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313 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2011/04/23(土) 04:11:02 ID:6nBd8z6UO
「にゃー(どんどんやりますよ)」
「(・・・)」
314 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/04/23(土) 04:13:21 ID:6nBd8z6UO
ひとまず諷陵に入城した桃香が率いる軍勢はくたびれていた。
それなりに準備はしたものの、機動力を重視した為に荷車はもちろん荷馬車の数を著しく減らした。
そのために武器は手に持てる物を、弓矢は背負えるだけを、食料は人の腰や馬に背負わせていた。
食料の心配は常にあったが揚州では孫呉の、荊州では徐州の時の善政の噂を聞いた地元の富豪の援助なども有り食いつないだ。
益州に入った後も戦闘は無かった為、ぎりぎりながら食料の尽きることなく諷陵へ入城出来たのであった。
入城した桃香たちの下に、住民たちのまとめ役の長老が謁見を申し出てくる。
長老たちの話は、噂通りに益州の内部は既にボロボロ状態で、国民たちは大乱に巻き込まれるのでは無いかと日々恐々としているらしい。
この乱世の時代に無能な太守に治められていれば、国中が戦火に巻き込まれる。
ならばこそ、徐州での名声高い桃香に太守になってもらい、安心して暮らしたい――。
長老たちが桃香たちに要求してきたのは、新たな太守となって益州をまとめてほしいということだった。
話を聞くにつれ、益州を治める劉璋の一族の、手前勝手な振る舞いのひどいさが分かってくる。
315 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/04/23(土) 04:15:19 ID:6nBd8z6UO
『このままじゃいけない…』
そんな思いから、桃香たちは当初の予定通りに益州平定に乗りだそうと、出陣準備を開始する。
開始してみるも道中に破棄した武器・防具がかなりの数だったらしく、改めてみると装備一式すらままならなく困っているところにものすごい数の荷馬車を引き連れた行商人が現れた。
なんとか交渉しようと近づこうとする桃香と一刀、護衛だと言って付いて来る愛紗に話し掛ける者が一人。
「お久しぶりでございます。北郷様に劉備様、それに関羽様…」
「あなたは!」
そこに現れたのは、いつぞやの商人の姿であった。
◇ ◇ ◇
諷陵に運ばれた装備は早速、兵士たちに配られた。
配られた装備は効率重視なれど、その姿決してみすぼらしくなく。
されど部隊毎に統一された槍・刀・鎧・盾は全てが新品なのに決して贅沢な感じは無く、手頃な質素さが逆に威風堂々な雰囲気が伝わってくる。
並ぶ軍馬も力強く、つい先日まで逃亡していた軍勢にはまるで見えなかった。
「どうですか劉備様?新しい衣装は…おぉ劉備様、良くお似合いで」
今、桃香が着ている服は依然の衣装を基本的には変更はせず、けれど要所要所に女の子らしさを取り入れ桃香の可愛さを引き立たせる新しい戦服。
316 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/04/23(土) 04:19:00 ID:6nBd8z6UO
「(えっ!いや確かに桃香は可愛くなってるけど、そこは普通だったら兵士のみんなの方を振らない!?)」
だが、そんな一刀の心の突っ込みなど知る由も無く、桃香は嬉しそうに反応する。
「本当にですか?」
「はい本当にお似合いですよ、劉備様。普通の殿方ならまずほっておかないかと」
「へへぇ♪ありがとう、商人さん」
振り返ると桃香が一言。
「だって、ご主人様♪」
「うん商人殿が言う通り、良く似合ってるよ桃香」
桃香の問いに照れているためにそっぽを向きながら答えた。『あっ、ご主人様!ちゃんと良く見て言ってください』と桃香の追撃が入る中。
「喜んでいただき嬉しい限りです、皆さんもいかがですか?」
それぞれ姿を現した残りの武将、軍師などみんなの戦装束も新しく一新されていた。
武将たちは動きやすさを最優先に改良、しかし依然の華やかさも失わせず華麗に仕上げられる。
軍師たちには頭の回転を良くすることを考慮に入れ着心地を重点に改良された、機動性を追求しなくて良いぶん可愛らしくする方に力を入れたらしい。
それぞれが納得している出来に文句など出るはずも無く、みんなが嬉しそうに着こなしていた。
317 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/04/23(土) 04:22:22 ID:6nBd8z6UO
一刀の新しい服は下のズボンに似せて作った履く物と帯剣のみ、上の服も試みたが断念したとのこと。
また諷陵に入城直前で新たに仲間になった麗羽・猪々子・斗詩は以前のままで構わないと麗羽の一言で決まり、翠と蒲公英も当面はこれでいいと断った。
ならばと洗い綻びをつくろい仕立て直すと新品同様に戻ってきた戦の衣装に二人とも感謝した『母様から・おば様から貰った服がより長く着れるようになった』と。
こうして、装備一式が一新した従来の軍勢たちと新たに加わった翠が率いてきた騎馬隊とで益州平定のために進軍を開始したのであった。
◇ ◇ ◇
軍師たちの働きにより諷陵入城の件は正当化され、今のところは不問のようだ。
そして朱里から『今から向かうお城の城主は、黄忠さんとおっしゃる方です』と聞くと、一刀はそっと軍師たちに『黄忠って人は仲間になる可能性が高い』とつぶやく。
すると雛里から『了解しました。ではそのように進める方針で』と返事がきた。
◇ ◇ ◇
それから数日後、桃香たちの軍勢は黄忠の守る城を取り囲む。
黄忠側が籠城戦を選択したために桃香たちは攻城を余儀なくされた。
318 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/04/23(土) 04:27:35 ID:6nBd8z6UO
されどこの攻城戦、軍師たちの働きにより普通の攻撃城より遥かに楽なものと化していた。
朱里と雛里から作戦が言い渡される。
「既に益州の全体に桃香様がやってきたことを流布してます、もちろん目の前の黄忠さんが守る城にもです」
「おそらく場内は桃香様歓迎の雰囲気一色だと思います、ですから城の兵士さんたちは住民にも注意をしながら戦わなくてはいけません」
「うわ〜それはちょっと嫌かも」
と、籠城戦の記憶を思い出したのか多少嫌な顔をした白蓮。
「はい。おそらくは嫌だと思います、ですから戦いの途中で矢文を場内に放ちます“今戦っているのは桃香様だと”明確にするために」
「それが広まれば必ず場内でなんらかの反応がありますから、その時が一気に城を押さえる好機かと」
『へ〜、そうなんだ〜』と感心している桃香に朱里が言葉を続ける。
「桃香様」
「はい?」
「以前に桃香様は仰いました。“ご主人様に名前や真名を知られている方は必ず仲間になると”」
「言ったよ」
「黄忠さんのお名前は調べで既に知ってしまいましたがご主人様はこうも言いました“黄忠って人は仲間になる可能性が高い”と」
「そうなの?」
「はい」
319 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/04/23(土) 04:31:30 ID:6nBd8z6UO
「ご主人様。黄忠さんのこと知ってた?」
問われた一刀は素直に答える。
「名前は、ね…」
「真名は?」
「おぼろげに…なら」
「んー……じゃあ『黄忠さんを説得して仲間にする』のと。出来るだけ早く、出来るだけ損害を少なく。それが基本方針になるかな」
「難しい基本方針ですね」
「でも黄忠さんに関してはご主人様が知っている人だから、きっと大丈夫だよ♪」
「攻城に関しては?」
「みんながいるから大丈夫だよ」
「お気楽極楽二人組が完成なのだ」
「あぅ、鈴々ちゃんひどぉーい」
「ふふっ、まぁ全ては黄忠次第。……今は敵城へと無心で向かいましょう」
「そうだな。……じゃあ行こうか!」
「御意!……では各員、敵の奇襲に備えつつ前進せよ!」
こうして始まった攻城戦は最初から城側の切れが悪く、雛里の判断で直ぐに場内へ矢文が放たれた。
すると城内は一時ざわついたかと思えば直ぐに静まり返った、そして城門が開くと白旗を持った者を伴う一人の女性が姿を現した。
城主の黄忠だと名乗った女性に桃香と一刀は対話し二人の志としかし、現実も見据えたその覚悟に納得し下ることを了承した黄忠だった。
320 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/04/23(土) 04:35:38 ID:6nBd8z6UO
その後、挨拶と真名の交換も無事に済み、兵士には一日の大休止の後、次の拠点へ出撃した。
◇ ◇ ◇
次に進む進路の軍議で黄忠が強く進めたのは巴群、そして引き合わせたい相手だと語られたのが巴群城主厳顔と、その部下魏延の二人。
実力、人望は申し分ないが、そんな二人だからこそ頑固なところもあり、素直に説得に応じるかどうかと心配する紫苑。
『恐らく、一戦して力を示せ、ということになるでしょう』と語った。
すると桃香が一刀の方を向き『ご主人様?』と訪ねる、その瞳が“知ってますか?”と語る。
「(う〜ん、桃香の判断基準が俺の記憶に依存してる?あんま頼り過ぎて万が一にも考え無しになったら桃香の為にもならないな…良し!)桃香」
「はい」
「厳顔さんと魏延さんを俺が知らなかったら仲間にはしないのかい?」
一刀の言葉にびっくりする桃香。
「そんなこと、ある訳ないよ」
「なら、いちいち聞く必要も無いよね?桃香」
「うん、そうだよね。ごめんなさい、ご主人様…」
寂しそうに答えた桃香に。
「別に責めてる訳じゃないぞ、ただ俺の記憶力一つで桃香の他人に接する対応が変わったりしたら“俺が悲しいから”言うだけだ」
321 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/04/23(土) 04:40:35 ID:6nBd8z6UO
「うん…」
下を向いてしまった桃香の頭を撫でて。
「あんまり落ち込むなよ、桃香が暗いと俺はもっと悲しくなるから…桃香は明るくないと」
「…分かった、ご主人様が悲しくなるの私も嫌だもん」
明るく振る舞う桃香を見て。
「分かってくれたならよろしい!」
最後に少し力を込めて桃香の頭を『クシャ』と撫でるとすると。
「ご主人様〜ひど〜い」
いつも通りに戻った桃香の明るい抗議が返ってきた。
『ゴメンゴメン』
と謝りながら。
「(今までが少し喋りすぎたかな、これからは気をつけないとな…しかし歴史通りの人物だとしたら厳顔は張飛と戦ったのち味方に付いてそれなりに活躍したよな?
 問題が有るとするなら注意しなきゃいけないのが魏延の方だ…けど、歴史通りでなきゃいらない問題を抱えることになる。やはり今は喋らない方が得策だな…)」
・・・
・・

こうして厳顔たちとの戦いに勝利し。その後、二人の一騎討ちにも鈴々と蒲公英がそれぞれにそれぞれのやり方で打ち破って勝利する。
厳顔は厳顔の考えで納得して仲間になり、魏延は桃香に一目惚れして仲間に加わった。
その際に二人は一刀には真名を授け、みんなとは交換したのであった。
322 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/04/23(土) 04:43:36 ID:6nBd8z6UO
◇ ◇ ◇
そして焔耶と接触した一刀は問題無いと判断した。
どういう理由なのか分からないが焔耶が桃香に、文字通り一目惚れでベタ惚れだったからだ。
歴史では劉備の方が信頼して魏延を重く用いたはずだとおぼろげに思い出し、この場合の懸念になるかもしれない朱里も焔耶とは仲は良く、またその逆の問題も見当たらなかった。
よって、よくいわれている魏延の裏切りは焔耶には関係無いと判断した一刀だった。
しかし、あえて不安を上げるなら『諸葛亮と魏延の不仲の因果が自分に降りかかってない?』と思えるほど一刀は桃香がらみで焔耶からひどい目にあっていた。
そんな事もあったものの、周りから見れば“黄忠、厳顔や魏延と歴戦の将たちが劉備たちに降った”という事実は変わらず多大な影響が益州全体に及んだ。
益州各地から軍が次々と参戦を表明、軍勢もあっという間に膨れ上がる。
そして劉璋が立て籠もる益州州都成都までの勢力は全て桃香の軍勢に降り、残る勢力は劉璋率いる成都のみとなった。
だが州都を守るだけあって兵数では以前相手が上だったが圧倒的な将の質の差に呆気なく成都は落城、城主劉璋は何処かに落ち延びるも二度と表に名を出すことは無かった。
323 名前:一刀十三号曰わく、[] 投稿日:2011/04/23(土) 04:46:14 ID:6nBd8z6UO
◇ ◇ ◇
州都成都を制圧した桃香たちは、その情報をすぐさま益州全土へと流した。
そうすることで、劉璋を中心とする前政権に批判的だった者たちを仲間に引き入れ、なおかつ日和見をしていた者たちに決断を迫ることが出来た。
当然、劉璋側だった者たちも周り全てが桃香に降ってしまっては降らざる負えなかった。
“劉玄徳、益州を瞬く間に平定”
大陸全土に駆け巡る風評。
こうして桃香たちが手に入れた益州州都に、諷陵で待機していた彼の商人が真っ先に駆け付けた。
攻城戦によって出るだろうと予想する市内の被害への復興支援と、その後の商売に使う商品を伴って。
さらには風評を聞きつけた彭城の住民たちの移住も凄まじかった、移動に多少の困難を期してもだ。
あまりに住民が居なくなってしまった為に一時期は州都彭城が州都として機能を満たさなく曹操になんの策だと懸念させたぐらいだ。
益州がまだ本格的に酷くなる前だったから…
商人の一見後先見てないような初期投資のおかげで…
桃香たち英傑による善政の為に…
益州は比較的早く復興し一刀の天の知識を生かした為に、異例の速さで発展していった。
いずれ来る曹操との決戦の為に、今は蜀を強くし備える時であった。
324 名前:一刀十三号 ◆keNb29aoZQ [] 投稿日:2011/04/23(土) 04:47:39 ID:6nBd8z6UO
「にゃー(ご静聴ありがとうございました、ではまた〜。次だ次!・・・さて本格的にヤバいんだが、なるようになるか)」
「・・・・・バカ猫」

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