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653 名前:真√:稟拠点[sage] 投稿日:2009/03/10(火) 02:43:26 ID:gcP4JfPz0
思いつくままに書いてしまったので、あまり良い出来では無い気がしますが。


と言うわけで。


真・恋姫†無双 外史
北郷新勢力ルート:稟拠点

咲花繚乱 ──ハナサクオトメ──


4レス程、お付き合いくださいませ。
655 名前:真√:稟拠点 1/4[sage] 投稿日:2009/03/10(火) 02:46:30 ID:gcP4JfPz0
「俺って、稟に嫌われてるのかね?」

 風が一刀からそんな相談を受けたのは、あの月夜の邂逅から約一月……
黄巾の乱も終わりが見えた頃だった。

「おぉ〜〜?……ん〜〜………………ぐぅ」
「いや、寝ないでくれ」
「あ〜〜……あまりにも唐突な質問についつい」
 思わず瞬間的に突っ込んでしまった一刀を、薄目を開けてチラリと見つつ答える。
「それで、何をもって嫌われてると思われるのですかー?」
 改めて風にそう聞かれ、一刀は「う〜ん」としばし唸り、
「いやさ、ここ二月程、風と稟にこっちの文字を教えてもらってるだろ?」

 そう、一刀はこちらの言葉はなぜか分かるのだが、
文字は全て中国語の為、全くもって読むことが出来なかった。
 流石に君主がそれでは、将来領土を持ったときに政務が滞る為、
客将という身分ではあるが、漢中に腰を落ち着けることが出来たのを機に、
風と稟にみっちり教わっているのだ。
 ちなみに星はそんな一刀の様子を酒の肴にしていたりする。

「けどここ最近……稟から教わってないんだよな。
何だかんだ理由つけて避けられてるというか……」
「そういえばそうですねー。二日前も風が代わりましたし」
「だろ?だから、何か避けられる様なことしちゃったかな?って思ったんだけど……」
「そんな心当たりは無い……と」
 眉をしかめる一刀の言葉尻を継いだ風に、うんうんと頷く一刀。
「この前なんて、廊下で見かけたから近づいたら、
何か怒ってたのか、顔赤くして逃げちゃったんだよな。
 ……流石に戦の最中はそんなことはないんだけど……」
 一刀のその最後の一言で何やら思い至ったのか、ぽむっと手を打つと、
「あ〜……そう言うことですかー……」
656 名前:真√:稟拠点 2/4[sage] 投稿日:2009/03/10(火) 02:50:11 ID:gcP4JfPz0
「何か分かったのか!?」
 意気込んで聞いてくる一刀を、まぁまぁと落ち着かせ、
「いやはや……弱みを見せない様に振舞う辺りが稟ちゃんらしいと言いましょうか。
 では説明する為にもここは移動しましょうかー。
今の時間帯ならあそこですかねー」
 と、一人で納得してスタスタと歩いていった。


「……はい着きましたよー……気づかれてしまいますのでお静かにしてくださいね〜」
 声を潜めてそう言った風が案内してきたのは、書庫の前だ。
 さぁ、ご主人様。と風に促されて、一刀が窓から中を覗くと、
一人読書にふける稟の後姿があった。
「ではご主人様、ここで一つ指令を出させていただきます」
 右手の人差し指をピッと立ててそう言う風に、一刀は首をかしげて無言で問い返す。
「稟ちゃんに気づかれないように、こっそり中に入って、
後ろからそっと名前を囁きながら抱き締めてあげて下さい」
「…………は?」
「呆けてもダメですからねー。ちょっとした実験ですから。はいどぞー」
 あまりにも唐突な風の“指令”に、当然のごとく呆然としてしまった一刀を問答無用で促し、
それでもこっそり書庫の中へと押し込む風。
「お、おぅ」
 そんな有無を言わさぬ雰囲気に思わず頷いてしまった一刀は、
頷いてしまったからには……と、半ば無理やり自分を納得させて、覚悟を決めた。

 そんな二人の様子に気づくことは無く、稟は静かに読書を続けている。
 一刀は息を潜め、ゆっくりと気づかれないように、一歩二歩と近づいていく。
内心だんだん楽しくなってきたのは秘密だ。
 そして、あと少しといった所で、流石に気配に気づいたのか、稟が振り向こうとし……
「……稟」
 そこで一刀が、そっと稟を抱き締めた。
658 名前:真√:稟拠点 3/4[sage] 投稿日:2009/03/10(火) 02:58:59 ID:gcP4JfPz0
 その声で誰か分かったのだろう。
 ビクンッとした稟の顔が、一気に赤くなっていく。
「かっかか一刀様!?」
 稟の声はすっかり上ずり、顔も最早真っ赤になって、
「い、いいきなり何…………ぶはっ」
「稟!!??」
 キレイな鼻血のアーチがかかったのだった。


「はい稟ちゃーん、トントンしましょうね〜。トントン」
 いつの間に近づいていたのか、手馴れた様子で止血のツボをトントンする風に、
「……どういうこと?」
 と、わけのわからない様子で尋ねる一刀。
 稟はトントンで止血はされたが、未だに顔を赤くしてくったりしているので、
一刀の視線は自然に風へと向けられる。
「はいはい、ご説明いたしますねー」
 そう言う風の表情は、思った通りの結果が出たと言わんばかりににこやかだ。

「まず一つ。稟ちゃんは一を聴いて十を妄想する、超絶妄想娘なのですね。
 もう一つ。稟ちゃんは、興奮が限界を超えると、盛大に鼻血を噴出してしまう体質なのですよー。
 そして最後に、稟ちゃんは何とも想っていない人との事を想像しても、鼻血なんて吹かないのですよ」

 そこまで言われれば流石に分かる。
 最近避けられていたのも、廊下で会ったときに逃げられたのも、
この姿を見られないためだったのだと。
 戦の最中は平気だったのは、流石に戦に対する緊張感の方が高いのと、軍師としてプライドだろう。

「いやはや、風のみならず稟ちゃんも虜にするとは……ご主人様も罪なお人ですねー」

 そう言い残して風は去り、後には赤い顔で若干にやけながら倒れる稟と、
あまりの急展開に呆然とする一刀が残されていたのであった。
659 名前:真√:稟拠点 4/4[sage] 投稿日:2009/03/10(火) 03:03:26 ID:gcP4JfPz0
 ちなみに。
 また同じ事をされて、醜態を晒すわけには行かないと思ったか……
翌日以降は逃げたり避けたりは控えるようになったようである。
 避けなければいけない程であった症状(?)も、
「後ろから優しく抱き締められる」という、
稟にとって貴重で刺激的な体験をしたためであろうか、
幾ばくかの耐性が出来たのであろう。


 何はともあれ、稟に嫌われていなくてホッとしつつも、
風の恐ろしさを知った一刀であった。
660 名前:真√:稟拠点[sage] 投稿日:2009/03/10(火) 03:07:14 ID:gcP4JfPz0
以上、お目汚し失礼いたしました。


稟拠点と言いつつも、稟の台詞は二回だけという体たらく。

ちなみに、風は内心ちょっとやきもち……かもしれない。



では、またいずれ。

支援に感謝を。

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