もうこの地を去るまで、あとたった数日なのに……
それを過ぎれば、彼に会うことはまず出来ないであろうことは、明白なのに。
私は、彼に会うのが怖くなってしまっていた。
彼に嫌われるのではないかという思いだけが、どんどん大きくなっていってしまったから。
その時の私は、ちぃ姉さんが言うにはずいぶんとひどいものだったらしい。
そして、数日はあっという間に過ぎてしまっていた。
最終公演も終わり、後は官軍に見つからないように戻るだけになったとき、
ある報告が入った。
最終公演で興奮が最高潮に達した支持者達が、義勇軍に対して大規模な反攻に出たと言うのだ。
天和姉さんやちぃ姉さんは、その混乱に乗じてさっさと戻ろうって言ってた“らしい”のだけど、
その時私は、頭の中が真っ白になっていた。
そして、気づけば駆け出していた。
戦場へ向かって。
当然、姉さん達は止めたけど、私は聞いて無かった。
そんな静止の声に、耳を傾ける余裕など無かったと言った方が良いかもしれない。
そして、たどり着いたのは、戦場が見渡せる小高い丘。
恥ずかしながら、私はその時初めて、戦場と言う物を実際に見たのだ。
- 742 名前:真√:Interlude4 5/6[sage] 投稿日:2009/03/11(水) 03:46:10 ID:VICdtQay0
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追いついた姉さん達が私をひっぱって戻そうとするけど、
私はテコでも動かなかった。動きたくなかった。
そして、一度目を瞑り、それまでの日々を思い返す。
くだらないことを二人で語り合った。
夜間公演までの間、日が沈むのを二人で並んで見ていた。
私が弱音を吐いた時、何も言わずに頭を撫でて、元気付けてくれた。
そんななんでもない時間を、私にとって……いや、きっと二人にとって、特別だった時間を。
強く強く、心に刻み込んで。
とどろく声に、鳴り響く戦鼓に、打ち合う剣戟に負けないように、戦場を見据えて、
私は、歌う。
愛しい人へと告げる、想いの唄を──。
唄い終って気がつけば、戦闘は止まっていた。
そう言えば、彼が言ってたっけ。『強い想いの篭った言葉には、力があるんだよ』って。
まさかそれを実体験するとは思わなかったけど。
そして、黄巾の人たちは、まるで気が抜けたかのように、兵を纏めて退却していった。
- 746 名前:真√:Interlude4 6/6[sage] 投稿日:2009/03/11(水) 04:00:08 ID:VICdtQay0
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流石に私達も、その場に残るわけには行かないから……後ろ髪引かれる想いはあったけど、
私もその場を後にした。
去り際に聴こえた、『ありがとう、れん』って声は、今でも耳に残っている。
きっと、一生忘れることは無い。
姉さん達は、あのときのことを何も聞かない。
きっと、色々察してくれてるんだろう。何だかんだ言っても、やっぱり良い姉達だ。
その後彼は、漢中の太守になったらしい。
私達は曹操様の部下……っていうか、協力者。どちらかがどちらかに降るか、
戦場以外には会うことは無いんだろう。
それは寂しいことだけど、彼が無事でいてくれればいいと、今は思っている。
だけど。
いつかきっと、今度は目の前で唄ってやるんだ。
私の想いを──。
- 747 名前:真√:Interlude4[sage] 投稿日:2009/03/11(水) 04:02:32 ID:VICdtQay0
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以上、お目汚失礼いたしました。
今回は真√初の一人称でした。
たまにはいいもんです。
そして人和フラグが立ちました。さすが一刀。
ではでは、またいずれ。
最後の最後にさるってしまって申し訳ない。
そして多数の支援に心よりの感謝を。